SAOif(仮)   作:まゆう

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性懲りも無く新シリーズです。
なんとなくで書いた物なんですがとりあえずあげるだけ上げようと思いました。

一応続きもありますが続くかはわかりません


デスゲーム

 2022年、人類はついに完全な仮想世界を実現させた。たった1人の天才、茅場晶彦の手によって。

 

 茅場晶彦によって作り上げられたフルダイブ用マシン、『ナーヴギア』。そして世界初のVRMMORPGである『ソードアート・オンライン』を一ノ瀬 真央(いちのせ まお)はコネを使って手に入れることができた。

 

 多数の傘下企業を持つ一ノ瀬グループの御曹司である真央は個人的に茅場晶彦とのパイプがあった。βテストにも参加し、存分に仮想世界を味わった真央は仮想世界に惚れ込んだ。自分ではない別の誰かになって広大な世界を冒険することは真央にとってとても魅力的だったのだ。

 父もこれから間違いなく大きな時代を築くだろう仮想世界に真央が興味を持ちのめり込むことを止めなかった。

 

 いよいよ初回ロット10000本の正式版が出る前日、真央は茅場晶彦に呼び出され彼から直接製品版のソードアート・オンラインを貰った。一言言葉を添えられて。

 

「これはゲームであっても遊びではない。この世界で、真央くん。君が大切なものを見つけられることを祈っている」

 

 この時真央はこの言葉について深く考えることはなかったが、今になって思えばこれは比喩表現などではなくまさしく文字通りの意味だったのだろう。

 

 世界初の完全なる仮想世界、VRMMORPGソードアート・オンラインは、鉄の城『アインクラッド』に10000人の住人を得てまさしくもう一つの現実となった。

 

 HPがゼロになり、ゲームでの死が現実の死となるデスゲーム。

 

 脱出方法はただ一つ、アインクラッドの階層全100層全てを攻略することのみ。

 

 こうして一ノ瀬真央ことハイリは仮想世界の虜囚(りょしゅう)となったのだ。

 

 

 

 ・

 

 

 

「いや〜ありがとなハー坊。手伝って貰っちゃってオネーサン助かっちゃったゼ」

 

 俺の目の前でニャハハと笑いながら感謝を告げてきたフードを被り顔に猫、もしくは鼠のような三本髭のペイントをつけた怪しい女、アインクラッドで情報屋を営むアルゴの感謝におれはあきれた様子を隠すことなく答えた。

 

「別に構わないよアルゴ。俺も手伝うことで色々融通して貰ってるしね。特に格闘スキルは有用だったありがとう」

 

「ニャハハ、そんぐらいお安い御用ダ。しかしハー坊よく取ってこれたナ」

 

 アルゴがよく取ってこれたというのには理由がある。

 格闘スキルを取得するためのクエストがまぁなかなかの大変さだったのだ。

 

 挑戦するとまず顔にアルゴと同じように髭のペイントが施させれる。そしてその状態のまま素手で馬鹿でかい石を砕くというのがクエストの内容なのだが酷いのはここら先だ。髭のペイントはこのクエストをクリアしない限り消えない。つまり馬鹿でかい岩を素手で砕くまでペイントを消すことはできないのだ。

 

 これによって俺は察することができた。アルゴのペイントは特徴づくりのためじゃない。いや、今は特徴として有効活用してるのだろうが。

 つまりは、逃げたのだ。岩を砕くという労力を考えてペイントを施されたままクエストを撤退したのが恐らくその特徴的な3本髭の理由だ。

 

「三日三晩不眠で殴り続けたら4日目の昼くらいにどうにか砕けたよ……。死ぬほど大変だったけどこれは労力に見合うスキルだから重宝してる」

 

「三日三晩不眠ってなかなかに人間離れしてるナ。まぁ、取れたんならよかったヨ」

 

 有用なスキルを取れたことは感謝してる。だが、許すかどうかは別の話だ。

 

「ただまぁ、なんも言わずに格闘スキルが取れるぞとだけ言ってあそこに放り込まれて本気でキレそうだったけどね」

 

 だだでさえ鋭い俺の目に睨まれてアルゴが少し萎縮してしまった。まぁこれは完全なる自業自得なのでフォローなんてするつもりはない。

 

 今はそんなことより大事な話がある。

 

「で、一層のボス部屋が見つかったらしいね」

 

 そう、デスゲーム開始から一ヶ月。この間に自殺者も含めて2000人もの人間が死に、ついに第一層のボス部屋が発見されたのだ。

 

「ああ、そうらしいナ。明日にはトールバーナでボス攻略会議が開かれるはずダ」

 

 アインクラッドは全100層構造、そして階層を迷宮が繋ぐ作りになっている。つまり俺たちプレイヤーはそれぞれの層で迷宮区を突破し、そこにあるボス部屋を発見しボスを打ち破り次の層へ道を開かなければならない。

 

 そしてついに一層目のボスの部屋が発見されたとなれば、迷宮区に近い街であるトールバーナではそれなりの騒ぎになっていることだろう。

 

「なら今日はゆっくり休んで明日に備えようかな」

 

 そう告げてそのまま、トールバーナにある宿に戻ろうとしたとき後ろから珍しく心配してるのを隠そうとしないアルゴの声が聞こえた。

 

「なぁ、ハー坊。お前ほんとにボスと戦うつもりカ?」

 

 たかだか一ヶ月未満の付き合いだがアルゴがこんな風に心配を隠そうとしないのは珍しいことだ。基本的には茶化すことが多いアルゴがこんな風に俺を気遣ったのは出会った頃俺の戦い方に苦言を言ってきたとき以来だろう。

 

「もちろんそのつもりだよ。その為にレベルも上げたし、装備も整えた」

 

 デスゲームが始まってから今まで俺はずっと自分を鍛え続けたきた。

 安全を考えれば最初の街に閉じこもることも選択肢の一つだろう。だが俺は外に出てβテストの知識を活かしながら自分を強くし続けた。

 理由はただ一つ、最終的に自分を守れるのは自分だけだからだ。この世界ではレベルが全てだ。どんな思想を持っていようと、現実でどれだけのお金があろうとレベル差があればあっさりと死ぬだろうことは予想できる。

 なら俺は強くならなければならない。死なない為に、このゲームをクリアして現実に戻る為に。

 

 もちろん俺1人で強くなってもボスにかなうとは思っていない、だからこそ俺はアルゴと組んでβテストに参加していないプレイヤーのための攻略指南の冊子を作り、ニュービーのプレイヤーたちに無料で配布することもした。

 

「はっきり言ってハー坊の戦い方でボス戦は無謀だヨ。一撃でもまともに貰えばすぐに死んじまう」

 

 俺の装備は武器が店で買った1番性能のいいものを鋭さと耐久に2ずつ振った曲剣が二本。アルゴが問題にしてるのは俺の防具の話だ。俺に防具はほとんどない。下に着ている鎖帷子と利き手である右手に小手そしてそこそこの防御力があるブーツのみだ。

 これは俺のステータスの問題だ。俺はレベルアップで貰える成長ポイントをほとんど敏捷値に振っている。お陰で装備重量がカツカツで防具はほんとに最低限だ。

 

 いわゆる当たれば死ぬ装備だが、要は攻撃に当たらなければいい。そして俺にはそれができる。

 

「当たらなきゃ死なない、攻撃し続ければ倒せる。大丈夫、無茶はしないよ」

 

 アルゴはハァァ……と盛大にため息をついて首を横にフルフルと振る。

 

「まぁ、死ぬなよハー坊。お前が死んだらオネーサン悲しいからナ」

 

 盛大に呆れたというように吐き捨てて先に歩いて行ってしまった。

 

「もちろん、このゲームをクリアするまで死ぬつもりはないさ」

 

 俺は先に行ったアルゴには聞こえないだろう大きさでそう呟いて、前を行くアルゴの後を追った。

 

 

 

 ・

 

 

 

 アルゴの情報収集に付き合った翌日、俺は第一層のボス攻略会議に参加するためにトールバーナにある広場に来ていた。

 ゆっくりと起きて、のそのそと朝食をとっていたせいで時間はギリギリだったが辛うじて始まる前には到着できた。

 

 見たところそれなりの人数が集まってるようだが、ボス戦は7人パーティが最大7つの計49人が限度なはずなので少し足りないかも知れない。

 

 俺は誰も座もっていない上の方の右端に座り会議が始まるのを待つと、そう時間も経たないうちに壇上に青い髪をした騎士のような装備をした男とそのパーティであろう人たちが現れて話し始めた。

 

 あの騎士のような男、ディアベルが今回ボス部屋を発見しこの会議を計画した人物だ。

 

 ボス部屋を発見しその旨味を全て得るために自分たちだけで無茶な攻略をするのではなく、会議を開きレイドを組もうとしたのは大正解だ。あの人数でボス戦に挑んでいたら間違いなく全滅していただろう。

 

 情報を粗方出し終えたであろうディアベルが会議に参加しているメンバーから意見や質問を受け付けると前の方に座っているサボテン頭の男が壇上に登り話し始めた。

 

「この中に死んでいった全てのプレイヤーに詫び入れなあかんやつらがおるはずや!」

 

 一体この男は何を言ってるんだ……。会場もにわかにざわざわとしだす中、ディアベルがサボテン頭のキバオウに向けてその人物たちの確認を取った。

 

 それは俺も予想していた通りβテスターたちのことのようだ。

 

 まぁ、こんな輩が出ることはなんとなくわかってた。確かにこのゲームが始まりβテスターたちはスタートダッシュを決めるため我先にと先の街へ進みその知識を頼りにうまい狩場やクエストをこなしていたのは事実だ。

 

 だからと言ってβテスターからコルやアイテム、武器までも取り上げてどうする……。それじゃあ大きな戦力がいなくなるだけだ。

 

 あまりに呆れかえってしまったので盛大に溜息をついたら、キバオウに聞こえたのか俺のことを睨んできた。

 

「なんやガキ! 文句あるんか!」

 

 怒鳴りつけてくる能無しのキバオウにはもちろん文句がたっぷりなのでここは盛大に吐き出させてもらうことにする。

 

「じゃあ、文句言わせてもらおうかな。まずはハイリだ。よろしく」

 

 とりあえず礼儀としてまずは名前を名乗っておく。名乗った時に視界の端に動揺した黒い髪の同い年くらいに見える男がいたがまずは置いておこう。

 

「で、なんやガキ言うてみ!」

 

「それじゃあ遠慮なく。お前バカか?」

 

 単刀直入に言いたいことを伝えてみたが、案の定キバオウはさらに怒りのボルテージが上がったようで、さらに俺を睨みつける目が鋭くなった。

 言い返してこないので、俺は俺の言いたいことを畳み掛けることにした。

 

「さて、それじゃあ1つずつ言いたいこと言っていくよ。まず1つ、俺もβテスターだ」

 

 この言葉に会場がざわつく。まぁ、βテスターをこき下ろそうとしてるやつに向かって面と向かって俺はβテスターだって宣言すればこうなるのも仕方ないかもしれない。

 

「βテスターから装備やコルを剥ぎ取る。そんなことしてみろ、間違いなくボスは倒せないぞ。ここに何人のβテスターがいるかは知らないが、βテスターで今この場にいるのは最前線にこれるだけの能力があり尚且つこのゲームの知識を持ってるってことだ。そんな奴らから装備剥ぎ取って戦えなくしたら明らかな戦闘力減だろ」

 

 騒がしかった周りが少しずつ静かになっていく。自分たちの頭で損得を考え始めたのだろう。

 

「次、2つ目だが別に全てのβテスターがニュービーを見捨てたわけじゃない」

 

 そう言って俺が腰のポーチから取り出したのは俺とアルゴを中心に幾人かのβテスターたちの協力のもと町や村の防具屋などに置いている名付けて『アルゴの攻略本』だ。

 

「全員この本に見覚えくらいはあるはずだ」

 

 周りから肯定の反応が返ってきたことを確認して俺は続きを話した。

 

「こいつは俺も含めて何人かのβテスターたちがアルゴを中心に作った本だ。この階層の狩場やクエスト、危険な場所諸々この本には知る得る限り全ての情報を載せたつもりだ」

 

 ここで一旦言葉区切る。この中にはニュービーの方が間違いなく多いだろうが俺に向けられる視線は敵意ではなく興味だ。ほぼ全ての奴らがこの本の有用性は理解しているんだろう。

 

「この本は各町や村に無料で配布した。だがそれでも2000人死んだ。情報を軽んじるやつ、情報を得てもそれを有効に活用しない奴はどんどん死んで行く。事実βテスターたちはもうすでに半分くらいは死んでるはずだ」

 

 俺のこの言葉にはざわめきが多かった。半分ってのは俺とアルゴの予想だがほぼ間違い無いだろう。

 

「自分たちが持つ情報を過信して確認を怠り、先走った奴は死ぬんだよ。そこにβ上がりもニュービーも関係ない。ここにいる奴らは全員がボスと戦えるだけの実力と思慮深さを持った奴のはずだ。わかったらβテスターたちから装備を取り上げるなんてバカな真似はやめるんだな」

 

 言いたいことを言い切ったので俺は自分がいた位置に戻り座り直す。

 それから少ししてディアベルに宥められたキバオウも席に戻ったことでやっと会議が先へ進んだ。

 

「じゃあ、パーティを組んでもらおうかな」

 

 終わってしまった……。

 

 俺はただでさえまだ13のガキだ。そんなガキをさっきの立ち回りを見た奴らがパーティに入れようなんて思わないだろう。

 周りはグループで集まってきてる奴らが大半なのでこれはもうおひとりさまコース不可避だ。

 

 はぁ、と溜息をついてから俺は後ろの方でお一人様をしている先ほどの黒髪の少年とフードを被った2人に声をかけることにした。

 

「よう、お前たちも1人か?」

 

「え? あ、ああソロプレイヤーなんだ」

 

 黒髪の少年は答えてくれたがフードのおそらく女であろう人物は何も言ってこない。

 まぁ、話したくない奴もいるだろうし俺は気にしないことにして話が通じそうな男の方に話しかけることにした。

 

「俺もソロプレイヤーだ。あまりもん同士よろしく頼むよ」

 

「ああ、こちらこそ……」

 

 なにやら言葉が続きそうだが、その続きを言いにくそうにしてるので顎をしゃくって続きを促すと恐る恐るといった感じで続くであろうことを話し始めた。

 

「その、βテスターでプレイヤーネームがハイリなんだよな?」

 

「そうだけど……、どうかしたか?」

 

 そしてそこからさらに数秒変な顔をしたり、悩んだ顔をしたり百面相を見せてくれた少年が搾り出した言葉は少し予想外なものだった。

 

「その、俺はキリトだ。βテスターの……」

 

 予想外の言葉に俺は言葉が出ずにしばし思考を停止してしまった。

 

 そして……

 

「お、お前がキリト⁉︎」

 

 どうやらβ時代の相棒は俺と歳もそう変わらない少年だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 




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