ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(下巻)   作:Edward

11 / 13
よくやく序章が終わりまして、本編「イザーク解放」を描いていきます。
かなりスローペースとなってしまいましたが出来るだけ、進めていけるように努力しますのでお願い致します。


一章 イザーク解放
離脱


イザークの荒野を進む騎士、手綱を緩めて馬を歩ませる。

目的はこの先にある集落であったが、その惨状にため息をついた。

 

「ここも、だめか・・・。」馬より降り立ち、ひどく荒らされた後をみて呟いた。

襲撃を受けてまだそんなに立っておらず、火をかけられた家屋からまだ燻った煙が立ち込めており煤けた臭いが辺りに漂っていた。

 

「ダメでしたか・・・。」

 

「レスター、お前の方もか?」その言葉に一つ頷く。彼の捜索した場所も同じように荒らされていたなであろう、表情は険しく歪んだ。

 

「徹底的に荒らされてます。オイフェ様、やはりこれは。」レスターと名乗る弓騎士は下馬するとオイフェの横に立ち、惨状を思案する。

 

「これは組織的だな・・・、周辺から波状に索敵して一つづつ潰しているのだろう。野盗や賊のする仕事ではない・・・、いや奴らを指揮している者がいるのであろうな。」

 

「!・・・まずいな、もしかするとセリス様の残した砦も奴らの手に及んでいるかもしれん・・・、戻ろう。」

 

「はい!」2人は騎馬に乗り、早足で帰路に着いた。

 

 

 

 

「つええ・・・。」砦を襲った野盗達は、たった2人の女性剣士に戦慄する。その2人でも頭領を瞬殺した剣士の方がさらに高みの領域に達しており完全に戦意を失っていた。弓を射掛けても意識が常に広域まで警戒しており全く当たる様子もなく、涼しげに回避しながら切り捨てていく姿は鬼神の如くであった。

 

「な、なんで・・・俺生きてるんだ?」しかしながら斬り伏せられた者達は肋骨や胸骨が折れ、苦悶の表情で倒れていた。

・・・斬殺したのは頭領のみであった。

 

「勘違いするなよ・・・。」納刀するとラクチェの見下す目にはまだ殺気があり、野盗どもの全身から血の気が失せる。

 

「貴様らの命運はティルナノグの民に任せるだけだ、本当は全員私が地獄へ送ってやりたいところだが・・・。

貴様らを殺しても、私の代わりに散った・・・くっ!」ラクチェは足元の砂を蹴り上げるとその場を後にする。

 

(シャナン様、なぜなんです!なぜあんな連中を斬ってはいけないのですか?)ラクチェの怒りが頭を駆け巡るが師の言いつけ通り頭領のみ生殺与奪を決めて後は殺さずとした、しかし彼女のぶつけようのない怒りが残るのみである。

もう1人の剣士はラクチェの心の乱れを気にしつつ投降した野党どもの武装を解除して無力化し、地下の牢へ放り込んだ。

 

「あらかた終わったな」2人は表情を緩め、ラクチェは相方に笑みを見せる。

 

「まだ油断はできません、今回の襲撃はいつものものと違うように思います。」

 

「なに?どういう事だ・・・。」ラクチェの顔が再び引き締められた。

 

「シャナン様が神剣の情報がもたらされて旅立ち、定期的な情報交換でオイフェ様がいないティルナノグ地方は今までにないくらいに手薄です。

・・・そのタイミングで今までになかった大規模な野盗の群れ、これは相手側に都合が良すぎます。」

 

「確かに・・・、言われれば合点が合わないな。

!・・・もしかして!!」

 

「こちらの内情が漏れてますね・・・。」

 

「ラドネイ!それまで読んでいてなぜ早く言わない!!」ラクチェの怒りがラドネイに向いた、しかし彼女は眉を落として困惑した表情となる。

 

「落ち着いてください。私も疑問が出たのはつい先程の事ですし、急いだ所でどうしようもありません。

・・・それに、まだここが囮の場所と気づかれた訳ではありません。」

 

「しかしだ!行くぞ!!」ラクチェは踵を返して駆け出しそうになる彼女の腕を掴む。

 

「待ってください!これすら囮で二重尾行を企ててますと、慌てて私たちが拠点に向かえば、後をつけられて発覚するという可能性もあります。」ラドネイの言葉に落ち着いたラクチェは荒い息を整えながら相棒を見る、彼女の瞳は水瓶の中にある水鏡のようにラクチェを写し込んだ。

 

「今は、みんなを信じましょう。

私たちは今できる事をしっかり処理して、地固めをしながら進みましょう。」

 

「・・・そうだな、今はそれしかないな。」ラクチェは右手で柄を強く握り込むと、守っている砦の異常を確かめていくのである。

 

(母上、ご無事で・・・。)

ラドネイもまた、本体に残している母を気遣い、気を揉んでいる事を必死に隠しているのである。彼女の剣の柄は小さく音を立てている事をラクチェは知り、その場を収めた。

 

 

オイフェとレスターは本丸の隠れ砦にたどり着いた時、大量の軍が投入されていた・・・、イザークに駐留するドズル家の所有する斧騎士団の一個団体が襲いかかり、すでに砦の中まで侵入を許している。

 

「あ、あれでは・・・。」レスターは戦慄の表情を浮かべ、青ざめているがオイフェは落ち着いていた。

 

「まだセリス様が討たれた訳ではない、あの砦には隠し通路がある。逃げ延びていればあの地に向かうはずだ、行くぞ。」

 

「はい!・・・ラナ、母上、生きていてくれよ。」小さく妹の安否を祈った。

 

 

 

砦の警護を突破され、内部にドズルの騎士団が入り込む混乱の中ラナと母であるエーディンは重傷者の手当てを急いだ。

ラナは集中しようとするがあたりの混乱で魔法が集中せず魔力が何度となく途切れる、そんな中でも母は平常心を保ち癒していく姿に嘆願する。

 

「こんな事始めてですからね、無理もないわ。

・・・ラナ、あなたはお逃げなさい。」エーディンの顔はいつもと変わらず優しくラナに語りかける。

 

「で、でも!どこに・・・。」

 

「大丈夫、こういう時のための対処は決まっているの。充分に引きつけたら合図があるはずだから・・・。」回復処置を続けながら、自分の娘を励ますように伝えた。

 

「お母様・・・。」その心遣いに彼女は平常心を取り戻し、回復魔法に集中させた。先程までおぼつかない光が淡く発光し、負傷兵を回復させていく。

 

 

「おお!」

 

「セリス様!!」

歓声が響く中血潮にまみれたセリスが入室する、傷を負ってこちらに来た訳ではなさそうでラナは安堵した。

 

あまりに酷い出立ちで心配するが、セリスはいつもの周りを暖かく導く雰囲気は全く削がれていない、切れた息を整えると顔を上げる。

その顔には鬼気迫るものではなく、いつもの落ち着いた顔を見せる。

 

「心配かけてすまない、敵兵は足止めした!

退路も確保しているので指示にしたがって撤退して欲しい。」セリスの言葉にみんなは安堵する。

優先順位の高い女性と子供と撤退を始めていく・・・。

 

「セリス様・・・。」

 

「ラナ!無事になりよりだ、それにエーディン様も・・・。」セリスは血糊を拭き取りつつ、2人を労う。

 

「エーディン様とラナは、負傷兵と共に脱出して下さい。」

 

「セリス様は?」

 

「私は最後まで残る・・・。

あのように言ったが、おそらく最後の者まで足止めしきれないだろう・・・、追撃をここで止めなければならない。」

 

「そんな・・・。」ラナの耳には遠くから閂を破壊しようと躍起になって丸太で破壊している音が聞こえる。

セリスは何十にもその扉を準備して足止めしているだろうが、撤退より早く破壊してここに踏み込まれると予想していた。

 

「大丈夫、まだこんな所で死ぬつもりはないよ。

みんなを助けて、私も助かるからラナは信じて待っててくれ。」泣きそうになるラナの肩を抱いてセリスは頷く、ラナも促されて頷くと床下の退路に入る。何度も振り返り心配そうな顔を見せるがセリスは笑顔で手を振った。

 

「さあ、エーディン様も・・・。」

 

「最後までここで皆様を見ます、私が退けば助かる人も助かりません。」

 

「しかし!」セリスはさすがに困り、強く反発するもエーディンは首を縦に振った。

 

「私よりもずっと若いあなた達ばかりに負担を強いることなどできません。セリスは生きて脱出するのでしょう、私も最後まであなたの支援で留まりましょう。」エーディンの言葉にセリスは吐きかけた言葉を飲み込んだ。それくらいに決意は固く、揺るがす言葉などセリスには持ち合わせていなかった。

 

「私も残る。」

 

「あっ!マリアン様。」左足には形だけの義足を引くように歩き、左手には杖を持ち、右手には剣を携えていた。

 

「マリアン様はとても戦えるような体ではありません!あなたに万が一の事があればオイフェやラドネイ、それにアルテナも・・・、どんなに悲しむ事か・・・。」

 

「セリス、余計なお世話よ。

私たち夫婦はいつも命をかけてます。お互いの元を離れる時は今生の別れを意識し、帰ってきた時は生還した気持ちで出迎えているのです。

ここで命が尽きようとも、私の意思を汲み取ってくれるでしょう。」

 

「そんな・・・。」

 

「坊やが私たちの心配をすることなんてないわよ、今はここを踏み込む無粋なドズル兵を屠りましょう。」マリアンの言葉にセリスは決意する。マリアンの抜刀に触発されセリスも立ち上がり盾と剣を構える。

 

「・・・わかりました。

でも、どんな状況でもみんな生きて脱出しましょう。」セリスはもう近くまで響く丸太を打ちつける音が、セリスの心拍を力強く後押しする。

普通なら丸太を打ちつける音に恐怖を感じず、鼓舞されるような感覚。

このような状況でも、諦めない気持ちが強くしていた。

撤退が混乱なくすすめられ、広場はほとんど人が引けていった。重傷者すら、担架を使ってここから引き上げている。セリスはそれに満足した時、けたたましい足跡と共に招かざる者が侵攻してきた。

 

「いたぞ!ここだ!!」突破して入り込むドズル兵、立ち塞がるマリアンとセリス、2人は不敵に笑っていた。

 

「ここは、通さない。」

 

「お前がセリスか!!その首、もらった!!」セリスはその袈裟斬りを左手の盾で受け止め、力で押し返して切り上げる。

 

「くそっ!」もう1人の兵が長槍をセリスに繰り出すが、セリスは身の捻りと盾を巧みに使って刃先をいなすと剣を胸部へと突き立てた。

 

「ぐはあああ・・・。」セリスは再び返り血を浴びる。

 

「セリス、腕を上げたな。」マリアンも義足とは思えない。片足だけで跳躍して敵兵の間合いを詰め、上半身のバネだけで剣を操っていた。

しかしぞくぞくとこの広間に突入する敵兵に2人の疲労が徐々に蓄積していく、そこへエーディンの回復魔法が2人を補助し、さらに下位ではあるが雷の魔法で援護してくれていた。

 

「何をしている!たかだか三人に何をしているか!数で押し切れ!!」

さらに二重、三重と取り囲む。

 

「マリアン様、このままではエーディン様が危険です。

私が切り開きますから脱出を、お願いします!」セリスは一気に敵陣へ切り込んだ。盾と剣を組み合わせたセリスの剣技は攻防一体の妙技、まだ体が出来上がっていない分をひと回り小さい円形の盾で補い、相手の体勢を見切って押し返す技術はすでに一介の戦士の領域であった。

 

「セリス!うっ!」危険を察知したマリアンはセリスを襲う弓矢を庇い、左腕に被弾する。

 

「マリアン様!」近寄る敵兵を警戒しつつ、倒れるマリアンを抱き上げる。

 

「セリス、あなたが逃げなさい。」

「嫌だ!もう誰も失いたくはない!逃げるならみんな一緒だ!」

2人に迫る危機、ドズル兵は無常にも2人に襲いかかるが、その刃は

届かず魔法の結界が張って侵入を拒んだ。

 

「これは・・・、エーディン様?」エーディンが敵兵との間に割り込み結界を張って拒んだのだ、淡く白く光る半円が何人も拒む領域を生んだ。

 

「2人ともよく持ち堪えましたね、みんな無事に脱出できたとラナから伝心が入りました。

今からラナが招聘魔法を使います、私が転移魔法と併用すれば2人とも脱出できるでしょう。」

 

「・・・それでは、エーディン様はどうなるのです、あなた1人ここに残るというのですか!」セリスは憔悴する、ここまでみんなと脱出する気持ちが大きく揺らいだ。

 

「私もラナも、複数人に対して行使できません。ラナがセリスを呼び、私がマリアンを飛ばすので精一杯です。」

 

「待ってください!エーディン様、考え直して下さい!まだ手はあるはずです!!」必死の呼びかけにエーディンは穏やかに微笑む・・・。

セリスにはまだ大人達が追い詰められ、命の危機になってもなお穏やかに送り出そうとする境地には理解できない。17年前の悲劇は生き残った者達の人生を大きく変えていた・・・。

 

「セリス、あなたはこれから起こるこの大陸の悲劇を救わねばなりません。あなたはお父上であるシグルド様の意思を継ぎ、導いてください。

それが私の願いです。」

 

「エーディン様、待って下さい!もう少し・・・。」ラナの招聘が完成し、セリスは姿を消す。あたりの敵兵は必死になって結界を破ろうと手にもつ武器を叩きつける。

 

「さあマリアン、あなたも・・・。」エーディンはマリアンに向き直ると転移を始める。

 

「エーディン、やめて!どうしてあなたまで!私は死ぬ為に戦ってきたのに、あなたが死ぬ事はないじゃないの!!」

 

「あなたの命運はここではないからよ。私の体にはフュリーと同じ病が進行しているの、もう一月ももたないわ。」

 

「そ、そんな・・・。」

 

「あなたはまだここで死なせるわけにはいかないの・・・。

マリアン、元気でね。」エーディンは微笑むと転移を完成させ、消えた。

 

 

「エーディン!」マリアンが転移され、砦が見える砂丘で叫んだ。

その瞬間、砦から夥しい魔力が放出され爆発音が響く。

 

「お母様・・・。」ラナの涙が一筋、ほおを伝う・・・。

そばにいたセリスはラナに問いかける。

 

「あの爆発は・・・。」

 

「身体にあるすべての魔法力と生命力を爆発に変えた道連れの魔法、命を大事とする聖職者の中では邪法と呼ばれてます。」

 

「!・・・ラナ、すまない。僕は、また守れなかった。

僕の力が足りないばかりに・・・、すまない。」

 

「お母様はセリス様に希望を見ていました、無理をするセリス様を放っておく事ができなかったのでしょう。

だから、私は・・・。」スカートの裾をキュッと握りしめてうな垂れた、転移されてきたマリアンも動揺を隠さないでいて血の気が失せている。

 

「セリス様!ご無事で・・・。」駆けつけたオイフェとレスターがセリスを見つけて駆けつける。

 

「・・・エーディン様が身を犠牲にして救ってくれた。

オイフェ、レスター、僕の事はいいから身内を・・・。」セリスは横にいるラナと側で項垂れているマリアンを案じ、2人のケアを急がせた。

 

「・・・・・・わかりました。

セリス様、後ほどこれからの事を・・・。」オイフェの言葉にセリスは頷くと、現状の把握の為軍部と合流していった。

 

「ラナ・・・。」レスターはラナを抱きしめる。死期を悟っていた母ではあるが、突然の訃報に2人は悲しんだ。

 

「最後までみんなを救うと奮迅していましたセリス様のお心が心配です。・・・お母様が亡くなったのに、セリス様の心配をしていまう私は、薄情でしょうか・・・。」

 

「・・・・・。」レスターは黙ってラナの涙を拭う。

今の彼には、妹の問いかけに応える言葉を持ち合わせていなかった・・・。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。