希望と孤独の狭間で…   作:B.delta

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第14話  解放

A組20名は試験を終了した。

爆豪も瀬呂も意識を取り戻し、20人はモニターの前に集められた。

 

モニターには、

13号、

エクトプラズム、

ミッドナイト、

スナイプ、

セメントス、

パワーローダー、

プレゼント・マイク、

イレイザーヘッド、

そして鍵無彗仁が映っている。

 

 

 

モニターの前の根津校長がみんなに声をかける

 

「これから皆には最後の1人、鍵無くんの試験を見てもらうよ!」

 

「校長先生!なぜ鍵無くんが1人なのですか!?理解できません!」

 

「そうですわ!

しかも何もないフィールドで相澤先生が相手にいます。あまりにも無理がありますわ!」

 

飯田と八百万が異議を唱えた。

 

「先生たちの個性は先生たち自身に不利に動くことが多少あったとしても、これは厳しすぎます」

 

加えて緑谷も意見を述べる。

 

はぁ〜、とわざとらしくため息をついた根津校長は言った。

 

「彼は私の前で土下座までしてこうなることを懇願したんだ。

まぁ…事情は複雑なのさ!」

 

「なんでそこまでして鍵無ちゃんは頼んだのかしら?」

 

梅雨ちゃんが首を傾げた。

 

「理解不能」

 

常闇も首を傾げた。

 

「それは戦いを見ればわかるよ。

あ、その前に彼の秘密を少しでも知っている人はいるのかな?

これも彼がお願いしたことだから気にせず手を挙げていいよ」

 

校長のその質問に耳郎、八百万、蛙吹が手を挙げる。

 

緑谷は記憶喪失のことは知っていたが、これは校長の指している秘密じゃないと直感し手を挙げなかった。

 

「どこまで知ってるの?」

 

校長は優しく問いかける。

 

「彼が幼少期の記憶がないことです」

 

「それとUSJの時の敵が言っていた“モルモット”は彼のことだってくらいかしら?」

 

耳郎と梅雨ちゃんが答える。

 

「そうだったのか!?

“モルモット”って確かヒーローを消すためのやつだよな!?」

 

切島は驚きに目を見開き叫んだ。

 

「記憶喪失ってことか?

そーいや俺らが昔の話をしてると寂しそうな顔してたな、わりぃことしたぜ…」

 

瀬呂が斜め下を見ながら頬をかいた。

 

「で、でもよ、あいつ今はヒーロー目指してるんだぜ。

敵堕ちとかないよな?」

 

ビビりながら上鳴が言った。

 

「ええ、そう信じたいです。

でも記憶が戻ればそれは分からないと、鍵無さんは言っていました。」

 

「大丈夫。

彼は昔の人格が今の人格と混ざる未来を不安には思っているけど、少なくとも今はヒーローを目指していると私に明言したよ」

 

八百万の話に間髪入れずに校長は補足をした。

 

「今の話は俺らと何の関係がある?」

 

「あんなヤツの試験なんて見たくもねェよ!!」

 

轟と爆豪はいかにも不機嫌そうに校長に聞いた。

 

「僕たちが彼の試験を見ることとのつながりは何ですか?」

 

「それは私も知りたい!」

 

続けて尾白と葉隠も聞くが、校長は笑うだけで答えてはくれなかった。

 

「それは見てからのお楽しみさ。

 

あと、彼は君たちと違って脱出は認められない。絶対に先生を確保しなければならない」

 

「無理だね☆」

 

謎の決めポーズをとりながら青山が言う。

 

すると根津校長はふふふと笑いモニターの先のフィールドに向かってアナウンスをした。

 

「先生たち、彼のことは敵だと思ってね。

全力で殺しにいっていいよ。

それが彼の願いだから…」

 

それを聞いた先生たちは驚いているが、根津校長は続ける。

 

「気をつけてね、彼が10年前の殺人鬼だから。その力は使わないって約束はしてあるけど、君たちの立場が無くなるくらいには暴走するかもよ!じゃあね!」

 

そしてそのアナウンスを目の前で聞いていたA組のメンバーに波紋が広がる。

 

「10年前?殺人鬼?」

 

芦戸が混乱しながら、今の衝撃フレーズを声に出した。

 

「何で殺人鬼がヒーローなんて目指してんだよ!?

そんなヤツヒーロー失格だろうが!!!」

 

「オイラはそんなヤツと過ごしてたくないぞ!」

 

爆豪はいつも以上に怒鳴り、峰田も強気で非難する。

 

「今回ばかりは彼らの言う通りです!

申し訳ないですが、彼にヒーローとしての権利は無いと思います!」

 

飯田はステインのこともあったので心底腹立たしそうに言った。

 

「怖すぎんだろ!!」

 

「俺らも殺されるかもしれない…」

 

「捕まらないのか?」

 

「え?意味わからんのやけど、」

 

上鳴、障子、砂藤、麗日と次々と非難や困惑の声が上がる。

 

みんな声を出さずとも手を握りしめたり、歯を食いしばって俯いたり、認めたくない気持ち半分と見損なったという思い半分でいた。

 

耳郎は絶対何かの間違いだと思ってた。

鍵無彗仁に誰かの命を奪うことはできないという謎の確証があった。

 

するとドアが開いた。

 

「私がきた!!

私から鍵無少年を擁護させてもらう!」

 

オールマイトが現れた!

 

「実は彼が土下座してきたとき、オールマイトもいたから、彼も事情は知っているんだよね」

 

「校長先生の話に付け加えさせてもらうが、鍵無少年は土下座をして、涙を流しながら、私たちに懇願してきた!」

 

校長もオールマイトも、

何かもっと違うことを知っているかのようだった。

 

「泣いたからって認めれるわけがねェだろーが!」

 

「爆豪少年。

では彼がどうして泣いていたのか、その理由は考えたのか?」

 

「っんなもん知るかよ!」

 

「では……、少年少女たちよ。考えてほしい。

いきなりヒーローを消すための兵器という事実を叩きつけられ!そして!半強制的に自分が殺人鬼であることを思い出させられた鍵無少年の気持ちを!

確かに!鍵無少年のやったことは許されることではない。例え記憶を失っていたとしてもだ!

だが、それはっ!鍵無少年が1番深く知っている!真実に苦しみ、葛藤している!

自分が手にしている個性を恐れながら、それでもヒーローになりたいと思って、弱いところを一切見せずに、この一ヶ月、我慢してきたんだ!

 

少年が泣いて、土下座までして頼んだこと、それはこの戦いではない!

 

退学だ!!鍵無少年は、君たちの真っ直ぐな姿を見て耐えられなくなったと言っていた」

 

A組の全員はオールマイトの言葉に驚きを隠せない。

 

「では何故!退学をお認めにならなかったのですか?!」

 

飯田が叫んだ。

 

「君たち、さっきの話を思い出してよ…

彼はまだ自分の名前も、生年月日も、出身も、両親や親族、記憶と共に封印された本当の個性、そして性格も思い出していないんだよ?

 

それに彼は思い出してすぐに警察に自首してる。

でも、

“ただ殺意があった”

“消えろと思ったら全員死んでた”

“部屋の物もどこかに消えた”

“理由までは思い出せない”

それだけだよ?

 

証明できないし、5歳児がやったことだから逮捕はされなかったらしいね。

 

まあヒーローを目指す気持ちを強く持っているのに、事実だけ突きつけられ追い詰められた彼に私は同情したのさ」

 

「そういうことだ!

 

A組の少年少女よ!どうか思い出してくれ!

今はただの心優しき少年なんだ!

 

少年は、警察に捕まることもできない、この学校にいる資格も無い、退学できないくらいなら殺されたい!と泣き叫び、全力で頭を下げたんだ!

 

職場体験から戻ってきて、鍵無少年は爆豪少年に殺してみろよと言った…。

私があの時、気がついてあげれたら!

少年はどれほど救われただろうか…?

 

責めるならこの私のことも責めなさい!」

 

「これは私が彼に無理やりやらせる試験だよ。

彼には君たちに精一杯のメッセージを送ることを命令した。

思い出した個性を使って、全力を出したら退学を考えてあげるって言ったら渋々頷いてくれたよ」

 

 

根津校長はそのままマイクに向かって

 

  「試験始め」

 

と言って、鍵無の試験は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

早速セメントスにより、鍵無は手足を拘束される。

 

そしてスナイプが銃弾を打ち込む。しかし硬いものに当たった様に銃弾は弾き飛ばされる。

 

「あ、あれは、俺の個性…?どういうことだよ!」

 

切島がさっきよりも目を見開き大声で言った。

 

すると鍵無から4本腕が生えてきて拘束されている壁を破壊した。

 

「複製腕を出しただと…?」

 

鍵無から生えてきた腕は消える。

 

すぐに追い討ちをかけるようにセメントスは鍵無を閉じ込めるようにドームを作り、ミッドナイトの眠り香がドームの中を蔓延する。

 

しかし…

BOOOOOM!!

 

「ッチ!体育祭の時も!なんで俺の個性を使うんだよ!クソが!」

 

そして、鍵無はセメントスとその他に分断する氷の壁を作った。

 

「俺の個性か」

 

そしてセメントス、パワーローダー以外の先生は影と戦っている。

13号は吸い込むことができない。

 

「あれは黒影か…?」

「ホトンドイッショダゼ!」

 

パワーローダーが鍵無の真下から攻撃したが、鍵無はそれを避けパワーローダーに触ればパワーローダーは浮いた。

 

「あれは私の個性やね!」

 

そして浮いているパワーローダーはすごいスピードで蹴り飛ばされる。

 

「あの速さは、エンジン…」

 

蹴り飛ばされたパワーローダーには何やら黒っぽい球体がついており、そのまま壁に張り付いて動けなくなった。

 

「オイラのグレープ!」

 

また最初からではあったがエクトプラズムの分身は鍵無に攻撃しているし、

プレゼント・マイクの爆音も響いている。

 

それをずっと避けていながら1人目のダウンを奪ったのことに皆驚いている。

 

そして鍵無は尻尾を生やし、分身を一掃し、孤立させたセメントスに向かって行く。

 

「全く同じ尻尾だ…」

 

尻尾は消える。

 

すぐにセメントスは壁を作って接近を拒むが、強力なパンチで吹き飛ばす。

 

「多分、今のパワーは俺の個性だ」

 

確実に距離は縮まり鍵無はレーザー光線を出し残りの壁を一掃する。

 

「輝いてる☆」

 

砕けてからは一瞬だった。鍵無は目にもとまらぬスピードでセメントスにハンドカフスをつける。

そして、消えた。

 

「服まで透明化できるんだ…」

 

次に現れた時にはプレゼント・マイクの真後ろだった。

 

鍵無はそのままあっさりとプレゼント・マイクにハンドカフスをつける、そして同様にスナイプも捕まえてから、

剣を創造する。

 

「私の個性ですわ、」

 

そして鍵無は巨大なエクトプラズムのジャイアントバイスに斬りかかり炎を出した。

火炎斬りのような感じだ。

 

あまりにも炎が大きすぎて発動していた影は消えてしまったが、黒こげになったエクトプラズムにはハンドカフスが付いている。

 

「もう半分も使ったか」

 

残る先生は3人となった。

イレイザーヘッドに見られてるはずなのに、自在にA組メンバーの“個性”を使っていく。

 

ミッドナイトがムチで攻撃するが、鍵無はそれを掴み、電流を放出した。

 

「ウェイ!俺の個性だ!」

 

そしてミッドナイトはテープで全身を拘束された。

またハンドカフスもつけられる。

 

「俺の代わりに使ってくれたぜ…」

 

鍵無は舌を伸ばし、13号を引き寄せる。

 

「私の舌と同じね。吸い込まれないのは不思議だけど、」

 

鍵無の耳は変形し、ジャックが伸びて13号に突き刺さる。

そのまま悶え始めた13号はハンドカフスをつけられてしまった。

 

「ここで使うのかよ」

 

鍵無の耳は元に戻った。

残る最後の1人はイレイザーヘッドだ。

鍵無はあっさりと捕まってしまった。

しかし、イレイザーヘッドの武器は溶けて、拘束は解かれてしまった。

 

「先生の武器溶かせるのー!?」

 

そして飛んでいる鳥がイレイザーヘッドのゴーグルを取ってしまった。

 

「僕と同じことができるんだ…」

 

これでわかる。

イレイザーヘッドは確実に鍵無を見ているのだ。

 

鍵無は一気に距離を詰めてイレイザーヘッドをぶん殴り、吹き飛ばした。

 

 ((あれはワン・フォー・オール…))

 

イレイザーヘッドは瞬きしていなかった。

“個性”は本来なら消されていたはずなのに…!

 

鍵無は、はりついているパワーローダーと、ブッ飛ばされたイレイザーヘッドにハンドカフスをつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。試験終了ね!

君、モニタールームまでおいで!

 

オールマイトは先生たちをリカバリーガールまで連れて行ってあげて!」

 

校長の一言でオールマイトはモニタールームを出て行く。

するとすぐに鍵無が入ってきた。

 

「校長先生。これで俺はたいがk……、

なぜここに皆がいるんでしょうか?」

 

「君のことは話させてもらったよ。」

 

「内密にすることをお願いしたはずですが…、

あ、ごめんね、皆、話は聞いたと思うけど、俺、学校退学するから…」

 

「それは君の仲間が決めることだよ。」

 

「話が違うじゃないですか!」

 

すると爆豪が鍵無の前に行き、思いっきりアッパーをくらわせた。

 

「どうせ、全然痛くねェんだろ!この眼帯野郎がっ!

勝ち逃げは許さねェ!俺に負けるまで退学なんてさせねぇよ!バカが!」

 

すると緑谷も近くに行く。

 

「かっちゃんの言う通りだよ。僕も君にまだ勝ってない。

それに僕は鍵無くんはもう二度と同じ過ちを繰り返すことは無いって信じてる!

さっきの戦いで、君は僕たち一人一人の個性を全部使って先生たちに勝った。

 

イレイザーヘッドに消されなかったのは不思議だけど、その理由はきっと分からないんだろ?

だから僕らは何も聞かない。

 

君は最後のお別れのつもりだったのかもしれないけど、僕にはそれが君の“ヒーローになりたい”って叫びに見えた。」

 

そして緑谷は、皆の方を振り向き問いかけた。

 

「皆、鍵無くんの退学は認めないことに異論ある?」

 

誰も返事をしない

 

「これでハッキリしたな!

おい立てゴラァ!

 

誰もテメェのことは責めねぇよ!

どーせ、テメェみたいなバカのことだ、勘違いでもしてんだろよ!」

 

鍵無は無言で立った。そして頭を下げて、

 

「ありがとう…」

 

と呟いた。床にはポタポタと水滴が落ち、水たまりができる。

 

A組はその後、鍵無を殴りたい奴はぶん殴り、(どうやら全員一発は入れたようだ…)今日の出来事は忘れて、明日からまたやっていくということになった。

 

また、先生たちは大した怪我はなく、リカバリーガールの軽めの処置だけで十分だったそうだ。

 

 






「校長いいんですか?

“10年前の殺人鬼”は表の事実、本当のこと伝えないのは合理的じゃなかありませんかねぇ?」

校長は紅茶を一口飲んでから言った。

「相澤くん、彼がこれを嘘だと言ってきたときは…

───目覚めてしまったということだ。

敵連合全員よりも圧倒的に脅威的な“個性”は思い出させない方が安全だと思うよ?」

「そうですか…
これが悪い方に転がらなければいいですけど…」
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