殴り込みの日はほとんどの時間をアルとの修行に付き合っていた。多分落ち着かないんだと思う。それにほとんど歳の変わらないランボとイーピンが向かったのに、アルは行けなかったから。アルは頭がいいから自分が行けない理由はちゃんと理解しているけど、悔しかったんだろうね。
そのアルも作戦が成功したと知った途端、眠っちゃったけどね。度々休憩は取っていたけど気が抜けちゃったみたい。オレはアルをベッドに寝かしつけ、リボーンに声をかける。
「ちょっとの間、アルのこと頼むよ。オレの超直感には何も反応ないから大丈夫だと思うけど」
「ああ、いいぞ。向こうに行くのか?」
これは行くことはわかってるけど、理由を知りたいんだろうな。ちょっと気になることがあるだけだよとオレは軽く答えて飛ぶ。もちろん仮面で顔を隠してだよ。まぁ別に白蘭には見られてもいいんだけどね。今オレが知られたくないのは父さんと母さんぐらいだし。
オレが現れると周りが一瞬の警戒していた。まぁ炎を使っての移動だしね。気にせず周りを見渡しているとオレが突進してくる。……やっぱ幼くなってない?
「ソラ、どうしたの?」
「救急箱かしてくれない?」
「へ?もちろんいいけど……」
不思議そうにしながらも、オレは離れてすぐに持ってきてくれた。悪いねといい、オレの頭を撫でてから歩き出す。オレが追いかけてくるからちょっと笑った。目的の人物の前に立てば、めっちゃオレたちを交互に見てたけど。
「選んでください」
ヒバリさんはムスッとしながらも、大人しく怪我をしている手を出した。まぁ拒否すれば、オレが気絶させるだけだもんね。にしても、この頃のヒバリさんはまだまだ可愛いよねぇ。今じゃ夜の炎を使わなくちゃ無理だもん。流石に子どもが出来てからはやらなくなったけど。
後ろでオレが衝撃を受けてるからか、周りにも伝染していく。見せ物じゃないよとしっしと手を振ったけど、効果があったかは微妙。
「ソラとヒバリさんってどういう関係……?」
鬱陶しいだろうに、ヒバリさんはオレの呟きが聞こえても我慢していた。いや、ヒバリさんも知りたいのかもしれないね。未来のヒバリさんも気になってたみたいだし、オレがどういう目的で現れるか。……あれからいろいろと考えたんだよ、オレも。
「ほっとけない人?」
「えっそれって、も、もしかして!?」
「うるさい」
そう言ってヒバリさんはオレが掴んでない方の手で、オレを殴っていた。もちろんトンファーを使っていたから、痛そうだった。
「ただオレがほっとけなかっただけだって」
模範したオレが幼くて危なっかしいヒバリさんを見て、なんとかしたいと思ったんだよ。あの頃は変にオレとわたしが混ざり合ってたから、よくわかってなかったけどね。あれはわたしじゃなくて、オレが反応した心だ。幼いころに獄寺君が並盛にいれば、同じようなことをしてただろうし。まぁ大きくなったら獄寺君の面倒はみれなかったけど。マフィアだからね。
「わたしは彼のことを気に入ってる程度だろうね。君の勘ぐり過ぎ」
殴られた箇所が痛いのか頭を押さえながらもオレは、オレの顔を覗き込んできた。仮面してるから目ぐらいしか見えないのにね。見えた顔は心配しているのか、すげー眉間にシワがよっていたから思わず吹き出すように笑う。
「へ?」
「や、ごめん、笑って。でもさ、わたしがアルを産んでるのを忘れてるでしょ」
あっ、とオレが声をあげた。どれだけ修行で疲れてても毎日オレ達とアルに会いに来てたのに、なんで抜けるんだろうね。まぁ理由はわかるけどさ。
「君がオレのことを気にしてくれてるのはわかったけど、オレはそういうの興味ないの」
「そうなの?」
「ウソかどうかは君ならオレの顔を見なくてもわかるでしょ」
オレがそう言うと、すぐに納得したみたいで眉間のシワがなくなった。ほんと、顔に出やすいね。
「はい。おしまい」
我慢の限界だったのか、ヒバリさんはすぐオレ達から離れた。まぁかなり鬱陶しい視線だっただろうしね。オレに気絶させられて浴びるより何十倍もマシだから大人しくしてただけだし。あと、本当にうるさかったよね。どんどん機嫌が悪くなってたよ。
用事が終わったから去ろうとしたら、ちょうどXANXUSが敵の大将を倒したという情報が入ってきた。……喜んでるねぇ。
白蘭のホログラムが浮き上がって完全にタイミングを逃しちゃった。もちろんアルに何かありそうならさっさと去るけど。
「あれ?ソラちゃんが居るよ。めっずらしーね。でもちょうどよかった、一度君と話してみたかったんだ♪」
「オレと?」
「うん。君なら僕のことわかってくれるだろ?」
……まぁオレよりはわかるだろうね。
「僕のゲームに絶対入ってこない君だからこそ、僕の創る世界に登場するのに相応しいんだ」
「生きたキャラクターとして?」
「やっぱり僕が見込んだ通り、ううん、それ以上だ」
はぁとオレは首を振る。そんな熱のこもった目で見られても、オレもわたしも興味がない。……オレはそのままの意味だけど、わたしはお前と位置がかぶるっていう意味だからね。コイツ、本当にわかって誘ってんの?
「うーん、つれないなぁ。でも考えといてよ、君ならいつでも大歓迎♪」
これ以上はわたしに悪影響だと思ったオレは、アルのいる部屋へと飛んだ。
しばらくの間、ただアルの寝顔を見ていた。するとリボーンがやってきて、疲れたぞとオレにもたれかかるように眠った。……ったく、寝るならここじゃなくてもっといい場所があるだろうに。なんて思いながらも、オレも休むかなと目をつぶったんだ。
●●●●●●●●●●●
白蘭が10日後まで手を出さないという話だったから、オレはアルへの状況報告も兼ねて、お兄さんへの説明を手伝った。獄寺君はアルの方がすぐに理解したから、キレるのを通り越して頭を痛めてた。最後にはアルが教えてたよ。お兄さんは子どもの感覚の方があったらしい。難しい言葉とか使わないもんね。
その後はイタリアへ飛んだ。状況を理解したアルが行きたいって言ったからね。オレがバジル君が来てからは仮面を外さなくなって、近寄らなくなったのもあったと思う。オレも今回は引き止めなかったよ。だから京子ちゃん達には説明しても、バジル君には正体は教えないだろうね。バジル君は父さんに憧れてるのもあって報告しそうだから。
チョイス当日もそのままイタリアで過ごしたよ。一応確認しに行ったら、参加しなくていいとオレに言われたしね。まぁ結局、日本に向かうことになったから、わたしとアルも飛行機に乗せてもらったけどね。アルが興味津々だったんだ。わたしと一緒にいると乗る機会ないもん。もちろんわたしの力は借りる気がないのはわかってたから、声なんてかけてないよ。そもそも昨日わたし寝させてもらえなかったから、飛行機でちょうどよかったの。おやすみなさい。
並盛についたら別行動になった。アルは行きたそうだったけど、そういうわけにもいかないし。まぁ戦いが見える位置にはいるけどね。オレが居ればすぐ逃げれるから。
「よく見ておくんだよ、アル」
オレがかけれる言葉はそれしかない。幼いアルの心にどう影響を及ぼすのかはわからないけど、目をそらすことは良くないことはわかる。
「ママは悔しくないの?」
「ないね。薄情だと思っていいんだよ」
「思わないよ。それに僕は11代目にはなりたくないけど、僕がするべきことには変わらないもん」
まぁねとオレも頷く。アルの将来の夢を考えたら、白蘭を倒す以外に道はないからねぇ。……なんとなくだけど、白蘭に攻略された世界でも、大人になったアルが白蘭を倒す未来があったと思う。まぁその場合は夢は叶わず、アルが11代目になってるんだろうけど。
「……アル」
「ママ?どうしたの?」
「最後までこの件に関わらずにいたかったんだけど、そうはいかないみたい」
「え!?」
驚いてるアルを落ち着かせるように頭を撫でる。
「多分そうじゃないかと、どこかで思ってたんだ。それに、ママはジョーカーだから」
「ジョーカー?」
「そ。有益でもあるし有害でもあるの」
結局、気付いたのはヒバリさんだけだった。……ほんとオレの頼み事は厄介だよ。わかっててオレ達に押し付けるんだから。
「滅多にない上司からの頼みごとだから、アルも我慢してね」
「……パーパだから我慢する」
スネちゃって可愛いなぁ。連れて行けなくてごめんね、ちゃんと帰ってくるよと伝えるようにぎゅーっと抱きしめる。……ああ、もう時間だ。大事にしまっていた匣がガタガタと震えだす。
「アル、あっちに送るから。パパと一緒にいるんだ!」
返事すら聞かずにオレはアルを飛ばした。そうしている間に、結界がうまれてしまった。夜の炎を使って飛ばしてみるけど、新たに結界がうまれる。
「やっぱり、匣が中心か!」
クソっ!とオレは思わず悪態をつく。……うわ、ちょっとうつっちゃったし、わたしがめっちゃ笑ってるよ。
オレは頼まれたものを守るために、仕方なく結界の中に入る。
「あーもう、最悪だよ……」
オレが入れるぐらい結界に余裕があったのは良かったけどさ。合流しちゃったら、白蘭だけじゃなく、みんなにバレちゃうんだよ。……絶対に返品しよ。
「ママ!」
良かった良かった、ちゃんと言いつけ守ってたし、守ってくれてたよ。オレがそれだけでも助かったとホッとしていたら、結界から出そうと悪態をつきながらも銃をぶっ放してくれた。……やっぱあいつがパパなんだよな。なんて自分のことなのに他人事のように思うオレがいる。いやまぁ昨日のこととか考えたらわかってんだけどね。でもな、やっぱオレじゃないし。わたしが幸せみたいだからいいけど。アルも可愛いし。
頑張ってくれたけど残念ながらそう簡単に破れる結界じゃないし、オレも大空3人組のところに合流してしまった。
「ソラさん!?」
ユニが驚いてる横で、白蘭も目を見開き、次の瞬間には声を出して笑っていた。この戦場には似つかわしくないね。……オレは気を失ってて、ユニがアルコバレーノが復活させようとしていることもバレちゃってる感じか。
「ハハハっ。すっかり騙されちゃったよ。……まさか、この時代のボンゴレリングをソラちゃんが持っていたなんて」
オレは諦めて、覆っていた手を開く。ボロボロになった匣から、全てのボンゴレリングが出てきた。あーあ、壊れちゃったよ。特別製って聞いていたんだけどなぁ。特別製だから今まで保っていたのかも知れないけど。
「この世界の綱吉クンは、どうして過去から来た綱吉クンに託したんだろう?それを使えば良かったのに」
「……君は彼のことを知らなすぎる」
「そんなことないさ。僕以上に綱吉クンを知らない人はいないよ。たとえ君であっても、ね♪」
はぁとオレはため息を吐く。そりゃまぁどの世界のオレと対峙してるから自信があるみたいだけど、オレの本質を理解していない。ユニは気づいているのに。……お前が気付くのはオレに倒されてからだろうな。
「彼はこの世で一番の頑固者だよ。7³の役割をオレが教えたから砕かなかっただけで、ボンゴレリングを使わないと決めたなら、死んでも使わない。そういう男だ」
「ふーん、それで僕に殺されちゃったら意味がないのに」
「意味はあるよ。彼が彼でいられる」
そんなこと?と白蘭は首をかしげているけど、オレにとっちゃ重要なことだよ。そしてそんなオレだから、わたしは抑え込むのにオレの人格を模範した。
「まっいいよ♪それで綱吉クンの代わりにソラちゃんが僕の相手をしてくれるの?」
「しないよ。オレは関係ないから。頼まれたから預かっただけで、そういう命令はされてないし」
「そーこなくっちゃ♪やっぱり君は僕の世界にふさわしい住人だよ♪」
はいはいとオレは流すけど、オレの周りを白蘭が鬱陶しいぐらいにまわってるから口を開く。
「オレにかまってないで、彼の相手しなよ」
「もう綱吉クンは完全に壊したよ」
本当に?とオレが首をかしげると、リボーンが叱咤して、オレは目をあけた。ガタガタと震えるオレに声をかける。
「もう帰る?この時代の君のわがままで、過去からの君にかけた。けど、元々君が背負うことじゃなかったんだよ」
「帰すつもりはないよ。でも本当だよね。この時代のボンゴレリングはあるんだから、死ににきたようなものだ♪」
「白蘭うるさい。オレは彼に帰るか帰らないか聞いているんだ。……いや、違うね」
……よく見ててね、アル。ジョーカーの意味をちゃんと理解するんだよ。
「わたしに命令すれば叶えてあげるよ。白蘭を殺してほしい?帰りたい?新しい世界がほしい?それとも……ユニを生かしてほしい?」
チラッと視線を向ければ、ユニは一歩さがった。
「怖がらなくたっていいのに。まぁ君は自分の命を使ってでもアルコバレーノを復活させたいみたいだから、阻止されたら困るもんね」
「どうしてそれを知って……」
「ふーん、そうなんだ。それはやめさせなきゃね。ユニちゃんの命は僕のためにあるんだもん♪」
白蘭のせいでますますわたしにも怯えちゃったじゃん。
「もう。白蘭と一緒にしないでよ。わたしはユニの願いを叶えた上で、生かすことだって出来るんだよ?」
みんな驚いた顔をしているけど、わたしの発言で一番反応したのは白蘭だった。
「ウソはついちゃダメだよ。希望を持たせて、ユニちゃんがかわいそうだよ」
どの口がいうんだよと思わずもう一人のわたしがツッコミしていた。もちろんわたしの中でね。
「成功例があるのに?」
「……そんな世界なかったはずだよ」
「君が知らないだけじゃない?まぁ確かに今回の場合は時間がシビアだけど、わたしの超直感があればなんとかなるよ」
「……やめろ」
ふふっとわたしは笑い、オレを見ながら問いかける。
「何を?」
「……全部だよ。ソラは関係ない、未来のオレも、関係ないんだ。これはオレの問題だ。……ソラは何もしないで」
「うん、いいよ」
あーあ、残念だなぁなんて言いつつ、オレが表に出る。
「オレもわたしの暴走に疲れちゃったよ。後は任せていいんだね?」
「うん。……任せろ」
再びオレに死ぬ気の炎がともった。少し心配だったけど、オレの心がかわったわけじゃないから、ちゃんとプリーモが現れてくれた。
ただオレの枷を外した後、オレが持ってるボンゴレリングの方にもプリーモが現れるとは思わなかったよ。
「……なるほど。面白い使い方をしたな」
「面白いで済ませていいのかなぁ……」
「それでいいだろう。お前の役に立ったなら」
それだけ言ってプリーモは消えた。本来の持ち主がいなから、もちろんこのリングはそのまま。……にしても、相変わらず寛容というか、大空だよねぇ。わたしは絶対本来と違った使い方したのにね。
「ソラ」
「オレのことはいいから、早く終わらせなよ。せっかくプリーモが枷を外してくれたんだから」
気にはなったようだけど、オレは白蘭に向かっていった。そしてオレはユニに視線を向ける。
「ソラさん……」
「許可がおりなかったからね。何もしないよ」
「……ありがとうございます」
「うん、それが正解。オレに生かされても地獄でしかないからね」
……まったくオレはどこまでわかってて許可しなかったんだろうね。
オレが何もしないからか、結界を壊す動きが外であった。ボンゴレリングが増えたから難しいかなと思っていたけど、アルも匣兵器を出して参加してたよ。
結界の中に入ったγはチラッとオレを見たけど、何も言わずにユニを抱きしめた。
「復活するまで白蘭からおしゃぶりは守ってあげるよ。わたしが余計なことを言ったしね」
「はい。ありがとうございます」
ユニとγが消えた。オレが悲しんでる横で、約束通り守るようにおしゃぶりを抱きかかえる。それを見届けたオレは頼むと声をかけてから白蘭に向かっていった。
「何も出来なかったなぁ」
ポツリと誰にも聞こえないような声で呟いて、次には言葉をかえる。
「……何もしなかったなぁ」
オレなら……アルコバレーノの呪いの解き方を知ってるオレなら、何がなんでも解いていた気がする。必死に未来をかえて、こんな未来にはならなかった。
後悔している……?ううん、後悔していないことに驚いている。
それに……どうしてオレはあんなに悲しんでるのに、オレは悲しくないんだろう。
●●●●●●●●●●
白蘭が倒され結界がとけたから、太猿と野猿の元へと向かう。残ったユニとγの服を持っていたからね。普通に渡そうとしたけど、ひったくる勢いでおしゃぶりと共に取られた。
それは……悲しいから?いっぱい泣いてるもんね。でも……よくわかんないなぁ。
「おい」
呼ばれたから振り向けば、チッと舌打ちとともに担がれ、オレの方へと歩いていく。うーん、わたしは荷物じゃないんだけどなぁ。あと仮面がズレそうで怖い。
「ドガス、受け取れ」
「んなっ!?ソラ!?」
ポイっと落とされちゃったよ。ちゃんと痛くないように落とす時は気をつけてくれたからいいけど。仮面もズレなかったし。
「ちょ、怪我ない!?というか、ソラに何してんの!?XANXUS!!」
「るせぇ」
こういうことだろうなぁとオレの首に手をまわす。
「ソラ?」
「君はわたし達の精神安定剤でもあるから。ちょっと白蘭に感化されて変みたい」
「えええっ」
慌ててオレが抱きしめ返してくれた。
「ママー!」
「アル!よかったぁ。無事で」
オレとわたしが抱き合ってたら、アルも突撃してきたよ。……そういや、アルも怖がらなかったよ。大空って心広すぎない?
「パパが守ってくれたもん」
「うん、そうだね。ありがとう、XANXUS」
「え゛」
ん?なんかオレから凄い声が聞こえたような……?不思議に思ってるとガバッとオレに肩を掴まれた。
「ソ、ソ、ソ、ソ、ソラ……、アルの父親って……」
「え?えええ……もしかしてまだ気付いてなかったの?」
結構ヒントあったと思うんだけど……。アルの髪色とか、武器とか、スクアーロで遊んだりするところとか、イタリアで過ごしてたりとか。リボーンなんて、妊娠中の警護にヴァリアーが出張ってくる時点で察したのに。産まれたアルの顔を見たから、オレに正体教えたんだよ?その前からヴァリアーが守ってるのはおかしいでしょ。というか、わたしが結界に閉じ込められて合流するまでは、雑だったけどアルを抱いてたじゃん。まぁドタバタしてたから見逃したとしても、さっきの行動で察しないのはオレぐらいだよ。
「んー、アルの将来の夢を教えてあげたら?」
「パパみたいにヴァリアーのボスになりたい!」
それがトドメだったのか、オレは気絶した。まぁアルコバレーノが復活したら、リボーンに起こされていたけど。
●●●●●●●●●●
残念ながらドタバタしている内にXANXUSは帰っちゃったらしい。まぁまた行くからいいんだけどさ。どうせオレにわたしが会いに行きたいと訴える前に、アルが行きたいって言うだろうし。……いやまぁわたしが気にしてないみたいだからいいんだけど、一言もなく帰んの?とオレは思うわけで。
それに今は珍しく骸がアジトに居るから、そっちに突撃するのが優先らしい。いやまぁこっちはオレもわかるんだけどね。XANXUSとの空気感が読めなくて。オレは奥底でいるけど、通訳ちょうだいってオレはいつも思うの。わたしはなんで通じてんの?あいつ目つぶってるだけじゃん!とオレは思うわけで。そんな高等テクされたら、オレには理解不能なの。かといって、わたしが悲しい時に会いたいわけじゃないみたいだし。……なんでわかんないの?と不思議そうに言われても、オレにはわかりません!
……もういいや、骸だよ、骸。オレもわたしが骸に会いたい気持ちは理解できるし。急ぐから大人しくしてね。
アルは過去に戻ってしまう人達のところに行っておいでと声をかける。もう会えなくなっちゃうから。オレも後で行くよ、ちゃんと。
「骸!!」
「ったく、君はいつになっても変わりませんね」
子どもがいるというのにとブツブツ言いながらも、骸はわたしを引き剥がさないよね。
「あんた骸ちゃんの何!?」
「ん?誰?」
「それはこっちのセリフよ!」
記憶ではM・Mだったっけ。骸から紹介されてないし、別にいいかな。犬と千種もわたしが抱きつくだろうと予想してたのか気にしてないしね。またやってるとかは言われてるけど。
「ね、たまには会いにいっていいよね」
「断っても押しかけてくるのでしょう?君一人なら、かまいませんよ」
アルはやっぱりダメなんだね。そんな気がしてたけど。それにしても後ろでムキーっていう声が聞こえてるよ。骸、モテモテじゃん。離れた方がいいのかな。
「かまいませんよ。僕からみても、君は……危うい」
「うん、ごめん」
「謝る必要はありませんよ。ソラ、あなたは何も悪くないのですから」
……そうだね、骸はマフィアが悪いっていうよね。だからわたしも甘えられるんだよ。
ちょっと周りが煩かったけど、骸はわたしの気が済むまで付き合ってくれた。
●●●●●●●●●●
別れの時、オレが預かってるボンゴレリングは一応保存タイプの匣に入れた。未来のオレが用意した入れ物じゃないからあんま意味がないかもしれないけど、多分大丈夫だろうね。本来の世界に戻ろうとする力が発生するだろうから。……絶対、返そう。バレちゃったからXANXUSに会いに行きにくいと言えば、多分オレは折れる。自分で管理して使わなきゃいいだけだしね。
「ソラ……その、最後に顔みたいなって」
そう言われてもねぇとオレはバジル君をチラッと見る。……うん、絶対話すね。何のためにあの騒動の中でも仮面付けてたのって話になるしねぇ。
アルはオレとXANXUSの子どもとバレるぐらいはいいんだよ。オレと顔がそっくりだなとは思われてるだろうけど、それぐらいなら父さんに報告しても気付かれないと思う。誰もバジル君の前でアルを11代目なんて呼んでないし。アルがオレのことをパーパと呼ぶのも、あだ名とか言ってみんなで誤魔化してそうだし。まぁウソではないしね。愛人と思われてるのを知らないから違和感がないだけで。
9代目は夢を見たらしいけど、無粋なマネというかオレに申し訳ないと思うだろうしリボーンからも止めるだろうから大丈夫。アルコバレーノもないね。父さんと関わってる人がいないもん。ラルはまぁ中身は大人だし、こっちもリボーンが釘を刺す気がする。それになんだかんだ言ってラルは優しいから、バジル君が余計なことを言わないように誘導するぐらいやってくれそう。父さん側からの暴露だと修復不可能というのも察すると思うし。
白蘭は……論外で。ユニに救われたら言わないだろうし。たとえコロッと口がすべっても、信じてもらえるかも怪しい。ジッリョネロもわざわざ告げ口しないと思う。まだボンゴレと同盟でもないしね。
後はディーノさんとヴァリアーぐらいでしょ。言わない、絶対この人達は言わないよ。……ヴァリアーはいろんな意味で反応が怖いけど。過去のオレ、頑張って。そして2人ともオレからの突撃頑張って。
やっぱ問題は父さんを尊敬しているバジル君だけだね。
「ツーナ、任せとけって」
そう言って山本がバジル君の肩を組み、後ろを向かせていろいろと話しかけていた。さりげなく獄寺君も振り向いても見えない位置に移動してた。オレの顔が山本、獄寺君ありがとう!ってなってる。……オレ、わかりやすすぎ。
まぁここまでお膳立てされたら、オレも仮面を外して別れの挨拶をする。……そういえば、ヒバリさん知らなかったね。視界の端で目を見開いたのが見えたよ。まぁそこはバジル君が来るまでにアジトへ一切顔を出さなかったヒバリさんが悪い?し。
「えええ!?」
「正一、空気読みなよ」
「それをスパナがいう!?って、ごめん!邪魔してごめんよ!」
……あれ?正一君も知らなかったっけ?そうなるとスパナもなんだけど、動じなさすぎて逆に驚いたよ。まぁ正一君が落ち着いたみたいだから、オレに向き合う。
「ソラ、ちゃんと約束守るからね!」
「うん。過去のわたしを頼んだよ。未来のわたしよりも危ういだろうしね」
「大丈夫。オレ、絶対離さないから!」
ありがとうと感謝を込めてわたしから抱きつく。
「ぶっ」
……なんかごめん。そんな大きくないけど胸の感触はちゃんとわかったみたい。そういや過去のオレはいつも腰に抱きついてたっけ。XANXUSには気にする必要ないし、骸は身長高いし。未来のオレとでは僅かにわたしの方が低いぐらいだもん。でもまぁ双子なのにね。意識したのは過ごした時間が短いから仕方ないかぁ。
「しまらねぇな」
「……そんなつもりはなかったんだけどねぇ」
リボーンのツッコミに苦笑いしつつオレは仮面をかぶる。アルがキョトンとした顔をしつつ、オレ達にティッシュを渡していた。……うんうん、優しい子だね。ヴァリアーのボスになりたいらしいけど。いやまぁわたしとXANXUSの子だから不思議でもないんだけど。
「元気で」
「ソラもね。もちろんアルも!」
「うん!パーパ、バイバイ!」
タイムワープスタート!!という入江君の声を聞き、過去のオレ達が消えるのを見届けた。
そしてオレが最初に目の前に現れた。
「パーパ!!」
「よかった、アル。元気そうで」
慣れた手つきでオレはアルを抱き上げ、その上でわたしを抱きしめた。
「……ごめん、随分無茶させちゃったみたいだね」
骸とXANXUSに怒られるなぁなんてボヤきつつ、一緒に地上を見にいかない?と誘われた。
「デートのお誘い?」
「えっ。じゃぁ……エスコートするよ」
「オレは愛人だもんね」
プッと同じタイミングでオレ達は笑いだす。アルを抱いたまま、伸ばされたその手をオレは掴んだ。
「そうだ。君、早く結婚して子ども作ってよね。このままだとアルの夢、叶えられないじゃん」
「そうだよ!僕は11代目にならないよ!」
「いやでも……それは……オレだけの問題じゃないというか……。それに産まれた子どもが嫌がるかもしれないし……」
「えー!パーパの子なのにー?」
「むしろオレの子ならそうなるよ、絶対!」
「大丈夫。君の子なら、アルに押し付けられて渋々継ぐよ」
ありえそう……なんて呟くオレの反応に笑った。
長い。
アルフレード
わたしとXANXUSとの子ども。4歳の男の子。
XANXUSの血はどこに行ったんだというぐらい、容姿は母親似。まぁ男の子は母に似るというしね。
欲しいご飯がないと癇癪起こしたり、負けず嫌いなところ、頭の回転などは父親の血。
ツナも一緒に育ててるので基本的に大空気質でいい子。
名前はXANXUSの匣ベスターの由来から少しいじってつけた。パスタ料理にちゃんとある名前。作者なりにこだわってつけた。
出番はチラッとしかなかったが、匣はリアルタイプのライオン。お昼寝に使う時があるので、カットしたけど日本で騒動を起こしてる。食われそうで見てる方は怖い。銃と匣はXANXUSから貰った。
わたしの暴走と奮闘記。
オレがボンゴレはどうでもいいけど、今後起こる騒動からリングを継げる人が居ないのは、7³のことを考えるとあんまり良くないよねぇと思ったら、わたしが子ども産めばいいじゃんと軽いノリでかえされ、そのままの勢いでXANXUSのところに突撃。銃をかまえられながらも「子種ちょうだい」とわたしが言い放ち、オレは奥底で気絶しかけていた。話し合い?の末、ボンゴレの存続がかかってるのもあり、悪くねぇという判断。ツナはどう考えても疎そうだったので。わたしはこの理由なら断らないでしょ、大空だしちょうどいいとの理由だけでの行動。ガッツリ身体から始まった関係。実は本気になったのはXANXUSの方が先。利害の一致だったのに仮面の中の顔を見たいと思ったから。中身を知っても態度が変わらなかったからわたしも好きになった。
ちなみにどの世界でも産まれてる。それでも白蘭はソラが関わらない理由はアルの存在ではないと確信していた。嫌なところで通じ合ってる。
他のヴァリアーはボスがお楽しみ中なのは気付いていたけど、相手は誰か知らなかった。誰かが連れ込んできてあげたと思って何度も放置してた。ふとした時にボスのお気に入りの話題になり、この時にやっと誰も連れ込んでないと発覚。侵入者?と騒然。当然スクアーロが乗り込もうとしたら、超直感で気付くソラも当然帰る。たとえいいところでも。XANXUSはブチギレた。以後、お楽しみ中は誰も寄り付かなくなった。
妊娠発覚後、お金とツテないから医者の手配はそっちでしてねとわたしが言い、XANXUSが命令。お気に入りとはわかっていたが、ガチだったことに全員驚愕。スクアーロがなんとか聞き出し相手がソラと知る。隊長として毎回警備の見直しや侵入経路を調べてたのに。つらい。さらに仮面の中の顔は教えてくれなかった。そりゃね、説明するのに手っ取り早い同じ顔がいるけど彼が言うわけない。
諦めてスクアーロは並盛に行く。必死に探し回って見つけて、野宿生活を知り叫ぶ寸前に近所迷惑だからとイタリアに飛ばされる。XANXUSにうるせぇと酒瓶投げられた。理不尽。
何度か繰り返し、いい加減声量を落としてよとソラに怒られる。器用に小声で野宿生活について怒る。雨の日は流石にやってないよとソラは言う。違う、そうじゃない。しかし聞く耳をもたない。うるさいと思われるとすぐに飛ばされる。酷い。
なりふり構ってられないとヴァリアー総出(XANXUSは除く)でクロームを探し出しはじめる。骸に説得してもらうしかなかった。ツナに協力してもらうのはXANXUSが嫌がる(ブチギレる)とわかりきっていたので。尚、ツナの母に近づけば、妊娠中なのも忘れたかのようにソラが動くので手が出せなかった。ボンゴレ本部では骸は何をやらかしたと騒動になった。クロームはやらかさないという信頼があった。
仕方なく姿を見せたら理由が理由で頭が痛くなった。どうして僕が……と言いつつも、身体に悪いのはわかりきっていたので協力。もちろんツナに報告しなかった。ソラは抱きつきながら骸の優しい言葉に納得。実際は無理とわかっているが、お前の子どもじゃねーだろうな?とスクアーロは思った。
やっとヴァリアーで保護出来ると思ったらソラが消えた。骸は説得したからと帰った。スクアーロは叫んだ。
飛んだソラはボンゴレ本部にいるツナとリボーンに家からしばらく離れることを伝える。日本にいる守護者に頼むから大丈夫だよと言ってくれた。理由を聞かれ、妊娠したからと伝えて消えた。ツナは驚き叫んだ。リボーンも驚いて逃してしまう。そのまま消息不明になり、詳細は一年後に知る。のちにリボーン本人がミスしたと認めた日になった。もちろんツナも。
戻ったらスクアーロが居なかった。ソラは首を傾げつつ、ヴァリアーのアジトへ。ちゃんとスクアーロのことを伝えたが、放置された。ソラは探しに行こうとするが、ボスの子どもの方が大事なので必死に引き止められる。定期連絡があるからとなんとか納得してもらった。
数日後、ちゃんと定期連絡で教えてもらえたスクアーロはやっとアジトに帰宅。XANXUSの横でツナがうたた寝していると思い驚愕し叫び、うるせぇと憤怒の炎を放たれた。もちろんソラは起きたが、寝てろと言われ素直に目を閉じる。家から離れて寝付けず、見かねた(舌打ちした)XANXUSが側にいてやっと眠ったところだった。そりゃ怒られる。
ソラが一方的に話してても会話になってることはみんな驚愕している。同じ単語でも違いがわかるから通訳として優秀。ソラがいる間は基本物が壊れない。ただし邪魔などをしてキレた時のレベルがあがるので修繕費は変わらなかった。
かなり端折ったのに長くなりました。すみません。
多分ちゃんと書けば一つの物語になるぐらい、いっぱい騒動は起きてます。もちろんR18になる。スクアーロの奮闘を書いたけどレヴィも頑張ってたよ、ボスのために。まったくソラには響かなかったけど。スクアーロはわたしの身も心配してたので多少は効果あった。じゃなきゃ、声量を落としても話すら聞かずに飛ばす。骸には全く敵わなかったけどね。あとソラが頑なに動かなかったのは眠れなくなるとわかっていたから。XANXUSが側にいるとわたしは寝れたので解決。
ちなみにソラが不幸になってるわけじゃないのでツナの超直感には引っかかってません。知った時にはもういろいろと終わってます。ツナは超嘆いたよ。怒りは父親に全て向かった。リボーンもゴーサインを出した。まだ事情を聞かされてない守護者達とボンゴレは10代目の暴走に大混乱。10代目にそっくりな赤ちゃんがいて更に大混乱。……ある意味平和かな?