~修道女 side~
「さて、何とか闇霊を連れ出した訳ですが⋯⋯」
「警戒したまえ。あのバトルアクスの一撃は相当に強力なものだろう」
呪い師さんの言葉に頷く。目の前では首をゴキゴキと鳴らす素振りを見せる北の戦士の闇霊が立っています。
闇霊 北の戦士ノルデン。名前からして屈強で知られる北の戦士の末裔でしょう。不死になる前、一度だけその剛力を見たことがありますが、特大剣や重量の斧を軽々と振り回すその姿に驚かされたものです。
⋯⋯大斧と大盾を振り回す竜狩りさんも、もしかしたら何かの戦士だったのでしょうか。
「っと、それは後で考えましょう⋯⋯呪い師さん、私が前に出ますから呪術で援護をお願いします」
「あい分かった」
呪い師さんが頷くと同時に、私は大曲剣を担いでノルデンに攻撃を仕掛けます。相手の武器はバトルアクスとラウンドシールド。北の戦士の性格からして多少の被弾は無視して無理矢理攻撃してくるでしょう。
「一撃離脱で行きましょうか」
私は大曲剣を仕舞うと闇のショーテルを取り出します。これは曲剣の中でも取り回しやすい種類のもので、バク転しながら斬る事も出来る代物です。
「ハァアアア!」
ノルデンの振るってきた一撃を避け、その胴体にショーテルを斬り付ける。ですが、やはり屈強な戦士。曲剣の軽い一撃をものともせずに斧を振り下ろしてきました。
「っ⋯⋯今です!」
「喰らえよ我が呪術! 《浄火》!」
私が合図を出すと同時に、ノルデンの死角から近寄っていた呪い師さんが奴の胴体を呪術の火で掴みました。それと同時にノルデンの胴体から真っ赤な火が膨れ上がっていき、そして⋯⋯
「⋯⋯爆ぜろ」
強烈な爆音と共にノルデンの胴体が発火しました。その勢いは凄まじく、少し離れていた私にさえ熱風が伝わってきた程です。
《浄火》
蛮族に伝わる呪術
敵の内に火を育て、一気に発火させる
元は生贄の穢れを祓う儀式であり
故にその火は浄火と呼ばれる
どれだけ野蛮に見えようとも
あるいはだからこそ相応しく
蛮族の呪術師は、また神官なのだ
身体に火を爆ぜられたノルデンは流石に耐えられなかったのか、そのまま赤い霧となって消えていきました。
「ふう⋯⋯侵入された時は焦りましたが、勝てましたね」
「うむ。それより修道女よ、竜狩り達の様子を見に行かぬか」
「あ、そうですね。今すぐ行きましょう」
そう行って私達は階段へと向かおうとすると、竜狩りさんと監視者さんが現れました。
「おお、そっちも終わったか」
「はい。竜狩りさん達の方も?」
「おう! 俺と竜狩りの見事なコンビネーションでぶっ倒してやったぜ!」
そう言う監視者さんに、竜狩りさんは少し呆れた様に笑いました。何かあったのでしょうか?
「さて貴様ら、休んでいる暇はない。先に進むことにしようじゃないか」
そう言う呪い師さんの言葉に私達は頷き、ここから見える出口の方に向かいました。
~竜狩り side~
二人の闇霊を撃退した私達はこの塔の出口に向かう。その先には竜の遺骸が横たわっており、先には建物の屋根に繋がっている様だ。
「随分と不思議な構造だな。まさか屋根に出るとは」
「火が陰り、王たちの故郷がロスリックに流れ着いたと聞きます。その際に町の形状が変化したのでしょうか?」
「ふむ⋯⋯」
私はその事に考えを巡らせながら先に進む。途中、二人の亡者兵士が襲い掛かってきたが難なく倒し、建物の屋根に降りた。
先には平民亡者の集団が気味の悪い気に祈っているのが見える。平民亡者はどうやら私達が危害を加えなければ攻撃してこないらしい。無視するに越したことはない。
そう思って横を通り過ぎようとすると一体の亡者が立ち上がる。そして様子がおかしくなったと思うと
『GAOOOOOOO!!』
「なっ!?」
背中から人の膿が現れ、雄叫びを上げて暴れ回る。人の膿は辺りの亡者を蹴散らしながらこちらに向かって歩いてきた。
「全員、膿を倒すぞ! 呪い師、確か奴は火に弱いと言っていたな。呪術で隙を作ってくれ!」
「あい分かった! 苗床の残滓!」
呪い師は苗床の残滓を投擲。巨大な混沌の火球を喰らった膿はまた叫びながら動きを止める。
「今だ!」
その隙を突き私達は膿に攻撃を仕掛ける。流石に三人の一斉攻撃は耐えられないらしく、その巨体はソウルとなり消滅した。
「まったく⋯⋯油断も隙も無いな」
「この下は広場らしいですが⋯⋯っ!」
膿を倒し、先に進んだ修道女が下を覗くと顔を驚愕の色に染める。何事かと私も覗くと巨大な斧槍を持ち、鎧を着た巨体で広場を徘徊する謎の騎士が居た。
「何なんだ奴は!?」
「わ、分かりません。ロスリックの騎士とも違う様ですが⋯⋯」
「なあ呪い師、何か知ってるか?」
「うむぅ⋯⋯奴は恐らく羽の騎士ではないか?」
「羽の騎士?」
「うむ」
呪い師の説明によると、ロスリックでは異端とされる天使信仰、その騎士だと言う。ロスリック王妃の聖女でありながら「天使の娘」と呼ばれたゲルトルードがその発端で、ゲルトルードはロスリック城にある大書庫、その天井牢に幽閉されていると言う。
「随分と詳しいのだな」
「ロスリックでは有名な話だよ。ロスリックに住む誰しもが一度は聞いた事があるのだよ」
「ふむ⋯⋯」
呪い師の話を聞いた私は取り敢えず、近くにある梯子を降りた。どうやら先程通った屋根の建物に入る道と、広場に降りる道の二つがある様だ。
「また分かれ道じゃねえか。どうする竜狩り?」
「私は羽の騎士を倒しに行こうと思う。この建物から回避出来るかもしれないが、倒しておくに越したことはないだろうからな」
「では私は竜狩りさんに協力をしましょう」
「では先程の組み分けという事で良いのだな?」
「んじゃ、それで行きますか。それじゃあ行こうぜ呪い師」
そうして私達は広場で落ち合う事にして今一度分かれると、私は修道女と共に羽の騎士を倒しに向かった。
~呪い師 side~
「ふむぅ、薄暗いな」
竜狩りと修道女の二人と別れた吾輩と監視者は建物の中に入った。建物の中には明かりなど無く、ただ窓からの光で何とか中が見えている。
「⋯⋯おっと、待ちな呪い師」
「む、どうしたのだ?」
中を歩いていると監視者が足を止める何事かと先を見ると長槍と大盾を持ったロスリック騎士がこちらに歩いてきていた。
「またロスリック騎士か⋯⋯」
「槍騎士ねぇ⋯⋯呪い師、ここは任せな」
すると監視者は真っ直ぐロスリックの槍騎士に歩いて行く。一体何をすると言うのだ?
ロスリック騎士は監視者に気付くと大盾を構えゆっくり近付いてくる。監視者は特に何もせず、ただ武器を構えて立っていた。
「監視者?」
「だ~いじょーぶだって、待ってな」
そう言った瞬間、ロスリック騎士が槍を突く。監視者は攻撃が迫ると左手に持つ短剣を振り抜いた。
すると槍が弾かれ、ロスリック騎士は大きな隙を晒す。そこを狙い、監視者は大剣を二撃打ち込んだ。
「ヘッ! どうよ!」
「ほう、パリィか。やるではないか監視者」
だが倒し切れていなかったのだろう。ロスリック騎士は立ち上がり、背を向けている監視者に攻撃を仕掛けようとする。吾輩は直ぐさま左手に持つライトクロスボウを構え、ロスリック騎士の頭を撃ち抜いた。
「うおっ!? あ、危ねぇ⋯⋯」
「詰めが甘いぞ監視者。貴様は竜狩りの様な馬鹿げた筋力を持つ訳ではなかろう。確実に仕留めるのだ」
「おう、分かってるさ」
そうして先を進んだ我々は、背後や側面から亡者の奇襲に遭いながらも少し開けた場所の手前に辿り着いた。その広場では飢えた犬やグレートアクス、ハルバード持ちの亡者が徘徊している。
「⋯⋯数が多いな。これは骨が折れそうだ」
「だなぁ。広場にある樽は全部火薬樽みたいだぜ? どうにかして利用出来ねえかな」
「ううむ⋯⋯」
少し考えると、吾輩はソウルを権限し一つの道具を取り出す。それは青白く光り輝くソウルのにおいが染み付いた頭蓋骨だ。
「うわっ、ソウル臭ぇ! 誘い頭蓋かよ」
「うむ。これなら犬も亡者も一カ所に誘う事が出来る。投げるぞ。何か炎攻撃を出来る物は無いか?」
「ああ、それなら火矢使うぞ。先に投げといてくれ」
吾輩は頷くと誘い頭蓋を樽の近くへと投げる。するとそれに反応した亡者達がそれに近付いていく。
「よぉっし、そのまま行けよ⋯⋯」
監視者はいつの間にか権限していた白い木の弓を構えていた。そしてヒュンッという風を切る音と共に火矢が放たれ、火薬樽に接触すると爆発。辺りの亡者を吹き飛ばし、一気に殲滅した。
「ふむ、中々の腕前だな」
「流石にこの距離で外さねえよ」
そして我々は広場へと降り辺りを探索する。だが特にこれといって有用な物は見付からず、せいぜい飢えた犬が一匹隠れていた程度だ。
「⋯⋯ん? お~い、呪い師!」
だが監視者が何かを見つけた様で吾輩を呼ぶ。何事かと向かうと、監視者が一本の鍵を持っていた。
「これは?」
「分からねえ。見た感じ牢の鍵って所じゃねえか?」
「ふむ⋯⋯」
このロスリックの高壁の下には不死街という街がある。そこから高壁を登ったのだろう。ロスリックに無謀な盗人は絶えない。だから牢の鍵というのはあながち間違いではないだろう。
そういえば、闇霊が侵入してきた塔に更に下に向かう梯子があったな。もしやそこに牢があるのだろうか。
それを監視者に伝えると、一度そこに向かう事になった。先程通ってきた道を戻り、また塔内部に戻るとやはり下に向かう梯子を発見する。
「ふむ、やはりあったな」
「んじゃあ、早速降りてみようぜ」
監視者のコトバに頷くと、下にはハルバード持ちの亡者が立っていた。まだこちらに気付いていない様だ。
「先手必勝。魔法で倒しちまおうぜ」
「あい分かった。ではやるぞ? 《苗床の残滓》!」
「《ソウルの結晶槍》!」
吾輩の放つ呪術と、監視者の放つ結晶槍が亡者を襲う。亡者は混沌の火によって体を焼かれ、結晶槍で体を貫かれその場に倒れる。
「うむぅ⋯⋯呪術の使い過ぎで集中力が途切れてきたな⋯⋯」
吾輩はエストの灰瓶を権限するとそれを飲む。生命力を回復するエスト瓶とは違い、集中力を回復するエストの灰瓶は非常に冷たい。だがそれによって頭も冷えると言うものだ。
そうして先に進む。途中二体程の亡者がいたが監視者が難なく倒し、先にあった階段を降りる。
「む、誰かがいる様だな」
階段を降りた先には一つの牢と、奴隷の頭巾を被った何者かが座り込んでいる。中の奴隷頭巾は吾輩達に気付くと口を開く。
「⋯⋯ああ、あんたらは、どうやら牢番じゃあないようだね。おそらくはよそ者、それに、あの鐘の音の後だ⋯⋯もしかして、火の無い灰ってやつかね?」
「うむ、如何にも」
「だったら、一つお願いがあるんだ。ここの牢を開けてくれないか。勿論、礼はするさ。どこかに鍵があるはずさ。なあ、頼むよ」
吾輩と監視者は目を合わせると頷き、鍵を使って牢を開ける。すると奴隷頭巾は嬉しそうな声を上げる。
「ああ、ありがとう。先程言った通り、あんたらに礼をさせてもらおう。それと、すまないがもう一つお願いを聞いてくれないか?」
「またかよ。まあ内容によるな」
「まあ話だけでも聞いてくれ。この高壁の下に、汚い街がある。王たちの故郷じゃあない、昔からそこにある⋯⋯不死街さ。その街に、ロレッタという、老いた女がいるはずだ。そいつに、この指輪を渡してはもらえんかね」
そう言って奴隷頭巾が取り出したのは、希少な大宝石である青い涙石の指輪だった。
「もちろんタダとは言わん。儂の願いを聞いてくれるのなら、先程の礼も兼ねてあんたらに協力させてもらうよ。ケチな盗人だが、育ちのいいバカよりは余程役に立つ。悪い話じゃあないだろう?」
「う~ん⋯⋯どうする、呪い師?」
「ふむ⋯⋯まあ別に良いだろう。旅を続ける傍らでロレッタとやらを見つけ出せば良い。協力しようじゃあないか」
「⋯⋯分かった。あんたを信じよう。儂は不死街のグレイラット、あんたに協力させてもらうよ。だからこの指輪を、高壁の下の街、ロレッタという老いた女に渡して欲しい⋯⋯まあ、よろしく頼むよ」
そう言って吾輩に指輪を渡すとグレイラットは帰還の骨片でも使ったのか、その場から消える。
「⋯⋯では、吾輩達も一度広場に行こう。そろそろ竜狩り達も戻ってきている所だろう」
「あいよ。でもあんな安請け合いして良かったのか? グレイラットは盗人なんだろう?」
監視者の言葉を聞いた吾輩は、フッと少し笑い
「育ちの良い口八丁な貴族より、生きる事に貪欲な手八丁の盗人の方がよっぽど信用出来るのものだよ」
そう言って竜狩り達が待っている広場へと向かった。
はいどーも、作者の蛸夜鬼の分身です。今回は監視者のステータスを公開します。
名称・監視者
素性・刺客
誓約・ファランの番人
《
総 合・210
生命力・50
集中力・50
持久力・40
体 力・10
筋 力・20
技 量・60
理 力・50
信 仰・10
運 ・9
《武器》
右手1・ファランの大剣
右手2・藍玉の短剣
左手1・古老の結晶杖
左手2・白木の弓
《防具》
兜 ・不死隊の兜
鎧 ・不死隊の鎧
手甲・不死隊の手甲
足甲・不死隊の足甲
《指輪》
・ハベルの指輪+3
・寵愛の指輪+3
・狼の指輪+3
・吠える竜印の指輪
《魔法》
1・強いファランの短矢
2・ファランの矢雨
3・追尾するソウルの結晶塊
4・ソウルの結晶槍
5・ソウルの大剣
6・ファランの速剣
7・見えない体
矢1・闇の矢
矢2・火矢
監視者はタグにもある通り、技魔のステータスですね。白木の弓にしたのはフレーバーテキストを読めば何となく察すると思います。
次回は遂にロスリックの高壁の攻略が終了するかも? そして呪い師のステータス公開ですね。
それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!