四人の灰は薪を目指す   作:蛸夜鬼の分身

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 最初の頃グンダとボルドの名前を謎に間違えていたのは自分だけじゃない筈。


episode7 ロスリックの高壁・終

「っ⋯⋯」

 

 パチパチと火が弾ける音で目を覚ます。身体を起こし辺りを見ると、どうやら高壁の塔の篝火で倒れていた様だ。

 

「⋯⋯私は、死んだ筈では?」

 

 ボルドの突進で致命傷を負い、そのままメイスによって叩き潰された筈だ。だが私の身体に痛みは無く、鎧にも傷一つ付いていない。

 

「む⋯⋯気付いたのか、竜狩り」

 

 すると階段から呪い師が登ってくる。

 

「呪い師⋯⋯?」

 

「どうやら状況が分かっておらん様だな」

 

 そう言って呪い師は篝火に座る。今気付いたが、私の隣には修道女と監視者が寝ていた。これは一体⋯⋯。

 

「⋯⋯私は死んだのではないのか?」

 

「ああ、確かに死んだ。貴様はボルドのメイスに叩き潰されてな」

 

「ならば何故⋯⋯」

 

「何故今ここで生きているのか、だろう?」

 

 思考を読み取ったかの様に、呪い師は私が言おうとしたことを口にする。私は少し戸惑いながらも頷いた。

 

「⋯⋯良いか? まず吾輩達は火の無い灰だ。だがそれ以前に不死でもある。それは分かっているな?」

 

「ああ」

 

「不死とは、文字通り死なない。というよりも、死んでも最後に休憩した篝火で復活するのだよ。全てが巻き戻ったかの様にな」

 

「だからか⋯⋯そうだ、貴公らはあの後どうなったんだ!?」

 

「死んだよ。貴様と同じ様に、ボルドによってな」

 

「っ⋯⋯!」

 

「修道女は振り向きざまのメイスに吹き飛ばされ壁に激突。監視者は奴の吐いた冷気のブレスで凍死。吾輩はあの巨体によって押し潰された」

 

「⋯⋯」

 

 私のせいか⋯⋯私が相手を見定め、しっかりとした作戦を立て、マギアを倒した時に油断しなければ⋯⋯。

 

「クソッ⋯⋯!」

 

 私は拳を地面に叩き付ける。何が竜狩りだ⋯⋯あの様な獣一匹狩れないで⋯⋯実力に傲っていた自分が怨めしい。

 

「うぅ⋯⋯ん⋯⋯」

 

「⋯⋯ぉんの冷凍駄犬がぁあああ!! ⋯⋯アレ?」

 

 すると気絶していた修道女と監視者が起き上がる。

 

「⋯⋯あ、竜狩りさん! 良かった、みんな無事ですね」

 

「おお、みんな復活したんだな。あークソッ。あの冷凍駄犬がブレス吐くとは思わなかったぜ⋯⋯」

 

「⋯⋯」

 

「あれ、どうしたんですか竜狩りさん?」

 

 私が黙っていると修道女が顔を覗き込んでくる。私は三人に向き直ると頭を地面に擦りつけた。

 

「⋯⋯貴公ら、すまない!」

 

「えっ!?」

 

「ちょっ、どうしたんだよ竜狩り!」

 

 私が頭を擦り付けると、二人は驚いた様な声を出す。だが呪い師だけは分かっている様で、ただ黙って静観している。

 

「すまない! 私が力に傲り、油断しなければ貴公らが死ぬ事は無かった⋯⋯本当にすまない!」

 

「⋯⋯竜狩り、ちょっと頭上げろ」

 

 監視者がそう言うので、恐る恐る頭を上げる。するとピシッと音がして少しだけ兜が揺れる。どうやら監視者が私の兜に弱く手刀を当てた様だ。

 

「一回死んだくらいでウダウダすんなよ。別に俺ぁ気にしてねえさ」

 

「だが⋯⋯」

 

「監視者さんの言うとおりですよ。私達は不死なんです。一回や二回、なんてことないですよ」

 

「吾輩はグンダ戦で何度も死んでいるぞ? 今回の失敗など気にしないに決まっておろう」

 

「貴公ら⋯⋯ありがとう⋯⋯!」

 

 私はもう一度頭を下げる。三人は気にしていない様だが、今回の事を心に刻もう。次はこの様な事が起きない様に。

 

 そして私達は一度最初の篝火に戻ると、そこからエレベーターを使ってボルドの広場の前までやって来る。前と違うのは入り口に濃い霧が掛かっており、肌を刺す様な冷たい殺意がヒシヒシと伝わってくる事だろうか。

 

「何だぁこの霧?」

 

「最初はこんな霧⋯⋯そうだ、グンダの広場に入る時もありましたよね?」

 

「⋯⋯もしかしたら、大きな障害を前に死ぬと次からはこの様な霧が掛かるのかもしれないな」

 

「うむ。そういえば貴様らが来る前に、吾輩がグンダと何回か戦ったのは知っているだろう。どうやら死んで篝火に飛ばされると相手の体力が戻る様なのだ」

 

「それって⋯⋯」

 

「おいおい、折角削ったボルドがピンピンしてるって事かよ」

 

「⋯⋯もっと最悪なのは、マギアが復活している事だろうな」

 

 私がそう言うと、修道女と監視者が顔を青ざめる。本当はこの様な事など考えたくないがな⋯⋯。

 

「では、マギアが復活していると考えて作戦を立てようではないか。まずマギアがいる時はボルドは大人しく、基本的に奴の命令が無ければ自主的に動く事はないな」

 

「ああ。そしてマギアを倒すとボルドが狂暴化して暴れ回る。あの様子と監視者達の死亡原因を考えると動きも変わっているだろうな」

 

「じゃあ最初にボルドを倒してしまえば⋯⋯あっ、でもマギアが邪魔するんですよね」

 

「ああ。せめて魔術をどうにかしなければならない。せめてダメージを軽減出来れば⋯⋯」

 

 そう思った所で、私は一つ案を思い付く。だが実際成功するかは分からない⋯⋯取り敢えず三人にその案を話すと、それで行こうという事になった。

 

「では、行こうか」

 

 私は大斧を担ぎ、とある奇跡を唱えた。そして竜狩りの大盾⋯⋯ではなく別の大盾を持つと、私達は霧の壁を抜け広場に入る。目の前にはボルド。その隣から再びマギアが侵入してきた。

 

「やるぞ貴公ら! 作戦通りに!」

 

 私と修道女、呪い師は相手を中心に散開。敵の注意を分散させる。そして私はタリスマンを取り出し

 

「《太陽の光の槍》!」

 

「《炸裂火球》!」

 

 呪い師と共に魔法を放つ。攻撃性のある奇跡の中でも特に威力のある太陽の光の槍と、投げると炸裂して無数の火球となり広範囲に飛んでいく炸裂火球は巨体のボルドに良く当たる。

 

 マギアは魔法を扱う私達から倒そうとボルドを操るが、あの活性化しているボルドで無いのなら十分に避ける事は出来る。マギアの魔術も、今回はしっかりと対策してきている。

 

 それは今持っているタワーシールド。名を結晶のロスリック騎士大盾。魔力属性のダメージを、なんと九割も防いでくれる様だ。

 

 そして鉄の加護の指輪を魔力属性のダメージを軽減する魔力方石の指輪に付け替え、奇跡の大魔力防護で更に魔力ダメージを軽減する。今の私には魔力ダメージは殆ど通らないだろう。

 

「はぁああああ!!」

 

 マギアとボルドの注意が私達に向いている間に、修道女が大曲剣でボルドを斬る。そして修道女に注意が向くと、私と呪い師がボルドに魔法を放つ。

 

 最初はマギアを最初に倒してしまったが為に全滅したが、今回はボルドを最初に倒そうという作戦だ。そんな戦いを繰り返しているとボルドが怯んだ。ボルドは体勢を立て直す為に大きな隙を晒す。

 

「今だ、監視者!」

 

「応よ!」

 

 すると霧に入ってから今まで魔術の見えない体で隠れていた監視者が声を上げる。そして透明の体のまま、白木の弓の戦技を放った。

 

 

《白木の弓 戦技「見えない矢」》

 

大きく引き絞り放たれた矢は

黄金の魔力を纏い、ほぼ透明となる

 

 

「追尾性のある闇の矢だ! 落ちろ糞魔術師!」

 

 黄金の魔力を纏った矢は、吸い込まれる様にマギアへと直撃。ボルドという足場が不安定になっていたマギアはそのまま地面に落下した。

 

「オマケだ、吹っ飛べ!」

 

 監視者は落下したマギアを蹴り飛ばしボルドから離す。良し、奴らを分断することに成功した! あとはボルドを⋯⋯!

 

「修道女と呪い師はそのままボルドへ攻撃! 監視者もボルドへの攻撃に参加しろ! 私はマギアへの牽制に入る!」

 

「分かりました!」

 

「あいよ! 誤って殺すんじゃねえぞ!」

 

「あい分かった! 今度こそ引導を渡してやろうではないか!」

 

 三人は意気込むとボルドへ攻撃を仕掛ける。さあ、私も自分の仕事をしようじゃないか。

 

「来い、マギア。貴公の相手は私だ」

 

 私は竜狩りの槍と大盾を構えマギアと対峙する。だが何故がマギアは諦めたかの様にその場に立ち止まる。

 

「⋯⋯?」

 

「竜狩りさん!」

 

「何だ⋯⋯っ!?」

 

 すると後ろからボルドが突進してくる。私は何とか避けたが、ボルドはそのままマギアを轢き、そのままメイスを叩き付けて撲殺した。

 

「なっ!?」

 

 ボルドがマギアを殺すなど誰が予想出来るだろう。マギアが死亡し、案の定ボルドは狂暴化した。

 

「グッ⋯⋯!!」

 

 そして一番近い私に突進を喰らわす。盾で受けたが、最初の戦いで致命傷を負わせたその突進は盾ごと私を吹き飛ばす。

 

「竜狩りさん!」

 

「大丈夫、だ⋯⋯! 気を付けろ!」

 

 クソッ、ふざけるな⋯⋯ここまで来てまた死亡など、認められるか!

 

 そう思い立ち上がると、ボルドは旋回して再び突進。それを避けるが、三度目の突進を繰り出してくる。

 

「くどい!」

 

 私はそれも避けると、旋回したボルドの頭部に斧を叩き込む。だがボルドは怯むことはなく、口に冷気を溜め始めた。これは⋯⋯冷気のブレスか!?

 

「《苗床の残滓》!」

 

 すると背後から呪い師の呪術が飛んでくる。それはボルドの頭部に当たり、ボルドは大きく怯んで隙を晒した。

 

「よくやった呪い師!」

 

 私は走り出しボルドへと近付くと、その隙だらけの頭部に斧を一撃。そして力を溜めてもう一撃叩き込む。

 

「修道女は相手の隙を見て攻撃! 監視者と呪い師は十分距離を取って魔法で攻撃しろ! 私は奴の気を引く!」

 

 ボルドが大きく体勢を崩したと同時に、三人へと指示を飛ばしながら竜狩りの大盾へと持ち替える。更にスズメバチの指輪を頭蓋の指輪へと付け替えた。

 

 

《頭蓋の指輪》

クールラントが錬成した秘宝のひとつ

「魂喰らい」のソウルに由来するもの

 

《i》《/i敵から狙われやすくなる

 

「魂喰らい」は無限のソウルを吸収し

己の力とする化け物であったという

その呪われた死骸が燃え尽きようと

ソウルの臭いの消えることはなかったと

 

 

「さあ来いボルド!」

 

 私は盾を斧で叩き挑発し、こちらに気を向けさせる。ボルドは私へとゆっくり顔を向け、咆哮すると私へ二度右手を叩き付ける。私は盾で防いだが、ボルドその巨体で押し潰そうと身体を持ち上げる。

 

 だがそんな予備動作が長い攻撃など当たる訳が無い。私はそれをバックステップで避け、そのまま斧を頭部に叩き付ける。

 

「《断ち切り》!」

 

 修道女はボルドの背後から近付き、大曲剣の戦技らしき技を使う。大曲剣を両手で持ち、それを勢い良く何度も叩き付けた。

 

「《ソウルの結晶槍》!」

 

「《苗床の残滓》!」

 

 そして例のごとく監視者と呪い師が結晶槍と残滓を発射。三人の攻撃を喰らい、ボルドは大きな隙を晒す。

 

 私はその隙を狙い、力を込めた一撃を入れる─────

 

『灰よ。貴公の持つ大斧の力を、竜狩りの力たる雷の力を振るい給え』

 

 そう考えた矢先、例の謎の声が頭に響く。私はその声を聞くと身体が自然に動く。盾を背負い、斧を両手に持つとそれを高々と掲げた。そして⋯⋯

 

「⋯⋯戦技─────」

 

 ─────《落雷》。

 

 

 ガァアアアアアアンッッッ!!

 

 

《落雷》

竜狩りの大斧の戦技

 

大きく掲げた斧に激しい雷を纏い

それを地面に叩きつけ落雷をなす

 

 

 雷を帯びた斧をボルドの頭部に振り下ろすと、それと同時に帯びていた雷が落雷と化す。その一撃はボルドの命を刈り取るのに十分で、これを喰らったボルドは断末魔を上げてその巨体を地面に倒し、ソウルとなって消え去った。

 

「ハァッ⋯⋯ハァッ⋯⋯」

 

「倒、した⋯⋯倒しましたよ、遂に!」

 

「ヘ、ヘヘッ⋯⋯やってやったぜ!」

 

「ぬぁはははは!! 遂にボルドを倒したぞ!」

 

 三人はボルドを倒した事に喜び、歓喜の声を上げる。だが私は先程の感覚に気を引かれていた。

 

 先の戦技を使ったとき⋯⋯今まで忘れていた何かを思い出した様な気分だ。私の記憶は、この旅の課程で思い出されていくのだろうか⋯⋯。

 

 そんな事を考えていると、ボルドと戦っていた場所にあった巨大な扉が開く。その先には、エンマが話していた高壁の下が見える。どうやら大きな町が広がっている様だ。

 

「貴公ら、喜んでいる所悪いが一先ず祭祀場に戻り休息を取ろう。丁度篝火があることだからな」

 

「そうですね⋯⋯流石に気を張りすぎて疲れましたからね」

 

「ふぃ~。んじゃ、俺ぁ早速戻らせてもらうぜ」

 

「うむ。休息無くして旅は出来んからな」

 

 そうして三人は我先にと篝火に近付き、火を灯すと祭祀場へ転送していく。私も戻ろうとした時、目の前にソウルが集まり、巨大なソウルの塊となった。

 

 

《冷たい谷のボルドのソウル》

冷たい谷のボルドのソウル。

 

使用することで、大量のソウルを得るほか錬成によりその力を取り戻すこともできる

 

ボルドは冷たい谷の外征騎士の一人であり常に儚い踊り子の側にあったという

 

 

「ボルドのソウル、か⋯⋯」

 

 私はそう一言呟くと、それを業を使って仕舞い篝火から祭祀場へと戻った。




 はいどーも、作者の蛸夜鬼です。多機能フォームを使ってみたんですが、凄いですねコレ。感動したわぁ⋯⋯。

 もしかしたら今後も多機能フォームを使う機会があるかもしれないですね。コレ楽しいですし。

 あ、あと二ヶ月以上不投稿で申し訳ないです。今後はもう少し頻度を上げようと思っています。

 それでは今回はこの辺で。また今度お会いしましょう!
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