待ちに待った入学式の日が来た。
俺は持ち物を確認して家を出る。無駄に心配性で鍵がかかっているか何度も確認してしまう。
歌にできる光景はないか、そんなことを考えながら登校していた。
そして着いた。
俺が、jokersのJackではなく俺として輝く最高のステージだ。
クラスは1-A
扉が大きすぎる。倍率といい、この扉といい、規格外なものばっかりだ。
教室には一番乗りのようだ。
本を開いて読み始める。1時間あれば300ページくらいの文庫本は余裕で読み終わる。
本を読んでいたら、入試で質問していた度胸のある人が入ってきた。
「読書中すまない!
ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
俺は笑い、座ったままペコとお辞儀をしてまた本を読んだ。
「日本語はわかるのだろう?君の名前を聞いてもいいか?」
「鍵無彗仁」
「鍵無くんか、よろしく頼むよ」
俺は笑顔でうなずいた。
その後、多くの人が教室に入ってきた。
「おはよ、鍵無」
耳郎が挨拶してきた。俺は本を閉じて笑ってお辞儀する。
すると別の人が話しかけてきた。
「私は八百万百と申しますわ。読んでいらっしゃる本は何という本ですの?」
あぁ、俺が読んでいる本がドイツ語だから理解ができないのか。
俺が読んでいるのは“ La Nausée ” だ。つまりJ.P.サルトルの“嘔吐”だ。
「ジャン=ポール・サルトル」
「まあ、哲学がお好きなのですか?ちなみにサルトルの何という本ですの?」
サルトルを知っているのか、素晴らしい知識だ。
「嘔吐」
「朝からどんな本読んでるんだよ」
耳郎がそう言ってきた。まあ無理もない、題名的には朝の清々しい時に読むものではない。
「ところでお二方、お名前を伺っても?」
「ウチは耳郎響香、よろしく」
「鍵無彗仁」
「よろしくお願いいたしますわ」
いつものように笑ってうなずく。
そして2人とも席に着いたようだ。
すると後ろから、
「朝から女子に声かけられるの羨ましい〜」
って背中をツンツンしてきたから振り返った。
「めっちゃイケメンじゃん、てか眼帯してんの?入学前に片目怪我するとかやばくね。あ、俺は上鳴電気ね、よろしくー!」
「鍵無彗仁」
「てか、身長めっちゃ高いな!何センチあんの?」
「190cm」
「高すぎだろ、いいな〜、いろいろ羨ましいぜ!」
すると横で何やら言い争いのようなものが発生した。
最初に話しかけてきた飯田と、知らない人だ。
誰だか知らないが、随分口が悪い。
その後、挙動不審な子が入ってきた。
そして気がついたら、
(((((なんか!いるぅぅ!)))))
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。
時間は有限、君たちは合理性に欠くね。
担任の相澤消太だ。よろしくね」
(((((担任!?)))))
よろしくねってなんかかわいい。見た目に反している。
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」
いきなり体操着着てやることって……
入学感なさすぎる。やることも規格外か。
そして着替えて外に出る。校庭広すぎる。
そんでやることって
「「個性把握…テストォ!?」」
なんかみんな驚いている。俺は驚きはしたが、想定外ではなかった。
「入学式は!? ガイダンスは!?」
誰かが質問している。
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」
「……!?」
「雄英は“自由”な校風が売り文句。そしてそれは“先生側”もまた然り」
(((((………?)))))
みんな理解してないな、俺も同じだ。先生が何を言いたいかよくわからない。
「ソフトボール投げ、立ち幅とび、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈
中学の頃からやってるだろ?
“個性”禁止の体力テスト
国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。
合理的じゃない。
まぁ、文部科学省の怠慢だよ。
爆豪 中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」
「67m」
「じゃあ“個性”を使ってやってみろ、円から出なきゃ何してもいい。早よ。
思いっきりな」
ふーん、俺も興味あるわ。なんかあいつ威勢が良いから、これで微妙だったら残念。
「死ねえ!!!」
(死ね?)
めっちゃ口悪いなぁ、
「まず自分の“最大限”を知る」
ピピッ
705.2mか、まあまあだな、個性使って1km飛ばないんだ。
「それがヒーローの素地を形成する、合理的手段」
「なんだこれ!!すげー面白そう!」
「705mってマジかよ」
「“個性”思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」
いや、面白くはない。今現在、先生の顔が全く面白くない。むしろ嫌な予感がする。
「………………面白そう…か」
あ、やっぱり地雷踏んでる気がする。
「ヒーローになる為の三年間」
「!?」
思った通り、スイッチがお入りになられた。
「お前たちはそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?
よし
トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、
除籍処分としよう」
「「「「「はあああ!?」」」」」
「生徒の如何は先生の“自由”
ようこそ。これが、雄英高校ヒーロー科だ」
最初から刺激が強すぎるよ。
まあ俺は個性を使う必要はあまりないというか、使えなさそうだ。
先生の自由ってそういうことだったのか、
さすが抹消ヒーロー、イレイザーヘッド。って俺は何で知っているんだ?見たこともないのに、何故…だ……、うぅ、頭痛が…
「最下位除籍って…!
入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…理不尽すぎる!!」
誰かの抗議の声でハッとする。
「自然災害…大事故…身勝手な敵たち…いつどこから来るかわからない厄災。
日本は理不尽にまみれてる。
そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。
放課後マックで談笑したかったならお生憎。
これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。
“Plus Ultra”さ。全力で乗り越えて来い!」
気合入れてやりますか。
「さてデモンストレーションは終わり
こっからが本番だ。」
第1種目は50m走か、
「おい、鍵無、ちょっと来い。」
先生からのお呼び出し…
「お前、首席だから1人で走れ。」
「ハイ」
普段はうなずくけど、先生に何言われるかわからないから、しっかり返事をした。
そして最後にされる。
みんな色んな個性使って頑張ってる。
そして俺の番。
「ヨーイ… START!」
たったの50m。何をみんなムキになっているんだろう?
こんなの、一瞬だ。
ピッ 1.03秒
あ、みんな固まってる。先生も驚いてる…?
第2種目は握力か、どうやら八百万が万力使って握力計を壊していた。それによりみんながザワザワしている。しかし万力使う必要性が理解できない。そんなにこの機械を握り潰すのは難しいことじゃない。
ベキッ
みんなの視線が集まる。
「左」
そう言って左手の分も貰う。みんな見てる。
ベキッ
あ、これはドン引きってやつだ。当たり前のことをしただけなのにな、なんでだろう。
第3種目は立ち幅跳び。
これも、そこまで個性を使う必要はない。
ただ跳躍するだけ。
踏みこんで、跳ぶ!
そして着地する。
126m
まあそんなものだろう。助走があればもっと跳べる。
第4種目は反復横跳び、瞬発力には1番の自信がある。
254回
もっとできた気がする。
第5種目、ソフトボール投げ。
すごい!∞なんてあるんだ。それは流石に無理……、いや、まてよ、これならどうだ?
考えていたら、挙動不審な子が投げた後に、何やらブツブツ言って先生にも何か言われている。
指痛そう。
その後、口の悪い人と衝突があったみたいだ。
俺は策を練っていたからあまり分からない。
俺の番だ。
まずはボールを檻に閉じ込める。
「セーフか?」
先生に確認。
「ボールに鉄格子なんかつけてどうすんだ?まあ良いだろう」
そしてそれを檻でまた閉じ込める。
俺の個性でできた檻には2種類ある。どちらにしろ、外部からの個性は受け付けない。中に入れば絶対に安全だ。違うのは中だ。個性を使用できるかできないか。
そして1個目のボールを囲った檻は適当だが、2個目の鉄格子のついたボールを囲った檻は中も個性を受け付けない檻だ。
つまり、鉄格子付きのボールは反発し、檻の中で浮く。
そんでその檻ごと投げる!!
これでボールは一生地面には着かない。
ピピッ ∞
やったね!無限って気持ちがいい。
「すごいやん!絶対∞なんて私にしか出せないと思っとったのに!」
俺は軽くお辞儀をする。
唯一のことをされるのは悔しいので負けず嫌いの性が出たのだ。
「私 麗日お茶子よろしく!」
「鍵無彗仁」
「そっか〜!持久走頑張ろうね!」
俺は笑顔で親指を立て、うなずいた。
第6種目は持久走。1500mだ。
カーブがあるから少し走りづらい。これは半分に分けて、一斉にスタートするようだ。
俺は後半組。前半の人たちが終わったようだからスタート位置に着く。
「ヨーイ、START!」
1歩目で全員抜き、そこから独走。やはりカーブは難しい。
12.8秒でゴールした。もうみんな驚かない。
第7種目は上体起こし、ペア無しだからなんとかしろって、やはり理不尽だ。仕方ない、自ら足をロックする。そして爪先を地面に埋めて固定した。
起きて寝るの繰り返し、正直腹筋鍛えていた者勝ちだろ…
51回しか出来なかった。
そして最後、
第8種目は長座体前屈、普通にやるしか無い。
83cm
これがすごいのか俺には分からない。
そして結果発表だ。
「んじゃ、パパっと結果発表。
トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。
口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。
ちなみに除籍はウソな。
君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「はーーーーーー!!!!??」」」
騒がしい。そんなことだとは思ったよ。
結果が表示される。
俺が1位だ。推薦入学者2人は2、3位だから、ってさっきもあったが、なんで知っているんだ……。
でも、きっと深く考えてもさっきみたいに頭痛がするだけだ。
少ししっくりきていないが、あのひどい頭痛に耐えるくらいなら考えない方が、先生の言葉を借りれば、“合理的”だと思う。
俺はその後、多くのクラスメイトに話しかけられた。保健室に行った挙動不審な人と、口が悪い人以外だ。
そうして俺の雄英高校の初日が終わった。