くくく、チート転生者のこの俺に勝てるわけが……ぐふっ!?   作:とある達人の筋肉無双

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007、闇

 18.

 

 

師匠(グル)、リュウスイただいま帰還しました」

「カカカッ! 意外と早かったのう」

 

 

 あの後ターゲットの首をそのまま持ち帰りそのまま現金で報酬を受け取ると、そのままホテルにダッシュして一泊。

 お土産のイギリス産の果物を大量に買い込んで帰りは飛行機だ。

 行きは走っていけと言われたが別に帰りは指定されてないからな。

 飛行機で楽々と帰還させて貰った。

 

 

「どうぞ、これがイギリス産の最高級果物の詰め合わせです」

「カカッ、でかしたわい」

 

 

 だが、気が付かれて後で文句を言われても困るのでここで果物の詰め合わせを差し出す。

 師匠(グル)の好きそうなものを片っ端から買って来たのでそれなりに喜んで貰えるだろう。

 

 

「ふむ、意外と美味いのう」

 

 

 俺が師匠(グル)に持って帰ってきた箱を全部渡すと、早速と言わんばかりに食べ始めた。

 仮面を付けているのであんまり分からないが、超凶悪と行ってもいい師匠(グル)も果物を食べている時だけは雰囲気が柔らかくなる。

 そんな事を口に出しでもしたら間違いなく拳が飛んでくるが……。

 

 

「そりゃあ一応最高級ですからね」

「カカッ、それで初めての仕事はどうじゃったかのう?」

「そうですね……ボディガードの中国拳法使いとの戦いは良い経験になりました。

 それなりの奥義も1つ盗めましたしね」

 

 

 俺が盗んだ技というのはもちろんあの人が使っていた覇合崩拳の事だ。

 一度だけならまだ奪えなかった可能性はあるが、二回も見れれば大抵の技はその場で盗み取れる。

 武術の技というのは何かしらの動作を複合して組み上げるパズルのようなもの、そしてそのピースが揃っていれば後は組み立てるだけで良いのだ。

 

 

 ならば基礎とそこから生まれる合理をとことん突き詰め、その武術(パズル)必要素(ピース)の数を膨大に増やしていけばいく程に使える技もその分増えていくのだ。

 どれだけの才能を持っていようとも、土台がなければ城は立たないというわけだ。

 

 

「カカッ、お前さんの見取りの技術だけはもはや超人級じゃわいのう」

 

 

 俺のその見取りの才能は師匠(グル)でさえも驚く程のものらしい。

 恐らくだが神様のお陰だろう。

 祈っておこう。

(-∧-)合掌。

 

 

「ああ、それでその達人が闇の十拳なるものを口にしていたのですが師匠(グル)はご存知ですか?」

「カカカカッ! まさかお前さんからその名が出るとはのう。

 われも十拳、その中でも王のエンブレムを持つ達人じゃわいのう」

 

 

 ……お、おう? 

 流石は師匠(グル)、王の称号とかどこからどう聞いても一番強そうだ。

 帝とかがあれば別だが、この拳魔邪神シルクァッド・ジュナザードを差し置いてそんなものを名乗れる者がいるのであればもうそいつは間違いなく世界最強と言っても良いだろう。

 

 

「そのエンブレムって他には何があるんですかね?」

「王、水、影、空、流、氷、月、炎、鋼、無じゃわいのう。

 王のわれと、水の女宿以外はお前さんより少し格上と言った感じじゃわいのう」

 

 

 その後、師匠(グル)から闇の十拳についての説明を受けたのだがどうやら闇とかいう世界を裏から操る謎の巨大組織があるとの事。

 そして、その闇は大きく2つ派閥、無手組と武器組に別れているらしく、闇の十拳とはその無手組の中でも上位10名の事を言うらしい。

 そこにランクインできた者には殺人許可証(フリーマーダラー)という、その名の通りに殺人をしても一切の罪に問われない資格のようなものが常に発行され、他にも色々な面で高待遇を受けれるみたいだ。

 何それやべぇ。

 

 

 そんな闇の十拳になる方法は3つ。

 1つは弟子として引き継ぐという真っ当な方法。

 2つ目は十拳の誰かが死んだ時にその代わりとして引き継ぐというこれもまた真っ当な方法。

 ここまではいかにも普通な感じなのだが、最後の一つは違う。

 

 

 3つ目は倒す、もしくは殺して奪い取るという方法だ。

 めちゃくちゃアレだが実にシンプルだ。

 上から十人の猛者を判断するにはこれ以上ない程の完璧な回答だと言える。

 

 

 だが、そうやって世代交代を繰り返す闇の十拳は他の無手組の者と比べれば格が何段も違うらしい。

 その中でも王の十拳だけは名前を呼んだだけでも寿命が3年縮むと噂される程には強いらしい……そりゃあ勝てるわけないわな。

 

 

「流のエンブレム欲しいですね……」

 

 

 俺が取りに行くのであれば問答無用で流のエンブレム一筋だ。

 だって俺、流水岩砕拳の使い手だぜ? 

 名前も流水だし、流の一文字を逃すような真似はするべきじゃないだろう。

 もし仮にこれで炎とか取ったりしたら笑い話じゃ済まない。

 

 

「カッカッカ、まだまだお前さんには早いわいのう」

「確かに、まだ達人級に達しただけですからね。

 せめて特A級まで上がってから狙いに行きますよ」

 

 

 師匠(グル)の言う通り、今の俺では特A級の達人を相手にすれば時間稼ぎがせいぜいで倒すなんて無理だ。

 弟子級や妙手級であればまぐれで勝ちを拾えるかもしれないが、達人級以降になってくると油断しているとか手加減をしてくれたとかそう言うケースを除けば基本的に階級が一つ上の相手を倒すなんて事は不可能だ。

 仮にエンブレムを狙うのならば満を持して、全力全開で言い訳の一切利かないように圧倒的な実力差をもってぶっ殺す。

 それだけだ。

 

 

 

 19.

 

 

 

「では師匠(グル)、離れていた分の組手をお願いします」

「カカッ、熱心な事じゃわいのう。

 どこからでも掛かって来るとええわい」

 

 

 最高位の達人である師匠(グル)はともかく、まだ俺は特A級の達人にも勝つ事が出来ない。

 だからやる事はたった一つ、鍛練あるのみだ。

 

 

「はい、では行かせて貰います……」

 

 

 どこからでも掛かって来いと言った師匠(グル)の隙を窺うが、やっぱりどこにもそんなものは無い。

 何かに集中している時や、果物を食べている時にはほんの少しだけ気が緩んだりする時はあるもののそういう時でさえも師匠(グル)に攻撃を仕掛けたらあっと言う間に殺されるか、取り押さえられるかしてしまうだろう。

 

 

 師匠(グル)を人間だと思って掛かったらその時点で負けている。

 この目の前の存在は神、それも凶悪極まりない最凶の邪神だ。

 一本でも取りたければ一切の容赦なく、卑怯な手を使って殺意をもって当たるしかない。

 

 

「はァッ!」

 

 

 しかし、そんな事は向こうも想定済み、ならば最初は正面から行く。

 これが最善にして最高の策だ。

 

 

「カッカッカ、正面から来るとは度胸があるわいのう」

 

 

 そのまま師匠(グル)の方に向かって全力の蹴りを叩き込もうとする。

 当然真正面からの蹴りが当たるわけが無い。

 だが、蹴り狙いは師匠(グル)じゃない。

 

 

砕石目隠し(ストーンブラインド)!」

 

 

 バコンッと何かを粉砕したような音がきこえてくるが、俺が蹴ったのは当然師匠(グル)では無い。

 蹴りと同時に師匠(グル)からは見えない様にこっそり投げた小石だ。

 

 

『カカッ、よく考えたわいのう!』

 

 

 気当たりを駆使して言外にそう伝えてくる師匠(グル)に、『今日こそは一本、頂きますッ!』とこちらも気当たりを使って返信する。

 超高速で行われる達人同士の戦いではある意味必須とも言える気当たりの運用で行うテレパシーのようなものだ。

 

 

 この奥義、【念話】は俺が作った最初の奥義だ。

 奥義といってもほんの小技のようなものだが、超高速で戦闘を行っている間に会話なんてする暇がある訳が無いのでこれを使える者と使えない者との間では天と地程の差が出るのだ。

 

 

「オラオラオラオラオラオラァッッ!!!」

 

 

 目を潰したら後はひたすらに猛攻撃を加え続ける。

 一発一発に殺意と気合を込めて全力で殴り続けるが、俺のその攻撃全ては目を瞑った状態の師匠(グル)にあっさりと受け流された。

 目を使わずに攻撃を防御するとか一体どうやってんだよ……。

 

 

「カッカッカ、まだまだわれには届かぬわいのう」

「しまっ!?」

 

 

 俺がその師匠(グル)がどういう原理で避けているかを探ろうと一瞬だけ気を緩めたその瞬間に一発だけ拳が完全に空を切った。

 

 

「残像!?」

「正解じゃわいのう!」

 

 

 殴ったその師匠(グル)を残像だと見抜いた時にはもう時すでに遅し。

 

 

「アビシッ!?」

 

 

 完全に俺の顎へと師匠(グル)の蹴りがクリーンヒットし、顎が砕かれるような感触が襲ったかと思えば意識がカクッと、まるでブレーカーでも落ちたかのように一気にブラックアウトした。





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