蛇足と感じる人も多い気がしたから章のタイトルにした。
暇つぶし程度かな。
1
ちゃんと通ってると言えるか微妙なところだけど、少し学校生活に慣れてきたかな。ってことで、オレは動く。
「あのさ、悪いんだけど、次の授業だけ席かわってくれない?」
「えっ、ええ!?……も、もちろん」
基本的にオレとしか会話しないからか、すげー驚かれた。けど、目的は達成。まぁ断るわけないよねとオレも思う。だってね、毎日のようにヒバリさんと追いかけっこしてるし。それにさらっと初日にあの人衝撃発言しちゃったからね。すぐさま噂は広がってオレの友達以外誰も近づかなくなったもん。や、それはいいんだけどね。オレがちょっと気恥ずかしいだけ。
「あれ?ソラ?」
視線を集めながらもガタガタと机を移動させる。ちょうどオレの席にふっつけ終わったところでオレが帰ってきた。相変わらず3人組で行動してどこか行ってたんだろうね、仲良いね。
「一緒に授業受けさせてみようかなって」
パァァとオレの顔が輝いた。ちょっとでもオレが面倒な表情すればやめたけど、そんなことはなかったね。まぁそんなことはないとわかりきってたから、相談すらせずに動き出したんだけどさ。
「ちゃんとオレが抑えてるけど、君の方でもわたしを落ち着かせてね」
「うん、わかった」
獄寺君と山本もさっきの会話でわかったのか、周りにちょっと離れるように声をかけていた。いやまぁ、獄寺君はガン飛ばしてるようにしかみえないけど。やらないよりはいいよねと放置。にしても、すげードキドキしてるなぁなんて思いながら、出ておいでとわたしに声をかける。
「……本当にいいの?」
「もちろん!ソラ、おいで」
オレが腕を広げて待ってくれてるから、わたしはそこに飛び込んでぎゅーと抱きつく。けど、すぐに周りの視線が気になった。わたしがピリッとしたのがわかったのか、オレがよしよしと頭を撫でながら声をかけてくれた。
「大丈夫。悪い人がいたらオレが倒すよ」
「ふふっ。相変わらず過保護だね。でも今回はありがとうかな。実は一度でいいから君と一緒に受けてみたかったんだ。もう一人のわたしにはバレちゃってたみたい」
「そうだろうね。いくら母さんの頼みでも、ソラがそう思ってなかったら、もう一人のソラは断ってたよ」
「えー、君にもバレバレだったのー?」
「だってオレ達双子だよ?」
じゃ、しょうがないね。とわたしが納得していると授業が始まるチャイムがなった。それをきっかけにオレから離れて席に座る。まぁ座った途端に、オレの左腕に抱きついたけどね。邪魔かなと一瞬思ったけど、すぐに感じたのかまた頭を撫でられちゃった。周りも会話で二重人格って察したみたいで、視線が減ったよ。ちょっとは息がしやすくなったかな。
先生って呼ばれる人が来て、わたし達をみて一瞬驚いたけど何も言わなかったよ。ヒバリさんってやっぱ凄いねともう一人のわたしと会話する。そうなんだけどさぁ……とどこか納得できないような返事がかえってきたよ。素直になればいいのに。
わたしを気にしつつも、オレは普通に授業を受けていた。それをわたしが望んでるからね。まぁわかんねぇ……って顔をしてるけど。
「しょうがないなぁ」
「へ?」
勝手にオレの筆箱からペンをとって、この問題の解き方をノートに書き込む。オレに2度見されちゃったよ。
「ソラはわかるんだ……」
「そりゃね。わたしにはもう一人のわたしがいるし」
「あ、そっか」
「まぁもう一人のわたしが出来ることは、君も出来るようになるってことだけどね」
みるみる内にオレの顔が青ざめた。まぁ気持ちはわかんなくもないけどさ。それだけスパルタがこれから待ってるってことだしね。当然リボーンも気付いてるから手を緩めることはないね。もう一人のテストの点数をみてそれを最低限の基準にするだろうし。ほら、可哀想なオレってわたしの中で呟いでるよ。
「んー歴史とか理科は苦手だって。覚えてないって言ってるね。やろうと思えば出来るらしいけど」
「やらないで!?お願いだから!!」
オレ、声大きいよ。みんなこっち見ちゃったじゃん。まぁいいいや、返事してあげよ。
「いいよ。わたしも興味ないし、勉強する時間があるなら遊びに行くよ」
ヒクっと先生と呼ばれる人が頬を引きつらせてるね。真面目にやりません宣言だもん。相手がわたしだから何も言えないけど。
「ちょっと待って!?遊びに行くってどこに!?」
「骸とか骸とか、骸とか、XANXUSとか、骸とか?」
「ほとんど骸じゃん!?や、XANXUSならいいっていうわけじゃないけど!!」
「あ、もう一人のわたしはヒバリさんのところへ行くから、そこもだね」
「そういうことじゃないよ!?」
んー相変わらず過保護だね。後、やっぱ声大きい。
「もう。わたしと授業うけてくれるんじゃないの?」
「ゔ。……わかったよ」
渋々納得してくれたけど、後で大変そう。よろしくねーなんて丸投げする。……ゲンナリしてるよ、怒っていいのにね。
「あ、噂をすればだね。ヒバリさん来るっぽいよ」
「……いつも思うけど、なんでわかるの?や、直感が凄いのはわかってんだけどさ。それでも凄いなって」
「あの人は特別かな。獲物を狩ろうとする気配がビシビシ感じるんだもん」
「え、獲物って……まさか……」
「うん、もう一人のわたしのことね。最近までは咬み殺そうとしてだけどさ。でもすごい執念だよね、追いかけっこも6年ぐらいやってるんじゃない?」
「んなっ!?そんな昔からやってたの!?」
なんて話してると、扉が開いた。誰ももう動じなくなってるよ。初日以外ずっと逃げてたからこんな感じになってるなんて知らなかったなぁ。
「……君の方ね」
ふふっと思わず笑ってしまったよ。ついに逃げなくなったと一瞬喜んじゃったんだろうね。まぁみんなには驚いたようにしか見えなかったと思うけど。……気付いてあげなよ。なかなかこの鈍さは直んないねーなんて会話しつつ、ヒバリさんに視線を向ける。
「せっかくだし、今日のお昼はわたしと食事しましょ?」
「いいよ」
「天ぷら食べたいなぁ」
「……僕にそんなこと言えるのは君ぐらいだよ」
はぁとため息を吐きつつも、すぐに電話かけてるよ。まぁ命令するだけで草壁さんが全部するんだろうけど。それでも隣でオレが衝撃受けてるよ。まぁ衝撃を受けてるのはオレだけじゃないけどさ。……この子はモジモジして可愛いね。わたしの表情に出さないところは流石の一言だけど。今は表にわたしが出てるから、迷惑かけちゃうとか思ってるんだろうね。頬ぐらい赤くしてもいいのに。この人は喜ぶよ、絶対。
「あ、そうだ。あの子は言いにくいみたいだから教えるね。もう生活費はいらないよ」
「……理由は?」
「察してるでしょ?」
ムスッと機嫌悪くなったよ。わたしはこの反応が面白いとしか思えないんだけどね。もう一人のわたしはあわあわしてるけど。
「ソラ、どういうこと??」
「えー、察し悪いなぁ。まぁいいよ、教えてあげる。調べたみたいでさ、わたしが彼に依存状態なのが気にくわなかったみたいで、会うたびに札束ぽいぽい投げられるの。しょうがないから、生活費だけ抜き取ることにしたの」
「…………XANXUS?」
うんとわたしが肯定すると、オレが頭を抱えたよ。まぁお金ほしいってわたしが言っちゃったのが、調べようとしたきっかけなんだけどね。それは言わないけど。だってわたしはどっちでもいいし。
「そこで手を打っときなよ。彼はそれで満足したみたいだし。喧嘩なんて売ったらあの人はとことんやるよ。あの人も負けず嫌いだもん。多分あの部屋ぶっ壊して、屋敷とか、ホテルとか建て始めるよ。先に底をつくのはヒバリさんだからね。まず親が親だしねぇ」
「……そうだった。あいつ、あの人の息子だった……」
や、君のおじいちゃんでもあるんだよ。現実逃避しないの。わたしは絶対認めないけど。
「まぁ親とは仲悪いから絶対頼らないだろうけど。わたしだって拒否するし。素直に受け取るのはさ、あそこのトップの地位を勝ち取ったのは、間違いなくXANXUSの実力だから。王様気質だから滅多に働かないけど、部下が稼いでくるからお金には苦労してないし。というか、あそこヤバイよね。真面目に働けって一番文句言ってる人がさ、一番せっせと働きながら世話焼いてXANXUSが住みやすい環境を整えてんだよ。あれはもう手遅れだね」
誰のことかわかったのか、山本と獄寺君は噴き出した。オレは現実逃避中だから、遠い目をしてたけど。
「やる気を出したら誰よりも成果をあげるってわかってるから、許されてるのもあるんだけどさ。でも普段はなんもしてないのに、世界でもトップクラスの収入をずっと得てるし、まったくお金には困ってないんだよ。だけど、普段生活するのはあの子の方だから、手をまわさずに札束だけぽいぽい投げてくるだけにして生活費を受け取ったら満足したの」
ちゃんと意味わかってる?とヒバリさんに視線を向ける。あの部屋を選んだのはあの子だからね。ヒバリさんがもっといい部屋を用意できるのはXANXUSだってわかってるよ。生活費を抜き取る時だって、そんなもんで足りんのかという目は向けられても、鼻で笑うようなことはしなかったよ。
「でもなんでわたしたちの周りは金銭感覚おかしい人ばっかりなんだろうね?普通はさ、簡単に家とか用意できないのにね」
「本当だよ……。って、そういう話じゃないよ!?なんでそんなことになってんの!?」
あ、オレが復活したよ。
「さぁ?でも大丈夫じゃない?リボーンが言ってたよ。どっちもケチくさいこと言わねーから問題ねぇだろって」
「そういう問題!?」
「えー、大事なことだよ。もう一人のわたしは気にしてるけど、わたしはくれるっていうなら貰うもん。貢いだ金額で選べとか、選ばれなかったら使った金額を返せとかいう男なら、最悪じゃん」
「そんなこと言ったらオレが払うから!!」
「ほら、君もすぐ貢ごうとするじゃん」
「オレは家族だから!!」
そりゃ家族だけどさぁ。別にオレが払う必要ないじゃん。わたしが裏家業でもして払えばいい話だもん。やらせたくないからオレが払うって言うんでしょ。
「まぁ間違いなく負ける勝負だよ。だからそんな勝負仕掛けたら、もう一人のわたしはもう会わない道を選ぶだろうね。だってあの子はヒバリさんのことが大事だもん」
最後の言葉が決定打になったのか、ヒバリさんはため息を吐いて全部のみこんだよ。
「苛立ちを抑えたヒバリさんに良いこと教えてあげる。さっきも言ったけどあの子は気にするタイプだから。XANXUSはわたしのためにだから受け取れるけど、ヒバリさんはあの子のためだから素直に受け取れないんだよ。だからあの子は自立を目指してるよ。わたしはそんな表に出ないけどさ、わたしが会いたいと思う家族や骸、XANXUSとの時間から削ると思う?」
なんで言っちゃうのー!?って叫んでるね。でも言わないとさ。XANXUSから生活費をもらうことになった時点で前提が変わっちゃったし。ヒバリさんからは何一つ受け取らないつもりとか、悪手だよ。
「ヒバリさんはもうちょっと女心を学んだ方がいいよ。わたしなら良い手でも、あの子には合わない手を何度か打ってるよ。まぁあの子自身が鈍いから、読み取るのは難しいのはわかるんだけどね。けど、あの子が本気出したら追いかけっこが成立するわけないんだよ。この前、それを学んだでしょ」
あの子怒っちゃって、会わないように動いてたもんね。それを思い出したのか、ムスッと機嫌悪くなっちゃったよ。そういうところとか、ダメだよねーなんて思う。勝ちたい気持ちをすぐ優先するんだもん。特に問題は強い人とバトルが出来るなら、あの子の扱いが雑になるところは本当にダメ。……でもそれがヒバリさんだし、じゃないの。もう鈍いね、ほんとに。
「あの子はわたしが幸せなら、それでいいんだよ。一生表に出ないことだって考えるぐらいバカな子だし」
「え……どういうこと……?」
「そんなの無理ってわたしがちゃんと伝えたよ。XANXUSでも数日しか持たないよ、その後はずっと君か骸に抱きついてないとおかしくなるだろうね。というか、それでもキツイよね」
みんな殺しちゃったらいけるだろうなぁ。なんて考えてたらオレに抱きしめられちゃったよ。伝わっちゃったみたいだね。
「んーもう戻るね。天ぷらはあの子と食べに行って。あの子は疲れてるだろうから、優しくしてあげてよ」
さっさと戻ろうとしたんだけど、オレに待ってって呼び止められたよ。
「なに?早く言って」
「また一緒に授業受けようね!絶対だよ!」
「君の頼みでも無理だよ」
「ソラ!!」
「そりゃ君との授業は楽しかったけど、一瞬でもチラついただけで、必死にあの子がダメだよって止めてくれてるんだよ?わたしはさ、君の望むような普通の生活はできないよ」
抱きしめられてるから顔は見えないけど、涙流すのを耐えてるんだろうなぁ。わたしじゃなくて、あの子だったら泣く気がする。
「わたしはあの子を通してで充分だよ。じゃ、またね」
「……うん。またね、ソラ」
ふぅと大きな息を吐いたオレは、抱きしめるのは継続しつつもオレの頭を撫でながら言葉を探す。……泣いちゃったよ、やっぱり。
「あーうん、悪い。ちょっと早かった……という話でもないか」
遅かれ早かれ起きた問題だしねぇ。夜の炎を得た時点で無理だったんだよね、表社会で生きることなんて。薄々察してたけど、まさか一度でわたしが無理って判断するとは思わなかったなぁ。もうちょっと早く変わればよかったよ。……でもオレも止めることに必死だったからなぁ。もうちょっとでメスを出すところだったし。
うーん、やっぱ詳しい事情を知ってるのか京子ちゃんとクロームも泣いちゃったね。オレにつられたのもありそう。
「母さんは天然でだけど、君と一緒に奮闘してるのはわたしにも伝わって喜んでるよ。まったく無駄とかじゃないから。………ええっと、君と授業うけて楽しかったのもあの子の本音だからね。すごく楽しそうだったよ。…………うん、だからオレの方からももう一回誘ってみるよ。なんとかなるって。………その、ごめん、オレもっと頑張るからさ、元気出して」
静かに泣くだけでオレの反応がなくて、この教室の空気が気まずいなぁなんて思いながら必死に考えながら話してると、近づいてくる気配がして顔をあげる。怖っ、機嫌最悪じゃん。
「え、ちょ、離れた方がいい気がする。すげーヒバリさんが怒ってる。や、群れてるのはわかってるんだけどさ」
なんてアタフタしながらも早口でオレに伝えてたら、ヒバリさんが目の前にいるオレの首根っこを捕まえてぶっ飛ばしたよ。無理やり引き剥がされてちょっとオレも痛かった。咬み殺されるよりはマシなんだけど。ぶっ飛ばされた方のオレは背中とかに机ぶつけて超痛そう。まぁそんなことされたら獄寺君はキレるだろうなぁと思ったら、すごい眉間に皺を寄せてるだけだったよ。山本も似たような反応だし。それにオレも相変わらず静かに泣いてるだけで、痛いとかも言わないね。……えっと、オレはどうしたらいい感じなの?
「君がショックを受けてるのはまだいい。けど、彼女に今何を言わせたのか、わかってる?」
「えっ、なんか言っちゃまずいこと言っちゃいました?」
「……もういいよ。天ぷらだっけ、食べに行くよ」
や、でもオレが変みたいだし、オレがまずいこと言っちゃったみたいだしさぁ……とオレを見ていると、痺れを切らしたのかヒバリさんに手首掴まれて動く羽目に。
「君がいるのは逆効果だよ。あの小動物にとってもね」
そういうもんかなとオレはヒバリさんと一緒に大人しく出て行ったよ。リボーンが出てくるだろうし、大丈夫でしょ。オレだしね。
その後、ヒバリさんはわたしが言ったからなのか、すげー優しかったよ。なにが一番凄かったってさ、オレがバイトでもしようと考えてることを怒らなかったこと。もちろん何も言われなかったわけじゃないんだけどさ。怒るんじゃなくて、僕からじゃ受け取れないのってスネたような態度とられたんだよ。可愛いなぁと思った時点でオレの負けでした。思わず頬が赤くなって、そんなことないですってニコニコしながら言っちゃったもん。
……あれ?オレもしかしてこういう態度に弱いの?え?ヒバリさん狙ってやってないよね?え?違うよね?流石に。ヒバリさんだよ?
若干混乱しつつも、天ぷらは美味しかったよ。流石ヒバリさん、良い店を知ってるよね。もちろんヒバリさんの奢りでした。……いくら鈍いって言ってもやらかさなかったよ。それぐらいはわかる。
食事の後はオレがわたしのために行動するとわかってたのか店で別れたよ。向かう場所にイラっとはしてるだろうけど、まったく態度には出さなかったね。ほんと、今日のヒバリさんは優しかったよ。
ってことで、わたしにどこに行く?と聞いたらXANXUSのところがいいという返事がきた。今日は骸じゃないのねとオレは人気のないところで飛んで移動。
「……あれ?」
睨むのやめて。オレ、お前の考えてることほんとわかんないから。や、こっちはやっと陽が出てきたぐらいの時間だから、お前寝てたっぽいし悪いとは思ってるけどさ。あとわたしじゃないからイラっとしたのもわかる。けど、それ以上はわかんないからね。お前、睨みだけでいろんな意味込めすぎなんだよ。
「ま、待った。わたしがここに来たいって言ったんだよ。それは間違いないから」
どうしたの?出てこないの?なんて声をかけるけど、返事はないだよね。
「チッ」
いやだから、通訳頂戴。機嫌悪そうに起き上がってきたけどさ、これ逃げた方がいいんじゃないの?あ、それはダメなのね。やっと返事がかえってきたよ。って、かわってよ!?
「ええええ!?」
「るせぇ」
だって、荷物担ぎするなんて思わないじゃん!?いやまぁこれ以上叫ぶのはダメなのはわかったから、口は押さえてるけど。そのままボフンっとベッドに落とされました。はぁ!?
「ま、待った。オレ、お前とは絶対無理だから。かわるから、ほんと待って」
……違ったよ。バカだろコイツ、みたいな目で見られたのはわかった。すげー恥ずかしいじゃん。穴があったら入りたい……。
オレが百面相してる間に、XANXUSは寝る態勢に入ってもう目をつぶってたよ。もちろんオレもベッドに居るから隣で。……わっかんねぇ!?とオレが叫びたいのを我慢してると、助かったよとわたしが言った。出てくる気になったみたいだね。よかったよかった、ほんとに。
「XANXUS、ごめんね。でもありがとう」
返事はないけど、絶対起きてるね。このままわたしが起きるまで、ベッドから出ずに付き合ってくれるんだろうなぁなんて思いながら目を閉じた。
「う゛お゛ぉい!?」
……まさか目覚めがスクアーロの声とは思わなかったなぁ。XANXUSが銃をぶっ放したのか凄い音したし、起きようっと。
「おはよう、XANXUS」
もういいのかって顔されたけど、もういいよ。わたしはお昼寝だったし、結構寝ちゃったけどさ。ちゃんと伝わったのか、動き出したよ。暇つぶしに本は読んでたみたいだけど、やっぱベッドからは出てなかったね。
うーんっと身体を伸ばして、わたしもベッドから出る。あーやっぱり銃だったんだね。綺麗に壁が貫通してるよ。スクアーロはよく避けたね、あとよく抗議する元気があるよね。絶対手遅れだよ、どっちも。
XANXUSのようにわたしも聞き流し、洗面所を勝手に借りる。うーん、制服が皺だらけだなぁ。帰ってからアイロンかけないとダメだろうなぁ。
「ね、シャワー借りるよー?」
チラッと見れば好きにしろって目をされたよ。あとスクアーロも部屋から追い出してくれたね。髪の毛もボサボサだったから借りれてラッキー。まぁ飛んだらいいだけなんだけどさ。そこは気分だよ。
スッキリして服をどれを取り出そうかなと思ってたら、服がかかってたよ。……絶対高いよね?あ、やっぱり。見ただけでわかるぐらい高いんだねと思いつつ、袖を通す。XANXUSというよりルッスーリアっぽいよねと2人で会話する。そういうことに気が付いて、ボスの部屋に置こうする勇気があるのはあの人ぐらいだもん。
まぁ目に入ってても燃やさずにこうしてかけてくれただけ、もう一人のわたしには衝撃らしいけど。XANXUSの美的センスに制服はないと判断されたんだよ、絶対。会うたびにわたしの私服にもうちょっとマシなものはないのかというような目をしてたし。……ああ、違う違う。子供っぽすぎて嫌って意味だよ。ヒバリさんは小動物好きだし、あれでいいんだよ、今はね。今ってなに!?とか言ってるけど、放置。自分で考えなよ、勉強だよ。
子どものわたしでもやっぱ黒のワンピースってだけでちょっと大人っぽくなるね。意外と似合うじゃんと鏡の前で納得。せっかくだしと炎で道具とって、髪をいじって化粧する。うんうん、いい感じ。
「悪くねぇ」
ほらね、XANXUSに見せたら褒められたよ。……これで褒めてんの!?って叫んでるね。どう考えても褒めてるじゃん。まぁヒバリさんみたいにわかりやすく機嫌は良くなってないけどさ。
そのあと、XANXUSの遅めの朝食に付き合った。遅めになったのはわたしのせいだしね。わたしはお茶だけにしたよ。今日は食べてくると母さんに言ってなかったしね。あ、その時にルッスーリアに会って、わたしを着飾ることに燃えだしたから服が増えることが決定した。XANXUSもうるさいとか言わなかったから、間違いないね。ほんとみんな貢ぐの好きだよね。
このまま家に帰ったら、オレに二度見されてガーンって顔をされた。その瞬間にめんどくさいからなのか、オレになってたよ。いつものことだよねとオレは遠い目をする。……まぁ立ち直ったみたいで良かったよ。
「まぁ!とっても似合うわ!普段とは違って大人っぽくていいわねぇ」
「わたしがやったんだよ。オレも出来なくはないけど、こういうの気後れしてダメなんだよね」
というか、オレの技術でやってるし。リボーンに習った変装スキルがこんなところで生かされるとはねぇ。……あいつ、チェックしてるよ。可哀想なオレ。
母さんにこういうのは慣れよと言われたよ。まぁわたしがこれからもするだろうから、確かにちょっとは慣れるかななんて思う。……ああ、やっぱりやるんだ。XANXUSに褒められて嬉しそうだったもんね。
今日はオレのままで家族揃って晩ご飯。もちろんクソ親父はいないよ?
化粧したしともう一回風呂に入ってる間に、皺だらけの制服が綺麗になってた。後で自分でしようと思って置いていたんたけど、なんか嬉しい。わたしもホワホワしてるね。
母さんにお礼を言って、そのままの良い気持ちでオレの部屋へ向かう。家から屋根に登るのはそこからだしね。
「ソラ」
「ん?」
「ごめん!!」
謝られてコテンと首を傾げる。えっと、変わった方がいいのかな。と思ったけど、わたしは出てこないね。
「君が謝るようなことしたっけ?」
「うん、したよ。ソラ、君に甘えちゃった」
「……うーん、うん。別にいいんじゃない。オレの方が精神年齢は上だし」
そういうことだよな?とちょっと不安になりつつ、返事をかえす。XANXUSのところでもミスったし、超不安……ほんとに。や、未だにあの時のわたしの行動はよくわかってないんだよ。オレやっぱそっち方面はダメだよなー。
「そうだとしても、甘え過ぎてたんだ。ヒバリさんだけじゃなく、みんなにも言われたよ。ソラはいっぱい頑張ってるのに……オレがもっと頑張らせようとした」
「うーん?まぁそれがオレの役目だし」
「違うから!!」
あれ?またミスったのかな?今日はダメダメな日かもしれないね。
「オレはどっちのソラも好きなんだ。2人とも家族なんだよ。2人とも幸せになってほしいんだ。なのに、君にばっかり甘えて負担をかけようとした。そんなことしたら、ソラがソラじゃなくなっちゃうのに……」
……やっとヒバリさんが目の前のオレに怒った理由がわかったよ。無理をすれば無理をするほど、オレがわたしに引っ張られておかしくなる。わたしと一緒に共倒れする未来しかないんだ。
「うん、わかった。ほどほどに頑張るよ。オレもわたしにまた授業受けさせてあげたいのは本音だし。今度はもうちょっと時間を短くするとか、一緒に考えよ?」
「うん!」
あ、オレに抱きつくのはやめないのねとよしよしとオレの頭を撫でる。わたしも嬉しそうだし、やっぱなんとかなるよ、絶対。
ごろんと屋根に寝転がると、すぐさまリボーンが現れた。まぁ今日はすぐ来ると思ってたよ。
「おめーはツナじゃねぇんだぞ」
「……それをお前がいうの」
「だからこそだぞ」
そう言われるとオレなんも言えないよ。オレがつい無茶したり頑張ろうとするのはコイツがそう育てたから。といってもさ、オレを育てた記憶はないんだから、リボーンには一切責任はないんだよ。でもコイツは背負って、正しい道に導こうとするんだもん。文句なんか言えるわけないじゃん。
「……わかってるよ、オレはソラだ。この子を守るんだ、絶対に。だからこそ、無理はしちゃいけない」
「おめーの幸せのためにもだぞ」
「あー……」
わかってたけど、すげーバランスが難しい。
「オレとしては、わたしが幸せなら充分幸せなんだよ。無理してるとか自己犠牲とかじゃなくて、ほんとにさ。でも……それはダメなんだろ?」
「ああ」
なんかマフィアのボスになる方が簡単な気がしてきたよ。オレはオレに無茶振りしすぎじゃない?や、オレのために言ってくれてたのはわかってんだけどさ。
もうちょっとオレは外の世界にも目を向けないといけないなぁ。オレの幸せを見つけなくちゃダメみたいだし。……あー、やっぱすげーバランスが難しい。わたしは世界が嫌いだし、やり過ぎるとおかしくなるよ、絶対。
「悪いけど、おかしくなってたら声かけて。多分オレ、自分で気付けないから」
「心配すんな。側にいてやるぞ」
「……やばっ、めっちゃ感動した。女で良かったって、これほど思ったことないよ」
「オレのモットーだからな。おめーに優しくするのは当然だぞ」
そりゃお前モテるわ、と思わず言っちゃったよ。あいつはニッと笑うだけだったけど。にしても、ほんとリボーンさまさまだよね。昼寝したし寝れないかなって思ったのに、オレ安心して眠くなったもん。おやすみーっと。
この話の真の楽しみ方は、2-Aのモブ生徒達!
あのヒバリさんが口説こうとしてる人だし……と何回流したんでしょうねw
察し能力もどんどん身につくよ!
きっと先生は通信簿の一言欄に、どんな環境でも過ごせる心の強い子ですと書いてくれるでしょう。
これがバクマン。のいうシリアスな笑いでしょ!(違う)
まぁ冗談はこれぐらいで。
間違いなく現時点でツナの手から零れ落ちてしまう可能性が一番高いのはソラです。けど、ツナは頑固なんでね。ソラに2人とも幸せになる道を求めます。白蘭がいれば、そういうところが綱吉クンの怖いところだよ♪って言いそうだなーと思いながら書きました。
おかげでソラ(オレ)は大変。周りに目を向けるようになったから、進んではいるよ。正しい方向かは本人もわかんない状態だけどね。リボーンが見てくれるなら、なんとかなるかな?という感じ。
今回の雲雀さんは割と不憫。
XANXUSに対抗するために、手段を選んでられなかった。
ソラ(オレ)の性格上、雲雀さんが仕事を与えて報酬って形が一番良かった。けど、それをするとXANXUSに負けた気がして出来なかったのです。未だ女心がよくわかってないので、今まで一番ソラ(オレ)が自分に笑いかけてくれた手しか打てなかった。優しくしないとソラ(わたし)に間違いなく嫌われれるしね。……が、がんば。
まぁ頑張った甲斐はあったはず。前と違ってキュンキュンしてテレてたし。雲雀さんはプライドの問題で2度とやりたくないだろうけど。でも多分またやる羽目になる。かわいそう。
ちなみに正解は、ソラ(オレ)は鈍いのでストレートな言葉に弱い。頬を染めるところは意識して書いてるよ。行動の意味を理解したら、割とモジモジする。
あと、根本にソラ(わたし)に譲る精神があるので、ソラ(オレ)を口説き落とそうとする人が放置するのはマイナスでしかない。ソラ(オレ)の精神安定にとってもマイナス。だからおまけでツナとバトル出来るならと放置したことはソラ(わたし)はないなと本気で思ってる。そりゃ骸のところに行くわ。
XANXUSは大人な対応。
最初の睨みは何があったと問いかけも入ってる。ソラ(オレ)に説明を求めてた。ギリギリだけど正解をだした。超直感万歳。
ソラ(わたし)は甘えたいけど、確実に未来の経験に流されるからソラ(オレ)を盾につかった。察したXANXUSはやらねぇという意味を込めて目をつぶった感じ。超大人。
ソラ(オレ)にバカだろと視線を向けるのも当然だよね。盾が盾の役割を果たしてない……。
多分ソラの寝顔とか見て、また未来の経験にXANXUSも振り回されてるだろうね。大人になっても事後だと幼い顔してそうだし。やらねぇといったらやらねぇというプライドの勝利。寝てると思ったら本を読んでんだよ、スクアーロもビックリするわ。
ちなみに、舌打ちはツナに対して。ソラ(わたし)がXANXUSに癒しを求めるとか、甘い考えを持つツナ以外に原因はありえない。骸はそういう意味では信頼があるからね。次に会ったら開口一番に銃がぶっ放される、確定。
リボーン
忍びすぎて怖い。