「なぁ…クリス」
「…」
あれから黒いクリスを振り切り、少年の手を引っ張りクリスは人気のある街まで走ってきたのだが…
「……」
「…スゥ…クリス!!」
少年の声に気付かず、手を引くクリスに少年はもう一度声を掛けようと今度は声を大きくして呼ぶ。
「っ!?…なんだよ」
「もうここまで来れば良いよ…クリス?」
クリスは驚いて立ち止まって答えるがその表情は何処か怒ったように見え、少年はクリスの顔を見て一瞬固まるも、もう大丈夫だと答えるとクリスは少年の胸ぐらを掴む。
「...どうしたんだよ」
「...大丈夫なわけないだろ!あんな偽物のアタシが急に現れたと思ったら急にお前とキスしやがるし!アタシのギアまで纏うわでこっちは困惑してんだ!」
「...」
そう言って怒鳴り付けてくるクリスに少年は黙って聞いていて、それが気に入らないのか更にクリスは答える。
「ノイズが出てきた時だってそうだ!なんであの時一人で全部引き連れるような真似したんだよ!戻って来てお前が一人でノイズを引き連れていったって聞いた時本気で心配したんだぞ...」
クリスは本気で少年の事を本気で心配していたらしくノイズの一件からずっと引きずっていた。
「あんたのパパとママが居なくなった時だって、先輩達が来たのは驚いたけどアンタが倒れて...!」
そこまで言ってクリスは少年に口元を手で押さえつけ静かにさせ、クリスは掴んでいる手の力を緩めて少年の顔をもう一度見る。
もしかしたら困らせてしまったのではないか、言い過ぎたのかと思っていたのだが少年の表情を見てクリスの身体に悪寒が走った。
クリスの瞳に映っていたのは...
「もういいって言っているだろ...」
何時ものふざけた表情に見えるのだが何か違うように感じた、いや違う、まるでそう...
[少年の瞳の奥からナニカがこちら伺うように見ていた]
ように感じとりクリスの全身を一気に寒気だし、思わず後ろに下がってしまった。
少年が瞳を閉じて目を開くと何時ものような表情に戻っていて、後ろに下がったクリスを見て首をかしげる。
「どうした?クリス」
「...っ!勝手にしろ!」
何事もなかったかのように手を差し伸べて答える少年の方をじっと見ていたクリスは気付くと差し出してきた手を払い除けて少年達のいるホテルの方に歩いていく。
「いってて...なんだよ急に」
そう言って少年は払い除けられた手を擦ってクリスの後を追いかけていく。
そんな二人のやり取りを眺めていたキャロルは腕を組んでいて少年を見る。
(さっきのアレはいったいなんだ?)
考えていたのは黒いクリス事もあるのだがそれよりも違うことを注視していた。
それは黒いクリスの腕が無くなる前後に起こった事である。
あの時キャロルはクリスや黒いクリス、そして、少年は見えていなかったがキャロルだけはソレが見えていた。
少年の背中から蛇のような太く長い何かが伸びていて少年を掴んでいた黒いクリスの腕に巻き付いていたのだ。
そして音と共に黒いクリスの腕が無くなると同時に蛇のような形をしていた者はするすると少年の背中に戻っていくのを見ていた。
そこまで考えるとキャロルは何か引っ掛かりそれを口にする。
『確かノイズが現れた時もアイツの衣服が不自然に空いていたが...まさか...』
だがその答えを知ることはまだできなかった。