夜のソラ [完結]   作:ちびっこ

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第2話

「ランラーンラン♪」

 

いつものように暗くなったから屋根でいると、母さんの鼻歌が聞こえてきた。……この感じ、クソ親父が帰ってくる。

 

だからその日、リボーンが屋根に登ってきてすぐに言った。

 

「オレしばらくこの家に近寄らないから、よろしく」

「なんかあんのか?」

「わたしが帰ってくる人が大嫌いだから。抑えるのに苦労する」

「……そうか」

 

クソ親父がマフィア関係者だとオレが知っていたことで納得したのか、すぐに話題をかえてくれた。こういう気遣いはほんと助かるよ。

 

 

 

確かオレがみんなと買い物に出かけていた時にスクアーロがきた。これからのオレのことを思うと、放置しよっかなー。なんて思いながらも、オレの足はショッピングモールに向かってる。……わたし、オレに甘くない?

 

獄寺君と山本がやられるのを見てから、オレはメスをスクアーロの足元に投げた。

 

「誰だぁ!!」

「ソラーーーーっ!」

 

神様、仏様、ソラ様、なんてオレは思ってそう。両手で手を組んで祈ってるし。

 

「念のため聞くけど、この人ボンゴレ。殺してもいい?」

「この人ボンゴレなのー!?って、殺しちゃダメだって!」

 

いやでも今までオレを狙ってきた殺し屋は、リボーンに手を出すなと言われない限りみんな殺してるよ?オレは知らないだろうけど。

 

「どうしても?」

「どうしても!!首傾げてもダメなものはダメだから!!」

 

なんて会話をしていたら、スクアーロがキレて斬りかかってきた。相変わらず沸点が低い。

 

オレが殺しちゃダメっていうから、メスを使わずに相手をする。死ぬ気の炎を身体強化に使って、何度か殴ったり蹴ったりしてるけど、流石暗殺部隊隊長殿。気絶するほどの良い一発が入らない。うまくズラしている。

 

「くそっ。てめぇナニモンだぁ!」

「さぁ?一応ソラって名乗ってるよ」

「聞いたことねぇぞぉ!」

 

そうだろうね。噂ぐらいはあるだろうけど、オレどこにも所属してないし。

 

「オレを殺すには、最低でも君のところのボスを連れてこなくちゃ」

「クソが!!」

 

オレが殺すなと言ったから殺してないだけとスクアーロは気付いてる。だから割と大人しく帰っていった。偽のボンゴレリングは取られてないけど、まぁ大丈夫だろうね。だってオレをバジル君が連れていったのを見てたし、ソラの情報集めとXANXUSを説得するまでの時間は稼げたから。

 

「これでよかった?」

「ああ、充分だぞ」

 

念のために残っていたリボーンに確認したらお墨付きをもらえた。やったね。オレの役目は終わったしと去ろうとしたら、リボーンがついてこいだって。マフィアが多いと落ち着かないから行きたくないんだけどなぁ。

 

距離を取りつつ、ついていった先でみんなが揃ってた。ディーノさんもいるね。バジル君は気絶してるみたい。

 

「ソラ!!無事でよかったー!」

「ちゃんと殺さないで追い返してあげたよ」

 

オレの言葉に獄出君と山本の空気は重い。そんな悔しかったんだな、オレはオレに感動してないで気付いてあげなよ。ちなみにその横でディーノさんの頬は引きつっていた。スクアーロの実力を知ってるからしょうがないかな。

 

リボーンにあっさりと戦力外通告された山本と獄寺君をこの場に残し、オレ達はバジル君のために病院へ移動した。そこでディーノさんがリングの存在を見せたことによって、リボーンは状況把握したみたい。その後にすぐオレは逃げちゃったけど。

 

「ソラ、おめーはこれからどうすんだ」

 

今気づいた。リボーンが連れてきたのは、オレ達のためだったのかもしれない。意思確認だ。

 

「わたしよりはマシだけど、オレもマフィア嫌いだし、関わりたくないよ。でも彼がどうしても助けてって言ったら助けるよ」

「相手を殺してか?」

「オレはよくても、わたしが許さないからねぇ」

 

これでも抑えてるんだよ?と続けて呟けば、リボーンは軽く溜息を吐いた。苦労かけてごめんね。

 

 

数日後、また迷子になったランボ達を家に送っていると殺し屋がやってきた。チビ達に気付かれないように殺して復讐者を待たずに隠蔽。待ってたらチビ達が気付いちゃうかもしれないしね。チビ達にはわたしは優しいよねなんて思う。……まぁ子どもの時にあんなことがあったしね。

 

それにしても物騒だなーなんて思ってると、お兄さんが極限と言いながら殴りかかってきた。もちろん避けたよ、間違って殺してないよ。なんか嫌な予感がするけど。

 

「お兄さん、その人味方ーー!!」

 

オレ、ナイスツッコミ。すぐに誤解が解けて和解が成立。ボクシング部には入りません。あと、あまり近づかないでください。落ち着かないから。

 

「にしても助かったよ!ソラがランボと一緒に居てくれて」

 

オレの言葉にオレが軽く首を傾げてる間に、獄寺君と山本もやってきた。……すっげー嫌な予感する。

 

「おい、ソラ。ヴァリアーは来てねぇだろうな」

「…………」

 

オレはリボーンの言葉に黙秘権を使った。オレ達の不穏な気配を感じ取ったのか、オレが恐る恐る確認する。

 

「もしかして、ソラやっちゃった……?」

「……正当防衛を主張したいなぁ」

「ひぃ!絶対、この人やっちゃったよー!」

 

そんなことを話してると、レヴィがやってきた。オレの部下をやったのはお前達か、なんて言われて濡れ衣を着せられるオレ可哀想。

 

「……やったのはオレだよ。彼らは関係ないから。というか、オレ言ったよね。オレをやるならボス連れてこいって。……そうだよ、それぐらい強かったら問題なかったんだよ!オレ、悪くないよ!」

「開き直っちゃダメだから!!」

 

ガクガクとオレはオレに揺らされる。というか、オレはオレを怖くないんだ。ヒバリさんより物騒なことしてるのに。

 

「オレが悪かったから、そろそろ離して。本当にボス来たっぽいから」

「まじでーー!!」

 

なんて漫才している間に、ヴァリアー勢揃い。邂逅一発目から憤怒の炎がオレ達にむかって飛んでくる。仕方がないから、夜の炎を使って憤怒の炎を飛ばす。……オレ、復讐者より使いこなしてる気がする。

 

「え……今のって、死ぬ気の炎……?」

「おお、正解」

 

オレよく見てるじゃん。初めてオレの前で使ったけど、一発でわかるとは思ってなかったから素直に驚いた。そりゃ身体強化で使ったことはあるけど、それは外からじゃ見えないようにちゃんと留めてるし。

 

そしてXANXUSからは面白いという感想を得たので、スクアーロの評価も戻ったみたい。暴君を説得するのは大変だっただろうね、お疲れ様。

 

「そこまでだ」

 

一触即発ってところで、クソ親父がやってきた。チラっとオレを見たけど、それどころじゃないからお互いにスルー。

 

クソ親父により同じ種類のリングを持つ同士の対決と説明される。リングを貰ってないオレはもちろん不参加。

 

「頑張れ」

 

そう言ってポンっとオレの肩を叩いてあげた。流石オレ、すぐに察した。

 

「も、も、もしかして……ソラはリング持ってないの……?」

「うん」

「なんでーーー!?」

「簡単なことじゃない?強いだけでオレは君を守護するのに相応しくないし」

 

ガーンガーンガーンっていう顔をオレはしていた。うーん、ちゃんと説明してあげないといけないかな。

 

「ボンゴレには守護者の使命というものがあって、オレはどこにも当てはまらない。君にわかりやすく説明すると、オレはトランプのジョーカー。有益でもあるし有害なの」

「有害?」

「うーん、かわった方がわかりやすいかな。……久しぶりだね。教えてあげればいいのかな?わたしは君と君のお母さんを気に入ってるよ」

「え。あ、ありがとう」

「わたしは君らが大切なもの以外はどうでもいいんだ。例外は骸達ぐらいで。さっきだって君が怒ったから悪いともう一人のわたしは思ったよ。けどね、わたしは何も悪いと思ってないの。君がいいよと一言いえば、ここに居る人達みんな喜んで殺すよ?みんなだよ」

 

もう一人のわたしはオレを模範しているから気にはしてるけど、わたしは獄寺君達のことだってどうでもいいんだよ。だから死んじゃっても怒ったり泣いたりはしない。見舞いなんて行く必要を感じない。だってマフィアだし。今もこの場に残ってるのはオレが困ってそうだからっていう理由なだけ。

 

「君の父親とリボーン、後は骸ぐらいかな。この人達はわたしの異常性に気付いてる。だから君の守護者には相応しくないから選ばれなかった」

「全部そのまま受けとるんじゃねーぞ、ツナ。間違っちゃいねぇが、合ってるわけでもねぇ。オレからみれば、裏の世界に無理矢理染められておかしくなった泣き虫な女だぞ」

 

……そりゃリボーンの前ではよく泣いてるけどさ。こんなところで言わなくていいじゃん。そしてオレも確かにみたいな顔しないで。

 

はぁとオレが首を振ってるとチェルベッロがやってきた。にしても、よくXANXUS達は手を出さなかったね。痺れを切らして攻撃してきそうなのに。それだけ父さんが凄くて、オレ達に興味あったのかな。

 

「最後に……ソラ様」

「ん?」

「ソラ様は9代目と家光氏に後継者として認められなかったため、この争奪戦の参加資格はございません。ご了承を」

 

ピリッと空気が変わった気がした。もちろんオレの中のわたしも。

 

「それでは明晩11時……」

「ちょ、ちょっと待ってぇー!」

「なんでしょうか?」

「ソラは後継者候補だったの!?」

「はい。ソラ様は、っ!」

 

流石にチェルベッロの首元にメスを突きつければ黙ったね。でもつい夜の炎を使って移動しちゃったなぁ。何人かにはっきり見られたよ。まぁオレが見破ってたし、別にいいかな。

 

「君達の言う通り、わたしは参加しない。だからもういいよね?」

「……失礼しました」

「わかってもらえて良かったよ」

 

なんて口では言いながら、気分は最悪。もう帰ろ、わたしが離れてチェルベッロが口を滑らしたら……諦めよ。諦めるついでに争奪戦もぐちゃぐちゃにするけどね。

 

ふぅと疲れて息を吐いたオレは、ここから離れることを優先して夜の炎でとんだ。わたしが落ち着くところに来たけど効果は微妙で、メスを左手でクルクルと回す。

 

……オレは僅かに残った死ぬ気の炎を、たいした効果がないとわかっていながらも、骸に使ったことには後悔していない。けど、無くなってほしくなかったのも、オレの本音だ。

 

いや、あの時はわたしだね……混ざり合ってたから。

 

「あっ、ほんとに居た……」

 

リボーンが現れると思っていたのに、オレが顔を出した。最悪じゃん、オレを差し向けてリボーンと父さんが盗み聞きする気だもん。

 

……つーか、父さんオレの正体に気付いてなさそう。双子だったことすら知らないオレの超直感が反応しないのはまだわかるんだけどなぁ。意外と父さんの持ってる超直感は弱いのかも。強かったらオレの前に父さんが継いでたのかな?その方がスムーズだし。

 

そんなことを考えてたら、オレがなんとか屋根に登ってこれた。ドジ発動しなくて良かったよ。

 

「えっと……」

「オレに泣きついても意味ないよ。人体実験がきっかけでオレの死ぬ気の炎は変質しているから。資格はとうの昔になくなってる」

「そうなんだ……。って、泣きつかないよ!?」

 

いや、どうだか。もしオレがやる気だったら、オレは最初の頃はすっげー喜ぶだろ。なんだかんだ言って、最後は覚悟決めるだろうけど。

 

「あのさ、ソラはもしかしてさ……、ボンゴレのこと恨んでる……?」

「どうして?」

「……骸がそんなこと言ってたから。よりにもよってボンゴレにって。オレはさっきまで、一番大きなマフィアって意味だと思ってたんだ。けど……」

 

言葉を止めたけど、今は違うと思ってるってオレは確信していた。

 

「……わたしの家はさ、父親がボンゴレの関係者で、母さんは本当に何も知らない一般人」

「オレんとこと一緒……?」

「そ。父親がミスったみたいで、わたしが連れ去られ、あんなところにいたの」

 

オレが何とも言えない顔でわたしを見ていた。

 

「わたしがボンゴレを好きになる要素ないよ。君には悪いけど」

「オレのことはいいよ。というか、オレもその話聞くだけでもボンゴレ嫌いになったし……。って、違うよ!元々好きじゃなかったよ!オレはマフィアなんか嫌いで、ボンゴレなんか継ぎたくないの!」

「知ってるよ。君、何度も叫んでるから」

 

それは恥ずかしかったらしい。男心だね。

 

「……君の家族を見てると、わたしもそんな人生を歩めたのかなって思えるんだよ」

「ソラ……」

「まぁ君とわたしの性別が違うから、君の歩む人生とはまったく違うものになる気がするけどね。母さんと買い物に出かけたり、一緒に料理作ったりさ。…………この話はやめよっか。たらればの話とか、全く意味ないし」

 

あー、バカなこと話した。

 

「全く、なんてことはないんじゃないかな……?亡くなったソラのお母さんも想像してくれたら喜ぶと思う」

「……待った。わたしの言い方が悪かった。生きてるから、わたしの母さんは生きてる」

「え!?そうなの!?ごめん!!」

「ああ、うん、それはいいよ。運が良かったのは事実だし」

 

ほんとに。母さんも今わたしの前に居るオレも死んでいたかもしれないんだから。

 

「えっと、それならまだ諦めなくていいんじゃない?その、買い物とか料理とか……」

「母さんはわたしが死んだと思ってる。わたしの死を乗り越えて、今は元気に生きてるからそれでいいよ」

「でも……!」

「無理だって。母さんはマフィアのこと何も知らないだよ?巻き込まずに説明して納得なんて出来る親なん……て……」

「ソラ?」

「……居ないって断言しようとしたんだけど、居たなと思って。君んところのお母さん」

 

しばらく沈黙が流れた。私たちの母さんは一般人だけど、一般常識を持ってなかったんだよ……。

 

「結局、わたしが意気地なしってことか……」

「えっ、や、オレの母さんはかなり特殊で珍しい方だから……」

 

フォローしてるつもりなんだろうけど、わたしにめっちゃ刺さってるよ!オレも母さんならいけると思ったってことだろ!?

 

「どうせわたしは泣き虫で意気地なしですよーだ」

「スネちゃったー!?ソラー!?」

 

オレがあまりにも叫ぶから、わたしは思わず笑った。つられてオレが笑ったのをみて、まだやり直せるのかなってちょっと思ったんだ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

XANXUSを刺激するのもなぁと思って争奪戦を見に行ってなかったら、リボーンに明日の試合は見に来いよって誘われた。日数で考えたら明日は霧戦だった。オレの中のわたしのテンションが急上昇。今日は殺し屋こないかな?一撃で殺しちゃうぞ☆……いつもと一緒じゃん、とオレが心の中でツッコミして落ち着かせた。

 

オレが体育館に行くと、獄寺君にケンカ売られた。10代目の座は狙ってません。というか要らない。チェルベッロも資格ないって言ってるじゃん。そろそろまずいなぁと思っていたら、いい加減にしろってリボーンが獄寺君を蹴って終了させた。もうちょっと早く助けてよ、ほんとに。

 

そうこうしている内に、気絶したオレが起きて、犬と千種の姿が見えた。けど骸と違ってどういう顔をして会えばいいのかわからず、オレの後ろに隠れる。……や、仮面してるんだけどね。オレは前も後ろもいろいろあって忙しそう。

 

「六道骸じゃ……ないよ……」

 

クロームを見て、オレはそう呟いた。そうそう合ってるよ、なんて思いながらもオレの後ろから動かない。

 

「いや……あの……なんとなくだけど……。それに、ソラが……。六道骸だったらもっと喜んでそうなんだよね」

 

気付けば、理由の一つにされていた。まぁいいけど……。

 

オレがラッキースケベという名の挨拶をもらったり、アルコバレーノのコロネロがやってきたりしてると試合が始まる時間がきた。観覧スペースに閉じ込められる時に、チラッと犬と千種を見れば、うっとおしいびょん!と怒られた。普通にすれば?と千種にも言われ、オレは恐る恐る2人に近づく。一度飼い主に捨てられたペットのようだぞとリボーンに言われた。……ほっとけ。

 

クロームも頑張ってるけど、マーモンには敵わない。ついには内臓の幻覚も保てなくなった。

 

「あ……骸……」

「六道骸が!!骸が来る!!」

 

わたしの呟きはほとんどオレにかき消された。

 

「クフフフ。随分いきがってるじゃありませんか。マフィア風情が」

「骸!!」

「……お久しぶりです。舞い戻ってきましたよ」

 

ちょっと呆れながらわたしを見ないで。……喜んでるのはわたしだけみたいで恥ずかしいじゃん。

 

戻ってきた骸は絶好調でどんどん幻覚のレベルがあがっていく。当然マーモンも幻覚レベルもあがって、床が歪んでしまった。わたしはそっと犬と千種の服の端を握る。チラッとわたしを見たけど、2人は振り解かなかった。

 

そしてそんなわたしをジッとXANXUSが見ている。……わたしが幻覚にかかってないからだ。その視線を遮るかのように火柱が立ち上がる。……ごめん、骸。気をつかわせた。

 

わたしが心の中で謝ってる間に、骸は涼しい顔でマーモンのリングをとって終わらせた。……記憶より随分はやかった。そんなこと骸は知らないから、これについては謝れないけど……。や、でもやっぱごめん。気を遣わせて。後、あんな短い時間の中でオレが骸の現状を把握したのは幸い?だったよ。

 

「君の考えてる恐ろしい企てには、僕すら畏怖の念を感じますよ」

「……骸っ」

 

なんか骸がXANXUSと話してたみたいだけど、我慢出来なかったわたしは骸に飛びついた。

 

「骸さんに何してるびょん!?」

「……ソラ、骸様はまだ喋ってる」

「むー」

「しばらく見ない間に、知能が低下してませんか。まったく……」

 

呆れながらも、わたしを剥がさないじゃん。

 

「……ソラ」

「ん?」

 

君はゴーラモスカに近づくのはよしなさい。と、骸はわたしだけに聞こえるように言った。

 

「んー……わかった。いいよ」

「やれやれ」

 

ちょっと真面目な話をしたのもあって、いい加減骸から離れる。

 

「……オレ、もう行くね。また」

「ええ。また会いましょう」

 

わたしがもう充分満足したみたいだから、オレはあっさりと帰った。

 

次の日、オレは骸に言われたとおり雲戦には近付かなかった。元々リボーンに誘われなきゃ行かなかったし、誰も変に思われない。ただ昨日骸がわたしに何を言ったかは気にしてるだろうけど。でもリボーンは見に来てよかったろとしか言わなかったから、そこまでかもしれない。それとも、オレを気にいってると言ったわたしを信じてるから聞かなかったのかな。

 

今ごろ9代目がモスカの中から出てきてるかな。オレには関係ないけど。……うーん、骸は標的になる可能性があって危ないからモスカに近づくなって言ったのかな。それとも9代目と接触して心を乱す必要はないと思ったから言ったのかな。どっちにしろ、わたしのために遠ざけようとしてくれたのは変わりないから嬉しい。まぁ全部わたしはオレを通して知っちゃってるんだけどね。

 

 

こんな日でもリボーンはオレと会話するために屋上へやってきた。リボーンはオレの修行の話はするけど、争奪戦のことは話さない。唯一例外だったのは霧戦の時ぐらいで。だから今でもオレもわたしもこの時間が好き。

 

だったんだけど、今日は邪魔が入った。オレには関係ないと思ってリボーンに対応を丸投げしていたら、チェルベッロはオレに用があったらしい。それでも反応しないオレの代わりにリボーンが用件を促した。

 

チェルベッロ曰く、ほぼほぼオレの勝利で決まりだったけど、9代目の弔い合戦として大空戦をすることになったから、オレにも参加資格が出てきたらしい。だから明日の大空戦に参加してもいい、だって。

 

言うだけ言うとチェルベッロはすぐに去っていった。ずっとオレが左手でくるくるとメスをまわしていたからかもしれないけど。

 

「……ボンゴレなんか大っ嫌い」

 

ポツリと呟いたわたしの言葉は、夜なのもあって響いた気がした。

 

結局オレになっても朝までに発したのはその一言だけだったけど、リボーンは部屋に戻らずオレの側にいた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

大空戦当日、わたしはギリギリの時間に並盛中学校へとやってきた。守護者はもう配置に向かってるらしい。

 

「お待ちしてました、ソラ様」

「……守護者、居なくてもいいの?」

「かまいません」

 

ただ6つのリングを集めた方が勝ちで、守護者がいなくても不利になるだけの話。そしてわたしの場合、9代目とあいつに選ばれなかったから、大空のリングの片割れもない状態でスタートというのがハンデらしい。

 

「如何なさいますか?」

「参加」

「かしこまりました」

 

オレからツッコミが来ると思っていたけどなかったよ。リボーンに何か言われてるのかな。オレのことなのに、わからないや。

 

守護者に毒が注入され、オレがはやく始めようと焦ってるとXANXUSが攻撃してきた。オレには左手で殴りかかり、わたしには右手で憤怒の炎。わたしの方が警戒してるのか、殺傷力が高かったね。もちろん無傷だよ。ただ今回は死ぬ気の炎で飛ばしたわけじゃなく、わたし自身が移動。

 

2人の戦いがよく見える位置の屋上に到着した。

 

「特等席」

 

なんて呟いて、わたしはフェンスに座り足をプラプラする。XANXUSは完全にわたしに意識がいってるけど、オレとリボーンの存在を忘れてはいけないよ。ちゃんと特殊弾は間に合っている。

 

「ひゅ〜♪カッコいい♪」

「ソラ、そのまま下がってろ」

 

オレはわたしが見届けてるためにここに居るだけだと気付いていたみたいだ。守護者のことも頼もうとしなかったし。……違うね、わたしに頼んだらヴァリアーを全員殺すとわかっているから頼まないんだ。

 

XANXUSもとりあえずはわたしの存在は無視したらしい。今はまだわたしは動くつもりがないと察したから。後何よりオレをすぐ殺せると思ってるから。

 

「〜♪」

 

さっき口笛を吹いたのもあって、なんとなくその流れで並中の校歌を吹く。

 

ちょうどわたしが2番まで吹き終わるころ、銃を出してオレの相手に余裕が出来たXANXUSは守護者のポールを倒すついでにわたしにも撃ってきた。物騒だなぁなんて思いながら、夜の炎で飛ばす。

 

そのままXANXUSがわたしにいる屋上へと着地したのもあって、慌ててオレがやってきた。XANXUSはオレとわたしに銃口を向けたから、わたしは口をひらく。

 

「気にしなくていいよ」

「……ああ」

「2つの意味で、だよ」

 

わたしの一言で少し焦っていたオレが気付く、ヒバリさんが自力でポールを倒して解毒していることに。

 

「……それで、校歌だったのか」

「彼にとって1番の応援歌だと思って」

 

実は守護者の中ではわたしは割とヒバリさんのことは気に入ってる。もちろん断トツは骸だけどね。理由は単純でオレがヒバリさんに憧れてて、骸がヒバリさんをライバルとして認識しているから。2人に認められてるヒバリさんにわたしは少し興味がある。それとマフィアに入ってるつもりがないとこがいいよね。まぁもう一人のわたしはいい顔してなさそうだけど。でも見舞いに行こうとするのはもう一人のわたしの方なのにね。

 

「本当に規格外で面白いよね、彼」

 

わたしの言葉に思うところがあったのか、戦いの最中なのに珍しくオレの眉間のシワが緩んだ。

 

「おい、いつまで余裕の態度でいやがる」

「彼を未だ倒せない君を?警戒?」

 

ボスがこんなんだから部下も沸点が低いんだよ。でもまぁわたしに銃を突きつけて撃とうとするのは評価するよ。まだまだ移動速度が遅いから簡単に移動出来るけどね。何事もなかったようにわたしはフェンスの上をバランスをとりながら歩く。

 

「んー、超直感をフル稼働すれば、わたしの動きは見えるかもしれないね。もしくは何年も培った経験とか?あとはもっと純度の高い炎が必要だろうし。……あれ?わたしを倒せる人いるのかな」

 

オレとバミューダとの戦いを参考にして話してみたけど、わたしの肉体は朽ちていないしまだ伸び盛り。そして超直感も持ってる。今のところ炎切れも起こしたことがないし。

 

「ああ、生粋の地球人なら大丈夫だね」

「……生粋の、地球人?」

「そ!随分数は減ったみたいだけどねぇ。っと、これぐらいにしよっか。それは君たちが知るにはまだ早いだろうし。わたしの炎についてもおしまい。これ以上はバミューダが困っちゃうもんね」

 

なんて言ってたらイェーガーが来ちゃったよ。復讐者が来たことで空気がさらに重くなる。

 

「掟には違反してないよ?」

「……その炎には大いなる責任がともなうのだ」

「んー、まっそれで納得してあげるよ。もう一人のわたしももう止めろって言ってるし」

 

もう一人のわたしの方を信じたのか復讐者は帰っていった。わたしはこれ以上2人の邪魔をしないように、屋上からダイブ。これをきっかけに仕切り直ししてね。

 

「ソラっ!」

 

なんて思ってたけど、オレが焦って追いかけてわたしを抱き上げた。そんな大きなスキを出したオレにXANXUSが狙い撃ってきたから、仕方なく飛ばしてあげる。

 

「危ないじゃん」

「…………」

 

さっきは緩んでいたのに、オレの眉間は今すげぇシワを寄せていた。これぐらいのわたしの行動なら、普段のオレはそこまで必死にならないのに。今何を思ってるんだろう、オレなら……。

 

「……怖い?」

「ああ」

 

……これはわたしを仲間と思ってるのもあるだろうけど、双子の片割れが居なくなることに恐怖しているのかもしれない。オレは無意識に感づいているんだろうね。

 

わたしをおろしたオレはすぐにXANXUSに向かっていった。けど、わたしがさらに危険な存在と判断したXANXUSはギアをあげてしまって、オレは零地点突破を試すことも出来ない。

 

「しょうがないなぁ」

「っソラ!?」

「……おい、なんの真似だ」

 

わたしが急にオレの背に乗れば、XANXUSの手が止まった。別に止めなくてよかったのに。

 

「手助け?」

「はっ」

 

XANXUSに鼻で笑われ、オレがめっちゃ焦ってた。

 

「ほら、集中しないとわたしが死ぬよー」

「……もしかして、オレへの手助けなのか?」

「どっちにも取れるよ。しばらくの間、わたしは君から離れず炎を使わないから。だからわたしを殺したいXANXUSには千載一遇のチャンスで、守るべき人がいる方が君は力を発揮できるからチャンス」

 

オレが口を開こうとしたけど、ニヤリと笑ったXANXUSはすぐさま撃ってきたから話す余裕はあまりなさそう。わたしはオレに捕まってるだけだから、余裕で話せるけどね。

 

「試してみなよ。リボーンと修行したんでしょ」

「っ、あれはっ」

「危険すぎるから、わたしを背負ってる状態で使いたくない、そうだよね?」

「そ、うだっ!」

「本当に?君の直感はそう言ってるの?」

 

オレは軽く息をのんだ。わたしは心の中でやっぱりね、と呟く。だって、こんなにもわたしはオレと同調している。互いの心だけじゃない。以前、レオンが羽化した時も恐らくそうだった。オレの未来を知って還元された経験則が、わたしを通してオレにも影響を与えている。

 

「やってみなよ、失敗したら君と一緒に死ぬだけ。たとえそうなっても案外悪くないってわたしは思えるんだ」

「……ああ。不思議だが、オレもだ」

 

ほら、リボーンに習った構えじゃない。

 

「零地点突破・改」

 

キレイ……とわたしが呟くと、オレが微かに笑った気がした。争い事が大っ嫌いなのに。……これも少し同調しているんだね。

 

「残念、君と死ねなかった」

「……オレはもっとソラと過ごしたいからな」

 

わたしも一緒に過ごしたいよ。と心の中で返事をして、わたしは移動する。向かった場所は、観覧席の近く。

 

「スパルタ過ぎた?」

「ツナにはいい薬だろ」

 

……あいかわらずスパルタで、もう一人のわたしがゲンナリしていた。もう一人のわたしもわかってるんだけどね、いつか取りこぼすことになるかもしれないから。ただなぁ、今のオレでは無理。そこはまぁ先生の腕の見せ所ってことで。

 

そんなことを話してる間に、ディーノさんに連れられてスクアーロがやってきた。XANXUSの怒りにはわたしあまり興味ないかな。

 

「そんなことより、止めなくていいの?」

「んなことだとぉ!?」

「止めるって何をだ、ソラ」

 

わたしの一言が多く話がズレそうになったところをリボーンが戻してくれた。

 

「わたし、あのリング絶対はめたくないんだよね」

「確かソラっつたよな。悪い、話が見えねぇ。ボンゴレ10代目になりたくねぇって意味じゃねーんだろ?」

「もちろん。あのリングは怖いよ、わたしがはめたら間違いなく悪いことが起きるね」

 

あー怖い怖いってわたしが言っても、リボーンですら意味をまだ考えていた。

 

「わたしの超直感が最大に警戒しているよ。下手すりゃ死ぬんじゃない?」

 

唖然としたような顔で、リボーン以外のみんながわたしを見ていた。唯一違うリボーンは真剣な表情をして口を開いた。

 

「……もう一人同じ目にあうんだな」

「あのリングは本物しか認めないみたいでさ。選ばれるのは一人」

 

なんて軽い口調で言ってる間に、XANXUSが氷漬けにされていた。

 

「一人だけ出してあげる」

「なりません!」

「ふふっ、どうやってわたしを止めるの?後継者の資格の取り消し?……んなの、はなから興味ないんだよ。勝手に過去をほじくり返された時点で、わたしは君達を殺したくてたまらないんだ。もう一人のわたしに感謝しなよ、殺してないのはこの子がわたしを止めるから。それだけだ」

 

一言でも話せば殺すと視線でわかったのか、チェルベッロはもう邪魔しなかった。

 

「じゃ、誰が出る?」

「う゛お゛ぉい!!オレを出せぇ!!」

「いいよ。早い者勝ち」

 

てっきりオレの味方だけと思っていたのかディーノさん達が驚いていたけど、わたしは無視してスクアーロを連れてXANXUSの元へと飛んだ。

 

「やめろぉ゛!!ベル!!」

「スクアーロじゃん。何言ってんの」

 

わたしのヒントでスクアーロはちゃんと答えがわかっていた。たださっきまで参加できず、重傷だった彼には止めることは難しかったみたい。

 

「がはっ!!」

「ボス!」

 

それでも血を吐いたXANXUSにかけより、スクアーロはすぐさまリングを抜いた。そしてボスと素直に彼が呼ぶのはとても珍しい姿で、わたしに何か聞きたそうな人も居たようだけど声には出さなかった。

 

「……XANXUS様あなたにリング適正があるか協議する必要があります」

「ついでにわたしもする?血筋だって問題ないけど、わたしも拒絶されると思うよ。随分身体イジられたし」

 

薄々XANXUSがボンゴレの血を引いていないとみんな察している。けど、わたしという特殊な人物がいるんだから、表に出さないことはできる。彼もわたしと一緒でボンゴレの被害者だよ。ただ彼はわたしと違ってボンゴレという組織を愛してるだけ。

 

「はぁ。僕が証明しますよ。彼女がボンゴレの血筋を引いているのは間違いありません。ですが、リングは拒絶するでしょうね」

「……骸」

 

一瞬だけ出てきた骸に、ありがとうと心の中で呟く。

 

「では、ソラ様は棄権とします。よって……」

「クソが!!同情なんているか!!」

「同情?何言ってんの、君はリングに選ばれなかった、これにどこにそんな感情があるの。……そもそもまだ選ばれた彼ですらボンゴレリングに認められていないのに」

「なっ!?どういうことだよ!?」

「そのままの意味。ボンゴレの業が深すぎて…………」

「えっ、ちょ、何、そこで止めないで!?ソラ、なんでオレから目を逸らすの!?」

 

いやだってさ、指輪に拒絶されたら死にかけて、極限状態の試練で認められなかったらそのまま死んじゃうだよ?……ボンゴレ怖っ。そして最低っ。やっぱ大っ嫌いだ。というか、さっさと滅べ。

 

「……ふぅ。わたしが棄権したなら、オレは帰るね。後は君たちで決めなよ。オレはボンゴレじゃないし」

 

血筋の件も表に出すのかも任せると含ませて、オレは移動した。超直感には引っかからないし、一悶着あってもなんとかなるよ。オレの叫び声はきっと気のせい。

 

●●●●●●●●●●

 

 

その日は疲れたのもあって寝ていれば、リボーンはオレを起こすことはなかった。次の日の夜にはいつものようにやってきた。寿司の差し入れ付きで。

 

「読み通り!オレもボンゴレ嫌いだけど、この超直感だけは最高だね」

 

なんて言いながら、食べ始める。今日は口のあいてる仮面だし、食事を抜いて大正解だった。リボーンは呆れていたけど、女に優しいから怒らない。これだけでも女に産まれてよかったと思ったね。

 

「んで?」

「ソラが帰った後のことや、XANXUSの処遇には興味ねぇだろ」

「ないね。それにだいたいわかるよ」

「おめーの精度、ツナや9代目より強いんじゃねーか?」

「わたしはオレからみても才能の塊だよ」

 

それなのにオレはオレと違って逃れてラッキー。

 

「オレが聞きたいのはそれだぞ」

「ん?」

「そのオレは誰なんだ?作った人格にしては明確に基準があるみてーだからな」

 

これはオレを警戒しているのかな。……半分正解で半分外れ。オレの性格には信頼している。けど、大空戦でわたしが話したの情報は、オレが掴んだ内容と勘付いている。けど、復讐者が絡んでいる内容だから迂闊に聞けなくて。リボーンはただオレがわたしのことをどう思ってるか知りたいってところだね。

 

「まどろっこしいから飛ばすよ。話長くなるだろうし、聞きたいのはこっちだろうから。オレはわたしをかわいそうな子だと思ってるよ。ボンゴレがちゃんとしていたら、継承の問題は起きるだろうけど、わたしが一番欲しいものは得れただろうから。オレとしてはわたしに大事なものが出来て欲しいよ、危うすぎるから」

「……ツナやママンじゃダメなのか?」

「惜しいね。オレの予想じゃ、たとえば2人が殺されたとしたら、わたしはすっげー悲しむと思うよ。けど、それで終わり。激昂とかないよ。偶然犯人に出会ったりその現場にいれば殺すだろうけど、わざわざ探したり追いかけたりしないよ」

 

執着してるけど、2人がいなくなったら、その時点で執着も消えるんだよね。骸達が殺されても一緒。まぁコイツもそれはわかってたみたいだけど。

 

「オレが感じた限りでは、わたしは人を殺したり憎んだりするのが本当は嫌いなんだ。けど、おかしくなって僅かに残った理性が働いて、オレで抑え込んだ。……おかしいだろ?僅かにしか残ってないのにオレで抑えられるって」

「……おめーの方が精神年齢が上なのか」

「うん、それであってるよ。オレはさ、わたしが育つまでに大切なものが出来ないと、この子がのまれちゃう気がするんだ。でもバランスがすっげー難しくて……。あー、そう。ちょっと前の獄寺君に似てるね。自分の命が見えてないというか、興味がないというか……、うーん」

「ガキの時に大事にされなかった弊害だな……」

「そうだろうね。これでも良くなったよ。骸と再会するまでは、気持ち悪い感じに混ざってたから。どっちの心が反応してるのかもわかんなくて、制御していたようにみえたけど実際は出来てなかったよ。狂わなかったのはオレの方が精神年齢が上だったのと運が良かっただけ。今は別人格だとわかって、入れ替わってもオレの言葉は聞こうとしてくれてる」

 

あとリボーンには教えないけど、わたしが作り上げたオレと、家にいる方の未来のオレは一緒だとわたしは思ってたんだよね。わたしの中のオレはオレで、わたしに影響受けてるから全くの別人。一番わかりやすいのが、殺しても心が動かないところ。家の中に居るオレじゃそんなのありえないね。

 

「抑えるためにオレを作り出したのもあって、わたし自身がオレに主人格をあげる気でいるんだけど、ひょんな所で結局わたしが出ちゃうんだよね。本当はわたしの方が主人格だから。そしてオレはわたしを消すなんて考えてもないし、指針にしてる」

 

基本的にオレはわたしの気持ちを優先させて動いてるからね。本当にヤバそうなところは抑えてるけど。

 

「骸の前で出てくるのはわかったけど、他の時にいつ入れ替わるかオレにもわかんない。だからわたしに大事なものがないと、いつかオレの声が聞こえなくなっちゃうかもしれない。それはわたしも不本意だと思ったんだ」

「霧戦のこともあって、大空戦にわたしで参加したってことか……」

 

そ!とオレは頷く。霧戦は骸と会って落ち着くまで、わたしが出てきちゃってたからね。あれも一種の暴走だった。だから大事なものを作らせようとしたり、少しは慣れさせるために参加したんだよね。

 

「オレも流石にヒヤヒヤしたよ。余計なことはいっちゃうし。まぁちょっとは得るものはあったよ。ただ方向性が違うというか……わたしらしい気もするけどさ」

 

なんでオレと一緒に死ぬならいいって考えてんの!?って本気で思ったね。超直感で大丈夫という確信もあっただろうけど。それと何故かヒバリさんに興味を持ってて、XANXUSに親近感をもった。特にXANXUSの方はヤバイ。オレの胃がキリキリしちゃうよ……まじで。や、わたしがそう思ったなら、オレは止めないけどさ。後、オレはみんなの見舞いに行きたいの。オレは特別枠として……ヒバリさんだけ許可したのはわたしの方だから。

 

「でも一言いいたくなる。わたしの男の趣味悪すぎない!?って」

「骸を好きな時点でわかってただろ」

 

そうだけどぉ〜と情けない声を出しながらオレは項垂れる。女に優しいリボーンはそっとオレの背を叩いて慰めてくれた。

 

「……あ、それと。わたしはお前のことも好きだよ」

「オレはよくモテるからな」

 

こいつ、ナチュラルに自分だけは趣味の悪い男の括りから外そうとしやがった……。リボーンのことをよく知ってるオレはスルーを決め込んだ。絶対にツッコミしないからな!

 

●●●●●●●●●●

 

 

次の日からリボーンはオレに会いにこなくなった。理由はわかってるけど、わたしが寂しがってると感じる。

 

オレが何か知らないかとオレを探してるけど、姿は見せない。すぐにオレも居なくなっちゃうし、余計にわたしが寂しがりそうだから。

 

ちなみにオレは未来に行く気はない。10年後のオレがいるのに、わざわざ当たる必要ないよ。正一君もオレをメンバーに入れないだろうし。だってね、子どもの正一君がオレを当てれるわけないもん。

 

だから寂しいよ、早く帰ってこないかなぁと思っている内に大きな地震が起きた。

 

オレの記憶があるから違和感を覚えてるけど、アルコバレーノの力はやばすぎ。わたしの記憶じゃオレが消えてから1日もたってないんだけど。歴史がしれっと改竄されてる。こわっ。

 

なんて戦慄しながらも顔には出さない。昼間だったのもあって、伊達メガネモードの状態でオレは寿司を食ってたから。もちろん山本ん家の店。

 

未来の記憶は今日の夜にでも届くんだろうなぁと思ってるとオレの超直感が反応した。すっげー嫌な予感が急にし始めた。え、本当に急すぎない?オレ、今変装中だって。普段なら寿司屋に入る前に警告があるんだけど!

 

「ソラ、発見!!」

 

ガラッ!!と凄い勢いでパンツ一丁のオレが扉をあけた。山本のお父さん、いらっしゃいじゃないよ。この人も結構天然入ってるよね、なんてオレは思考を現実逃避する。いやだってさ、伊達メガネモードのオレの前にオレが来て、さっきのセリフ。そして死ぬ気から戻ったオレはちょっと泣きそうな顔でオレを見ている。……絶対バレてるよね?

 

「ソラぁぁ!!」

 

飛びかかってきたオレを避けるのはかわいそうで、仕方なく大人しく抱きしめられる。そしてオレが泣く必要ないんだよと良い子良い子と頭を撫でる。

 

……けどさ、オレは声を出して言いたいよ。誰か情報ください、お願いしますって。

 

その後、山本が部屋から降りてきて「この頃もそっくりなのな!」と言われて、ある程度は察した。けど、やっぱ詳しい情報ください、まじで。

 

「リボーン、助けてー……」

「諦めろ」

 

オレの助けはいないのか、なんて思いつつ、結局ずーっとオレが離れなかったので、このまま山本の家に泊まることに。山本に世話になるけど流石に今回はわたしも許したよ。

 

ちょっと気になるのはこの時のオレ、母さんと久しぶりに会えてめっちゃ喜んでたよね?母さんはいいの?……口になんて出せる雰囲気じゃないから我慢するけど。

 

オレと手を繋ぎつつ、就寝。

 

……長い長い夢を見たオレは起きた途端に頭を抱えた。大まかな流れはオレの知ってる通りだったよ。わざわざオレが殺されたとしても、わたしが白蘭を殺しにいったりしないと思ってたから想定範囲。わたしが危ういのも想定範囲。未来のオレのせいで、オレ達が関わるようになったのも……まぁまだ想定範囲。プリーモと話したのも……驚いたけど、大丈夫。

 

問題は基本的にオレがこの件に関わってなかった理由が衝撃的すぎて、言葉が出ない。

 

「アル、可愛かったなぁ」

 

ちょ、オレが油断したタイミングでわたしが出てこないで。その呟きで起きたオレが複雑な顔をしているから。いや、オレもすっげー複雑だけどね!アルが可愛いのは事実だから、オレ達は否定しにくいし!!

 

「……すげー気まずいんだけど」

「……オレも」

 

流石双子だよね。ため息のタイミングも完璧だった。そして、まずは家族関係からやり直しかなと、顔を見合わせて思ったんだ。多分、オレも。

 

「改めてよろしくね」

「こちらこそ」

 

2人で笑い合って一旦落ち着いたオレ達は、泊めてくれた山本にお礼を言いにいったんだ。




次から未来編で10年後のソラが主人公です。
サクサク進んで42巻分を8話におさめてますが、流石に飛ばしませんw

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