あと感想評価お気に入り待ってます。
静かなBAR、シャッターで閉ざされたその店の中に小さな黒い靄が現れた。
それは大きくなっていき中から傷ついた男と無表情な少女が現れる。そして靄は二人を吐き出すと人の形を取った。黒霧だ。
「痛ってー、両腕両足を撃たれた、完敗だ。脳無もやられたっ、手下どもは瞬殺だ!あぁ!平和の象徴は健在だった!話が違うぞ先生!」
傷ついた男、死柄木弔は床に倒れ伏し手足からは血がにじんでいた。怒りの感情を吐き出すように語尾を強めていき壁にある小さな薄型液晶テレビを睨んだ。
テレビにはSOUND ONLYと表示されておりどこかとつながっていることを示している。
「違わないよ。ただ見通しが甘かったね」
男の声がした。死柄木が先生と呼んだ男の声だ。男のそれは優しく生徒を諭すようだった。
「うむ、ナメすぎたな。敵連合なんちゅうチープな団体名でよかったわい」
先生に合わせるように別の声がする、先生とは違い年齢を感じさせるそのしゃがれた声は死柄木への呆れを隠すことをしなかった。ところで、としゃがれた声の主は話を変える。
「わしと先生の共作、脳無は?」
「回収してないのかい?」
しゃがれた声と先生は死柄木たちがどれほどやられたかを知らない。黒霧は少し言いよどんだ後死柄木に変わって言った。
「……吹き飛ばされました」
「なに!!?」
責めるような声慌てて黒霧は口早に続けた。
「正確な位置座標を把握できなければいくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間も取れなかった」
黒霧は音声のみしか通じないテレビに近づいて言い訳するかの如く言い立てた。
「せっかくオールマイト並みのパワーにしたのにぃ!」
思い入れがあったのだろう、男のしゃがれた声でもはっきりと口惜しさを感じ取れた。
「ま、仕方ないか。残念」
しゃがれた声の男とは違いあまり未練を感じさせない口調の先生、彼にとって脳無は残念の言葉で切り捨てられる程度のものなのだろう。
そして死柄木が何かを思い出すかのように口を開いた。
「パワー……。そうだ一人オールマイト並みのパワーを持つ子供がいたな」
「へえ?」
「あの邪魔がなければオールマイトを殺せたのに、ガキが!ガキぃぃいい!」
一瞬様子の変わった先生には気づかず死柄木は憎しみを込めて床に爪を立てる。ぎちぎちと音を立てる床は死柄木がとても両腕を撃たれているように感じさせない。血の滲んだ床でもがくように怨嗟の声を上げる様は個性が発言する前の歴史で撮られたB級ホラーのようだった。
「悔やんでも仕方ない、今回だって決して無駄ではなかったはずだ」
言い聞かせるような口調は死柄木の言うように先生を感じさせる。死柄木の視線が再び液晶テレビへと向かう。
「精鋭を集めよう、今度はじっくり時間をかけて」
「やあやあ我こそは『面霊気』秦こころなるぞ!」
先生の言葉で今まで黙っていた無表情な少女、ここらが初めて口を開いた。
「おや、誰かいたのかい」
次に口を開いたのは先生だ。脳無がやられるほどの戦果だったのだ、死柄木と黒霧以外に逃げ延びるとは思わなかったのだろう。
「ええ、彼女には大変助けられました。彼女がいなければ危うく捕まるところだった」
黒霧は雄英から撤退する際に13号や他のプロヒーローたちの妨害からこころが助けてくれたことを先生に説明した。
「へえ!それは凄いな。こころと言ったね、僕からも礼を言おう。弔を助けてくれてありがとう」
先生は黒霧の個性に便乗して逃げおおせたラッキーマンという評価を修正した。
黒霧の言う通りなら彼女は今回死柄木が手下にした路地裏でくすぶっているチンピラ達とは別格の個性と戦闘能力を持っているのだろう。それを仲間にできた死柄木の方がラッキーだったと言えるだろうと先生は思った。
例え胸の内に何を潜ませていたとしても……
(こころのような実力者がチンピラ達への声掛けの際にいたと考えるのは難しい、何か目的があって接触したと考えたほうがいい。だけど、そういうのを飼いならせるようになる教材としては弔にちょうどいいだろう)
「なるほど君は文字通り精鋭というわけだ。どうだろう、面霊気くん。これからも弔を支えてやってくれないかい?」
「いいだろう、受けて立つわ!」
「それはよかった!僕もできる限りのサポートはしよう。必要なものがあったら言ってくれ」
「わかった」
こころはこくりと頷いた。
雄英高校襲撃から二日が立った。
襲撃された初日に無事ヒーローたちに救出された十六夜と緑谷だったが緑谷は右腕を骨折していたのでそのまま保健室へと運ばれることになった。十六夜はというと目立った傷どころか無傷だったのでそのまま教室へと荷物を取りに戻りそのまま帰宅する流れへ。十六夜が校舎に着くころには生徒は全員避難済みだったのはさすが雄英というところだろう。
次の日は警戒と教師陣による緊急会議のため休み。だがその翌日から登校再開というのもさすが雄英だ。正直言ってハイレベルすぎる。マスコミの雄英叩きの熱は二日そこらでは冷めないというのに。
今日に着いた十六夜を待ち構えていたのはまたしても飯田天哉だった。彼と十六夜はいつも教室に来るのが早いので大体そうなる。
「おはよう!十六夜君」
手刀のように腕を振り下ろした飯田はずんずんと十六夜に向かってきた。
「先日は助かった、どうもありがとう!」
「別に、いいよぉ。たまたま僕の個性がかみ合っただけさ。君の個性ならどうとでも逃げれたさ。それに……ヒーローとして当然の行為ってやつ?」
「む、そうかい、でも助かったのは事実だ。ありがとう」
「別にいいって」
荷物をかけ席に着く十六夜。
しばらくすると続々とクラスメイト達は登校し始め十六夜の元に集まった。「ありがとう」という者、最後まで残った十六夜に「大丈夫だったか?」と聞く者、「余計なことしやがって」という者、最後に緑谷がやってきた。
「十六夜君!この前はありがとう!ぼ、僕の頼みを聞いてもらって」
「いいよぉ、結果的にそれでオールマイト助かってたみたいだし」
「おい、なんだそれ詳しく教えろよ!」
緑谷が個性で脳無を殴ってオールマイトを助けたというのは最後まで残っていた緑谷と十六夜、オールマイトだけが知ることで、十六夜によって先生たちの元へ運ばれた他のメンツは知らない。当然、そんな話を聞けば平和の象徴の恩恵を享受する彼らが知りたがるのは当然だ。視線が十六夜と緑谷に向かう。
「はい、静かに―」
だがそれも教室にやってきた相澤に遮られた。
(((復活はや!)))
「相澤先生、無事でよかったわ」
「ばあさんが大げさなんだよ」
そういう相澤だったが誰が見てもあのけがは重傷だった。現にいまだに包帯が取り切れていないのがその証だろう。
「さて、君たちに伝えておくべきことがある。まだ戦いは終わっていないということを!」
「まさかまたヴィランが!?」
クラス内に緊張がはしる。
「雄英体育祭が迫っている!」
「学校っぽいのきたーーー!!」
盛大に沸いた、ちょっと教室が揺れるくらいに。
ホームルームが終わり授業も昼の部が終わり皆が思い思いのお昼の時間を過ごしているとき十六夜は緑谷に話しかけられた。
「あ、十六夜くん!少しいいかな?」
「ん?別にいいけど」
「ここじゃなんだからついてきてもらっていい?」
緑屋に連れられて十六夜が来たのは数多の学生の青春スポット、屋上だった。ここが解放されていない学校も多い中、雄英は生徒全員がエリートともいえ閉鎖せざる事情を起こすような真似はしない信頼と実績で解放されている。二人は屋上にいる幾人かに聞こえないように距離を取った。
「それで話って?」
「あ、うん、個性についてなんだけど」
「ああ、超パワー」
「あ、ぼ、僕じゃなくってい、十六夜君の個性についてなんだ」
「え?僕のかい」
「う、うん、いいかな?」
「体育祭に向けての敵情視察ってわけだ、いいよ」
「あ、う、うん。そんなとこ。
それでなんだけど、十六夜君の個性『テレポート』についてなんだけど。これってほんと?」
「……どうしたんだい藪から棒に、僕はそう申請してるし君も僕のテレポートはみただろ?」
緑谷の質問は十六夜の個性の特徴どころか個性の真偽についてだった。これを波岡の人間が聞いたら失笑もんだろう。だが緑谷が言ったとなると少しは真剣に耳を傾けるかもしえない。それほど彼はクラスにヒーローと個性探求については一家言ある男として見られているのだ。
「う、うんそうなんだけど。普通に考えたらテレポートなんだけどさ。ちょっと不思議な部分があるんだ」
自分の中の不思議を不思議でとどめておかないのが彼の成長のカギの一つなのかもしれない。
「十六夜君は入試の時僕のことをでロボットのいるところまで連れてってくれた時に手を触ったよね?黒霧という男に災害ゾーンに襲われたときは十六夜君が僕に触れなかったからテレポートできなかった、十六夜君が他人をテレポートさせるのに必要な条件は触ることだと僕は思ったんだ」
「……よくわかったね、そうだよ。僕のテレポー「十六夜君。君今、なんだよ、まだそんなとこかよって顔したよ」
「!」
思わず顔に手を当ててしまう十六夜。
「今の君の態度で確信できた、君の本当の個性はテレポートじゃない。瞬間移動してるように見えるそれは副次的な物なんだ」
十六夜は髪をかき上げ、鼻の頭を指でこすってから大きくため息をはいた。
「今度こそよくわかったねぇ、どうしてわかったの?」
「おかしいと思ったのは君が相澤先生と13号をテレポートした時だよ、だって相澤先生は僕と峰田君が運んでいたんだから」
あの時相澤を運んでいたのは峰田と緑谷、13号は飯田と瀬呂だった。だがほんの一瞬の差で二人はテレポートで消えた、勿論そんな一瞬で十六夜が触れることはできない。相澤と13号が同時に消えるのは触れることが条件なら不可能なのだ。
「そっか、まずったなぁ。
でも、それだと僕の個性がテレポートだってことの否定にはならなくない?
触ることが条件じゃないだけで」
「うん、そうなんだけど、十六夜君の個性の使い方がテレポートっぽいんだ」
「?」
「十六夜君の個性ならやれることなんていっぱいあるのに君の個性の使い方がまるで僕たちのイメージできるテレポートって感じなんだ。その分かるかな?」
「あぁ~何となく?」
「よかった、だから十六夜君は僕たちに個性をテレポートって思わせたいんじゃないかなって」
「なるほど、よく見てるねぇ」
「あ、う、うん、その」
十六夜の個性について話すときは饒舌になるのにまたどもりはじめた緑谷。少し恥ずかしそうに頭を掻きながら彼は言う。
「そ、その、凄いと思った人は僕、研究っていうか調べちゃうんだ。かっちゃんにはクソナードって馬鹿にされるんだけど、やっぱやめられなくて。実は十六夜君の身のこなしが軽やかで凄いこととか体が柔らかいとこと意外と周りを見てることとか凄いヒーローになるって思った人はノートにまとめてて」
「緑谷君は僕が凄いヒーロになると思うんだ」
「勿論だよ!!!」
食い気味な緑谷。十六夜は珍しく少し引いた。
「それで十六夜君の個性について教えてくれないかな?」
本題。
「だーめぇ」
速攻拒絶されるのだった。
「ま、ヒントくらい上げようかな。
僕の個性は世界を統べるにふさわしい個性だよ」
「え、ええ~?」
結局この話は緑谷を呼びにやってきたオールマイトによって中断することとなった。緑谷も気になってはいるようだが言わないと言うならしょうがないかとやっと欲求に理性でブレーキをかける、少し遅いが。
(十六夜少年の個性……か)
この日、疑念の種が二つ落ちたのだった。
緑谷君出すと会話多くなって大変だあ
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