ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(下巻)   作:Edward

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2019年12月に上巻を終えまして、少し練り直しておりますとスタートは何処から始めるべきか・・・。
迷走しておりました。
ようやく固まりつつありましたのでゆるりゆるりと始めさせていただきます。
下巻から見る方もいらっしゃると思いますので、説明が多いと思いますがご容赦の程お願いします。


序章
躍動


バーハラの血戦・・・。

 

イザークの地、リボーの領主の子を欺いてダーナへ侵攻させグランベルとの開戦を切っ掛けにその戦火は全土へと広がった。

 

その渦中の中心へと巻き込まれたシレジア生まれ、そしてヘイムの血を色濃く受け継いだアズムール王の落胤、カルトは眠る力の覚醒と共に死の運命から逃れ、シアルフィのシグルドと邂逅する。

2人の運命は互いを絡めあい、バーハラの悲劇となるこの歴史を血戦まで変える・・・。シグルドを慕う仲間達は力を出しきり、軍にいる力弱き者を地方に逃した。

シグルドは命を賭けてカルトを守り、カルトはシグルドの意思を汲み、命を投げ打ちロプトウスの書を封印する。

運命に翻弄されてアルヴィスより運命の扉が開かれたが、鍵をなくしたロプト教団は再び運命の扉を開く為に奔走を続けなればならず、力を衰えながらも懸命に捜索と奪取に急いだ・・・。

 

水面下では侵食するロプト教団を尻目に皮肉にも世の中には穏やかな日々がつづいた。

アルヴィスはディアドラに変わり執政をとり、レプトールとランゴバルドの腐敗政治とクルト王子の落命で力を失った宮廷を立て直し、戦乱の最中で手に入れたイザークとレンスター地方を引き続きドズル家とフリージ家に任せて税を搾取させた。

ヴェルダンとアグストリアは先の戦いで賠償金を得る事もあり、国内疲弊は外からの外貨獲得により急速に立て直しに成功し、アルヴィスは国民からの熱狂的な支持を得ることになり、グランベル初代皇帝として座する事となる。

国を超えて人々に差別のない国を作る理想を抱いていたアルヴィスだが、ランゴバルドやレプトールと同様に特権階級が快楽を貪る腐敗政治を踏襲していくことになっていく・・・。

搾取される国々では、貧困から反グランベル派を唱える者も増えていく・・・。その度に鎮圧部隊が投入され血生臭い日が連日のように続いていた。

 

その中で大きく反グランベルの筆頭となるのがアグストリアであった。

イムカ王から引き継いだシャガール王は当初は雑な悪政を敷く人物であったが、カルトに敗れてから改め、父王同様の賢王となり今は息を潜めて機会を伺っていた。

莫大な資産を持っていかれるも少しづつ裏で資金を貯め、他国と連携しながら商いのルートを作り出し、人材と機材につぎ込んでいた。

ヴェルダンとシレジアは奇しくも、かつては鬼の住む場所といわれるオーガヒルで悪行の限りを尽くしていた海賊達を改心させ、その地下ルートを通じての商いに注力する。

次第にオーガヒルは一大商業地域に発展し、その海上ルートはグランベルすらも干渉できないほどの自由都市へと変貌するのであった。

表向きには自由都市と銘打っているが、実際はアグストリア自治区に等しい・・・。

今まで荒野の不毛地帯でどの国も干渉しない地域、今更商業地域となりアグストリアに正面から異を唱える国はいなかった。

 

反グランベル体制がアグストリアで成熟を迎えつつある最中、同盟国のシレジアが崩壊する・・・。

アグストリアに入るシレジアの金属を抑え、自国の手中に収めたいと考えたアルヴィスは突如として進軍したのだ。

オーガヒルの産業はシレジアの金属と他の国の農産物との交易、シレジアを制圧すればオーガヒルも手中に入ると踏んだのだ・・・。

それに暗躍するのはロプト教団。シレジア進軍を機に教団員を投入し、混乱に乗じてカルトの封印を破りにかかったのであった・・・。

 

その戦いの最中にシレジア国王のレヴィンを始め、シレジアの天馬部隊や魔道士部隊に致命的な打撃を受ける事となる・・・。

シレジアの殆どの領地は奪われ、辺境の地トーヴェまで追いやられていた。

 

グラン歴777年の早春、バーハラの悲劇より17年が経っていた・・・。

雪解けが戦いの幕開けになる事を予感していたシレジアの残党兵は、春の到来を複雑な思いで過ごしていたのである。

・・・・・・そんな中、少数ながらに希望を捨てず、果敢に敵陣に切り込む猛者達がいた。

 

 

 

「敵襲ー!!敵襲!!」

シレジア城北部にあるセイレーンに警戒号令が響く。

打鐘がけたたましく鳴らされる、セイレーンはシレジアの貿易玄関口、港の区域と城下の区域が分かれているが敵襲は城下の区域で発生した。

 

 

 

「急げ!こっちだ!!」

荷台を持ち、なだれ込む平民達を先導する天馬騎士が数人、辺りを警戒しながら叫ぶ。

狙いは食料倉庫。トーヴェの食料は尽き、冬を越すことは出来ない人達と立ち上がった残党達は決死の強攻策に出たのだ。

先の戦乱で敗残兵とトーヴェの民は食糧難に陥った。その上思い重税を掛けて財産を奪い、民を追い詰めた。

 

市街区の、市場にある大きな倉庫にはフリージ軍が警備にあたっているがシレジアの残党兵がなだれ込んだ。

 

「どけえー!」女性騎士とは思えぬ言葉、手に持つ斧が彼女の体を司るかのように勇猛に突破口を開く・・・。

天馬の突撃に加えて、彼女の斧の重量、そしてその斧を使いこなす筋力があった。

フリージの兵士は剣で受けるも砕かれ、受ける者がいても吹き飛ばされた。

 

「な、なんだ!あいつは。」驚愕するフリージ軍に、天馬騎士はフンと鼻を鳴らす。

 

「怯むな!射かけろ!!」隊長格の号令に後方で待機していた兵が弓を番えるが、その瞬間に雷が落ちる。

 

「うわあああ!」弓兵は思わぬ反撃に狼狽えて陣を乱す。

 

 

「ディーナ!あれは私の獲物だ、邪魔するんじゃない!」斧を持つ天馬騎士は後ろにいるもう一人の天馬騎士に威勢のいい言葉を放つ。

天に突き上げるは、雷の剣・・・。魔法を使えぬ者でも、体内に秘める魔力を具現化する魔法剣。

失われし、魔力付加(エンチャント)の秘術により産み出された一振り・・・。おそらくこの大陸にも一刀しかない秘剣である。

 

剣先から雷の残滓が迸り、辺りに鈍い光を放っていた。

 

「親からもらった頑丈な体を披露するのはいいですが、あなたは女性なのですよ・・・。少しは傷付くことを躊躇いなさい。」

 

「余計なお世話だ!私には勲章みたいなものだ。」睨み合う二人にもう一人、天馬騎士が低空飛行で先に進む。

 

「もうー、言い合いしてるひまないよ。みんなより先に行って進路確保しないといけないでしょ!」

 

「あっ!」

「フィー!テメエ!!」二人をかいくぐり先を急ぐ、平民達も武器を持ち戦ってくれているがフリージ軍とまともに戦わせる訳には行かない。フィーと、残り少ない天馬騎士は先陣に切り続けた。

 

 

「レティーナ!雑な戦いせず進んで、今日はクラリス来てないからね。」

 

「ちっ、わかったよ!」女神から授かったと言われる斧からハルバードに切り替えると二人は先行するフィーに続く。

 

 

 

倉庫の扉を丸太の衝突で吹き飛ばした民たちは、中にある食料に歓喜する。

 

「俺たちの食料だー!さあ運ぶぞ!!」

 

「これで子供たちにひもじい思いをさせないぞ!!」嬉々として台車に乗せる民たち・・・。

 

 

「そうか、子が飢えているか・・・。しかし残念だ。こんな事に加担して、その子が親を失うのはな・・・。」

台車に乗せる民の後をとった一人の青年は振り返るより先に背中に手を当てると、雷が迸った。

 

「ぎゃあああー!」

 

「な、なんだ!」

「助けてくれー。」トーヴェの民たちは戦慄した。

 

 

 

フィーと、ディーナ、レティーナが倉庫に入った時には民達は絶命していた。

先に入った民は全員焼き焦げ、誰が誰かもわからないほどであった。肉の焼け焦げた匂いが充満するなか、一組の男女が顔をだした。

 

「やはり、狙いはここだったか。ライザ、相変わらず冴えるな・・・。」

 

「恐れ入ります。」横に佇む女性恭しく頭を下げる。

 

「イシュトーか・・・。」レティーナはハルバードを構えて怒りをあらわにする。

 

「そんな、みんな・・・。」フィーはその光景に目に涙し、ディーナは状況を冷静に分析する。

 

「お前達をあぶり出すには食料攻めだと思ってな、あまり好きではない方法だが引っ張り出すために使わせてもらった。」

 

「なにい!」イシュトーの言葉にレティーナは飛びかかる勢いであったが、ディーナは腕を先に出して静止する。

 

「何が狙いです、あなたにしては随分まどろっこしいやり口ではなくて?敵ではありますが、正々堂々とした戦術は好きでした。

私達をあぶり出す?あなたが先頭に立って進軍すれば、私達も出向きましたよ。」

 

「炙り出しを提案したのは私です。殿下には時間がないので了承してもらった、非難は私にしてもらおう。」ライザは前置きにディーナの言葉に反論した上で、さらに返す。

 

「イシュトー様がここに駐留するのは、あの兄妹を得る為だ。

あの二人はここにいないのか?」

 

「ふん!答えたくはないが、今日の作戦は伝えていない!残念だったな。」レティーナはハルバードの柄を床に突き立てて威嚇する。

 

「そうか・・・ 、生き餌を撒いたつもりであったがかからなかったようだな。次はお前達を生き餌にしよう・・・。」イシュトーから魔力を吹き出した、ライザも呼応する。

 

「ふざけるな!」レティーナはハルバードを振り回して、遠心力から振り下ろした。

床は盛大に破壊され石床は辺りに散らばる。

 

「そんな大振り、当たるわけがないだろう。」イシュトーは背後に回る。レティーナは同様どころか、笑みを浮かべている。

 

「イシュトー様!」背後から迫りくる手槍をライザの警戒で察知してカラダを捻りながら回避するが、床に着弾する寸前にレティーナが掴みイシュトーに突きを見舞う。

その瞬間にライザの雷が手槍に命中、レティーナはその衝撃で吹き飛んだ。

 

ディーナはライザに狙いを定め、雷の剣で斬りかかる。ライザもその剣に応戦する形となった。

 

「さすが、シレジア天馬三騎士・・・。遠、中、近距離を連携するとは聞いてましたが、やりますね。」

 

「あなた達もね。初見で、私達の連携をここまで押さえて無傷なんて・・・。」鍔迫り合いで、剣越しに二人は会話する。

 

「でもね、私は魔法剣士。あなたの使うにわかの雷魔法ではなくてよ。」剣身から雷が発され、ディーナを襲う。とっさに背後に引いて剣から伝播される電撃から逃れたが、ライザは追撃する。

 

「雷の剣で魔法を使ったつもり?本当の雷の魔道士は雷への耐性がある!同じと考えれば痛い目をみますよ!」

 

 

 

イシュトーは強かった・・・。

レティーナの近距離、フィーの中距離援護の戦いでも、彼は全く動じなかった。

レティーナの剛力の一撃を受ける事もなく躱し、フィーの死角からの投擲も突進も見切られていた。

ついにエルサンダーを受けたフィーは倒れ、レティーナも追い詰められていた。

 

「さあ、あの二人の居場所を吐け。トーヴェにいるのか、いないのか!」

 

「・・・っつ!」イシュトーがレティーナに不用意に近づきすぎた、彼女は唾を吐きかけて嘲笑う。

 

「貴様・・・ 。」

 

「色男が、女にバカにされて少しは逆上したかい?」

 

「死ね!」

 

 

 

レティーナとディーナを危機が同時であった。

その二人に強烈な光が発され、エルサンダーは無効化される。

 

 

「ま、まさか私のエルサンダーが、・・・来たか!」

イシュトーは、ライザのいる処まで下がると倉庫の入り口を見張る。

 

「ディーナ、あなたがいながら戦局を読めないなんて・・・。撤収しますよ。」

聖杖を持ち、司祭のローブに見を包んだ華奢な女性が佇んでいた。

 

「面目ありません・・・。」

 

「この冬に必要な食料は別の倉庫でまかないました、これ以上の交戦は双方無意味です。退きますよ。」

 

「クラリス!私はまだ戦える!!邪魔をするな。」

ツカツカと怒りを携えて、クラリスと呼ばれる女に詰め寄るが、彼女の顔は動じない。むしろ涼しく笑みを浮べていた。

 

「なんとかいったらどうだい!クラリ・・・ 。」

「えいっ!」クラリスはヒョイっと杖を振ると、レティーナは魔法陣が現れたかと思うと虹色の光に包まれて消え失せた。

 

 

「なっ、今のは転移か?」イシュトーは驚く、魔法の貯めも放出も一瞬な上に無駄がない。あのような無駄のない動きではなんの魔法を使ったのかも検討がつかないだろう。

 

「イシュトーさん、今貴方達とあの兄妹を引き合わせるわけには行きません。今戦えばお互い無事では済まないでしょう、あの子の様に手篭めにされかねませんからね。」

 

「ティニーの事か・・・。」かつてまだシレジアがあった時、父親が幼き子供を連れ帰った時の事を思い出す。

 

「いづれティニーは返してもらいます、アーサーが待ってますからね。」クラリスは踵を返すようにその場を後にする。

 

「待て、といった所で無駄だろうな。先程の見事な転移を見せられては手の打ちようがない。・・・名前だけでもお聞かせ願いたい。」

 

「・・・クラリスです。」

 

「クラリス・・・、いい名だな。

次はトーヴェで見えよう。」

 

「わかっています。・・・でもイシュトー、あなたはなぜ戦うの?あなたの意志はここに無い様に思えてなりません。」

 

「・・・・・・。」

 

「私達を戦わせる運命が来るでしょう、その時まで自分の心をよく考えてください。そうでなければ、お互い悲しい事になるります。」クラリスは手を挙げて撤収の令を下す。

 

イシュトーはただそれを見送る、ライザが攻撃を提案するが彼は首を振って命令を出さなかった・・・。

 

「俺達のエルサンダーを二人にシールドを張って完全に防いだんだ・・・。魔法を無力化されたらあちらの方が数が上、今日は撤退してもらったほうがいいだろう。

こちらも人数を用意するべきだった、すまない。」

 

「そんな!それは私も同じことです。申し訳ありません。」

 

「・・・さあ、戻ろう。」イシュトーはライザの肩を叩くとその場をあとにする。

 

ライザは指を噛んで失策に顔をしかめる・・・、クラリスという女を睨むと踵を返してイシュトーの後を追うのであった。

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