くくく、チート転生者のこの俺に勝てるわけが……ぐふっ!? 作:とある達人の筋肉無双
「流水岩砕拳ッ!」
攻防一体、攻撃の動作で受け流しを行い、受け流しの動作で攻撃を行い、攻撃の動作で回避し、回避の動作で攻撃する。
まるで水が流れるように、まるで変幻自在に姿を変える霞のように。
元はただの漫画の技だったのだが、勝手にそれを参考にして遥か高みへと昇華させた独自の拳法。
だが、これだけではまだ五分。
だからここに、更に一つの奥義を発動させる。
「裏奥義……剥奪水域!」
「ば、馬鹿な!?」
相手を一方的に制する静の気による奥義の一つ。
ある達人が使うと言われる、静の気の極みと言われている流水制空圏とは違い、俺のこの剥奪水域は制空圏を完全に相殺する事で、相手に制空圏に頼らない戦いを強要するという奥義だ。
流水制空圏を表の奥義とするのであれば、剥奪水域はまさにその真逆を行く裏の奥義だと言えるだろう。
だが本来静の気は動の気と比べると、攻撃という面で一歩劣る。
そして相手はガチガチの動の気を持ったボクサーであり、こちらは完全に静の気。
相手が静の気の持ち主ならばともかく、動の気の持ち主では、制空圏を潰すという事はこちらの利点を消し去る事に他ならない。
ウェイコットはそれで驚いたというわけだ。
だがこれは相手の意表を突くためだけに使った奥義では無い。
正真正銘の攻めの為の奥義。
俺が作り上げた六つの奥義の中で最強の技、一撃で相手を仕留める為の文字通りの必殺技を確実にヒットさせる為の布石だ。
この奥義は相手を圧倒する様に見せかけるだけの初見殺しの一撃。
そして動画で撮られている以上は、一度使ってしまえばこの技は完全にネタが割れて必殺技では無くなってしまうだろう。
本来の予定では
だが、この場で使わないのであればいつ使うのが良いだろうか?
そんな場面はきっと無い。
どうせいつかはネタが割れる奥義、ならば今撃っても惜しくは無い!
「幻水岩砕拳ッ!」
幻水岩砕拳、幻水の応用によって相手の防御をすり抜ける幻の拳。
左手で狙うのは顔面、しかしこれは完全に囮の一撃。
実際に攻撃を行うのは首。
……だと思ったら大間違いだ。
その首を狙った攻撃は幻で実際に攻撃が入ったのは中段。
相手が制空圏を使えないからこそ騙される一撃。
動画で撮ればまず間違いなくネタが割れる一撃。
だが、今ここで勝てればとりあえずはそれでいい。
「死に晒せ!」
「まだだァッ!!
ワンショットマグナムッ!!!」
ここで相手が選んだのはその防御も回避もできない一撃に対しての捨て身のカウンター。
両手は使えない。
こんなタイミングでは足を使った防御も間に合わない。
当然スリッピング・アウェーによる回避もできない。
なるほど、まさに最高の判断と言えるだろう。
……ヤバくね?
_______ミスった。
ミスった。
失敗した。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!
相手を圧倒する事だけ考えて相手のことを全く読み切れていなかった。
これでは良くて相打ち、悪ければ相手は生き残ってこちらだけ死ぬ。
どうする?
何ができる?
どうすればいい?
攻撃を辞める?
無理だ。
だってもう攻撃は終わっている。
今更キャンセルなんてできない。
どうにかして相手を止める?
……それしかない。
だが、一体どうやって?
念話ならこの場面でも何とか使える。
そして、相手はまだ念話を知らない。
これも防がれる事はまず無い初見殺しの一撃だといって言いだろう。
……だがこの場で一発成功できるか?
いや、もうこれしかない!
『■■■■■■■■ッ!!!!』
全力で、とにかく力強く、大きく叫ぶ。
普通に声を出すよりも遥かに速く、これならば音速を超える拳よりも先に届かせる事ができる。
耳を塞ごうとも、鼓膜を破ろうとも聞こえてくる爆音。
念話を開発した存在であり、念話に最も詳しいと言える俺だからこそ使える奥義。
名付けるなら、
当然特A級というレベルの達人がただの爆音でダメージを受ける訳が無い。
だが、どんなに達人でもいきなり頭の中で爆音が響き渡れば一瞬だけは動きが止まる。
俺の全力で放った幻水岩砕拳は胴体を貫通しており、後はとことん逃げて時間を稼ぐだけでいい。
そして、とりあえずこの場から逃げきるだけならばその一瞬さえあれば十二分だ。
そのまま腕を引き抜いて大きく後ろに飛ぶと、制空圏を張って相手の追撃を少し過剰な程に警戒する。
俺の作った初見殺し奥義はこれで5つ全て全て出し切ったし、もう他にオリジナルの初見殺しがあったりするわけじゃない。
後は純粋な殴り合いになるのだ。
「今のは少しヒヤッとしたな……」
「う、ぐふっ……ま、まさか手も足も出ないとは……」
「……?」
いや、あのカウンターとかめっちゃ危なかったんだが、何を……。
ってあ!
この人から見れば俺は涼し気な薄ら笑いをずっと浮かべ、自分が全力で放った捨て身のカウンターでさえも余裕で避けてみせるような化け物という事になる。
開幕から今に至るまで完全に表情を崩さないとか、俺のポーカーフェイスも大したものだ。
「安心しろ、お前は意外と健闘している。
ただ俺とお前の相性が悪かっただけの事」
「達人級以降では相性等というものは殆ど無くなる。
貴様が今こうして俺に勝っているのは単純な実力差があるからに過ぎん。
そもそも、相性が悪い相手に対応できない時点で俺が未熟だったという事だ」
まともに戦えばまず間違いなく負けると思うんだが……。
初見殺しも実力に数えていいのであれば実力差があるって言えるのか?
まあいいか、とりあえずここは格好つけておこう。
「仮にお前の目の前にいるのが俺以外の武術家ならば確実にお前が勝っていただろう。
お前の死因はただ一つ、お前の持つそのエンブレムがその流のエンブレムだったという事だ」
「ふっ、そうだな。
お前ならば俺以外の一影九拳も難無く倒せただろうな」
そんな事は絶対に顔には出さないがな。
「さて……もちろんまだやるんだろう?
なら最後まで俺を楽しませてみせろ!」
「ふっ、よく言うガキだ。
行くぞッ!」
会話で時間稼ぎもできたし、ダメージ的にもう間違いなく勝てる。
という事はもう好きにしても構わないだろう。
ならば相手の技を全て奪い取る!
「奥義、
相手が放ってきたジャブをこちらもジャブで返す。
相手の技をその場で奪う俺の固有奥義。
相手と同じ技が使いたい?
でも相手の使っている武術ができない?
ならこの場で相手の使っている武術を習得すれば良いじゃないか!
そんな馬鹿みたいな謎理論によって生まれた奥義。
その場でピースを組み合わせパーツを作り、パーツとパーツを結び合わせ、即興で相手と同じ絵のパズルを組み上げる。
相手が何か技を見せればその技を組み上げ、相手が戦いの運び方を見せればその運び方を組み上げ、相手が筋肉の使い方を見せればその筋肉の使い方を組み上げる。
そして、それらの技術を完全に自分のものとし、その場で使う。
これぞ
相手のフックはフックで、相手のストレートはストレートで。
相手に俺の糧となって喰われろ、そう言わんばかりに全力で相手の技を使い続ける。
さあ、フィナーレだ!
「「ワンショットマグナムッ!」」
拳と拳がぶつかり合い、激しい衝撃波が辺へと放たれる。
体重差で負けている為にこちらの一撃は本来の威力よりもかなり落ちてはいるが、相手もまた同じくダメージによってかなり威力が落ちていた。
「ゴハッ……」
その結果、競り勝ったのは俺だ。
倒れていくウェイコットと目があった。
『その技を有効に使ってくれ』
何となく彼がそう言ったような気がした。
皆様方のおかげで日間ランキング1位を獲得できました!
誤字脱字報告、感想、評価等を下さった方へ全力の感謝を!
そ、それでなのですが感想が物凄く増えた為にコラムはその話にコメントを下さった先着数名に限定させていただきます。
そのうちコラムまとめのようなものも作らせていただきますm(*_ _)m
アンケートが使えるかのテストも兼ねてます。皆様はこの小説をどこで知りましたか?
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1、検索したら出た
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2、オススメ欄
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3、知り合いから聞いた
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4、Googleから
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5、それ以外