なんともない日。
アンジュさんを出迎えて、リゼのところに案内して。庭の手入れもして、師匠と共に剣に励む。
素晴らしく、平凡な日々。
その均衡をいとも簡単に悪意は崩す。
自衛団長「…どうかなされましたか?若様。」
チャイカ「風が騒がしいな。 …悪い予感がする。師匠はリゼたちの元に。」
自衛団長「若様はどうなさるのです?」
チャイカ「…親父のアレを借りて悪意を断つ。」
平凡を崩す不届き者は、堂々と城門を突破する。
テロリスト「…王を探せ。 奴を人質に各国を脅す。」
部下「御意。」
チャイカ「残念。親父はシフに出向中だ。 お引き取り願えるか?」
テロリスト「貴様は…この国の王子か。 王には劣るが…人質には十分!」
チャイカ「こんな所で暴れるなよ。」
蔵にあるこの剣を握った瞬間、足は見知らぬ花畑を踏んでいた。
そこに佇んでいたのは赤龍と…蒼髪の少女。
人王「…お困りのようだね。強き王子。」
チャイカ「やっぱり、この剣はなにか特別なようだ。 事は急を要する。力を、貸してくれないか。」
人王「それはいいけど…私が力を貸したら君は王の道に縛られちゃうよ?」
チャイカ「…承知の、上だ。」
人王「イヤな事を押して通ることが、必ずしも人のためになるってことは無いんだよ。」
ドーラ「なら、ワシが手を貸そう。」
チャイカ「…心強いな。」
ドーラ「ほう? ワシの事をよく勉強したと見て取れるな。感心する。 嫌いではないぞ?抜け目のない豪胆さ。」
チャイカ「赤龍にそう言って貰えるのは光栄だよ。」
ドーラ「赤龍じゃない。 ドーラ。 ワシにはちゃんと名前があるんだ。 これからマブダチなんだ。 ちゃんと名前で呼んでくれよ。」
チャイカ「龍の友だから龍友だな。 あんたの名前ともかかってるし。」
ドーラ「それは…にっくねーむ、と言う奴か?いいな!憧れてたんじゃよ。 まぁいい。 お前に力を貸そう。 使い方は…やれば分かる。」
チャイカ「簡潔で助かる。 じゃあ…また会おうか。御先祖様。」
テロリスト「…ここは? どこだ!」
部下「花畑…? 王城にいたはずだぞ!」
チャイカ「あそこは思い出の家だ。 暴れてぶち壊されたなんて、ご先祖さま達に申し訳が立たないだろ。」
剣を握り締める。
チャイカ「妹と思い出を守るために。 お前らには倒れてもらおうか。」
テロリスト「…お前が? 俺たちを? この人数差で?
笑わせるな!」
チャイカ「行くよ、龍友!」
剣が赤い焔を纏う。
花粉によって、それは爆発的に燃える。
テロリスト「魔剣の類か!? だが、俺の速さには無力…」
チャイカ「甘い! 甘すぎるぞ!」
死角から襲い来る奴ごと、剣を1周。
振り抜く。
テロリスト「避けられないとでも…は!?」
広がる炎は剣が少し掠っただけでも服を灰に替え、肉を溶かす。
奴は脇腹の肉を溶かされる痛みで気絶したようだ。
チャイカ「峰打ち…とは言わないか。」
部下「…化け物。 化け物だ!」
チャイカ「悪意を持って動くヒトの方が、よっぽど化け物さ。」
自衛団長「若様! ご無事で!」
チャイカ「俺は無事だがこいつらは無事じゃないようだ。 拘束してから病院に運べ。 治癒次第根掘り葉掘り聞き出せ。」
自衛団長「はっ!」
アンジュ「久しぶりにかっこいい君を見れた気がするよ。」
チャイカ「…アンジュさんか。 リゼは?」
アンジュ「こっちまで来たテロリストは私と自衛団長さんが始末した。 リゼも無事だよ。」
チャイカ「そうか… 妹を守ってくれて、ありがとう。」
アンジュ「頭を下げないでくださいよ。」
アンジュ「それで、相談って?」
チャイカ「…すまない、本題を忘れていた。 これから私はここを去る。 親父に頼んで存在ごと消す手筈も済んでいる。」
アンジュ「家を出る、どころの話じゃなさそうだね。」
チャイカ「ああ。 近い内。 チャイカ・ヘルエスタという人間は戸籍上死ぬ。」
アンジュ「…王の道がイヤになった?」
チャイカ「いや…俺は私として生きたくなった。 それだけですよ。」
アンジュ「なら…私が口出しする問題でもないでしょう? 何故、このことを私に?」
チャイカ「…リゼを、頼みたいんだ。 私が居なくなれば、リゼは本当に同じ視点を持つ友が居なくなってしまう。 だから、貴殿だけは、傍に。」
アンジュ「…分かりました。」