やるきが有り余って1万文字も書いてしまった。
最後まで読んでいただけたら幸いです。
十六夜たちの前に現れたのは桃色の髪をした無表情な少女だった。少女の周囲には様々なお面が浮かんでおり少女自身も狐の面を頭に掛けるように被っている。そしてその手には薙刀が握られていた。
ヴィランの接近にプロヒーローの相澤と13号は警戒を強め、相澤は捕獲にかかり13号は生徒を守れる盾となるように先頭に立った。相澤が個性『抹消』を使い、秦こころを見ると少女の周囲を漂っていた仮面がカタリと音を立て地に落ちた。それと同時に相澤たちを襲っていた正体不明の感情が収まった。
「なるほど、お前が話にあったイレイザーヘッドか」
こころは個性を消されても驚くことなく変わらぬ無表情で迫りくる捕縛布を薙刀で打ち払い、跳躍し相澤から距離を取りヴィラン達の元へ駆けた。
「逃がさん!」
相澤も逃がす気はなくこころを追いかけた。
「十六夜!今のうちに行け!」
相澤がこころの個性を抑えている間は十六夜が個性を使うことに忌避感を覚える感情にされることは無い、相澤は自らの『抹消』やこころのような個性を使えなくさせる個性がどれほど珍しいかをよく知っている。つまり、こころさえ自分が抑えれば十六夜が他のヒーローを呼んできて鎮圧できるのだと合理的に自分の役目を理解していた。
こころを抑えるということはヴィラン達の中心に単騎で特攻するということだ。
だが十六夜の個性発動のタイムラグのなさを思えばもう救援を呼びに行っているだろうと後ろを見やればそこには、
倒れ伏した13号におびえる生徒や身構える生徒、体を抑えられ手を背に回され苦しそうな峰田実。そしてそこには十六夜がいた。
考えられるだけでも最悪な事態だ。抑えられた峰田は人質に取られたのだろう。
そして下手人は総じてこう言うのだ。
「動けば殺す」
緑谷出久は歯噛みする。
広場の噴水に現れたのと同じ黒い靄が突然目の前に広がりその個性の持ち主であろう人物が現れた。プロヒーローである13号は反応したが即座に抑えられクラスメイトの峰田が攫われ人質にされてしまったことに。
彼の個性『ワンフォーオール』を受け継ぐきっかけになったヘドロ事件も幼馴染が人質に取られた、その時は体が勝手に動いてヴィランに向かっていったが何も出来ず結局はオールマイトに助けられた。だが何もできなかったのは緑谷出久だけではない、現場には他のプロヒーローが何人もいた。それでもオールマイトが来るまで手をこまねいたのだ。
本来人質事件とはプロが手を焼くほど難しい事件、ましてや少し前まで中学生だった彼らに解決を望むのは難しかった。そしてオールマイトはこの場にいない。
「十六夜昨夜、あなたがこの場から少しでも消えるようなことがあったらこの少年峰田実を殺します」
(犯人は十六夜君と峰田君の名前を知っている。それに十六夜君の個性も知っているとなるとクラス全員の個性も把握されていると考えた方がいい。轟君が言ってた通りこの襲撃は用意周到に計画されたものなんだ)
行き場のない力が手を強く握らせる。
「オールマイトがいないのは予定と違いますがそれならば彼が来たときの為にやりやすくしておきましょう」
彼らの前には黒い靄が歪に揺れている。
相澤消太は囲まれる。
こころを追いかけ敵の手中ともいえる中心に向かったのだ、当然多くのヴィラン達に囲まれていた。
その中から手の形をしたマスクをつけた男が一人出てくる。
「動くなよイレイザーヘッド。
もし動いたらお前の大切な生徒を殺す、人質に取っているのも動けないでいるのも全員だ」
「クソどもが」
今の状態では人質を取られた時点こちらは不用意に動けない。さっきまでなら耐えしのぐこともはできただろうが
「オールマイトはいないけど、ボスに挑む前は周囲の雑魚キャラ倒してからってのは定番だしな」
顔を覆う掌の隙間から覗く男の赤い目が細まった。
「それに新しい武器は雑魚で試したくなるのも人情だよなぁ、脳無」
相澤の前に脳がむき出しの黒い筋肉質な怪人が現れた。
十六夜昨夜は考える。
目の前の人質になった峰田ついて……ではない。そんなものはどうでもいい。さっきから十六夜に個性を使わせない理由が狙ったようにやってくるのだ。こころの個性による感情の暴走も自分にだけは周囲よりも強く掛けられていたと思う。
これはこころによる自分へのメッセージなのだろうと十六夜は確信する。
「個性を使わないでほしい」
ということらしい、それが彼女たちの計画に必要なことなのだろう、協力はするが十六夜にも自分の立場があることをこころは理解しているのだろうかと彼は不安になった。
「な、なんだよあいつ!!」
上鳴の声に思考を中断させ、その視線の先を手繰ると相澤が脳がむき出しの黒い男に組み伏せられていた。相澤の腕は両手ともあらぬ方向に曲がっており甚振られた跡があった。
「あれは脳無。対オールマイト用に作られた改造人間、そのパワーはオールマイトにすら匹敵、いや凌駕する!」
眼前の峰田を人質にしている男の説明はあの怪人に余程の期待をしていることが見れた。なるほどオールマイトというすら対策しているというのだ、この大がかりな人数も用意周到ともいえる計画もそれならば頷ける。
しかし、現状人質を取っているとはいえこのまま時間を浪費していくヴィランとしてはどうなのだろうか、十六夜たちはただこのまま助けを待てばいいだけなのに対しヴィラン達は時間とともにヒーローに発見される可能性が上がるだけだ。いくら遅くともこの授業の終わる時間には不審に思ったヒーローが来てもおかしくはない。
「しかし、オールマイトがいないというのはいささか興ざめだ」
「暇なら僕が手品でもやってあげよう、人体瞬間移動とかどうだい?」
「十六夜昨夜、あなたは決して動いてはいけない、この少年の命が大事なら」
男は峰田の腕を上に曲げた。
「いたいいたい!十六夜!お前挑発するなぁあ!!!」
鼻と目から液体を流して叫ぶ峰田。彼には高い戦闘力も拘束から離脱する技術も勇気もないから恐ろしいのだろう。倒れ伏したプロヒーローたち、いつ来るか分からない助けに命の保証もない。
「ぐ、また」
そして男の声に反応するように十六夜の感情が操られた。余計なことをするなというこころからの警告だ。十六夜は肩をすくめて見せた。
「こんなことをして何が目的だクソヴィランが!」
「我々の目的は平和の象徴オールマイトに息絶えてもらうこと」
ここまでアリスから聞いていた話の通りだったということは今回は本当に自分は何もしなくていいのかもしれないと十六夜は思った。自分が関わらないようにこの計画は出来ているということで確定だろう。こころからも個性の使用を止められている現状そういうことなのだ。
「そんなの出来っこねーぜ!諦めて帰った方がいいんじゃねえの」
上鳴はそういうが実際あの脳無とかいう怪人がどれほどできるかは分からない。明確な力の物差しを持っていない個性の十六夜ではコンクリートを砕く力も鉄を折り曲げる力もどちらも同じだ。しかし、物差しがなくてもオールマイトにワンフォーオールの個性がもうないことは知っているのだ。今の彼に用意周到でプロヒーロー2人を倒して見せたヴィラン達を突破できるのだろうか。
十六夜の気分は完全に傍観者へと移行していた。ショーをするのも好きだが見るのもまた好きなのだ十六夜は。
「おい黒霧俺が言いたかったこと取るなよ」
手を象ったマスクをした男がこちらにやってきた、男の来た方向には相澤がピクリとも動かず横たわっていた、一同に最悪な想像がよぎる。
「リーダーが勘違いされちゃうだろ」
「死柄木弔……」
死柄木と呼ばれたその男はA組に向かい合うように立った。
「俺たちは敵連合、リーダーは俺だ」
赤い瞳に乗せられた悪意に射抜かれる。黒霧と呼ばれた男とも控えているピンク髪の無表情な少女とも違うそれに凍てつくような気味の悪さを覚えた。
「せっかく大衆引き連れてきたのにオールマイトいないじゃん、子供を殺せば来るのかなぁ?」
告げられた超理論は支離滅裂で何故そう思ったのか分からないがこの場の生徒にとってつまらない芸能人のするそれとは比べるまでもなく最悪だった。もしかしたら死ぬかもという恐怖はA組の足並みをさらに直立不動へ整えさせたのを十六夜は肌で感じた。
相澤と13号は倒れ助けは期待できない。大勢の敵に囲まれ戦闘での勝利も無理だろう。人質を取られ下手な行動は出来ない。
絶望。
かくして絶望があるところにはやってくる。
闇が深ければ深いほどその光はまばゆいほどに輝いて。
それは突風だった。
砂埃を巻き上げ目に見えるようになった風は生徒だけでなくヴィラン達の目も閉じさせた。その一瞬、その一瞬の間に黒霧の手の内からは人質は消えていた。
その腕に抱えていた相澤を優しく地面に下ろし突風の原因は言った。
「皆、もう大丈夫。私が来た!」
オールマイト。『希望』の象徴だった。
「待ったよ。ヒーロー社会のごみめ」
しかし、そんなオールマイトの登場にも死柄木は平然としていた。人質を奪還されたことを気にした様子もない。
「オールマイトぉお!!」
救出された峰田はオールマイトに縋り付くがそれを受け止める余裕はない。
「皆!相澤君と13号君を頼む、意識がない早く!」
「「「はい」」」
「動くな」
ピンク髪の少女―こころが発したその言葉には抗い難い誘惑があった。動きたくない、言うことを聞いてあげたいといった感情に揺さぶられた。
「ぐ、これは……。皆!頑張って進め!」
オールマイトの檄が飛ぶ、すると今まではこころの感情操作に振り回されていた一同が初めてそれに抗うことが出来た。誘惑を振り払い足を進ませる。
「やはり今の私では『希望』には勝てないか、無念。だが必ず手に入れるぞ!」
「ちっ、使えねぇ。まあいい本命はオールマイトだ。黒霧、脳無」
こころの面が般若の面に切り替わり悔しそうな身振りをするが死柄木は即座に切り替え二人の男に命令を下す。超スピードで反応した脳無はオールマイトへ、黒霧は相澤と13号を抱えた生徒たちの前に降り立った。
しかし、黒霧が来た時には相澤と十六夜の姿はなく、そのことに気づいた時には13号もいなくなっていた。
「くっ、十六夜昨夜」
「名づけるなら脱出マジック『そして誰もいなくなるか?』ってとこかな」
次々と姿を消していく生徒たち、残るは緑谷だけとなるのに5秒とかからなかった。即座に十六夜を止めようとする黒霧だったがその靄は十六夜をとらえるのには遅すぎた。捕まる前にその身をかわす十六夜だったが、
「それは読んでいた、私の狙いはこちら」
靄の軌道は横へずれ、緑谷や残りの生徒を呑み込んだ。
「やばっ」
「緑谷少年!?」
オールマイトが駆けだそうと身をかがめたとき即座に脳無が相撲を取るような姿勢で抑え込む。
「邪魔をしないでくれ!」
抜け出そうと脳無を押し倒すつもりで踏み込んだが予想に反して濃霧の身体はびくともしなかった。ただのヴィランじゃないとオールマイトの長年の勘で感じ取った。
「オールマイトぉ!」
伸ばされた緑谷の手。それは空を切る。
そして、靄が晴れたときには残っていなかった。
「十六夜昨夜。ワープはあなたの専売特許ではない。
そしてあなたの個性は体が触れた者しか飛ばせないことはすでに把握している」
「ずいぶん詳しく調べたねぇ、君も僕のファンになったのかな?」
口をつく軽口とは裏腹に十六夜の視線は鋭く黒霧とこころに向いていた。
狐の面になったこころは頷いてみせた。それに十六夜は微笑んで返し、
「オールマイト、緑谷君は僕に任せてください」
そして誰もいなくなった。
緑谷出久が飛ばされたのは広場ではなかった。
ヴィラン達が集結している広場ではなくオールマイトと脳無が闘っているところから離れていて発見されづらい場所『倒壊ゾーン』だった。気づいたらヴィラン達のど真ん中という展開を覚悟していた緑谷は肩の力をぬく……訳にはいかなかった。
彼だけがオールマイトのピンチを知っているからだ。緑谷は毎朝ヒーローニュースを見て登校している。だからオールマイトが朝から個性を使ってヒーロー活動をしていたのを知っていた。そして、授業に現れなかったオールマイトに何かを話していた相澤と13号。ここまでくればオールマイトがどういった状況なのか分かってしまう。
(オールマイトは活動限界が来てるんだ)
広場に戻ろうと駆ける緑谷だが、倒れたビルがありアスファルトが荒れ舗装されてない道路では思ったように走れない。
焦る緑谷に畳みかけるようにヴィランがやってきた。
それはもともと潜伏していたのか後から送られてきたのか分からないが緑谷にヴィランを構っている暇も余裕もなかった。からのワンフォーオールはまだ一発打ったら体を壊すもろ刃の剣なのだ。
「ガキはっけーん!」
「やっと俺たちも暴れられるぜ!!」
「でも、たった一人相手じゃすぐ終わっちまうぜ」
「ばか、楽しみ方ってのはあるんだよ」
(やばい!どうする!?ビルを倒して道を塞ぐ?駄目だ街をイメージしたこのゾーンなら別の道からも追いつけるはず。ワンフォーオールを足に使うのも無理だ、今の僕は調整が出来ない、使ったら確実に折れて戦うのも逃げるのもできない)
ヴィラン達の狂騒に取れる選択肢がないことをに冷静な思考が告げる。
遂に暴力に煽り立てられた一人が飛び出した。飯田の『エンジン』のような個性的な突進に緑谷は考えることを諦めなかったからこそ反応が遅れた。
「おめえにゃ恨みはねえがここで死んでもらうぜ」
「しまっ」
歯止めのない暴力が発露しようとした刹那。
その刹那も彼には無限に値する。
「あぽ?」
ガキをぶっ飛ばしていたと思ったら倒れていたのは俺だった、というのがその男が最後にした思考だった。そして油断なく意識が刈り取られた。彼、
「十六夜君!!」
「ごめん待った?なんちゃって」
十六夜昨夜に。
「さあ、行こうか緑谷君。君で最後だ」
緑谷に手を差し伸べる十六夜、彼の手を取れば緑谷は安全なところに送られるのだろう。それは十六夜もオールマイトも望むことだった。だが緑谷にその手を掴むことはできない。
「十六夜君!お願い!!僕をオールマイトのところまで連れて行って!!」
彼は最高のヒーローを目指しているから。
脳無とオールマイトの戦いはとても激しく二人の拳が起こす余波でヴィラン達は近づくことさえ困難だった。下手な援護はかえって邪魔になってしまうだろう。オールマイトがここまでやれるのは死柄木も予想外だったがそれでも現状は脳無が押していることは間違いなかった。
「やっぱ本当だったのかな……弱ってるって話」
(何というパワーだ、このまま膠着していたら時間切れは必然……だがそれでいい!
皆が来るまで1秒でも時間を稼いでみせる)
「おいおいこんだけ大勢いるんだぜ、だれかオールマイトだけ攻撃できる奴はいないのか?攻撃とは言わなくても邪魔できる個性の奴とか」
だが押しきれていないのも事実。
時間を稼がれたら困るのは敵連合側だ。雄英高校のプロヒーロー何人にも来られたら勝てない、でなければこんな奇襲はしない。望むのは早期決着だ。だから死柄木は援護をできる人間を求めたのだが、脳無とオールマイトの戦闘は激しく何度も立ち位置を入れ替え端から端へ目に見えないスピードで行われている。個性を持て余したチンピラたちの烏合の衆が割り込めるはずがなかった。
「あああああああ!クソ使えねぇ奴らだ!恥ずかしくなってくるぜヴィラン連合!」
死柄木は首を掻きむしった。
しかし、一人だけ前へ出てくる者がいた。
「死柄木弔。彼女が」
黒霧の言葉に顔を前へ向けた死柄木の目に映ったのは、
チェック柄の上着に胸元に赤いリボンを、ボタンには赤の星、黄の丸、緑の三角、紫のバッテを泣き顔と笑顔の模様に彫ってある長いバルーンスカートを履いた少女。秦こころだ。
死柄木は彼女の名前は知らないが今回の作戦で顔は覚えている。
「おまえ、さっき個性オールマイトに通じないって言ってただろ」
死柄木の言う通り「今」のこころにオールマイトの感情を操ることはできない。
オールマイトによって破られ子供に個性が効かなかったのも死柄木は覚えていた。
「我の個性でオールマイトの感情を操るのは出来ないが、まぁ見ているがいい」
尊大な口調で狐の面から姥の面へと取り換えたこころ。
「
こころの宣言に合わせて大地が震えた。
そし青い色の莫大なエネルギーがこころの足元のコンクリートを食い破るように割り、柱がそびえたつように打ちあがった。
大地から迸るそれは意思を持つようにオールマイトに向かう。当然それを察知したオールマイト。常人が目に見えないスピードの脳無の攻撃に反応できる彼だ。エネルギーも速いとはいえ目に見える速さだ、それをかわせないはずがなかった。
しかし、エネルギーを完全に避けきったオールマイトは自身の立つ地面から音がしたのを聞いた。
ボコ
「なっ!?」
瞬時に彼はその場から飛びのく、彼が立っていた場所から先ほど避けたのと同じ青いエネルギーが生えるように打ち上がった。
「いくら避けても無駄だ、それはお前を自動で追いかける大地の霊気。的確にお前を狙い打つぞ。地が割れることを憂うといい!」
そういう間にも大地から打ちあがる霊気はオールマイトを襲い続ける。
「いいぞ!いいぞお前!予想以上だ!」
こころが予想以上に使えることに笑う死柄木。彼女の存在は今日あった多くの想定外の中で良い想定外だった。
次々と襲い来る弾幕を避けていたオールマイトだったが本命はこれじゃない、こころの攻撃はあくまでサポートだ。脳無の。
注意力と体力を消耗したオールマイトをついに脳無がとらえた。
「ぐ、しまった」
拘束から抜け出そうともがくオールマイトだが彼の100%にも耐えうる強靭な肉体とパワーを持つ脳無には効かない。痛覚もないのかオールマイトをおさえる脳無の手と顔は一切緩まない。
「黒霧!」
死柄木が叫んだ。
「ええ分かっています!」
「お前もそれ辞めろ」
死柄木はこころに攻撃をやめさせた。黒霧と脳無の邪魔になるからだ。
こころが面を狐の面に変え攻撃をやめると脳無とオールマイトの足元を黒い靄が包み込んだ。そして二人が引きずり込まれるようずぶずぶと沈んでいき腰ほどまで沈んだところで止まる。
「私の中に血や臓物があふれるので嫌なのですが貴方ほどのものなら喜んで受け入れる。目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そして、あなたの身体が半端にとどまった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目」
オールマイトを囲む靄が徐々に小さくなっていく、これが閉じるということなのだろう。強まる圧迫感にオールマイトは最大級のピンチを悟る。ぎちぎちと音を立ててしめつけられて行くのはNo.1ヒーローといえ恐ろしいだろう。
「詰んだな、オールマイト」
まるで子供のように笑う死柄木の残酷さは子ども大人の特徴の一つだ。
そんな未熟なヴィランにオールマイトは殺せない。
「うおおおおお!!!!」
突然の唸り声。
それを上げたのはオールマイトではなかった。ならば誰か。
緑谷出久だ。彼はオールマイトと脳無の上にいた。
「そうか!十六夜少年の個性か!!」
オールマイトと脳無の目に移動する緑谷の姿は映らなかった、ということは考えられるのは十六夜の『テレポート』だけだ。
「オールマイトから離れろぉぉおおお!!」
緑谷は自分のだせる全力で脳無を殴った。
死柄木は言わなかったが実は脳無は『ショック吸収』の個性がある、オールマイトのパンチすら耐えるそれは本来なら脳無にはダメージを与えることはできない。だがそこにオールマイトのパワーが加わればどうか。中から跳ね返すように溢れるオールマイトのパワーを抑えていた脳無は外から同等のパワーで殴られたのだ。
『ワンフォーオール』×2、結果脳無で抑えられる限界を迎えた。
上から与えられた衝撃に脳無は吹っ飛びワープゲートを飛び出した。吹っ飛ぶ脳無のオールマイトを抑え続ける力など無く軽々と拘束を抜け出すオールマイト。ついでと言わんばかりに吹っ飛ぶ脳無に肉薄し
「デトロイトぉぉぉぉぉスマぁぁぁっシュ!!」
そのまま天井を打ち破り吹き飛ばした。
「オールマイト!ぐうぅっ」
オールマイトを助けた代償は彼の右腕の骨折という形で支払われた。
憧れのヒーローのために無我夢中で打った結果だ、緑谷に後悔はない。
「ありがとう緑谷少年!助かった!」
「あああああああ!うぜぇな!!あとちょっとでクリアだったのに!」
「ならばもう一度捕まえればいいのです死柄木弔」
「ああ?……そうだよ、そうだよな。
今度はあのガキを殺してからやればいいんだ」
もう一度と意気込む死柄木たち。
だがここでゲームオーバーだ。
「いっ!!」
突然、死柄木の右手に風穴が空いた。
続けざまに四肢を打ち抜かれる。
「これはスナイプ先生の!」
プロヒーロー、スナイプ。個性は「ホーミング」。そして彼は雄英高校の教師でもある。彼の個性が使われたということは。
「オールマイト!待たせたね!動けるものをかき集めてきた!」
プロヒーローが到着したということだ。
そこからは怒涛だった。プロヒーローの制圧にチンピラ上がりのヴィラン達は対抗できず次々に無力化されていった。
四肢を打ち抜かれた死柄木弔は動くことが出来ず黒霧にかばわれているのが現状だ。
「く!?」
しかし、黒霧の靄が吸い込まれ始める。
「この個性は13号の!もう回復したのですか!そうかリカバリーガール!」
戦線に復帰してきた13号の個性により実体の部分が少ない黒霧が吸い込まれていく。彼は敵連合の出入り口だ、彼を抑えられたらヴィラン達に待つのは相応の報いだけだ。焦ったヴィラン達は13号を止めに行こうとするがそれはプレゼントマイクや他のヒーローたちに沈められる。
「黒霧ぃ、は、やくゲートをひら、けぇ!!」
「駄目です!靄の部分が引っ張られすぎている」
「クソがぁ!!こんなところじゃ、おわれねぇよ!なんとかしろ!」
死柄木が体の痛みを無視して叫ぶ、先ほどはオールマイトが、しかし今度は彼らが詰みだった。
「捕まるのは困るわ」
そう呟いたのはこころだった。彼女はヒーローたちの捕縛から逃れて死柄木たちの様子を伺っていたのだ。彼らが自力脱出できないのを察したこころはため息を一つついた。
「お面を消費するからあまりやりたくないんだけど、そうも言ってられないもんね」
こころは覚悟を決めるかのように薙刀を構え、
「『
と宣言した。
すると彼女の周りを大量のお面が現れ、彼女を守るかのように取り囲んだ。
それを確認したこころは薙刀を構えヒーローたちに突撃した。
それだけなら他のヴィラン達もやっている、結果全員が取り押さえられ捕縛された。
13号のそばにはスナイプがいてその個性によって近づく事さえ許されない。スナイプも向かってくるこころに警戒しながらも弾丸を放つ、それはこころを覆うか面の隙間を縫って命中……するはずだった。
突如、その弾丸の軌道に仮面があらわれ身代わりになったのだ。
「まだだ」
スナイプはリボルバーの弾丸すべてを打ち放したが結果は同じ。どんなに仮面を避けて撃っても仮面の方からあたりに来る。
その間にこころは軽快な身のこなしで進んでくる。プレゼントマイクが彼の個性で抑えようとするも火男の面が彼の顔に張り付いて止めた。他のヒーローたちの攻撃もすべて仮面が受け止め彼女には届かなかった。
そしてついに13号の元まで跳躍したこころ。その薙刀で彼の意識を奪った。
「早くゲートを開いて」
13号が意識をなくしたことにより彼の個性による吸引がなくなり黒霧の個性が解放される。死柄木を包み込んだワープゲートにスナイプが撃ち込む彼の個性が弾丸をあらぬ方向にワープさせるため死柄木にも黒霧にもあたることはなかった。
「オールマイト!今回は失敗だったけどぉ。次は殺すぞ!平和の象徴」
死柄木を呑み込み閉じていくゲート。そこにこころが飛び込み完全に黒い靄は消えた。
かくしてヴィラン達の雄英襲撃事件は幕を閉じた。
モンキーポゼッションは本当は扇子と弾幕を使った攻撃だけど少し改変しました。
こころのスパアマを表現しようとするとこうなったんです。
実はここにも複線的なのあります、即回収するんで探さなくていいです。
お願いします!感想評価お気に入りはとても励みになるのでして下さい
ストーリー
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ちょうどいい
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遅い
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早い
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面白い
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つまらない