朝、通学用のリュックとは別にギターケースを背負って学校に行くと校門の前にすごい人だかりがあった。
「教師、オールマイトについて一言!」
マイクを向けられるが無視する。
教室に入るとみんな朝なのに疲れているように見える。雄英がハードだからか?もしくは今朝のマスコミか。
そして俺は席に着く。すると緑谷が話しかけてきた。
「あ、あのさ。オールマイトに勝ったんでしょ?すごいね!あっ、いきなりごめんね。僕は緑谷、よろしくね!」
「鍵無彗仁」
「鍵無くんか、よろしくね!あのさ、差し障りがなければで良いんだけどさ、鍵無くんってハーフ?」
「あっ、それ私も気になってた〜!昨日すぐ帰っちゃうし、ちょっと話聞かせてよ!」
芦戸がいきなりやってきたせいで皆寄ってきた。
「昨日、顔が怖すぎるって言ったの気にしてたらごめんね」
葉隠が手を合わせて謝っているから俺は笑顔で顔を横に振る。
「それで機嫌悪くして帰ったのかと思った。良かったぜ、気にしてなくて」
瀬呂を含め緑谷以外はほっとしているようだ。
「話それちゃったけど、ハーフなの?」
尾白が話を戻した。俺は再び顔を横に振る。
「えっ、じゃあ出身どこなの?」
芦戸が聞いてくる。
それは俺が聞きたい。俺が一体何者なのか。何で日本にいるのか。あぁ、クソッ、また頭痛がする。それにひどい耳鳴りもする。
「鍵無ちゃん、顔真っ青よ」
蛙吹が心配そうに見ている。それで我に戻ると、嘘のように頭痛や耳鳴りは消えた。
「ごめん!体調悪いのに話しかけちゃった!」
緑谷が慌てている。
「大丈夫」
「やっと喋ったよ…」
耳郎がやれやれとため息をついた。
すると、頭痛の和らいだ俺に気がついた蛙吹が安心したように言った。
「顔色、大丈夫になったみたいね。鍵無ちゃん、日本語が苦手なわけじゃないんでしょう?」
「じゃあ普通に声出せよ…」
俺が蛙吹の言葉に頷いていたら、耳郎がまたため息をついて言ってきた。
「誰にでも苦手なことはありますわ。日本語で話すのにまだ自信が無いのでしょう?」
八百万が擁護してくれて助かった。
自信が無いとか、そういうことではないが、複雑になるのは面倒だからうなずいておく。
「そうだったのか!じゃあ俺らがたくさん話しかけてあげた方が、早く日本語に慣れるし、俺らも鍵無のことが知れて一石二鳥だな!」
切島……、お前はいいやつだ。
しかし正直俺はあまり人と関わりたくない。
正確にはヒーロー志望者とだ。ヒーローが溢れている時代にヒーローを目指す俺らは仲間ではあるが同時にライバルだ。だからあまり関わりは持ちたくない。
「じゃあ出来る限りでいいから声出せよ」
上鳴が笑いかける。だから俺も笑ってうなずいた。
「いや、そこは声出そうぜ〜」
上鳴がしょぼんとして、瀬呂が爆笑してる。
普通に友達としては、良い人だらけだ。
すると、相澤先生が来てホームルームが始まった。爆豪や緑谷が注意されている。俺はどう相澤先生の目には映ったのだろうか?
「さてHRの本題だ。急で悪いが今日はお前らに…」
みんな何を言われるかビクビクしているだろう、俺もだが。
「学級委員長を決めてもらう」
「「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」」
みんな自分が自分がと手を挙げる。
確かに他を牽引することによりヒーローの素地を鍛えることはできるのだろうが、俺がなりたいのは皆で協力などをするヒーローではない。では敵や災害を1人でどうにかするのか?と聞かれればそれも違う。なりたいヒーロー像はもう決めてある……。
すると飯田が
「静粛にしたまえ!!
“多”を牽引する責任重大な仕事だぞ…!
『やりたい者』がやれるモノではないだろう!!
周囲からの信頼があってこそ務まる聖務…!
民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…
これは投票で決めるべき議案!!!」
「そびえ立ってんじゃねーか!!何故、発案した!!!」
まじで、投票とか本当に嫌なんだけど…。少なくとも俺は誰でもいい。
そして投票が行われた。まあ適当に今日話しかけてくれた緑谷にするか……。
「僕 4票ーーーー!!!?」
めっちゃうるさい。
素質とか抜きに選んだのだが、まずかったか。
そして昼になったから俺は昨日と変わらない昼食をとりギターを弾く。
ヘッドフォンアンプをして、適当に弾いている中で、耳に残るいい感じのメロディーを模索する。
このギターはいつもライブで使っているのとは違うギターだから耳郎には俺がJackということはわかるはずもない。
良いと思うメロディーはメモにコードを書いておく。
基本はその時しか目を開かず、目を閉じて良い音を探す。
あ、この感じいいな、そう思ってコードをメモしようと目を開くとそこには耳郎がいた。
「CDショップで会ったとき、ギター背負ってたから気になってたんだけど、あんたギター弾けるんだ。」
俺はヘッドフォンアンプを外し答えた。
「そうだ」
「ちゃんと声に出して返事できんじゃん。
普段からしろよ。にしても、あんたの音、今聴いてたけどすごい良い音だなって思った。」
「ありがと」
ん、聴いてた?どういうことだ。俺はヘッドフォンアンプをしていたし、エレキはアンプ無しではそんなに綺麗に聞こえないはずだ。
「何故、聴こえる?」
「うちの個性、昨日の訓練の時に見てないの?」
「他を知る必要ない」
「意味わかんな。他人に興味がなくて、ヒーローなる気あんのかよ」
「ただのヒーローではない」
「はあ?それでNO.1ヒーローになりたい!とか言ったら爆音くらわすよ」
「それはまだ言わない」
「なにそれ、ほんと意味わかんな。
はぁ〜、聴けたのは個性のおかげ、ウチの個性はイヤホンジャック」
「理解」
俺はイヤホンジャックと言われただけで、何故か耳郎の個性を理解できた。
こういうことはたまにある、知らないはずなのに知っていることがあるのだ。自分でもなんで知っているのかわからないから気持ち悪い。
「は、これだけで分かったの?」
「そうだ」
「ますます意味わかんない。
これから鍵無って呼ばせてもらうから、てか、質問が2つあんだけど」
「1」
「そのピック、何で持ってるの?」
「どういう意味だ」
「そのピック、ウチの好きなバンドのギターの人が使ってるやつなんだけど、オリジナルだから売ってないの。どうして持ってるのか教えて」
やばい、ピックまでは予想していなかった。
昔、ライブでオリジナルピックの話をした気がする。
そこまでファンだとは思わなかった。だがここで正体がバレるのは避けたい。苦しいが言い訳をしなくては……
「貰った」
騙されてくれ、、頼む。
「何か納得できないけど、今はそういうことにしてあげる」
見逃してくれた。よかった。
「2」
「普通に日本で話せるでしょ?」
「何故?」
「考えずにとっさに母国語使うのは否定しないけど、雄英入れる学力があるのに日本語ができないのはおかしいと思った。
何でウチらと関わろうとしないの?」
そこまで見透かせれているとは思わなかった。
「それは話せない」
「わかったけど、いつか話せ」
その時、“ウウーーーー”と警報が鳴った。
〈セキュリティ3が突破されました
生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい〉
「なにこれ!ねぇ、鍵無!避難しないと!」
「必要ない」
「は?何言ってるかわからないんだけど、ウチは避難するから!」
「1つ教える。これはマスコミだ」
手引きをしたのは違うが…、ってまただ。知らないはずのことを俺は知っている。
「そうだとしてもウチは避難するから」
そう言って耳郎は行ってしまった。
それからずっと、頭痛と耳鳴りに苦しみながらも、何故知っているのか、思い出さないといけないことがある、そんな気がして思い出そうとした。
でもそれより先にみんな戻ってきた。
すると蛙吹が近づいてきた。
「鍵無ちゃん、顔がまた真っ青よ。しかも冷や汗をかいてる。保健室行ってらっしゃい、先生に行っておくから……」
「ありがと…」
そう言って席を立つが、めまいがひどく立っているのも辛い。
だが心配はかけたくないから、気合で廊下に出る。そしてたまたま廊下にいた先生に肩を貸してもらい、保健室に着いた瞬間、ぶっ倒れた。
久々の夢だった。
ぼやけた先にあの子がいる。
でも今回は何の会話もしていない。ただずっとお互いを見ている。俺が口を開こうとした瞬間、眩い光に包まれ、目を開くと保健室のベッドの上だった。
「理由はわからない。疲れていたんじゃないのかね?」
そうリカバリーガールに言われるも、本当のことなど言えず、ただうなずくことしかできなかった。
そして教室に戻り、荷物を持って帰宅する。
ほぼ確実に、俺はとても大事なこと忘れている。
それは俺の存在自体を揺るがす何かだ…………