どうしてこうなった?~聖女に拉致られた魔王軍の女幹部~   作:花びら

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解放された後

 

 「………さあ、詳しく説明して貰おうじゃないの」

 

 どうも皆さん、シオンです。

 私は今、両隣に勇者と聖女を置いて救世主である戦士さんの前にに正座させられています。

 聖女は私を襲い、勇者は私を見捨てたので戦士さんから拳骨を喰らってたん瘤ができてます。

 状況はというと、私、聖女、勇者が戦士さんの前にいて戦士さんの後ろにはソファで寛ぐ盗賊、私の前で私をジッと見つめてくる弓兵、私たちの後ろで何故か悶絶している賢者。

 逃げ場が……無い!

 いや、そもそも聖女に勝てない時点で逃げられるわけも無いか。

 というか、何故目の前に居る娘は私のことを見てくるんだ?

 思わず眼を逸らしてるけど、視線がずっと顔に刺さってるから気になってしょうが無い。

 後ろにいる賢者もそうだ。

 ベッドの上で転がってんじゃねえよ。

 「尊い尊い」ばっか言うな。

 うるさいし鬱陶しい。

 お前本当に賢者か?

 と、そんな事を考えてると、

 

 「とりあえず、魔族の貴女から。何でこの街に来たのかしら?」

 

 戦士さんからそんな事が聞かれた。

 私の目的か……。

 別に隠すことじゃないし話しても良いだろう。

 

 「私の目的は本を買うこと。この街の本屋が一番速く発売されると聞いたので、本を買ったらすぐに帰るつもりでした」

 「何の本かしら?」

 「コーチョ・バシー先生の『あっち向いてほい』です」

 「誰!?つかそれ題名!?」

 「はい。他にも『歌うなクソ野郎』、『あの教師速く転ばねえかな』とかもあります」

 「碌な題名がないじゃない!何を書いてんのかも想像が着かない……!」

 「え?全部恋愛ですけど?」

 「嘘でしょ!?グレース、これ本当?」

 「はい。全部本当ですね。というか、私もそれ全部読みました」

 「読者が仲間にもいた!?そんなに売れてる人なの…?」

 「この間大陸全てでの総売り上げ数五千部突破しました」

 「絶妙に人気無いじゃない!って、そうじゃなああああああああああああい!!」

 

 うわ。

 急に叫び出すから吃驚したじゃないですか。

 戦士、名前をオードリー。

 一応女性………だったのだが、今は男となっており、子どもも2人居るそうだ。

 その理由は夫との死別。

 夫は同じ冒険者で危険モンスターの退治の際に殺されてしまったらしい。

 彼女はその時2人目を妊娠中で1人目は母方に預けてたという。

 それから数年に渡って普通に育てるも子供達が学校に入学してから何を思ったのか、彼女の故郷では有名な魔女に男にしてくれと頼みこんだ結果………男となった。

 それから子供たちが成人するまで一緒に暮らし、それぞれが自立してから勇者のことを知って今までの冒険者時代の経験を活かそうと考えてパーティーに加わったらしい。

 しかし、いったい何を思って男になったんだろう…?

 調べてはみたが何も分からなくて今まで理由を聞けるチャンスが狙ってたが、今やっと回ってきたわけだ。

 けど、この状況じゃ聞けないし、時間は多分あるだろうから今はまだ様子を見よう。

 ………そう言えば、調査中に噂程度の怪しい情報があったな。

 なんでもオードリーさんは女の時の癖が抜けていないらしく、男を相手にヤると聴いたことがある。

 いや、まさかな。

 こんな常識人っぽい人がそんな事をするわけないでしょう。

 

 「アナタの目的は良いわ。それより何でアナタはグレースに襲われてたのよ?」

 「……街を散策中に見つけられて全力で逃げたんですが、追い掛けられて広い荒野で戦闘して、負けたんです。そしたらこの街に戻ってきてベッドに運ばれたんです」

 「……グレース?」

 「そう言えば、『ちょっと離れます』と言ってから戻ってこなかったっすね」

 「…………グレース?」

 「後悔はありません。接吻ができただけでも私は満足です」

 「グレース!?」

 

 この聖女言い切りやがった…!

 私の初めてを奪っておいてここまで清々しいと異様に腹立ってくる。

 

 「戦士さん、この女を()って良いですか…!!」

 「ヤる?ここでですか!?」

 「ちょっと黙れ聖女」

 

 ダメだ。

 脳内花畑聖女に今は何を言っても自分の良いように変換される気がする。

 なんで世界はこんな奴を聖女に選んだんだ…。

 こいつより私の方が聖女できる自信があるよ。

 あ、魔族だからダメか。

 って、そんな事じゃ無いんだよ。

 とりあえず、なんかのバグで聖女代替わりしないかな……。

 これが聖女とか私が認めたくない。

 

 「殺しちゃダメよ。けど、ごめんなさいね。この子には後で言っておくから勘弁して頂戴」

 「……とりあえず、今はそれでいいです。それよりこの子は…?」

 「…………(じぃー)」

 

 私はそう言って目の前でずっとこちらを見続ける弓兵のことを聞いた。

 さっきまで耐えれたんだけど、そろそろ我慢できなかった…。

 

 「その子は近眼でね。近くのものしか見れないのに眼鏡を掛けようとしないから、そうやって興味のあるものは近くで見る癖があるのよ」

 「…??弓兵ですよね?」

 「見たまんま弓兵よぉ。何度も眼鏡を掛けてっては言ってるのだけど、言うこと聞かなくてね。けど、感で射ってるのに絶対に当てるから強くは言えないのよ」

 「あらゆる弓兵の努力が今鼻で笑われましたよ」

 

 魔王軍(ウチ)が死者減らすために必死で弓兵部隊育ててるのが馬鹿みたいに見える爆弾発言でしたよ。

 確かに目の前の弓兵―――ミラについても調べたが、父が狩人で幼い頃から弓矢には触っていたらしく、父の弓矢を使っては山に住む鳥や獣を一撃で仕留めていたらしい。

 だから物凄く眼が良い上に命中率、集中力もある弓を扱う者にとってこれ程の逸材はいないだろうと思って魔王軍全体に勇者より彼女に対して警戒はさせていた。

 だと言うのに……!

 それが今まで感で射ってたとか嘘だろ!?

 私が必死で集めた情報は間違ってないはずなのに本能が無駄だったと否定してくる。

 ………うん、そうなんだろうな。

 既に賢者のイメージ像崩れ去ってるし、今更だな。

 私は未熟だった。

 完璧に出生からこれからの行き先まで調べたと思って慢心して生活事情を軽くしか調べなかった怠慢の代償が此処に来たか…。

 魔王様、私シオンは一から修業し直すことにします。

 そして、再び貴方様に正確な情報をお届けしますので、しばらくお待ちください。

 出来る限りここから脱出しようとは思ってるので待っててください。

 

 

 

 …………私が逃げ出せるように祈ってくれるとありがたいです。

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