希望と孤独の狭間で…   作:B.delta

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第19話  入寮

入寮の日、

 

“ハイツアライアンス”

これが俺らの新しい家か…

 

A組は皆揃ってる、

それは敵の襲撃や、爆豪の拉致があった俺らにとっては奇跡なんだろうと思う。

すると相澤先生が来た。

「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ。」

まあ皆、許可を取ることは大変だったんだろう。俺だって簡単じゃなかった。でも怪我の原因が原因なだけあって、親は雄英を責めるわけにはいかず、次に自傷行為をしたら施設に送るという条件で同意してくれたんだ。

「無事に集まれたのは先生もよ、

会見を見た時はいなくなってしまうのかと思って悲しかったの。」

「うん」

梅雨ちゃんの考えに麗日が共感する。俺も謝罪会見をちょっとだけ見たが、メディア露出の少ない先生が、あんなに多くのカメラを前にして話す姿に別れを感じずにはいられなかった。

「……俺もびっくりさ。

まァ…、色々あんだろうよ。

さて……!

これから寮について軽く説明するがその前に一つ、

当面は合宿で取る予定だった“仮免”取得に向けて動いていく。」

あー、そんな話あった気がする。

 

「大事な話だ。いいか。

轟、

切島、

緑谷、

八百万、

飯田、

この5人は、

あの晩あの場所へ爆豪救出に赴いた。」

……は?爆豪はプロヒーローが助けたんじゃないのか?

「その様子だと、行く素振りは皆も把握していたワケだ。」

何だそれ…?何やってんだ?よりによって真面目な八百万や飯田まで……。

「オールマイトの引退がなけりゃ俺は、

爆豪・耳郎・葉隠・鍵無以外全員除籍処分にしてる。

 

彼の引退によってしばらくは混乱が続く…

敵連合の出方が読めない以上、

今、雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ。

 

行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった12人も理由はどうであれ、

俺たちの信頼を裏切った事には変わりない。

正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。

 

以上!

さァ!中に入るぞ、元気に行こう」

 

(((((いや待って、行けないです…)))))

 

おっもい雰囲気だ。俺はもっと暗い雰囲気にさせたことがあるから、平気というほどでは無いが、それでも中に入る元気はあるので寮に向かって歩こうとしたとき…

「来い」

「え?何、やだ」

爆豪が上鳴を引っ張っていく。

 BZZZZZ

「うェ〜〜〜〜い…」

アホになった上鳴!面白い…、

あ、耳郎がめっちゃツボに入ってる。かぁいい…

すると何やら切島が爆豪に金を渡されてる。

「皆!すまねえ…!!

詫びにもなんねえけど…

今夜はこの金で焼き肉だ!!」

 そうか、食事も一緒になるのか…

耳郎が過呼吸になりそうなくらい、ヒーヒー言ってるから、俺は『笑い死にはすんなよ、』と背中をさする。

 

そして寮に入り説明が始まる。

「1棟1クラス、右が女子棟、左が男子棟と分かれてる。

ただし一階は共同スペースだ。

食堂や風呂・洗濯などはここで…」

やばい。広すぎだぜ…

そして二階に行く。

「部屋は二階から、

1フロアに男女各4部屋の5階建て、

一人一部屋、

エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ。」

ベランダまであるのか。

さっきから麗日が「豪邸やないかい…」とツッコミをしながらフラ〜としているが、全くその通りだ。

「部屋割りはこちらで決めた通り」

5階の1番奥の部屋か…、遠い。

「各自、事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってるから、

とりあえず今日は部屋作ってろ、明日また今後の動きを説明する。

以上解散!」

『「「「「ハイ先生!!!」」」」』

 

 

 

俺は部屋の準備を始める。

俺は編曲機材とギターを3本、大量の本などを片付ける。

作曲用のPCとソフトウェア、そしてそれ用の机を設置して、機材を接続する。ヘッドフォンやオーディオインターフェイズ、スピーカー、MIDIなどたくさんあるから大変だ。

…なんとか部屋作りが終わった。

 

 

俺は座布団に座り、林間合宿や病院で言われたことを思い返す。

 

俺はヒーロー抹殺兵器、名前は“Henker”(処刑人)

そして本当の名字はHunter…

林間合宿での暴走の原因、

それは個性を伸ばすトレーニングで頭を使いすぎて思考力が落ちていたこと、耳郎や葉隠などの仲間を傷つけられたことに対する怒り、敵との対峙による闘争本能の目覚めなどで、“Henker”としての俺が呼び戻されそうになったことだ。

しかし、ギリギリのところで自分自身を刺すことによって気を失い、何とかそれを阻止した。俺にはそれ以外に方法は思いつかなかった。

今の俺は、過去の俺、そう、あの幼い少年からしたら邪魔な存在…

一瞬でも油断をしたら、今の俺は消える。

一緒に溶けあえればどうなるのだろうか…

 

そして病院での診察で、痛みを感じていないことが告げられた。

これまで痛いと思ってきたのは全て錯覚のようなものだったのだ。

原因は不明らしいが、俺は過去の人体実験によるものだと思う。そして他にも異常があるのか色々と試したところ、眠らなくても疲れは感じないし、食事もほとんど無くて生きていけることがわかった。

つまり俺はサイボーグに近い。いやほとんど機械と変わらないのかもしれない。

 

 

あれこれ考えていて、気がつけばもう夜になっている。

これ以上は考えるのも大変だし、作曲でもするか…

イスに座りデスクに向かって作業を始める。

 

 

コンコン…

誰だ…?何の用だろう?

『開いてるから、どうぞ!』

ドアが開くと、クラスメイトがいっぱいいる。

え、何でクラスの人いっぱい来たの!?

俺は慌ててヘッドフォンを外し、作曲機材ににカバーをかける。

 

「部屋王だよ!A組の皆の部屋のセンスを競ってるの!」

『あ、そうなんだ…』

芦戸に説明され理解する。

そして皆ぞろぞろと部屋の中に入ってくる。

すると一斉こっちを向いてきて叫ばれた。

「「「「「ベッドは?!」」」」」

『無いけど…』

「しっかりとした睡眠は重要だぞ!」

飯田が指摘してくる。

『イスで寝るから大丈夫。一応布団は棚に入ってるよ。』

「こっちの鉄パイプは鉄棒か?」

瀬呂がぶら下がってる。

『そうだよ、トレーニングに使うんだ。』

「トレーニング?!見せてくれ!」

切島にがっつかれて、仕方なく縦に設置した棒に捕まり、地面から足を離して横向きの状態をキープした。

「え、どうなってんだ!重力かかってんのか?」

切島や上鳴が下を見るがもちろん何もないに決まってる。そして地面に足をつけた。皆、同じことに挑戦しようとするができない。まあ簡単にされたら困る。結構なトレーニングの賜物なのだ。

「そーいや、部屋に入った時、すごい速さで何か隠したけど、エロいもんでも隠したのか…?」

うわ、峰田に目をつけられたとか辛すぎでしょ…

『おまえと違って断じてそんなことはない。』

「じゃあ見せろ!」

そう言ってカバーを外されてしまった。こうなったら趣味で押し通す。

『俺の趣味は作曲なんだ、内緒にしたかっただけだよ…』

「よく見たらギターとかキーボードもあるね!」

『あ、女子たち!そのキーボードは触らないでくれ、まだ作曲が途中だから触られるとキーが入力されちゃうんだ。』

「作曲してるとこ見たい!」

『それは今度でお願いします…』

作曲機材や楽器を見る耳郎の目が輝いていて、音楽好きなんだなって深く感じた。

そしてもうしばらく部屋を見られたあと、

「じゃあ次は女子棟行こう!」

と、皆去っていった。

 

そういえば梅雨ちゃんがいなかったな、珍しい。

俺は皆の後ろについて行き、耳郎の部屋だけ一瞬見たあと、梅雨ちゃんの部屋をノックした。

『俺だ。鍵無だ。』

すると少しだけドアが開く。

「ちょっと気分が優れないのよ…」

何となく嘘な気がする。

するといつもの知ってしまう現象が発生する、一気にあの晩の出来事というのが頭に入ってきた。

梅雨ちゃんは強めの言い方で皆を止めたのか……、でも彼らは行ってしまった。

『本当は違うんだろ?

俺、聞いたんだ。梅雨ちゃんは皆を止めた。』

「鍵無ちゃん、私ショックなのよ。」

『大丈夫さ、話せば必ずその思いは届く。

ごめんな、俺がいれば殴ってでも止めたのに…』

「いいのよ、今は嫌な気持ちが溢れちゃってるの。」

『そっか、訪ねてすまなかったな、

俺は梅雨ちゃんの強さをすごいと思う。それにあいつらは、その思いを蔑ろにしないって信じてる。

何とかなると思うぜ、じゃあまた明日な』

「そうね…」

俺は部屋に戻った。

 

 

俺だって苦しい。

クラスメイトにリスクを負わせた。いや、犯罪紛いのことをさせたんだ。

俺は止めることさえできず、ただ眠っていたのだから情けない。

 

俺は作曲を続ける気にはなれず、喜劇を読み始めた。

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