「何モンだテメェ!」
監視者は突然現れた男に剣先を向けて威嚇する。その声で男は私達に気付き、振り向いた。
「む? おお、貴様ら火の無い灰か! 丁度良い所に来てくれた!」
「⋯⋯何を言っている?」
この男は私の事を知っているのか? すると男は篝火に座り込み、近くの地面を叩く。
「ほれ、この吾輩が説明してやるから座らぬか」
「⋯⋯どうしますか?」
「敵ではなさそうだ。それに襲ってきたとしてもこちらは三人。負ける事は無いだろう」
「一応、警戒しとけよ。色々ヤバそうな奴だからな。特に性格が⋯⋯」
まあ、一人称が吾輩の奴だから性格に難がありそうなのは分かる。俺達は警戒を解かずに篝火近くに行くとそこに座り込んだ。
「では吾輩の自己紹介をしておこう。ただ名は忘れてしまったのでな。『呪い師』と呼ぶと良い。不死になる前はそれの真似事をしていたのでな」
「修道女です」
「監視者だ」
「竜狩りと呼んでくれ。それで呪い師、何を説明してくれるんだ?」
「うむ。まずあの広場が見えるであろう?」
呪い師が指差す先には円形の広場がある。私は『遠くを見たい』と思った際に顕現した遠眼鏡を覗き込んだ。
その広場の中央には、背中から謎の黒い物が蠢いている甲冑の様なものが跪いている。それは巨大で、大きさから見ても私の二倍近くの大きさがあるだろう。
「あれは⋯⋯?」
「あの者は『灰の審判者、グンダ』。我ら火の無い灰の力を試す審判者よ」
「火の無い灰って⋯⋯それ、俺達の事か?」
「ああ。この『灰の墓所』で蘇りし者はそう呼ばれ、審判者の試練を受ける。それは今後の偉大なる使命の為だ」
「⋯⋯その使命というのは?」
「それは吾輩も分からぬ。だがグンダを倒さねば先に進めぬのが事実だ」
偉大なる使命⋯⋯それは分からないが、とにかくグンダを倒さねばならないのか。
「分かった。呪い師、目的は同じの筈だ。ここは一旦協力しないか?」
「ぬぁははは! それは百も承知よ! 吾輩が極めし数多の呪術、貴様らの為に使ってやろう!」
呪い師は豪快に笑いながら立ち上がる。私達も立ち上がるとそれぞれの武器を説明し、グンダがいる広場の前にやって来た。途中に何体かの亡者がいたが、特に苦戦する事無くここにやって来た。
「さて、広場の前にやって来た訳だが⋯⋯呪い師、グンダに何度かやられていた様子だな。どのような戦いをしてくる?」
「うむ。審判者は斧槍と強力な体術を絡めた近接攻撃を仕掛けてくる。巨体だが素早い攻撃なので誰かが囮として動いた方が良かろう」
「では私が囮になろう。修道女と監視者は隙を見て攻撃。一撃離脱を心掛けろ。呪い師は確か呪術が出来るのだったな。グンダの注意が向かない程度に遠くから攻撃してくれ」
「分かりました」
「オーケーオーケー。了解だぜ」
「承った!」
三人が頷いたのを見た私は大盾と、少しでもリーチと手数を増やす為に槍を持って広場に入る。
少し先に進むとグンダが動き出し、斧槍を持って立ち上がった。
『灰よ、審判者にその力を認めさせ給え』
─────灰の審判者、グンダ
頭に響く声を聞きながら盾を構えグンダに近付く。
「貴公ら! 先程の通りに!」
私は開幕走るとその勢いを乗せて槍を突く。竜狩りの槍は雷の力を持つ。金属鎧を来ているグンダにはかなりの攻撃力が期待出来るだろう。
グンダは一番近い私に注意を向け、その斧槍を突いてくる。かなりの衝撃だが、これならまだ耐えられる。
「はぁあああ!」
「喰らいやがれ!」
修道女と監視者の二人は、グンダが私を攻撃した隙に大曲剣と特大剣を振り抜く。
「存分に堪能したまえ、我が呪術を! 《苗床の残滓》!」
更に呪い師が呪術を唱え、巨大な火球を投擲。それはグンダの胴体に当たり、周りにかなりの熱を撒き散らす。
グンダは攻撃を加えた三人の方に向こうとするが、私は槍を何度も突き注意を私に向ける。
これを何度か繰り返しているとグンダが段々と疲弊して来た様に怯み始めた。
「良し! この方法ならやれるぞ!」
「順調ですね! あ、もう一度行けますよ監視者さん!」
「おうよ! 審判者も四人には勝てねえみたいだな!」
「⋯⋯」
私達が順調に戦っている中、呪い師だけが何やら考え事をしていた。
「おかしい⋯⋯審判者とも呼ばれる者がこの様に簡単にやられるだろうか?」
「おい呪い師! 何ブツブツ言ってんだ、さっさと呪術投げろ!」
考え事をしている呪い師に、監視者が怒声を飛ばす⋯⋯その時だった。
突如グンダの様子が変わり、甲冑の中から蠢く何かが肥大化。腕の様なものを振り回し近くにいた私達を吹き飛ばす。
「ぐっ!?」
「ああっ!」
「ぐえっ! っおぉおおお⋯⋯!」
私は盾を構えていたお陰でダメージは無かったが、修道女と監視者は吹き飛ばされ衝撃に悶えている。
「貴様ら、大丈夫か!」
「い、一体何が⋯⋯」
「恐らく長い年月が経ったせいでグンダの人間性が暴走したのだろう! 言うなれば『人の膿』だ!」
その人の膿はグンダの武人的な動きとは打って変わり、まるで獣の様に暴れ回る。クソッ、攻撃する暇が無い! 動きも複雑で攻撃を避けにくいぞ!
「呪い師! どうすれば良いんだ!」
「人の膿は火に弱い! 隙さえ作ってくれれば吾輩が⋯⋯ぐおっ!」
呪い師が呪術を唱えようとした隙を突かれ、薙ぎ払いで吹き飛ばされる。
「ぐっ⋯⋯っ⋯⋯!」
私はグンダの膿の連撃を盾で防いでいるが⋯⋯それも時間の問題だ。段々と腕が痺れてきた。いつかは盾受けを崩され、そして⋯⋯
ゾクリと、背中に恐怖が這い上がってくる。幾ら復活するといっても死にたいとは思わない。かつてこのグンダに挑んだ者も、恐怖に怯えながら亡者となったのだろうか。
そんな事を考えながら膿の連撃を防いでいると⋯⋯
「うらぁああああ!!」
先程まで倒れていた監視者が勇敢にもグンダの膿に攻撃を仕掛けた。グンダの膿は監視者の攻撃を喰らう度に大きく怯んでいる。
「ふざけやがって! 深淵狩りを舐めんじゃねえぞ!」
監視者の剣技によってグンダの膿は怯む。どうやら膿を含めた深淵という存在には監視者の剣が効くらしい。
「悪いな竜狩り! さっさと決めちまうぞ!」
「ああ!」
私はその隙に槍を両手に持つ。そして
『灰よ。かつての竜狩りの雷鳴を呼び給え』
「《雷の突撃》!」
その言葉に従い槍を構え突撃。槍は雷を纏い、私はそれを突き出す。すると槍に纏っていた雷が放たれグンダの膿に着弾した。
《戦技・雷の突撃》
腰だめからの突撃で槍に雷を纏わせ
また最後の突きから、その雷を放つ
その雷はグンダの膿の頭部に直撃し、膿は断末魔を上げてその巨体を倒しソウルにして消えていく。
例に漏れずそのソウルの少しは私達に吸い込まれ、また一部は私の目の前で集まり、篝火に突き刺さっていた物と同じ螺旋の剣を顕現する。
「終わったか⋯⋯」
「ふい~。何なんだよコイツの強さ。これが審判者って事はこの先の敵はもっと強いってか?」
監視者はそう言いながら座り込む。確かに、最初でこの強さだ。この先はもっと強い者が出てくると考えた方が良いだろう。
「っと、二人を回復させなければな」
私は未だに倒れ呻いている修道女と呪い師を近くに連れてくるとタリスマンを持ち
「《太陽の光の癒し》」
奇跡の物語を紡ぎ、二人の傷を癒やす。
《奇跡・太陽の光の癒し》
太陽の光の王女に仕えた聖女たちに
特別に伝えられたという奇跡
周囲を大きく含め、生命力を大きく回復する
全てに愛されたグウィネヴィアの奇跡は
その恩恵をひろく戦士たちに分け与えた
「っ⋯⋯あ、ありがとうございます竜狩りさん」
「むう⋯⋯まさかあの様な変態を残していたとは⋯⋯すまぬな竜狩りの」
「おい! アンタら竜狩りにばっかじゃなくて俺にも礼を言うべきじゃねえのか? 俺がグンダを怯ませたから勝てたんだぜ!」
「いや、監視者さんは美味しいとこを持って行こうとしていた気がしますし⋯⋯」
「虎の威を借る狐であったな」
「て、テメエら⋯⋯」
「監視者。お前に助けられたのは私が良く分かっている。本当に助かった」
「お、おう! いや~、竜狩りはこの二人とは違うな! 分かってたぜ!」
さて、ここからどこに向かえば良いのだろうか。そう考えながら辺りを見渡すとこの広場の入り口、その対極に位置する場所に大きな門がある。
そこに近付き、門に手を掛けると
「むぅん⋯⋯!」
力を込め、門を押す。ゴゴッと低い音を出しながら門が開いていき、何とか人間一人が通れる程の大きさまで開いた。
「おお! 竜狩りの、凄まじい膂力を持っているではないか!」
「中々に重かったがな。これでも重量のある装備を着てるんだ。力には自信がある」
そして私達は門の先に進む。先には大きな建物があり次はそこに向かう事にした。
道中、やはりと言うか亡者がいたがグンダに比べて赤子の手を捻る様なものだ。特に問題も起きなかった。
「しかし、ここはそれなりに広い場所の様だな」
「そうですね。建物を調べる者と外を調べる者に分かれましょうか?」
「そうすっか。じゃあ俺は外を調べる」
「吾輩も外を調べる事にしよう」
「では私と修道女は中に入ろう」
そうして二手に分かれた私達は探索が終わったら入り口で再会する事にした。二人を見送った私と修道女は建物の中に入る。
建物の中には松明で明かりを確保されており、大きな広場の様な場所には玉座の様な物が五つ。灰塗れの中央には誰かが立っていた。
「あれは⋯⋯?」
「分かりません。亡者かもしれませんし、注意しましょう」
私は大盾を構えながら中央の人物に近付く。ある程度近付くと相手は私達に気付き、なんと頭を下げてきた。
「篝火にようこそ、火の無き灰の方々。私は『火防女』。篝火を保ち、貴方達に仕える者です」
「火防女⋯⋯?」
「はい。火防女は灰の方の使命が無事終える事が出来る様に手助けをする者です」
「ふむ⋯⋯」
どうやら敵ではなさそうだ。辺りを見渡すと何人かの人間もいる様だし、どうやらここは安全らしい。
「火防女とやら。質問なのだが、ここは何と言うのだ?」
「ここは火継ぎの祭祀場。審判者の試練を越えた者はここを始まりとして使命を果たすのです」
「祭祀場⋯⋯では、その使命とは?」
「⋯⋯王たちの故郷が集まる王国ロスリック。その各地いる薪の王を玉座に戻すことです」
その後の火防女の話によれば、蘇った薪の王は五人。その内『追放者ルドレス』を除く四人が自らの故郷に帰ってしまった。
『深淵の監視者』はファランの城塞に。
『聖者エルドリッチ』は深みの聖堂に。
『巨人の王ヨーム』は罪の都に。
そして『王子ロスリック』はロスリック城に行ったという。
「つまりその故郷とやらに行き、王を説得して玉座に戻せと?」
「はい。そういう事になりましょう」
「成る程⋯⋯分かった。それが使命というのならやるとしよう」
「ちょっ、竜狩りさん! そんな安請け合いして良いんですか!?」
「構わん。どの道断っても世界の終わりが訪れるだけだからな」
それにこの使命をどう思うかは後々じっくりと考えればいい。今は目的を持つことが大切だ。
「ありがとうございます。ここには祭祀場の従僕や貴方達と同じ火の無い灰の方が何人かいらっしゃいます。使命の協力を仰ぐと良いでしょう」
その後、祭祀場周りの探索を終え戻ってきた監視者と呪い師にも火防女は同じ事を話す。
「⋯⋯薪の王たち、か」
「だが王たちを連れ戻すのは分かったが、どこに向かえば良いのだ? この周りを探索したが辺りは断崖絶壁だぞ?」
「審判者を倒した時、一本の螺旋の剣を手に入れた筈です」
それを言われて私は先程手に入れた剣を権現する。
「灰の方。篝火に、その螺旋の剣をお示しください。貴方達を、王たちの地に導くでしょう」
「⋯⋯分かった」
私は螺旋の剣を祭祀場の中央に突き刺す。するとそれは篝火となり、火が燃え上がった。
「それに触れる事で王たちの地、ロスリックに向かう事が出来ます」
「成る程⋯⋯貴公ら。一度身体を休めてから先に進もう」
「分かりました」
「⋯⋯あいよ」
「ふむ。ではここに居る者達と一度話そうではないか。何か有益な話を聞けるかもしれん」
呪い師の言葉に頷いた私達は、取り敢えず通路方面にいる老婆と鍛冶屋らしき男へと向かう。ただ、監視者一人だけが広場に座り込んでいる戦士と玉座に座っている薪の王と話すといって一度別れる事になった。
はいどーも、作者の蛸夜鬼の分身です。今回は主人公である竜狩りのステータスを公開します。
名称・竜狩り
素性・騎士
誓約・ロザリアの指
《
総 合・350
生命力・65
集中力・60
持久力・55
体 力・80
筋 力・60
技 量・60
理 力・9
信 仰・50
運 ・10
《武器》
右手1・竜狩りの大斧
右手2・竜狩りの槍
右手3・竜狩りの大弓
左手1・竜狩りの大盾
左手2・愚者の鉄円盾
左手3・太陽のタリスマン
《防具》
兜 ・溶鉄の竜狩り兜
鎧 ・溶鉄の竜狩り鎧
手甲・溶鉄の竜狩り手甲
足甲・溶鉄の竜狩り足甲
《指輪》
・ハベルの指輪+3
・寵愛の指輪+3
・虜囚の鎖
・鉄の加護の指輪+3
《魔法》
1・太陽の光の癒し
2・放つ回復
3・太陽の光の槍
4・雷の矢
5・雷の杭
6・フォース
7・固い誓い
《道具》
・エスト瓶
・エストの灰瓶
・緑花草
・ククリ
・雷壺
・紐付き黒火炎壺
・誘い頭蓋
・不死狩りの護符
・遠眼鏡
・帰還の骨片
矢1・竜狩りの大矢
矢2・竜狩りの雷矢
こんなものですかね。ああ、主人公達は高ステータスですが敵やボスは今回のグンダの様に強くしておきます。最初の亡者? 知らない子ですね⋯⋯。
それでは今回はこの辺で。また今度お会いしましょう!