四人の灰は薪を目指す   作:蛸夜鬼の分身

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竜狩りの鎧をハンマーヘッドシャークと呼んではいけない。いいね?


episode1 目覚め

 鐘の音が聞こえる。それは頭に直接響き、私の意識を呼び起こした。

 

「ぐ⋯⋯ぅ⋯⋯」

 

 呻き声を上げながら起き上がろうとすると、頭をガツンと何かにぶつける。これは⋯⋯私は何かに入っているのか?

 

 狭い空間の中でなんとか腕を動かし、蓋らしき物をこじ開ける。どうやら私が入っていたのは石造りの棺桶だったらしい。

 

 蓋を開けると隙間から光が差し込み、眼前に白い曇天の空が広がる。蓋を完全に退かし辺りを確認する。どうやらここは墓地の様だ。死の空気が充満し、そして灰に塗れている。

 

 ここはどこなのか。そして何故この様な場所にいるのか。様々な疑問が浮かび上がるが、その中で最も気味が悪い事が一つ。

 

 それは、私の記憶が一切として抜けている事だ。辛うじてだが、私はかつて竜狩りの戦士だったということだけを覚えている。

 

 そんな気味の悪さを感じながらもう一度辺りを見渡すと、私が入っていた棺桶の近くには同じ様な物が“三つ”置かれている事に気付く。棺桶の蓋は開いている為、もしかしたら私と同じく棺桶から起きた者がいるのだろうか。

 

「⋯⋯む?」

 

 棺桶から出ようとすると私の右手が何かに触れる。見るとそこには多くの武器が一緒に寝かされていた。変に狭いと思ったら武器も入っていたのか。

 

 そして今気付いたが、私はどうやら鎧を着ている様だ。それも“鉄が溶けたかの様な黒い鎧(溶鉄の竜狩りシリーズ)”を。今まで違和感を感じなかったのは恐らく、この防具が異様に身体に馴染んでいるからだろう。更に指には四つの指輪が填められている。

 

 さて、私と共に寝かされていた武器は六つ。まず防具と同じ材質の無骨な大斧(竜狩りの大斧)、そして同じく無骨な大盾(竜狩りの大盾)

 

 他にも金色の槍(竜狩りの槍)シンプルな鉄の小盾(鉄の円盾)赤と白のタリスマン(太陽のタリスマン)。最後の一つは私の背丈以上にある巨大な弓(竜狩りの大弓)だった。

 

「これは⋯⋯私の武器なのだろうか」

 

 だがどう考えても一度に装備出来る数ではない。それに今の鎧に加えてこの数の武器を装備したら確実に動けないだろう。そう考えながら大斧を手に取ると

 

『灰よ、ソウルの業を使い給え』

 

 という声が頭に響き、大斧が白い粒子となって私の身体に吸い込まれていく。

 

「っ!? な、何だ!?」

 

 大斧が消えた事に驚き腕を振ると先程消えた大斧が手に顕現され地面に振り下ろされる。

 

「これは⋯⋯」

 

 確かソウルの業、と聞こえたな。武器を白い粒子として身体に取り込み、そして顕現する⋯⋯これならあの量の武器を扱えるのも納得出来る。

 

 私は取り敢えず棺桶に入っていた武器を業で仕舞い右手に大斧を、左手に大盾を持つ。

 

「⋯⋯とにかく、先に進んでみるか」

 

 私の棺桶の場所から別の場所に向かう道が一本見える。私はその先に進む事にした。

 

 何が来ても対応出来る様に大盾を構えながら先に進む。この墓地に大雨でも降ったのだろうか。異様な程に水が溜まっている。

 

 暫く先を歩いて行くと何やら剣戟の音が聞こえる。誰かが戦っているのか?

 

 丁度良い岩陰を見つけ、そこに隠れて先の様子を見ると⋯⋯

 

「はぁあああ!!」

 

 禍々しい大曲剣(ハーラルドの大曲剣)を持った修道女らしき女が黒いローブを羽織った人間を斬り殺していた。

 

「貴公、何をしているのだ?」

 

「っ!? また亡者ですか。どうやら火が陰っているのは本当の様ですね⋯⋯」

 

 修道女は何かを呟くと大曲剣を構え襲い掛かって来る。私は驚きながらも大盾を滑り込ませ、大曲剣の一撃を防いだ。

 

「くっ⋯⋯盾で防ぐとは、亡者になる前は相当な手練れだった様ですね」

 

「おい貴公、何を言っている!?」

 

「ですが、亡者程度に遅れは取りません! 盾など剥がしてしまえば良い!」

 

 修道女はバックステップで距離を取ると大曲剣と左手に持っていた黒い中盾(黒騎士の盾)を消し、小さな手鎌(湿った手鎌)燃え盛る謎の火(呪術の送り火)を取り出す。

 

「はぁあああ!」

 

「ぬぅっ⋯⋯!」

 

 修道女は手鎌を素早く振り、手鎌の湾曲した刃を利用して盾越しからダメージを与えていく。

 

「《黒炎》!」

 

「ぐおっ!?」

 

 瞬間、修道女の燃え盛る左手から真っ黒な炎が吹き出し私の大盾を僅かに崩す。どうやらこの炎は盾受けのスタミナを大きく削るらしい。もう一発喰らえば完全に崩され、大きな隙を晒してしまう。

 

『灰よ。竜狩りの戦いを思い出し給え』

 

 その言葉が聞こえた瞬間、私は盾を構え、大きく踏み込む。そして大盾を突き出すと衝撃波を発生させ修道女を吹き飛ばす。

 

「ああっ!?」

 

 修道女が吹き飛んだと同時に大盾を背中に背負い、大斧を両手に持つと倒れている修道女に振り下ろした。

 

「っ⋯⋯!」

 

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」

 

 私は修道女の顔の真横に外した大斧を持ち上げる。修道女は起き上がると困惑した表情で私を見た。

 

「亡者が、攻撃を止めた⋯⋯?」

 

「ハァ⋯⋯何度も言うが、私は亡者ではない。言葉が聞こえてないのか?」

 

「えっ⋯⋯あっ!」

 

 修道女はやっと私が亡者ではないと分かったのか、顔を青ざめて頭を下げてくる。

 

「すみません! まさか生者の方でしたとは⋯⋯」

 

「いや、両者無事だったのだから良い。所で貴公はここで何をしていたのだ?」

 

「えっと、私は貴方がやって来た方にある棺桶の中で寝かされていまして⋯⋯」

 

「む、貴公もあの場所で目覚めたのか?」

 

「貴公も、という事は⋯⋯貴方も?」

 

「ああ。まあ、それは追々話そう。それで?」

 

「あ、はい。それで目が覚め、取り敢えず先に進んだら⋯⋯」

 

 修道女の視線の先には先程殺されていた黒いローブの人間が倒れている。近付き、その顔を見ると⋯⋯

 

「っ! これは⋯⋯」

 

 肌は血の気が失せ白く、目は窪んだ⋯⋯この世界の根本、“始まりの火”が陰った時に現れる亡者そのものだった。成る程。修道女が亡者と騒いでいたのはこれのせいだったのか。

 

「⋯⋯なあ貴公。この先にも亡者がいる可能性がある。どうだ、同じ境遇同士ここは協力しないか?」

 

「⋯⋯そうですね。私の事は『修道女』と呼んで下さい。記憶が無く、名前を覚えていないのです」

 

「分かった。私も記憶が無い。だから『竜狩り』と呼んでくれ」

 

 自己紹介を終えた私達は先に進む。途中亡者が何体か居たが、修道女の実力は中々のもので一撃の内に屠っていた。

 

 そして真正面に進む道と右に進む水場の道がある。取り敢えず右に進む事にすると、先から戦闘音が聞こえてきた。

 

 走って先の様子を見に行くと、結晶が生えた巨大な魔物と俊敏な動きで特大剣を振るう何者かが戦っていた。

 

「クソッタレ! いつになったら死にやがるんだ!」

 

「貴公、助太刀するぞ!」

 

 私は大斧を構えて結晶の魔物に突撃する。修道女も大曲剣を構え私の後ろを走る。

 

「おおっ!? 誰だか知らねえがありがてえ!」

 

 私は未だ剣士の方に向いている結晶の魔物へとダッシュした際の勢いを付けた大斧の一撃は相手を怯ませるに十分の威力だった様だ。

 

「隙ありです!」

 

 すると修道女がその隙を狙い、魔物の顔面に大曲剣を二回叩き込む。魔物はその衝撃で吹き飛び体勢を崩した。

 

「死ね! この! クソトカゲがぁあああ!!」

 

 すると剣士が左手に持った変な形状の短剣を地面に刺し、それを軸として右、左と大剣を振り回しながら回転。そして飛び上がり短剣と大剣を振り下ろす。

 

 その連撃を喰らった魔物は断末魔を上げて倒れ、白い粒子となって消えていく。その際、少しの粒子が私達三人の身体に吸い込まれていった。

 

 更にまた別の粒子が私の手元に集まり、青色の謎の石が現れた。何なのだろうか、これは。ウロコ⋯⋯の様だが。取り敢えずソウルの業で仕舞っておこう。

 

「おうアンタら。さっきは助かったぜ。ありがとな」

 

「ああ。貴公は何故ここに?」

 

「え~っと、まずこっから戻って左に行った場所にある棺桶の中で目ぇ覚めて⋯⋯途中にいる亡者倒しながら探索してたらさっきのトカゲの縄張り入っちまったみてえでな。襲われて戦ってたらアンタらが来た訳だ」

 

「成る程⋯⋯実は私達も同じ場所にあった棺桶に入っていたんだ。これも何かの縁だ。暫く共に進まないか?」

 

 剣士はその言葉を聞いて少し考え、頷いた。

 

「そうだな。俺にも利点はあるし、断る理由もねえ。よろしく頼むぜ。そうそう、俺の事は監視者って呼んでくれ。名前は忘れちまったんでな」

 

「分かった。私は竜狩りと呼んでくれ。そしてこっちが⋯⋯」

 

「修道女です。監視者さん、よろしくお願いしますね」

 

「おう! 俺はこのファランの剣技の他に魔術も使えるから力不足にはならねえ事を保障するぜ。アンタらは何が出来るんだ?」

 

 そう言えば自分はこの大斧以外に何が出来るのか分かっていないな。この際に調べてしまおう。

 

「あ、私は属性を変質させた武器を敵に合わせて使います。あと本職の方程ではありませんが、呪術や奇跡なども少し嗜んでいます」、

 

「成る程、万能戦士って奴か。頼もしいぜ。竜狩り、アンタは?」

 

 監視者の言葉に記憶が無い為何が出来るか分からないと答えようとすると、バチッと頭に電撃の様なものが走り、僅かな記憶が戻ってくる。それは私の持っている武器の記憶だった。

 

「私は⋯⋯まず竜狩りの大斧と竜狩りの大盾が基本となる。そしてこの竜狩りの槍での刺突攻撃。それと愚者変質させた鉄の円盾による集中力の回復とパリィ。あとは⋯⋯竜狩りの大弓による遠距離攻撃と、太陽のタリスマンで奇跡も扱えるぞ」

 

「信仰戦士か。アンタも凄え頼もしいな」

 

「では大盾を持っている竜狩りさんが前。次に私。魔術が使える監視者さんが後ろで良いですか?」

 

「そうだな。私もそれで良いと思う」

 

「竜狩りが守り、修道女が斬り、俺が撃つって構成か。良いねえ、お伽話の勇者一党みてえで楽しいじゃねえか」

 

 監視者はクククッと楽しげに笑う。今大変な状況だというのに、楽観的なものだな。いや、これが彼の良さなのか?

 

「それでは早速先に進もう。確かまだ行っていない道があった筈だ」

 

「分かりました」

 

「おうよ!」

 

 私達はこの場所に来る道から見て右の、曇天の空が見える崖際の道に来る。

 

「おほっ。すっげー崖だな。どうだ修道女、落ちてみねえ?」

 

「何を馬鹿言ってるんですか!」

 

「いやいや、0.1パーセントくらいの確率で生き残るかもしれねえぞ?」

 

「おい貴公達。前に何かあるぞ」

 

 崖際の道を進んでいくと先の少し開けた場所に何か螺旋状の物が突き刺さっている。近付くとどうやらそれは剣の様で、何かの灰に突き刺さり燃えている。

 

「おっ! こりゃあ『篝火』じゃねえか!」

 

「知っているのか監視者」

 

「おう。この篝火ってのは俺達の持ってるコレの量を補充してくれたり、別の篝火に移動する事が出来るんだ」

 

 監視者が権現したのは黄色い液体が入っている緑色の瓶と、青色の液体が入っている灰色の瓶だ。

 

「これは⋯⋯?」

 

「あれ? 竜狩りさんも不死なら持っている筈ですよ?」

 

 修道女に言われ手に瓶が出るよう念じると監視者の物の様な瓶が権現する。中の液体は緑色の瓶が十回、灰色の瓶が五回程飲める量だな。

 

「これはエスト瓶とエストの灰瓶っていう不死の宝です。エスト瓶は生命力を、灰瓶は集中力を回復してくれます」

 

 ふむ⋯⋯私はエスト瓶を傾け、黄色い液体を飲む。その暖かな液体は私の体に染み渡り、傷を癒やしていく。

 

「普通なら補充が出来ねえエスト瓶だが、篝火の火に近付けると補充される。それに亡者共を近付けねえ力を持ってるから篝火は俺達の生命線であり、これがある場所は拠点として使えるって訳だ」

 

「成る程⋯⋯では早速エストの補充とやらを試しても良いだろうか」

 

「そうだな、百聞は一見にしかずだ。試した方が早いだろ。俺達も一旦休憩しようぜ」

 

「そうですね。私も灰瓶を補充しておきたいですし」

 

 そうして私達が篝火に近付くと、結晶の魔物を倒した時の様な白い粒子が集まり人の形を作る。何事かと思い盾を構え様子を窺うと⋯⋯

 

「う~む、また失敗してしまったか」

 

 黄色い服を纏った男が、さも同然の様にそこに立っていた。




 はいどーも、作者の蛸夜鬼の分身です。普段は小説家になろうにて投稿させて戴いてます。

 今回の作品『四人の灰は火を目指す』は私が趣味で書いてたダークソウルの二次創作作品となります。その為主人公や仲間の装備が充実していますが、その点は目を瞑って戴くと幸いです。

 さて、この作品は飽くまで趣味のもので、そして私はなろうの方を優先させてもらいます。その為、数ヶ月間投稿しないなどもありますがご了承ください。ただ投稿を止めるなどはしません。

 それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!
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