希望と孤独の狭間で…   作:B.delta

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第8話  相談

この数日、とても濃い日々だ。忙しいを通り越してる気がする。

3月に4月分+αのラジオを録音しておいて本当に良かった。

 

今日は臨時休校になったから、バンドメンバーを緊急で集めて相談をする。

メンバーには申し訳ないが、仮病で学校を休んでもらい、俺の家に集合してもらった。

『皆、ゴメンな!いきなり呼び出して!』

「Jackが呼び出すなんて珍しいじゃん」

「Kingの言うとおり、基本さ、緊急集合かけるのってAceだからね〜」

「はぁ?!まあそうだけどさ、突然なんなんだよ?」

「めっちゃ申し訳ないんだけど、ラジオ辞めたい」

「あ、そういう系ね。俺はいいぜ!」

Aceは反対すると思ってたから意外だ。

「僕も、もっと高校生活謳歌したいな〜って思ってたの!バンド活動は続けたいけどね!ラジオは半年でもうお腹いっぱいになっちゃった」

「でた!Queenの飽き性!まあ俺も反対はない!2週間に1回、土日のどっちかつぶれるのは結構キツいし」

「Kingってバイト始めたんだっけ?」

「そうなのよ、一応、バンド以外の社会も知っとくべきじゃん。」

「じゃあ今、親父に電話して5月いっぱいで辞めさせて貰えるようにするわ!」

「さすが!Ace!仕事はやーい!」

「Jackの棒読みがすご〜い」

Queenがツッコミをして、皆で爆笑する。

まあ4月の頭だし、そこまで迷惑にはならないはずだ。

 

そして、Aceが電話をかけて事情を話したあと、あっちで相談しているようで、1時間ほどして電話がかかってきた。

「今度の公開収録で最後になるってさ!ラジオ局の人めっちゃ残念がってたっぽい!最後は2本録るって!」

「ありがと、Ace。お父さんにも感謝言っといて!」

「了解!」

「じゃあ今回の新曲は僕の担当だからね!各自練習よろしく〜!」

Kingからコードと歌詞が渡されて、デモの音源を流される。

「いい曲だね〜!じゃあこれの合わせとかの予定はまた話そ!」

Queenの一言で3人は帰った。

 

 

翌日、

「皆ーーー!朝のHRが始まる、席につけーーー!」

「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ!」

朝から賑やかだなぁ。そんな俺は今日、自分に勝手にミッションを課した!耳郎に公開収録に来てほしいことを伝えるのだ。

「お早う」

「「「相澤先生復帰早えええ!!!」」」

復帰に入るの?あれって?包帯ぐるぐる巻きだよ?

「先生!無事だったのですね!」

飯田、あれは無事とは言わないと思う。

「俺の安否はどうでも良い。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

戦いって、また物騒なことに巻き込まれるのは御免だ。

「雄英体育祭が迫ってる!」

「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」」

絶対1位になって、大量の指名をもらってやる!

 

体育祭は2週間後か…。

俺は朝のHRが終わり、耳郎に声をかけに行く。

耳郎は八百万と話していた。これはちょうど良かった。俺は頭を下げる。

「一昨日は申し訳ない」

俺はあの時、とても混乱していた。酷く感情的になってしまった。

帰宅してからずっと耳郎と八百万に対する罪悪感があり、なかなか寝付けなかった。

このままでは俺の気持ちが晴れないから勇気を出して謝った。

 

「気にしないで下さい。私も迫り過ぎましたわ」

 

八百万は微笑んでそう言ってくれたが、耳郎は俺のことを睨んでる。

 

「ふざけんなよ、うちらのこと助けてくれたのかもしれないけど、同じクラスメイトにヒーロー面されたくない」

 

「すまなかった」

「耳郎さん、私たちにも非はありますわ。」

「そんなのわかってるけどさ…」

「昼、ちゃんと話す」

「二言はないよね?」

「約束する」

俺はどこまで伝えるべきか悩みながら、午前の授業を受けていた。

 

 

 

あっという間に昼休みになってしまった。

今日は珍しく食堂に行きご飯を食べる。

目の前に耳郎と八百万が座り、隣には蛙吹がいる。

「鍵無ちゃん、ごめんなさいね。私も少し気になるの。

あと梅雨ちゃんって呼んで」

ケロケロと笑いかけてくる。

「機会があれば」

「それでいいわ」

 

そして食堂に来ても俺の食べるものは変わらない。すぐに食べ終わる。

「それしか食べないのですか?」

八百万、なんて量を食べているんだ…

「むしろ多いくらいだ」

「それでその身長とか、男子っていいね」

 

耳郎は相変わらず睨んでいる。

「何を話せばいい?」

「鍵無さんの“個性”を教えて下さりますか?」

「分からない。“ロック”だと思ってた」

「分からないってそんな訳ないでしょ!」

「耳郎、八百万、梅雨ちゃん。俺の昔話を少し聞け」

「梅雨ちゃんって言ってくれたわね」

「要望は断る必要はない」

「ありがとう、話してくれる?」

「あぁ、俺は幼少期の記憶がない」

「具体的に何歳ごろですの?」

「10年ほど前だ。俺は俺自身のことを何も知らなかった」

「あら、過去形ということは、思い出されたのですか?」

「そうだ。一昨日、少しだけ」

「何を思い出したんだよ?」

 

耳郎がグッと迫ってくる。

俺は言うべきか結論を出せずにいた。

 

「それは、知らない方がいい」

「朝、話すって言ってたでしょ。話して」

「全て話すとは言っていない」

「ケロケロ、私たちが知りたいの。どんなことでも良いわ」

「本当に良いんだな?」

「えぇ、大丈夫ですわ。私たちはヒーローになるのですから、仲間の過去も受け入れる器はあります」

 

八百万にそこまで言われたらな、不和になるのも避けたいし、オブラートに包んで話そうにも難しいし……

俺は大きく深呼吸をした。

 

「俺はきっとヒーローになれない」

「は?鍵無のネガティブ発言聞きたいわけじゃないんだけど」

「そうよ、鍵無ちゃん。個性把握テスト1位でオールマイトにも勝ったのにヒーローになれないなんて冗談がキツいわ」

「違う、実力の問題ではない」

「では、どういうことですの?」

「俺は“モルモット”だ」

 

3人が凍りついたのが分かった。

 

「ヒーローを消す為の存在と敵は言っていましたね。しかし、鍵無さんはそんなことしませんよね?」

「記憶は戻りきっていない。しないとは断言できない」

「私は鍵無さんを信じますわ」

「鍵無ちゃん、苦しくなったらいつでも頼ってね」

「感謝する。話を変えるが、耳郎、放課後空いてるか?」

「いきなり?空いてるけど、」

「少し話がある」

「はいよ」

俺は食堂を後にした。

 

 

そして放課後、

「カラオケ行く、俺の奢りだ」

「鍵無って唐突すぎるの多いんだけど、なんでカラオケ?」

「ピックの話だ」

「ピックって…、思い出したわ。」

 

そして特に話すこともなくカラオケボックスに入る。

「これを見て、聞いて、耳郎がどう思うかは自由だ。俺はこれに関しての質問には答えない。勝手に想像してくれ」

 

そして俺はギターを取り出す。今日、学校に持ってきたのはサブギターじゃない。ライブで使っているギターだ。

そして面倒だが持ってきたマイクスタンドに、カラオケのマイクをつける。少し合わないが仕方ないだろう。

 

「耳郎のプラグをこのギターの挿せ。この前聞いていたみたいに」

 

耳郎は困惑しながらも、イヤホンジャックを伸ばしてギターに挿す。

そして歌い終わるまでの短い間だけだが、この瞬間から仮面やパーカーはないが、俺はJackだ。スイッチを切り替える。

 

「耳郎響香さんのために歌います!

……… No Point !!!!」

そして今までにないくらい一言一言に想いを込めて歌い終わった。

 

「すまない、プラグを抜いてくれ」

 

耳郎はハッとしてプラグを抜いた。

そして俺はギターやマイクスタンドなどを片付ける。すると耳郎は困惑気味に聞いてきた。

「どういうこと?」

「答えないと言った」

「この前の昼のピックの話は嘘なの?」

「それには答えよう。嘘だ。

しかしピックを俺の所有物だという風に肯定したわけではない」

「3月のjokersのライブには行った?」

「教えない。

そして俺が耳郎を誘ったのは、違う理由だ。

今度の日曜日、jokersのラジオの公開収録があるのは知っているか?」

「知ってる。行こうと思ってた」

「それなら話は早い。絶対行ってくれ」

 

来てくれ。と言ったら俺がJackだという疑いを確信に変えてしまいそうだから、俺は第三者のように装う。

「なんであんたに指示されなきゃなんないんだよ…」

「それも言えない」

「あのさ、鍵無はどんなヒーローになりたいの?

過去は考えなくていいからさ」

「俺がなりたいのは、ヒーローのヒーローだ」

「どういうこと?」

「一般人を守ることもするが、俺はそれ以上にヒーローを守りたい。一昨日のような時に先生や皆を守る存在になりたい」

「ウチはあんたに守られるほど弱く無いから」

「既知の事実だ。俺は耳郎を信頼している」

「あっそ…、てかまだカラオケの時間あるよね、歌お!」

「わかった」

そして俺は耳郎とカラオケで熱唱して帰った。

 

 

 

 

 

そして公開収録本番、

パーカーと仮面をつけて観衆の前に現れる。多くの歓声が聞こえ、俺たちは簡単に挨拶をして席に座る。

「じゃあ収録始めまーす」

 

「皆さんこんにちは、jokersのトランプゲームにお付き合い下さい。

まずはですね、皆さんに重大なお知らせがあります!

jokersのトランプゲームは、5月をもちまして終了させていただきます」

観衆から悲鳴が聞こえる。

「僕たち4人で話し合って決断しました!これからは音楽一本で勝負していきます!これからも応援お願いします!」

Kingがそう述べて、収録は順調に進み1本目の収録が終わって、2本目の収録が始まる。

「じゃあ最終回ですので、ファンの皆さんのお話を直接聞きたいと思いまーす!」

Queenがそう言ってスタッフに適当に何人か連れてきてもらう。

 

その中に耳郎いるとか有りかよ。

 

「俺らに質問をどーぞっ!」

Aceが1人目に質問を聞く。

「仮面を外したお姿を知っている関係者以外の人っていますか?」

「1人目から鋭いのきましたね。皆いませんよ、ね?」

3人も賛同する。目線だけ耳郎に向けるが、下を向いていて表情は分からない。

「では次、お願いしま〜す!」

Queenが2人目を指名する。

俺らは歳に合わず身長が高いのもあって基本は女性ファンが多い。

「あの、好きな女性のタイプを教えて下さい!」

「わ〜お、そう言えばメンバーでもたまに話しますけど、Jackの恋愛話は聞いたことないですね。Jackどうなの?」

King、耳郎がいるのにって俺、どうして耳郎意識してんだ?俺、耳郎が好きなのか?

「Jackさーん、聞いてますかー?」

「ふぁっ!Ace、くすぐるんじゃねぇ!

俺ですか?好きなタイプはツンデレな子ですかね。でも俺不器用なんで、恋愛とか難しいですね。はい、俺言いました!皆も言ってくださね」

そして3人も各々の好きなタイプを言う。そして最後、耳郎に質問する。

『じゃあ最後の子ですね!質問お願いします!』

「素顔を晒す条件ってなんですか?」

「皆そんなに僕らの顔が見たいのね」

「Kingは自意識過剰だよ〜、皆、興味があるだけだよね。」

Queenのゆるいツッコミが入る。

「そういう可能性もあるか、で、条件でしょ?」

『俺はさっき最初に答えたから、今度は1番最後に答えますよ。』

「了解、じゃあ俺からいきますね。」

Aceから3人順番に条件を言っていく。そして俺は耳郎をまっすぐ見る。

『俺の番ですね。何だろな、心から信頼したり好きになった人ですね。』

耳郎の顔が少し赤くなった気がする。

 

そして最後のラジオの収録は終わった。

 

 

 

 

夜、家に帰り耳郎に電話をする。

「もしもし、夜遅くに申し訳ない」

「大丈夫。なんか用?」

「今日、jokersの公開収録にいたな。ありがとう」

「うん、やっぱりさ、鍵無ってJackなの?」

「皆には秘密にしてもらえるか?2人だけの秘密だ」

「わかった。なんか初日と比べてすごく話すようになったね」

「クラスの人間を信頼し始めた」

「なんでウチに正体を明かしたの?」

「ピックに気がついたからだ。細かいところに気がつくほど、耳郎がファンでいることが嬉しかった。だから俺にとって耳郎は特別な仲間だ」

「それだけで正体明かしちゃうの?」

「今回は特例だ」

「そっか、じゃあ夜遅いし切るね。おやすみ」

「おやすみ」

 

俺はしばらく通話が終わったスマホを握っていた。

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