夜のソラ [完結]   作:ちびっこ

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第3話

日本に行きたいとお願いされ、オレはイタリアから日本支部へ飛んだ。こっちの方が安全だろうという判断もあったしね。まだ嫌な予感もしないし。

 

「カレーの匂い!」

「あーほんとだね」

 

ランボとイーピンもだったけど、身体能力おかしいよね。なんでそんなに走れるのかなぁと思いながらも、慌てて追いかける。カレーにしか目が行ってないからね。無かったら、作んなきゃ泣くだろうなぁ。

 

「僕たちの分もある!?」

 

ガラッと勢いよくあけたのはいいけど、想定外なことが起きたのか泣き出した。忙しないなぁ。

 

「うわーん、ママーー!!」

「はいはい。ママはここにいるから」

 

なんて言いながらオレはアルを抱き上げて、なにが起きたんだろうと部屋を覗き込む。……ちっこいオレ達がいたよ。え、この世界ってこの世界なの?

 

……おかしくない?あれでもボンゴレ匣は作られてたからおかしくはないのかな?オレが居るせいで新たに分岐された未来だと思ってたよ。

 

「「「ええええーー!?」」」

 

あっぶな。みんな声デカすぎだよ。なんとかアルの耳を防げたからよかったけど。

 

「小さい黒髪のツナさんがいます。それにママって……ということは……はひぃ……」

「ハルちゃん、しっかりして!?」

「う、うそだよね、そうだよね、だって……仮面つけてるし……。相手は……ソラ……?」

「ははっ、ツナにそっくりなのな」

「10代目のお子さんということは……11代目!?」

 

頭痛くなってきた。けど、とりあえず優先はアルだね。でも後で獄寺君にその呼び方は変えてもらおう。アルには夢があるし。

 

「怖くないから。ほら、よく見たら知ってる顔だろ?あーこの顔だったら流石にわかるだろ?」

「アルフレード坊ちゃん、お久しぶりです、ジャンニーニです」

 

ジャンニーニの前にアルを持っていけば、ちゃんと合わせてくれた。ほんと助かった。アルはきょとんとした後、知ってるーと叫んだから。

 

「じゃ、彼は?写真で見たことあるだろ?」

「リボーン!」

「ちゃおっス。正解だぞ」

「なら、この人もわかるだろ?」

 

リボーンの後にオレの前に持っていけば、ゴクリと喉を鳴らしていた。……悪いな、オレ。優先はアルだ。

 

「んーっと、わかった!パーパ!」

「えらいえらい」

 

アルを褒めながらも、バタンと倒れたオレにごめんと心の中で謝った。

 

 

なんとか周りが落ち着き、どこから話せばいいの?とオレは頭を悩ませる。アルはカレーに夢中で可愛いんだけどなぁと現実逃避したい。

 

「……アルがびっくりするから、叫ばないでよ」

 

そういってオレは仮面をとる。過去のわたしには悪いけど、これを取らないと話が進まないんだよ。オレが仮面をとった瞬間、みんなが目を見開いていた。オレの注意はちゃんと頭の片隅に残ってくれてて助かった。

 

「お前はずっと本心を言ってたんだな……」

「あはは」

 

全て繋がったらしいリボーンはいろいろとのみこんだ表情をしていた。

 

「えっと、ツナ君のお姉さん?」

「オレも知らなかったのな。姉ちゃん居たんだな」

「野球バカ、そんな単純な話じゃねぇ。ここは10年後の世界だ。そもそもこの仮面はソラだろうが」

「……ハル、覚えてます。ソラさんはツナさんと同じ誕生日って」

「ソラはオレと双子……?」

 

みんなの力を借りたけど、オレはちゃんと正解にたどり着いたよ。オレの顔色悪すぎるなぁなんて思う。まぁオレの過去も知ってるからしょうがないか……。

 

「細かいことは後で説明するよ。ちょっといろいろあって、アルには君をパーパと呼ばせているんだ」

「……未来のツナはソラの正体を知っていたんだな。じゃねーと、ツナは納得しねぇぞ」

「ここまでそっくりだと黙ってること出来なくってねぇ。アルもなんとなくわかってるみたいで、父親にはちゃんとパパって呼んでるよ、そこは安心して」

 

オレがもっと詳しく聞きたそうにしていたけど、京子ちゃん達の前だから何も言えなくなっていた。

 

「ママぁ……」

「ご飯食べて眠たくなったんだね。よかったよ、時差があったから心配だったんだよね」

「お風呂入って寝るー……」

 

はいはいとオレはアルを抱き上げて、しばらくお邪魔するつもりだからと声をかけて出て行った。……リボーン、オレのこと頼むよ。

 

アルを寝かせた後、オレは食堂へと向かう。そこにオレがいる気がするから。

 

予想通り、オレとリボーンがいた。そして獄寺君と山本も。この時期にマフィア関連のことをよくわかっていない山本がいることに正直オレは驚いた。けど、オレの顔色を考えれば理解もできる。

 

「酷い顔してるね」

「っソラ!!」

 

オレはアルにするように、オレの頭を撫でながら語り出した。

 

「察しの通り、オレ……この場合はわたしって言った方がいいかな。わたしは君と双子。何があったのか知らないけど、骸と同じ場所で育った。骸と一緒に殺して逃げ出した後は、超直感に従って向かった先に君たちの家があった。そこから病院とか調べて、わたしは死産という記録だった。わたしは家にも戻れないから、並盛に住み着いたってところかな」

 

正確には並盛じゃなくて、オレん家の屋根だけど。そしてしばらくすると殺し屋が来て、ますますわたしは離れなくなった。

 

「一応このことを知ってるのは、君と君の守護者、わたしに害がなく君が信頼しているリボーンのような身近な人物、後は9代目とヴァリアー」

「ヴァリアーだと!?」

「妊娠中のわたしの警護はヴァリアーだったから」

 

チラッとリボーンがオレをみた。……うん、察し良すぎ。軽く息を吐いて、リボーンは違うところにつっこんだ。そこもやめて欲しいんだけどね。

 

「CEDEFは入ってねぇんだな」

「うん、今でも父さんはわたしのこと知らない。もちろん母さんも」

 

カバっとオレが立ち上がったけど、結局何もいえなくなって、オレに抱きついた。なんでオレがそんなに傷つくのかなぁ。

 

「そうだなぁ、ちょっと愉快な話?をしよっか。オレが打ち明けた時、君はすっげーキレたよ。ボンゴレの歴史に残る親子喧嘩だったね」

「ツナがキレたのか。オレもみたかったぞ」

「みてたって。父さんが氷漬けにされてたのをみて満足そうにしてたよ」

「尚更みたかったぞ」

 

ニヤリとリボーンは笑っていた。獄寺君と山本はちょっと引いていたけど。

 

「えーっと、父さんを氷漬けにしてる間に、君はオレのためにボンゴレじゃない組織をつくって、オレをそこにいれたよ。CEDEFもトップがいなくて大混乱中だったから、同じような組織を作られてるのに誰も止めれなくてさ。9代目も事情が事情だったしねぇ」

「ツナはキレたらこえーもんな!」

「オレは笑えねぇ……。いやでも、さすが10代目っス!」

 

獄寺君、正解。ボンゴレも大混乱が起きてたよ。

 

「だから一応オレはボンゴレじゃないけど君の直属。命令なんて何にもなかったけどね」

「目に浮かぶぞ」

「だよね。オレをもうマフィア関係の煩わしいことに関わらせたくなかったんだと思う。あとはアルの顔をみて、勝手に周りがオレが君の愛人と思われて、跡継ぎがいるなら何にも言わなくなった感じ。実際、君はアルのことを可愛がってたしね。親子喧嘩と言われるようになったのは、父さんに結婚を反対されたって、これも勝手に周りが納得しちゃってさ」

「それで10代目をパーパと呼ばせることにしたのか」

 

そ!とオレは頷く。実はほんの一瞬だけ父さんとの子どもという噂もたったけど、またオレがキレて氷像がたったからすぐに消えた。父さんだって身に覚えが無いから、自由になってすぐに否定してたし。もう一個を完全に否定できなかったのは冗談半分で見合いの釣書をオレに持って行ってたから。目撃者も多数いたらしいし。自業自得だよね。

 

「きな臭くなってからも、君はオレに何も頼まなかったよ。オレはボンゴレじゃないから関わっちゃダメと言われたぐらいでさ」

 

一言、白蘭を殺してって言えば済んだのにね。……あ、でも一つだけ頼まれたことがあったね。約束だから黙ってるけど。

 

「それにボンゴレ上層部だけじゃなく、ヴァリアーとも意見が一致しちゃったんだよ。君が子どもを作ってないから、アルが必然的に11代目。そしてオレの炎の特性を考えれば、何があっても逃げることはできるから。血筋を残すためにオレは戦いの中に出さないって、アルはまだちゃんと自分の身を守れないしねぇ」

 

オレもそれに乗っかったんだよ。アルが可愛いから。

 

「……結局、ソラはボンゴレから離れられてないじゃないか」

 

やばっ、オレがちょっとキレてない?

 

「えーっと、そこまで怒んなくていいよ。実はわたしが暴走して関わってることになっちゃったから。止めれなかったオレが悪いというか……、そもそもきっかけを与えてしまったのはオレだし……暴走したのはわたしだけど」

 

……未だにオレもよくわかってないんだよ。わたしの暴走に気絶しかけてたし。オレがわたしの行動を思い出して遠い目をしていれば、オレが心配しはじめた。

 

「……うん、君はすごく良いところにわたしを落ち着かせたよ。的確だった」

 

これ以上の正解はないね。オレでもここまでうまくやれるかわかんないよ。

 

「ツナ、未来のお前の采配に口出す権利はねぇぞ。んなことより、今しか相談できねぇ問題があるだろ」

「えっ?」

 

オレもよくわからなくて、首を傾げる。タイミングが揃ったよ。やっぱ双子なんだなと獄寺君と山本がオレ達をみていた。

 

「ラルについてだぞ」

「ラル?」

「彼女がここにいるのか?」

「正解だぞ」

 

そうだった、ラルはCEDEFの人間だったね。オレの中でのイメージは困った夫婦だったから忘れていたよ。

 

「アルには悪いけど、違うところに行くかぁ」

「なんで!?」

 

ヤダと言うようにオレがオレの腕を掴んでいた。しばらく見つめあって、オレはうなだれた。……わたしはオレに甘すぎる。

 

「京子とハルに口止めするよりは、ラルに口止めした方がマシだな。オレからも頼んでやるぞ」

「そうしてくれると助かるよ」

 

京子ちゃんとハルは親しみを持って接してくるだろうしね。マフィアのこととか全部話さずに合わせろなんて言えないよ。外だけならまだしも、このアジトの中までなんて今の2人の精神状態では無理だ。

 

リボーンがなんとかしたのか、次の日の朝にラルと顔を合わせても何も言ってこなかった。それどころじゃなかったのもあるけど……。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

 

次の日、オレは夜更かししたのもあって警報アラームで飛び起きた。

 

「アルー?」

 

音にビックリしてオレに飛びついてきそうなのに、アルはいなかった。泣いてなきゃいいんだけど。警報アラームの正体を知ってるオレは無視して、アルを探すことにした。超直感に従って歩いてると、出口に辿り着く。

 

「うそーん」

「って、ソラ!?ここで何してるの!?」

「今そんなこと言ってるヒマはないぞ!沢田!」

「や、でも」

「アルがここから外に出たみたいなんだ!」

 

揉めそうな2人を遮るような形で事実を伝えた。オレは魂が抜けそうになってた。オレも似たような顔をしていると思う。

 

「くそっ、お前もついてこい!」

 

頼むから無事でいてくれてよとオレは2人と一緒に外へ出た。もちろん早着替えしてからね。

 

どこへ向かってるか予想できる京子ちゃんの話をまずオレから聞いて、そのあとはアルの話。心当たりはあるのかって。

 

「……あるね」

「ほんと!?」

「多分アルは彼女を追いかけた。アルはまだ小さいけど、超直感はちゃんと機能している。彼女が出て行くところを見て追いかけた方がいいと判断したんだ。君のアルバムを見ていたから彼女のことも知っていたし」

「アルフレードのところへ飛べないのか!?」

「無理だ。オレは人じゃなくて地点で飛ぶ」

 

それに今飛べば、ミルフィオーレにこの炎を感知されて気付かれる。アルがどこに居るかわかってるなら使ってもいいけど、わからない状態だとリスクが高い。アルはボンゴレ狩りの筆頭候補なんだから。……せめてアルが止まって方向が定まってくれれば、賭けに出るのに。

 

「彼女の家には飛べるが、オレの超直感ではハズレだ。恐らくまだついていない」

 

こうなったら黒川の家に先回りするしかない。オレはオレの超直感を信じているようだし、うまく誘導する。ラルはオレが付いていくなら、付き合うしかない。

 

オレ達が黒川の家に着いた時、ちょうど京子ちゃんと黒川が合流したところだった。アルは黒川と顔を合わせない方がいいと思ったのか、隠すように京子ちゃんにしがみついていた。

 

「ソラちゃん怒らないであげて。勝手に飛び出したわたしが悪いの。アル君はずっとわたしを守ってくれたんだ」

「……わかってるよ、大丈夫。アル、よく頑張ったな」

 

黒川から見えないように気をつけながら手を伸ばせば、アルはギュッとオレに抱きついてきた。……怒られるとも思っていたんだな。オレを呼ぶ声が涙ぐんでる。

 

ポンポンとあやすようにアルの背を叩き、黒川に彼女を匿ってもらうようにお願いする。一般人にオレの炎は使えないからね。一瞬オレが何か言いかけるもとどまって、黒川に頼んでいた。

 

「後、オレの正体は彼女にはヒミツだよ」

「え?」

「ヒーローは正体を隠さないとね」

「ふふっ、そうだね」

 

自分が助けてもらった時のことを思い出してるのかもしれない。純粋な京子ちゃんの反応にオレはちょっと仮面の中で苦笑いする。本当はそんなカッコいい理由じゃないし、アルがピクッと動いたから。……聞きたいのを我慢してるんだろうなぁ。

 

オレはオレ達とも別れ、アルを連れて移動する。京子ちゃんの面倒までは見ないけど、ここから出来るだけ離れた場所から、炎を使う分別ぐらいはある。

 

せっかくだし、アルのご褒美も兼ねてケーキでも用意しようかなとオレはイタリアにとんだ。ついでにお兄さんから伝言でも預かってこよーと。

 

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用件をすませて日本支部に戻れば、オレにめっちゃ心配されていた。ごめん、のんきにご飯食べてから来たよ。後、作ってくれるっていうからケーキ待ちしてた。向こうが早朝って忘れてたんだよ。やっぱ一瞬で移動すると、時差のことが抜ける。

 

「ママ、ママ」

「アルが渡したいの?」

 

グイグイと強請るようにオレの服を引っ張るから、USBを渡す。嬉しそうに京子ちゃんへ持っていったよ。可愛いなぁ。

 

ただ京子ちゃんはアルの話をちゃんと聞いてくれているけど、どうしたらいいかわからないよね。この時代にもこのアジトにも慣れてないし。まぁ見かねたビアンキが手助けしてくれたから助かったけど。オレが手を出すと、スネそうだったから。一人で出来るもんってね。

 

ビアンキはネット回線に繋がない方がいいと判断して、それ用のパソコンを起動した。みんなも興味があったのか一緒に覗いている。

 

『京子、アルとソラから聞いたぞ!オレのことを心配してくれたんだってな。オレはこの通りピンピンしている!!オレが帰るまで、沢田を頼りにするんだ。極限に頼りになる男だぞ!!うおおお!!』

 

……音量を下げるように言うの忘れてたよ。この動画を撮った時も思ったけど、お兄さんの声大きすぎ。

 

感動している京子ちゃんや一緒に喜んでいるハル達の横で、オレと獄寺君の顔は引きつってた。山本は笑ってたけど。……まぁお兄さんの後ろで、アルがスクアーロの髪を引っ張ってた姿が映り込んでたからね。めっちゃ痛そうだけど、アルの大のお気に入りでオレは慣れちゃったよ。誰も止めないし。

 

この後オレがルースリア作のケーキを出したら、ついにオレもスルーし始めた。というより、ツッコミしたいけど怖くて出来なくなっただけだね。

 

……オレよ、そのままいろいろ諦めた方が楽だよ。XANXUSとベル以外、アルのおしめをかえたことあるから。大丈夫、オレも通った道だよ……。わたしの暴走ってやっぱ凄いよねとオレは遠い目をした。

 

●●●●●●●●●●

 

 

この数週間、アルは思いっきり遊んでいた。同じ年頃の子と遊ぶことも少ないからね。楽しそうだった。

 

京子ちゃん達もそろって遊んでくれた方が楽だろうし、オレが基本的にランボとイーピンの面倒をみていた。いつの間にか、ランボにママンと呼ばれるようになったのはびっくりしたけど。アルが怒らなかったから、好きにさせた。母さんみたいに見えてると思うとちょっと嬉しかったしね。

 

けど、ヒバリさんがこのアジトに顔を出したとアルが知ると、すぐにオレの修行場に突撃した。

 

「恭弥!」

「やぁ。元気そうだね、アルフレード」

 

ヒバリさん名を呼び捨てにして、さらに普通に話してるアルにオレはひいていた。気持ちはわかる。……ほんと、このコミュニケーションの高さは誰に似たんだろうね。

 

「今日こそ勝つよ!」

「きなよ、咬み殺してあげる」

 

なんであんなにウキウキと匣から銃を出して、向かって行くのかな。オレがびっくりしすぎて倒れそうになってるよ。もうちょっと手加減してあげて。ラルも唖然としてるじゃん。

 

そして容赦のないヒバリさんは本当にアルを咬み殺した。もちろんヒバリさんは手加減してくれてるよ。アルが伸びる程度にはボコるけど。これの何が怖いって、数分後にはアルがピンピンしてること。……血って凄いよね。

 

今日も完全にのびちゃってるなーとアルを抱き上げる。ヒバリさんはオレの相手に戻ったよ。オレがアルを心配してる余裕があるの?って感じで。

 

「アルの武器は銃なのか?」

 

ちゃっかりと見にきていたリボーンに言われた。やっぱコイツは気付くよな。

 

「アルの死ぬ気の炎、封じ込めてるんだ。……封印したのはリボーンだよ、鍵はオレが持ってるけど」

 

そう言って、弾を見せる。コイツがわかりやすく難しい顔するなんて珍しいよね。まぁリボーンがそう判断するぐらい、アルの死ぬ気の炎の量は多かったよ。自分の身体を痛めさせるレベルだったから。

 

「だから武器はグローブが正解。けど、封じ込めてる状態だと気持ち悪いんだって。アルはほとんどの武器を使いこなせたから、今はまだ本人が気に入った銃をメインに使ってるんだ。……アルを守るのにオレが選ばれたのはそういう意味もあるんだよ」

 

アルの身体が出来上がってからが本番だから。手加減してもらってるとはいえ、今の状態でもヒバリさんに時間を割いてもらえれるレベルには達してるんだよね……。

 

「初めての生徒がアルなんて、ハードル高すぎと思わない?」

「腕の見せどころじゃねーか」

 

……お前と一緒にしないでよ。オレ、この才能を殺しちゃったら後悔どころじゃ済まないよ!?

 

「っ、また負けたー!!」

 

そんなことをリボーンと話してる間に、アルが起きてさっそく悔しがっていた。なんでこんなに向上心も高いのかな。……これは絶対わたしやオレ似じゃないよ。

 

「前よりは手応えあったよ」

「ほんと!?」

 

ヒバリさんの一言でコロッと機嫌が直るところはまだまだ子どもだよね。って、アルは確かランボより小さかったよ、慣れって怖っ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

アルのついでにランボとイーピンの面倒はみても、今までこの件には関わっていなかった。けど、今日は骸の情報を得たと小耳に挟んだ。だから盗み聞きしようとしていたんだけど、リボーンにバレた。

 

オレもまだまだだなぁなんて思いながら、オレに誘われたから入る。草壁さんは一度確認してたけどね。聞かせてもいいのかって。ちなみに草壁さんもオレ達が双子とは知っている。そもそもこのアジトの中じゃ、オレは仮面つけてないしね。ただ骸とわたしが仲良いからさ。難しい立場だとオレもわかっていたから盗み聞きしようと思ったわけで。バレちゃったけど。

 

草壁さんの話は、オレの知っている情報よりは少なかった。けど、劣ってるわけじゃない。変わってなかったから。や、ちょっとは変化はあったよ。まぁそれはわたしが起こした騒動だからね。草壁さんも理由を察してるから流してたけど。まぁわたしと骸が会ってただけの話だしね。そしてオレも骸の情報を流す気はないから説明はしない。

 

そんな中、黒曜ランドからリングの反応が出た。本物かどうかと話し合ってるけど、情報を聞き終えればもう用がないので退散する。

 

「ソラ、どこに行くの!?」

「アルのところ。わたしには関係ないからね」

 

獄寺君の叫ぶ声にかぶせるように、リボーンからサンキューなと礼をもらった。まぁ充分ヒント与えたもんね。わたしが興味ないんだよ、黒曜ランドに居るのは骸と犬と千種ではないって言ってるようなものだから。ハズレかクロームの二択のどっちかと教えたわたしは、本当にオレに甘いよねぇ。

 

 

騒動が落ち着いて油断している頃、みんなの目を掻い潜ってオレはクロームがいる病室へとやってきた。クロームが寝ているのを確認して、フクロウをそっと撫でる。

 

「久しぶり、骸」

「……お久しぶりです、ソラ」

「そっちは順調?」

「ええ、と言いたいところですが、気付かれていますね」

 

バレちゃってるのに嬉しそうだね。わたしとしては心配しかないんだけど。

 

「ですから、僕はもう戻りますよ。あまり力を使うわけにはいきませんから」

「はぁい」

「余計な手出しは無用ですよ。では、またお会いましょう」

「はぁい……、またね」

 

うーん、うまく隠してたつもりだったけど釘刺されちゃったよ。ほんと、昔っからそうだよなぁ。

 

はぁと大きなため息を吐いて切り替えてから自分の部屋へと飛ぶ。けど、大人しく待っててくれてたアルに元気ないの?と心配されてしまった。

 

「ママは愛されてるけど、寂しくもあるんだよ」

「パパに会いに行く?」

 

うーん、会ってもなぁとわたしとオレの心が一致した。

 

…………えっ、そこで引っ込むの!?アルへの返事はオレに投げるの!?やっぱ、これだけはわたしのことわかんねーとオレは頭を悩ませながらも口を開いた。

 

 

 

わたしが骸と会ってから数時間後にクロームの容態が急変した。少し悩んだけど、オレはアルを途中に出会ったハルに預けて、会議室へと向かう。ちょうどヒバリさんも会議室に入っていくところだったみたいで、目があった。

 

「へぇ。君が来るってことは話す気になったんだ」

「ヒバリさん?……っソラ!!」

 

骸の情報を少しでも欲しいから、会議室に入った瞬間に視線が集まった。

 

「先に言っておくけど、わたしだってあんまり知ってるわけじゃないよ」

「それでもいいよ!」

「骸はミルフィオーレの本部に侵入していたよ。数時間前に話したけど、もうバレてるって言ってたから何かしらあったんだろうね」

 

わたしの言葉にいろんな視線が突き刺さる。骸の心配がほとんどだろうけど、中には数時間前に話していたという点が気になってる人もいる。今はそんなことを言ってる状況じゃないから言わないだけで。

 

「ソラ、おめーはどうするんだ」

「いかないよ。アルのことを抜きにしても、骸はわたしの手を絶対にとらないから。……昔っからね」

 

わたしなら復讐者と交渉だって出来るのにね。感づいているのに、絶対言わないんだよ。

 

「骸は……ソラに幸せになってほしいんだよ」

「……うん、わかってるよ。大丈夫」

 

骸は自分の都合でわたしの手を汚すことが許せないんだと思う。わたしの手は汚れきってるのにね。最初にわたしが骸の手を取らなかった。ただそれだけの理由で……。

 

「まっ、それでもわたしも骸の安否は気になるからさ。ちょっと行ってくるよ」

「へ?今いかないって」

「ミルフィオーレのところにはね。復讐者に生きてるか確認しに行くぐらいなら、骸も怒らないよ」

 

呆れはするかもしれないけどね。一瞬で早着替えし、わたしは飛んだ。なんかオレが叫んでた気がするけど、気のせいだよね。

 

ミルフィオーレが待ち伏せしているかもしれないから、わたしは牢獄の門の中に飛んだ。予想通りイェーガーがやってきたよ。

 

「悪いね、答えを聞きたらすぐに帰るからさ」

「……六道骸は生きている」

「そっか!ありがとう」

 

復讐者もわたしの行動に慣れつつあるよね。なんだかんだ言いながら付き合い長いし。といっても、まだ長居するほどの関係じゃないけど。宣言通り、またねと声をかけてすぐに帰ったよ。

 

「ただいま」

「……ソラ!!」

 

戻って早々、オレに飛びつかれた。……オレは心配症だなぁ。ヒバリさんの機嫌悪くなってるから、離れた方がいいと思うんだけど。とりあえず肩をツンツンして、ヒバリさんを指したんだけどオレはぐりぐりと抱きついたまま動かない。……オレ、幼くなってない?まぁわたしも骸には似たような態度とるしなぁ。仕方ないからそのまま報告する。

 

「骸は生きてるって。彼女への幻覚が途絶えたから弱ってるのは間違いないだろうけど」

 

一先ずホッとしたような空気が流れた。ただクロームは5日後に戦えそうにないことはリボーンがきっちり釘をさしたけど。

 

ラルが代わりに出るといったけど、非7³線の影響の話へと流れていく。オレもこの時ラルが体調が悪いとはわかっていたけど、非7³線のこととかはさっぱりだったからなぁ。流石に空気が悪くなったからオレもわたしから離れたね。助かったよ。

 

「非7³線を放出しているのはミルフィオーレで間違いないよ」

 

再び視線がわたしに突き刺さる。もう一人のわたしが頭を抱えてるけど……許してよ。

 

「わたしも似たようなことするだろうから。……その前に君がわたしを殺すんだよ」

「ソラ……?」

「っ、悪い。オレからもよく言っておくから。アルがいるし、そう簡単に道を外れることはないよ。だけど、わたしの言った言葉は覚えておいて。過去のわたしはまだ危ういから」

 

未だ戸惑ってるオレの頭を撫でる。過去のわたしがこれ以上狂わないように、オレが出来る最大限のアドバイスを贈る。

 

「だから過去に戻ったら、抱きしめてあげて。そして出来れば……家族になってあげてよ」

「当たり前じゃないか!!」

 

うん、オレがそう言ってくれるだけで、わたしは大丈夫だとオレは笑ったんだ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

あの後、部外者のオレがこれ以上居てもと思ったから会議室から出て行った。といっても、盗み聞きはしたけどね。リボーンとヒバリさんは絶対気付いていたけど、何も言わなかったよ。多分、オレにも聞く権利はあっただろうけど、姿は見せない方がいいと思ったんだろうね。

 

いろいろと理由は増えていたけど、5日後に殴り込みする決断は変わらなかった。

 

その日の夜、お兄さんに話しかけられた。やっぱりボンゴレ上層部の決定は変わらなかった。幼いアルを戦いの場に出すぐらいなら、生き残らせて再編にかけた方がいいからねぇ。

 

「ソラ、お前はそれでいいのか?」

「アルはそれでいいと思いますよ。けど、オレに命令出来るのは一人だけです」

「……だな。沢田にはいつ聞くのだ?」

「今日新技の完成が見えてきたみたいだから明日のうちには聞きますよ」

 

そうかと返事と共に、お兄さんに肩を掴まれた。え、ちょっと待って!?

 

「よし、ここからは大人の時間だな。極限飲みにいくぞ!」

「……オレにはアルが待ってるんで」

「心配いらーん。京子に任せた!アルも楽しんできてねと言っていたぞ」

 

そういう根回しはいらないよ!?けど、完全に掴まれてるからズルズルと引きづられるだけ。

 

で、ついた先はヒバリさんのアジト。飲みに行くってそこなの!?

 

「ヒバリィー!飲みに来たぞー!」

「うるさい。何群れてるの、咬み殺すよ」

 

言うと思った。オレはもう来ちゃったし、諦めて飲むよ。ヒバリさんはうまいお酒持ってるだろうしね。

 

「それで何です?」

 

草壁さんに用意してもらったお酒に口をつけた途端、オレは本題に入った。連れ出した理由を教えてくれないと酔っちゃうからね。オレは弱くはないけど、強くもないの。

 

「なに、深い理由はない。沢田とは飲んだことがあるが、お前とはなかったと思ってな」

「……そうですか」

 

チラッとオレはヒバリさんの顔色をうかがう。お兄さんはそれで納得できるけど、ヒバリさんもその気になるには弱い気がする。

 

「顔だけじゃなく、そういうところもそっくりだよ。小動物」

「……双子なんで」

「君に聞いてみたいことがあったんだ」

 

ヒバリさんがオレに?と首を傾げると、お兄さんにも確かにそっくりだと笑われた。……オレを酒の肴にするのはやめてよね。すぐに謝ってくれたし、悪気のないお兄さんだからいいけど。

 

「いくら僕が探しても出てこないのに、ある時に限って現れるんだ。それはどうして?」

 

……なんて答えればいいんだろ。中学生になったオレが気にする人だったからなんて言えないし。

 

「まぁいいけど。一度、君と本気で戦いたいな」

「あ、オレはそういうの結構なんで」

 

ムスっとしているけど、無視する。オレはオレと違うんで、優柔不断じゃないし、ヒバリさんに頼み事なんてしないしね。アルのことも頼んだわけじゃないし。アルは自分から突撃したんだよ。

 

「ぶっ!フラれたな、ヒバリ!」

「諦めたつもりはないよ」

 

はいはいとオレは流す。ヒバリさんが戦闘に関してしつこいのは知ってますから。

 

「……でもわたしはヒバリさんのことを気に入ってるんで、機会があれば付き合ってくれると思いますよ」

「へぇ。会ってみたいな」

 

そういや、ヒバリさんはわたしとは滅多に会わないもんね。いやまぁオレだってオレに打ち明けてからじゃないと、ヒバリさんの前にまともに現れなかったけど。お見舞いとかしても、出会わないようにしてたし。どんどん感覚が鋭くなって、この人どこ目指してんのと思ってた。いやまぁ咬み殺したかったんだろうけど。打ち明けからは落ち着いてくれて助かったよ。まぁオレが基本その場にいたし、オレは子どもを抱いてたのもあるよね。

 

「おお、極限よかったではないか!と言いたいところだが、その機会が来るのはいつになるんだろうな……」

 

お兄さんの一言で少ししんみりする。オレは仮死状態で生きてるけど、落ち着くまで随分かかるだろうなぁ。そしていつもなら何か言い返そしそうなヒバリさんは口を開かなかった。この世界以外、攻略されちゃってるだろうから。

 

なんとなくそのまま朝までコースの流れに。オレは当然途中でお茶に切り替えました。許してくれなかったら帰ったのにね。結局、お兄さんは途中で眠ちゃったけど。草壁さんは下がらせていたから、正直気まずい。たまに極限って寝言を言ってくれて助かるぐらいだよ。

 

「君は……どこまで知っているんだい?」

「……全部です」

「そう」

 

顔には出さなかったけど、急に質問してくるからビビったー。よく考えたら、わざとだよね。草壁さん下がらせたのも、お兄さんをハイペースで飲ませたのもこの人だったよ。

 

「なら、沢田綱吉から託されてるでしょ」

「……多分そんな大層な考えじゃないですよ。オレとわたしがボンゴレを嫌いで、ボンゴレじゃないから信頼できた、それぐらいの理由ですよ」

 

相変わらず怖い人だね。なんでもお見通しで誤魔化しは無意味だったよ。にしても、それならよく大人しくしてたね。まぁオレとヒバリさんが面と向かって二人きりになることなんて、今までなかったけど。アルは伸びても、すぐ起き上がっちゃうからねぇ。

 

「過去から来る僕がうらやましいな」

 

え、これ、オレ謝った方がいいの?まぁ謝らないけど。決めたのはオレじゃないし。後、戦うことを考えてる時に色っぽくなるのは本当にやめてください。一応オレ女なんで、反射で身の危険を感じます。……口には出さないよ、咬み殺そうとするきっかけを与えることになるからね。今日のわたしは乗り気じゃないみたいだし。いやどっちかというと、戸惑ってる?

 

ふわぁぁとヒバリさんが欠伸をしたから、ここでお開きに。お兄さんはそのまま転がしておいていいんだって。オレが飛ばしてもよかったけど、ヒバリさんがいいならいいや。

 

「アルに会いに行こうっと」

 

多分ランボとイーピンと一緒に寝てるだろうし。予想通りの場所にいて、オレはアルの寝顔をみつめる。……いったいオレはどういう気持ちでオレ達に託したんだろうね。もしこの作戦が失敗したら、判断はオレ達に任せるつもりだったのかな。

 

次の日、オレにオレの行動について聞けば、殴り込みには不参加で、もしもの時の判断はオレに任せると言われたよ。……やっぱりそうなんだとちょっと笑った。




10年後なので、マフィアでも正体バレしている人なら一緒に過ごせるぐらい、わたしは落ち着いています。

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