夜のソラ [完結]   作:ちびっこ

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第5話

未来から帰ってきたオレはオレ達に過保護になった。

 

オレは母さんに会わせたいみたいだけど、もうちょっと待ってと言えば、渋々納得してくれた。わたしの心が優先だから。

 

……そこまでは良かったんだよ。ふとした時に、オレに会いに行くから住んでる場所を教えてと言われたんだ。だから教えたよ。母さんだって知ってんだし。

 

「へ?」

「だから君ん家の屋根」

「本当だぞ。雨の日もいるから、おめーからもなんか言ってやれ」

「なんだってーー!!」

 

オレはショックを通りこし暴走した。

 

一応さ、明らかにヤバそうな人からお金を巻き上げてるけど、お金だってたまに山本ん家の寿司を食べるぐらいの贅沢ぐらいしか出来ないし、そもそも戸籍もないし、野宿一択になるじゃん。とちゃんと説明したんだよ。

 

その結果、オレがヒバリさんのところに突撃した。もちろんオレも慌てて追いかけたよ。

 

応接室に入って早々、オレは頭を下げていた。ノックもせずに入ってきたから、咬み殺そうとしたヒバリさんが、ポカーンとするぐらい素早かったよ。そしてオレは言った。

 

「将来、オレが絶対にお金返すんで、ソラの住む家を貸してください!!」

「……いやだから、オレはあそこでいいって」

「ソラは黙ってて!!」

「あ、はい」

 

という感じで、すぐに止めたんだけど頑固だからね。とにかくオレは必死にヒバリさんに頼み込んだ。ボンゴレの力を借りるという気はオレもなかっただろうし、そもそもオレもわたしも絶対嫌だからね。ヒバリさんに頼むしかないんだろうけど、オレってヒバリさん苦手じゃなかったっけ?まぁ憧れてはいるだろうけど。

 

「いいよ。君に貸しを作るのも悪くないけど、タダで用意してあげる」

「ちょっと待ってぇぇ!!ソラを咬み殺すならオレにしてください!!」

 

……オレ、その発言ヤバいから。ヒバリさんもなんか嫌そうじゃん。いやまぁ代わりにバトルとか言いそうだから、伝えたいことはわかるけどさぁ。そもそもオレ、そんな弱くないから咬み殺されないよ?

 

「……君の居場所がわかるなら、僕に利益がある」

「へ?」

「あ、そっか。これ以上、監視カメラが必要なくなるもんね」

 

オレはそれで納得したんだけど、オレがなんのこと!?と肩を掴んで揺さぶるから説明した。オレがヒバリさんの前に現れるたびに増えていくんだよって。

 

「ひぃ!この人、そんなことしてたのー!?はっ、咬み殺されてない!?」

「咬み殺せないから、増えていったんだって」

「よかったー!ヒバリさんよりソラが強くって」

「……君達、そろそろ怒るよ」

 

すみませんと思わずオレ達は揃って謝る。未だヒバリさんがキレてないのは奇跡というレベルだから。

 

その後、ヒバリさんが物件の資料を出してくれて、オレは一番小さいワンルームを選んだ。オレん家からも近かったし。そして今日の夕方にはもう住めるように手をまわしてくれるらしい。あまりにも早いからオレ達は驚いたんだけど、集団転校生のためにいくつか候補を用意してたんだって。

 

「そういえば、君も通うの?」

「ああ!そうだ!学校!!」

「や、顔は出さないから。双子ってバレるだろうし」

 

君が近寄ってこないなら他人の空似ってことにできるから考えてもいいけど?とオレが言えば、絶対やだ!だってさ。オレとは家族だからってことなんだろうね。

 

「それなら、仮面をつけた君が学校に来ても止めないように、風紀委員へ通達しておいてあげる」

「ヒバリさん……!」

 

オレがめっちゃ感動してるけどなんか裏が絶対あるって。何かがわかんないところがまた怖い。超直感には引っかからないから大丈夫と思うけど……多分。それにと、チラッと横目でみるとオレがすげー喜んでるしなぁ。

 

結果は察してほしい。わたしはオレに甘いの。

 

その日の夜、屋根の上で寝ていたらいつものようにリボーンがやってきた。

 

「ヒバリに用意してもらったんだろ?ツナが知ったら怒るぞ」

「ちゃんと使ってるよ。雨の日ぐらいは……使うと思う」

 

はぁとリボーンはため息吐いた。お前はオレに甘いよな、オレに告げ口しないみたいだし。

 

「いい部屋だったよ。手をまわしてくれたのか、いろいろ……うん、いろいろと置いてくれてたし」

 

食糧や家具、他にも電化製品やら服やらほんと何から何まであったよ。……ただ下着まであったのは、ちょっとどうかと思ったけど。確かに最低限の物しか持ってなかったけどさ。丸投げされただろう草壁さんのことを思うと申し訳なさすぎる。でもヒヨコ柄はないと思うよ。もったいないから使うけどさぁ。というか、ヒヨコグッズめっちゃ多くてビビったぐらいだし。草壁さんの女の子のイメージってそうなの!?と新たな発見をしたぐらい驚いた。

 

……ちょっと待った。どうやってサイズ知ったの。……こいつが関わってる気がする。

 

「ピッタリだっただろ?」

「やっぱり、お前か!」

 

裏切り者!というリアクションしつつも、どこかオレは冷めていた。

 

「……せっかくの好意だしありがたく使うよ。特に風呂とかすっげー嬉しかったしね。けど、やっぱオレの部屋じゃないんだよ」

「最初のうちはそういうもんだぞ。住んで馴染んでいくもんだからな」

 

オレの言いたいことわかってるくせに。まぁそれを拒絶してんのはオレなんだけどさ。……わたしじゃなくて、オレか。

 

「……リボーン、お前には話しとくね」

「なんだ?」

「未来の夢を見て、ユニの炎にも触れたのになんも感じなかったんだ。……違うね。うーん、こう言っちゃ悪いけど酷くなった気がする。わたしじゃなくて、オレがね」

「お前がか?」

「そ。わたしは少し落ち着いたかな。正体知った人達にはマフィアでもそれほど嫌悪感がないよ」

 

わたしの時に好んで一緒に居ようとは思わないだろうけど、オレの時に出会っても嫌がりはしなくなった。

 

「問題はオレの方。作りあげた人格の時に、わたしの影響があったのはわかってるつもりだったんだ。けど、客観的に見た影響かな、オレがオレにすげー違和感を覚えてる」

 

多分未来のオレも感じたと思う。オレの状態なのに、ユニが死んでもなんとも思ってなさそうなんだもん。それなのに隣ではオレが泣いて怒ってるんだよ。一瞬、オレが何なのかよくわからなくなった。

 

だからXANXUSがオレのところに放り投げたのもわかる気がする。オレとオレを同調させようとしたんだ。でもそれはいろんな経験をした大人のオレだから効果があって、今のオレにはどれぐらい効果があるんだろう。そりゃゼロではないと思うけど、悪化する可能性だってある。

 

もしオレという存在が意味をなさなくなった時、抑えきれなくなったわたしの復讐心が向かう先は……。

 

「ソラ!」

「っ、ごめん。ちょっと気持ち悪くなった」

「ツナを呼ぶか?」

「や、大丈夫。……大丈夫と、思う」

 

今日はもう寝ろとリボーンに言われてオレは素直に目を閉じた。リボーンがそばにいてくれる気がしたから、オレはすぐに眠りに落ちることができた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

今日もいつものように寝転ぶと、オレん家にエンマが来ていた。ヒバリさんから集団転校生の話を聞いていたのもあって、いつ来てもおかしくないと思ってたから驚きはないけど。

 

母さんがズボンを縫っておくねと言っていたから、またドジでもやったんだろうね。

 

……殺しちゃおっかなぁ。シモンとの関係も知ってるしエンマとの思い出もあるけど、響かないんだよね。骸が牢獄から出れるチャンスがなくなるのは勿体無い気もするけど、骸ならなんとかするでしょ。わたしもそう思ってるみたいだし。

 

クルクルと左手でメスをまわしていると、またどこからか知らないけど殺し屋がやってきた。もちろんサクッと殺した。けど、まだ視線を感じる。

 

「……消えた?」

 

いや、誤魔化されたが正しい。一瞬だけ幻覚の気配がして、オレが違和感を覚えたスキに逃げた。この頃からリングの力が強くなって、術士のレベルもあがる。……けど、オレを一瞬でも誤魔化せる術士はそう居ない。

 

「ソラ、さっきの奴になんかあったのか?」

 

考えながら戻っていたのもあって少し遅かったみたい。リボーンがオレの帰りを待っていた。心配はしてないから、サクッと殺したことはわかってるみたいだけど。

 

「違うやつがいて、逃げられたんだ」

「……オレの方でも警戒しておくぞ」

 

オレが逃がしてしまったレベルだからね。それが正解だよ。

 

そういえば……集団転校生は来たけど、リボーンからボンゴレの継承の話は聞いてない。オレに気を遣って黙ってる感じでもなさそう。それにリボーンならオレの精神状態のことを思って、ちゃんと向き合って話す気がする。ってことは、9代目がオレの存在を知って、簡単に提案できる問題じゃないと判断したかな。

 

つまり根本から間違っていた……?

 

「ソラ」

「ん?」

「エンマはマフィアなのか?」

「シモンファミリー」

 

未だにオレが手の中でメスを転がしているから気付いたらしい。他の人がみれば警戒という風にも取れるけど、この行動はわたしの精神安定の意味があるからね。そういや、リボーンが気付いたきっかけってエンマが招待状の手紙を落としたからだったよ。届いてないものから気付けないよね。

 

「サンキューだぞ」

 

リボーンはシモンのことを調べに行ったみたいだ。精神状態を考えて、これ以上オレからはマフィアのことは聞かないことにしたらしい。

 

……デイモンは何を考えてるんだ。継承式が行われないなら『罪』を手に入れることは不可能に近い。覚醒していないシモンリングでぶつける気なのか?それならオレが勝つと思う。それにオレもいるしなぁ。ふつーにオレはシモンも殺せるし。

 

オレに対抗する手段としては母さんとオレが効果的に見えるけど……。未来のオレ達は母さんから離れることは出来ていたし、どこまで効果があるんだろうね。オレはまぁ……オレに動くなって言って、死んだらしょうがないよね。冷たくはないよね、だって止めたのはオレだもん。

 

あとは骸がいるけど……オレ達の関係ってちょっと変だし。足を引っ張るぐらいなら死んだほうがマシだと思ってる、互いにね。それに前は殺し合うのを躊躇したけど、それは骸だからであって、骸じゃない人物になったら殺すよ。犬と千種も似たような感じだろうし。

 

「あーダメだ。こういうのは骸が担当だよ」

 

陰湿な考えはオレに向いてないんだよ。骸に言えば失礼ですねっていいそうだけど、あいつなら考えつくだろうし。わたしがやりたいことは血生臭いけど、殺すなら殺すってだけだしね。かなり単純。

 

いっその事、会いに行っちゃう?……ダメだった。デイモンは骸の身体を狙ってたんだよ。クロームのところに行っちゃ相手の思う壺だ。復讐者の牢獄に行っても骸は話せないし……。

 

やっぱ殺した方がはやいよなーなんて思いながら、今日のところは眠った。

 

●●●●●●●●●●●

 

 

 

次の日、なんか嫌な予感がしたから仮面をつけたまま行動。つい殺しちゃいそうだから学校には近付かないつもり。絶対今頃ヒバリさんとアーデルハイトの争いは起きてるだろうし。

 

……殺そ。

 

母さんの幻覚が歩いてる姿を見て、オレもわたしも殺す一択だった。だけど、超直感が警戒を促している。どう考えても罠だろうなぁ。人気のないところへ進んでいくし。わかってていくのも嫌だけど、そのまま放置なんてできない。連絡する手段があれば、リボーンぐらいには報告したのに。でも携帯なんて持ってないし。や、いらないけど。

 

最大限に警戒しつつ、後を追う。オレが幻覚と簡単に気付いたから、そこまで術士の腕がないはずなのに超直感からの訴えはどんどん強くなっていく。だからクオリティをあえて落としてオレの警戒を下げようとしている。……一度、引くべきかな?犯人は十中八九デイモンだろうし。

 

けど、わたしがそれを嫌だという。最低でも母さんの幻覚は壊したいみたいだ。

 

……オレがヤバいと判断したなら、壊せなくても逃げるよ。

 

うん。と素直に返事をもらえたから、オレは壊すつもりで動こうとしたその時、見てしまった。

 

「っ」

 

オレとわたしが入れ替わる。入れ替わってしまう!飛べ!!

 

仮面が落ちた。

 

「ああああっ……」

 

とにかく離れることを意識したから、オレ自身どこに飛んだかもわからない。問題は、わたしだ。オレの声すら届いてるかも怪しい。幻覚だ、幻覚だとわかってる。オレでさえわかっていたのに、一瞬憎しみにのまれた。わたしがどう感じたなんてわかりきっている。

 

「ソラっ!!!」

 

オレの声がする。オレを求めて飛んだ?屋上にいるのがわかっていたから。けど、今はダメだ。

 

「危ねぇ」

「ぎゃ!!」

 

わたしが投げた……殺そうとして投げたメスをリボーンがオレを蹴ってかわしてくれた。助かった。周りが何か言ってる気がするけど、今はわたしを止めないと。

 

「……来るなっ、止め、れなく、なる」

「ソラ!!何があったの!!?」

 

オレの声にわたしが反応し、悲鳴のような叫び声が出た。クソっ、声もダメか。身体から夜の炎が溢れ出す。シモンがわたしを危険人物とみなして殺すべきだと発言した。

 

「ふふっ。わたしを殺す?……やめっ」

 

ああっ、くそっ。止まれ!リボーンが防いでなければ、とっくに死人が出ている。オレが一瞬わたしの動きを邪魔しても、メスを投げることは止められない。

 

「待って!違うんだ!普段はこんな感じじゃないんだ!それにこんな炎じゃないよ!」

「マフィアなんか滅べばいいんだよ、ね、そうだよね?……ダメっ……ボンゴレが、マフィアが、わたしをこんな風にしたんだよ!……それ、でも、ダメだっ!!」

 

オレとわたしが入り乱れる。いや、身体の比重はわたしに偏ってる。心は……オレとわたしが分裂しそうだ。それでも消えてないだけマシだ。オレの声はまだ聞こえてることを意味するから。

 

「ヒバリさん!?」

 

オレの声に反応し、わたしが顔をあげた。ヒバリさんがわたしに近づてくる。動きが、手が、止まった。

 

「ああ、やっぱり。僕は一度もそれに入ったつもりはないからね」

「……ヒ、バリ、さんっ」

「うん。小動物、あれらは遠ざけてあげるからそのまま抑えときなよ」

 

すみません、助かります。そう言いたいのに、オレの声が聞こえて、心配する声なのに、わたしを抑えるのに必死だ。けど、ヒバリさんとリボーンが力技ででも説得してくれるはず。

 

「まったく君達は何をやってるのですか。ソラ、来なさい」

「む、くろ……?」

「邪魔する気?」

「やれやれ、決めるのは彼女ですよ。僕ですよ、ソラ」

 

違う!骸じゃない!とオレが叫んでいるのに、わたしは骸の偽物に抱きついた。わたしもどこか変だと気付いているはずなのに、止められないんだ。くそっ、混乱中で誰も偽物だと気付かない。コイツの術士としての腕は本物なのもあるんだろうけど!

 

「かわいそうに、何があったのです?」

「ち、父親、あの、男が、母さん、を、殺した、幻覚」

「また厄介なものを見せられましたね」

 

届かない。オレの声が届いてない。見せたのはお前だろ、デイモン!

 

「アルコバレーノ、あなたならわかるでしょう。幻覚だと頭では理解しているのに、彼女の心は否定出来なかった。彼女は父親にそういう仕打ちを受けましたからねぇ……」

「骸、ソラはっ!」

「黙りなさい。彼女の憎しみの先に君も居るということを自覚しなさい。……おや、まだ気付かないのですか?君はもっとも彼女が羨む存在でしょうに」

「むくろ、たす、けてっ……」

「……しばらく僕が彼女を預かりますよ、文句は言わせません。ソラ、あなたは眠りなさい」

 

ごめん……とわたしの声が聞こえて、オレ達は眠りに落ちた。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

「ここはどこだ……?」

 

周りを見渡したところ、城か?とオレは首を傾げる。

 

「おや、目覚めましたか」

「……お前は骸じゃないだろ」

 

骸でもないし、本体でもない。ヌフフフという声を共に、姿が変わる。

 

「D・スペード……」

「ええ、あなたとは初めましてと挨拶しましょうか」

 

苛立ったオレは消そうと手を伸ばす。けど、死ぬ気の炎が出ない。

 

「っ!」

 

慌てて引っ込めて、自分の手を確認する。……わたしがいない?

 

「私も少々想定外でしたよ。マインドコントロールをしたはずが、篭ってしまったようで……。もっともその代償は大きい。あの炎を生み出してるのは、もう一人のあなたですから当然と言えば当然でしょう」

 

オレはオレを模範している分、復讐心まではないんだと思う。かといって、身体はわたしのものだから、大空の炎は出ない。……絶体絶命かも。オレだから超直感は使えるのが救いかな。

 

「オレはわたしを……守るために生まれた存在だよ。そう簡単にマインドコントロールなんて出来ないよ」

「ヌフフ。かまいませんよ。それと……第8の属性の炎が出せないあなたなんて、粋がっても可愛らしいだけですよ」

 

私を殺せもしないでしょうと耳元で囁かれ、ゾクッとしたオレは反射で殴った。もちろん幻覚だから意味はないけど。炎も纏ってないから消せもしないし。本当は蹴ったり距離も取りたいんだけど、足首に鉄のような冷たさを感じるんだよね……ハハハ……。なんとかして壊すとしても、コイツがいる今は無理。

 

「デイモン、お前の目的は……骸の身体か?オレを人質にしてのっとる気なのか?あいつはオレのために来るとは限らないよ」

 

そう言ったけど、間違いなくあいつは来る。あいつの姿を使ってわたしがいなくなったと知れば、すげーキレると思うから。

 

「……ボンゴレの超直感でしょうか。もっとも、私の計画の全てを理解してはいなさそうですね」

 

デイモンが笑ってる姿に、オレは思わず身を縮める。……なんでこんなにコイツが怖く感じるんだろう。もちろんピンチなのはわかってるけど、過剰な反応をしている気がする。

 

そんなオレの反応に気を良くしたのか、デイモンは企てを語った。

 

やっぱりデイモンはシモンとオレ達を仲違いさせようとしていた。オレがわたしを心配してクロームに尋ねた時に、初めて骸じゃなかったことを知る。いや、もう知った段階らしい。そしてデイモンは加藤ジュリーの姿でわたしを連れて行く姿の記録を残していた。……監視カメラいっぱいあるもんね。こんなところで役に立って欲しくなかったよ。

 

それを知ったオレは加藤ジュリーに詰め寄るが、今現在加藤ジュリーを乗っ取ってるデイモンは知らないと答えたらしい。

 

……もうこの段階でモメるね。今オレはオレ達に過保護だから。いやまぁわたしのことでショックは受けてるだろうけど、オレだしな。リボーンに追い立てられ、すぐに向き合おうとするだろうし。というか、そうじゃなきゃクロームのところに行ってない。そしてシモンは仲間思いだし、知らないと言ってる加藤ジュリーを庇うよ、絶対。

 

オレがその光景を目に浮かべてると、今からデイモンはシモンに更なる爆弾を投下すると言った。実際はデイモンだけど、エンマの家族を殺したのは父さんって教えるんだって。……父さん、すっげー悪人じゃん。わたしの件は許さないけど、ちょっとかわいそう。

 

双子の一人が狂ってしまったのを見ちゃってるし、エンマは絶対信じ込むよね。そしてオレも否定出来ないかも。……頑張ってね、リボーン。父さんのことはどうでもいいけど、オレは立ち直らせてよ。

 

シモンは過去の因縁と濡れ衣、父さんという爆弾で怒らせ戦わせるらしい。そしてオレの居場所を唯一知ってるだろうシモンとの戦いは避けられない。けど……覚醒していない状態なら……。

 

「シモンは勝てない、よ」

「私としては共倒れを望みたいところですが、この際どちらでもかまいません」

 

……シモンを捨て駒にしたんだ。

 

「クローム髑髏では私に敵いません。六道骸は必ず現れるでしょう。その時に六道骸の肉体を手に入れれば、私の計画は達成する。あなたも役に立ってくれたましたよ、第8の属性の炎のことを理解できなければ、シモンリングを覚醒しなければならないところでしたから。随分計画を早めることができた」

 

もしかして、骸の身体を手に入れる手助けしちゃった感じ……?最悪じゃん!

 

「ヌフフ。では、六道骸の肉体を手に入れた後、お迎えにあがります」

「え……」

「第8の属性の炎を使えないあなたはこの島から決して逃れません。あなたが頼みの沢田綱吉もシモンの相手が終わってからでは到底間に合いませんよ。その頃には私は第8属性の炎を手に入れてますから」

 

サーっと自分の血の気が引いたのがわかった。そうだよ、ここがどこかはまだわからないけど、絶対並盛からは遠いよね!?つーか、島なの!?

 

「心配ありませんよ。少しぐらい歩きまわる余裕はもたせてますから」

「ひっ!」

 

こいつ、鉄の上からだけどオレの足首も撫でやがった!またオレの反応に気を良くしたのか、デイモンは笑いながら消えた。その前になんとか殴ったけど。残念ながら意味はなかったよ。わかってたけどね!

 

「変態じゃん!」

 

とりあえず思ったことを大声で言って、オレは少しスッキリした。何かできることはないかとオレはちゃんと周りを見渡そうとして気付いた。気付いてしまった。

 

「……絶対、変態だよ!なんでオレ着替えてんの!?」

 

なんでドレス姿になってんだよ!……下着はヒヨコのままだったからセーフだね。え、セーフだよね?

 

ほっとけない問題だけど、今は後回しにする。相変わらず夜の炎は出せないね。わたしの反応もない。それで足首の鎖はベッドの枠に繋がれてる、と。……やっぱ、変態じゃん!

 

「あーもう、進まないっての!」

 

ブンブンと頭を振ってオレは切り替える。ベッドの枠も鉄だから、壊すの大変そう。死ぬ気でやるけどさ。ベッドからおりれば、ハイヒールがあった。……つっこまないよ、オレは。

 

眉間を揉みながらも、冷蔵庫が目に入ったから食料はありそう。口にする時は超直感を頼りにするけど。トイレもあった。いつ戻れるかわからないから、数日は持つようにしたのかもしれない。や、何日もここにいる気はないけど。

 

廊下に続きそうなドアまでは届かなかったけど、窓の近くはいけた。外の景色を見てオレは気付いたよ。ここ、シモンの聖地だ。

 

……ボートがないと厳しいよ。鍛えてはいるけど、この身体はオレよりも弱い。特に体力がないから、泳いで行くなんて無理だ。

 

まぁ鎖をどうにかしなきゃそれ以前の話だけど……最優先はこっちだね。

 

「復讐者、聞こえてる?」

 

反応はないね。じゃ、しょうがないよね。こっちは切羽詰ってるの。

 

「えーと、バミューダ、イェーガー、ジャック……やっぱ聞こえてたじゃん」

「……何のようだ」

「見てたくせに。まぁいいや。助けて欲しいなぁって」

「それは出来ぬ」

 

だと思った。イェーガーが説明してくれてるけど、オレもそうじゃないかと予想していた。ボンゴレとシモンによるマフィアの掟に関わるからね。その争う原因の発端はオレだから。オレを助けたら、復讐者は介入したことになっちゃう。

 

「その掟はわかったよ。だったらさ、その戦う場所をここにしてよ。ここなら、この島ならオレしか人はいない。全力で戦う場所には、この島は最適だよ。少なくとも並盛よりはね」

 

ジッと見つめ合う。掟のために動いてもらうよ。

 

「……いいだろう」

「ありがとう!イェーガー!」

 

オレがお礼を言ったから、またなんとも言えない目をされるかなと思ったんだけど、少し笑った気がした。や、相変わらず顔は見えてないけどさ。そこはなんとなく、ね。

 

相変わらずオレは絶体絶命な状況だけど、気分は上昇した。

 

●●●●●●●●●●

 

 

後は時間が勝負とオレは動きにくいドレスに切れ目を入れ、鎖を必死に引っ張る。どこかの継ぎ目が伸びて外せればいい。この際、場所はどこでもいいから。って思ってれば、ベッドの根元の近くの部品が壊れた。

 

……そりゃどこでもいいとは思ったけど、すっげー邪魔。それも取れた時に勢い余って頭をぶつけた。久しぶりにそんなドジをしたよ。かなり痛くて泣きそうだった。……ごめん、嘘。ちょっと泣いたよ。すぐ切り替えて走り出したけど。

 

「っ!」

 

さっきから戦う気配はしていたけど、ついに一つ目の鍵が頭に流れた。というか、遠いよ!復讐者!

 

わかるよ、オレと近い場所なら介入したことになるもんね。わかるけどぉ……と走りつつも泣き言をいいたくなる。そんなオレのところに、救世主が現れた。まさかの動物だったけど。

 

「ヒバード!」

「ヒバリ、ヒバリ」

 

え、こっち来てくれないの?と思ったけど、ヒバリさんに報告へ行ったみたいだからいいや。つーか、ヒバード有能すぎ。未来ではSOS信号の役割も担ってたし。

 

オレより賢くない?なんて思いながらも走る。一つ目の鍵がきっかけになったのか、二つ三つ四つと鍵が続く。戦いの気配でわかってたけど、みんなは同時に争ってる。じゃないと、オレが間に合っちゃうもんね!わかるけど!

 

そして五つ目の鍵が届いた時、オレの超直感が反応した。

 

「骸っ」

 

間に合わなかったとギュッと目をつぶる。そして合流よりも逃なきゃ、となんでかわからないけど思った。ここまで頼りにしてきた超直感を信じてオレは動く。

 

しばらくすると、ロールの増殖で足場をつくったヒバリさんがやってきた。あと、獄寺君しとぴっちゃんが一緒にいた。一緒に居るまではいいんだけど、獄寺君おんぶされてない?……や、オレのためなのはわかってるけど。しとぴっちゃんの装備を使って上から探そうとしてくれてるみたいだし。ちょっと格好が気になっただけで。

 

そのあとすぐにオレとエンマもやってきて、リボーンを乗せた山本、らうじさんも来た。お兄さんの姿は見えないけど、声は聞こえるから近くにいるみたい。

 

出て行きたいのは山々なんだけど、嫌な予感しかしないんだよね。必死に呼んでくれてるから行きたいんだけど……。

 

「やっと見つけました」

「骸っ!」

 

ぎゅーと抱きつく。残念ながらフクロウだったけど。クロームも後ろから来ていた。って、そうじゃない!とオレは骸から離れる。

 

「お前、身体は!?」

「……少しは状況がわかっていそうですね。細かいところは省きます。ボンゴレとシモンの掟に従い争っていましたが、僕が加藤ジュリーにD・スペードが乗っ取っていると気付きました。まさか自身の武器を模様したもので見破ったのは皮肉がきいて、とても愉快でしたよ」

 

た、たしかに……。

 

「シモン側も予期せぬ事態で、まだ決着がついていない戦いは一時休戦状態になりました。しかしD・スペードは加藤ジュリーを乗っ取った状態だったので、掟で僕以外には手を出せません。その後、僕が勝ったまではよかったのですが……」

 

戻れなくなったんだね。それもちょうど骸が勝った時の鍵でプリーモの守護者が間に合ってるのがわかっちゃったし、戦う空気じゃなくなって獄寺君があんな感じだったんだね。

 

「察しの通りです。僕の肉体を使って復讐者の牢獄を暴れ回り脱獄したようです。復讐者はボンゴレで処理しろと……」

 

オレの話を聞いてるから、その可能性は高いと復讐者もわかっていたと思うんだけどね。これはオレ達を試しているんだろうなぁ。そしてその暁には今まで捕まった仲間の解放だった。

 

「ですから、あなたを見つけて我々はD・スペードを探しにいかなくてはならないというのに、あなたは出てこない」

 

うげっ、こいつちょっと怒ってるじゃん。……気持ちはわかるけど。身体を使われちゃってるし。

 

「違うんだって。なんかすげー嫌な予感したんだ。それにデイモンのマインドコントロールがきっかけで、わたしが篭っちゃって炎出せないし、オレも大変だったんだよ!?」

「ああ、それで……奇抜な格好だったのですか」

 

ガーンとオレはショックをうけた。クロームがすっげー後ろでオロオロしてるよ。ごめんね、オレ達だけで喋ってて。

 

「オレの趣味じゃないっての!」

「知ってます。それにそういうことを言いたいわけじゃありません」

 

そういって、骸はオレの足首に視線を向けた。……確かに、これを見たらいろいろ思うところあるよね。オレも叫んだし。

 

「……とにかく合流はできましたから、D・スペードが向かう場所に心当たりはありませんか?会ってるのでしょう?」

「えっと、オレの片割れの方に行かなかったの?」

「来ていれば、そこで飛びまわってるわけないでしょう」

 

だよね、とオレは頷く。みんな探してくれてるみたいだけど、オレが一番必死そうだもんね。別れ方があんなだったし。

 

「んーっと、そういえば……骸の肉体を手に入れたら、オレを迎えに来るとかなんとか」

「……あなたはやはり沢田綱吉と同じですね。バカです」

 

いやまぁ、オレだからね。バカだと思うよ。

 

「ソラ、あなたのところに現れると言っているじゃありませんか」

「いやでも、復讐者に頼み込んで戦いの場はこの島にしたから、別に迎えは来なくても困らなくなったし」

 

うわ、フクロウなのに呆れた目で見られてるのがわかった。

 

「……クローム、アルコバレーノに今の会話を伝えなさい。もちろん気付かれないように」

「はい、骸様」

 

えっ、ちょっと待って、クローム。オレ、今こいつと2人っきりはやだ。怒られそうな予感しかしないもん。

 

「はぁ。ソラ、僕はこれほど頭が痛いと思ったことはありません」

「えーと、ごめんね?」

「理解してから謝りなさい。……いえ、謝らなくて結構です。危機感を持ちなさい」

 

フクロウに説教されるって変なのと思いながらも、オレは目を合わせる。だって骸はオレのことを思って言ってくれてるから。

 

「言葉の端々にD・スペードが望むようなボンゴレを目指していると感じ取れました」

「うん、そうだね。だから相性のいいお前の身体を欲しがったんだろ」

「欲した身体は僕だけではありません」

 

へ?とオレは首を傾げる。

 

「ここまで言ってわかりませんか。……ソラ、あなたは未来で11代目候補を産んでいたではありませんか」

 

血の気が引くってこういうことなんだ……と、オレは知った。今まで顔色が悪くなったと思ったことがあったけど、それの比じゃないよ。

 

「あ、あのさ、今更信じてもらえるかわかんないけど、デイモンが近づくたびにビビってた。あと、変態って何回も思った」

「……危機感があったと喜ぶべきか悩むところですね」

 

うわああ!としゃがみ込む。いやさ、お前は教えなかったけどさ。オレだってもう気付いてるよ。骸、お前もすげーとばっちりじゃん。オレとお前の身体の危機じゃん!

 

「こっそり逃げたり出来ない?」

「……この島に連れてきたのは復讐者です」

 

終わった。復讐者がそのことに理解してるから、絶対出さないよ。……今ならオレでも夜の炎を出せるかもしれない。って、なんで無理なのーー!?

 

オレに今できることって……。

 

「……骸、オレお前のこと好きだよ。わたしはもっと好きだよ。ううん、愛してると思う」

「……やめなさい、縁起でもない」

「ゔ、悪い。でもオレが今伝えとかなきゃ、わたしがこのまま消えちゃう気がしたから」

 

今はオレしかわたしの心を伝えることが出来ないんだ。

 

「わたしは骸じゃないと気付いていたよ。でも止めれなかったんだ。お前に会いたくて、会いたくて。最後にいった言葉はお前に助けて、だった。あいつにじゃない、絶対に違うから。本当のお前に来て欲しくて、お前の名を呼んで、助けてって言ったんだ」

「……まさか、僕が……ーーと同じことをするとは思いませんでしたよ」

 

え?なんて言った?途中聞こえなかったんだけど。オレがキョトンとしていると、骸はオレに目を合わせて言った。

 

「遅くなりましたが……助けに来ましたよ、ソラ」

 

まったく、よりにもよってなぜこの姿なのですか……と骸はブツブツと文句を言っていたけど、それはオレが泣いたからであって。ううん、この涙はわたしだ。

 

「……むくろっ、ごめん。わたしっ」

 

言いたいことがいっぱいあったのに、喉がつっかえてうまくいえなくて、わたしを止めようとしたもう一人のわたしにも謝らないといけないのに。……うんっ、ただいま!

 

「ボンゴレが、マフィアが、世界が憎いのでしょう。腐ってますからね、僕もわかりますよ」

「ゔん。嫌いで嫌いで、大嫌いなんだ」

「あなたはよく我慢していますよ。この僕が呆れて情けをかけるほどですから」

 

ぎゅっと抱きつく。ポタポタと涙がかかっているけど、骸はため息を吐くだけでわたしの好きにさせてくれる。もうしばらくこのままでわたしは居たかったけど、後ろから炎の気配がして振り向く。

 

「ここに居ましたか、約束通り迎えにきましたよ」

「D・スペード……」

「ソラ!」

 

骸の声にハッとして、わたしは死ぬ気の炎だしてオレのところへ逃げようとしたけど、惚けていた時間が長かったせいで腕を掴まれた。

 

「骸が好きなのでしょう?愛してあげますよ」

「「どの口で……」」

 

苛立ってわたしが言えば、骸と揃ってさらに同じところで止まった。さっきまで動揺してたけど、落ち着いたよ。わたしは炎を使ってメスを取り出して斬りつける。慌ててデイモンはわたしの手を離した。

 

「骸、ごめん」

「かまいませんよ」

 

だよねとわたしは笑う。骸ならわたしに殺されても文句は言わない。わたし達の愛は歪んでるんだよとメスを握った。

 

「死ね……?」

 

その口からは何も聞きたくないと終わらそうとしたら、デイモンが消えて動きが止まる。第8属性の炎を使ったわけじゃないよ、それならわたしは動きを止めなかったし。……すごい勢いでぶっ飛んで行ったんだ。

 

「ソラ、無事!?」

「う、うん」

 

やっぱりわたしの見間違いじゃなかったよ。あれ、骸の身体なんだけど……。オレ、躊躇無くぶっ飛ばしたよね。え?本当にオレ?

 

「……それの、どこが、無事……?」

 

あまりの怒気にビクリとオレは一歩下がる。……って、なんでオレになってんの!?わたし、オレにオレを押し付けないで!?

 

「えっと、ちょっと炎が出せなくなって……。そ、それはさっき出せるようになったんだけど、逃げるために必死で……?」

「……そう」

 

怖っ。オレは目だけ動かし、リボーンに助けを求めようと姿を探す。……あいつ、すげー嬉しそうだった。だよね、マフィアのボスらしいよね!

 

獄寺君と山本、お兄さん、シモンのみんなは顔が引きつってた。多分オレも似たような顔してる。ヒバリさんはギラギラした目でオレをみてたよ。……戦いたいんですね。

 

ボンっとオレの足首についていた鎖がとれた。……うん、オレの身体には一切傷が入らない量の死ぬ気の炎を放ってくれたみたい。超直感のおかげかな、すごいよね!……無理だ、ノリで誤魔化せない。

 

「骸。お前の身体、凍らせるから」

「え、ええ」

 

これ、凍らせるのを反対したら、どうなってたの。骸の声もちょっと引きつってたじゃん。

 

「あ、あのさ……」

「ソラはお兄さんに治してもらってきなよ。お兄さん、綺麗に治してくださいね」

「おおっ!も、もちろんだぞ、沢田!」

 

副音声で傷を残せば許しませんって聞こえたよ。

 

「はぁ。こうなったら仕方ありません」

「骸?」

「彼女、変態と思うようなことをされたらしいですよ」

 

おまえー!とオレは骸に驚愕の視線を向ける。オレを生贄にして、さっさと凍ってもらってダメージを減らそうとしたな!?

 

ブチッという音が聞こえた気がしたね。さっきのより上があるのをオレは初めて知ったよ。

 

この後の展開は察して。超直感がフルで働いていたオレにデイモンが勝てるわけないじゃん。まぁ最後は凍った身体から魂だけでも逃げようとしたところを復讐者に抑えられていたけど。骸の身体に一切気を遣わなくていいオレはぶっ飛ばしたよ。ボンゴレギアとか誓いの炎はどこにいっちゃったんだろ……。

 

それでもやっぱオレなんだなと思ったのは、デイモンの魂は救ったこと。オレにしたことは許さないって言ってたけど。それはそれ、これはこれ、らしい。

 

ちなみにオレはその間大人しく治療を受けてました。終わった時に治ってなかったら怖かったからね。あとちょっと驚いたのが、ヒバリさんが上着をオレにかけてくれたこと。ドレスなだけあって、腕が出て寒かったから嬉しかったよ。一番最初に気付いたのがヒバリさんだったのも驚いたね。でもヒバリさんは寒くないの?オレに貸したから半袖なんだけど。ちょっと悩んだけど、炎で服を取るのはやめた。なんとなくそういうことじゃないと思ったから。

 

復讐者は報酬として、みんなの解放だけじゃなく全部の鍵を見せてくれた。相変わらず復讐者がオレを見る目は微妙な感じだったけど。……うん、オレがこんなにキレるなんてオレも予想外だったよと目で訴えたよ。伝わったかはわからないけど、帰っていった。

 

だからシモンとは完全に和解したよ。一応、父さんの汚名はオレがすすいであげた。なんとも言えない顔をみんなしていたけど。オレにフォローされるってどうなのってね。……オレはデイモンが話していたことを伝えただけだし。

 

そういや、みんなも復讐者とオレが同じ炎を使ってると気付いてるみたいだけど、そこはスルーしてた。いやさ、終わったらすぐにオレがオレの身体の心配してたからさ。そんな空気じゃなかったんだよ。オレとしては先に骸の身体をとかしてあげなよって思ったけど。声には出さないよ、怖いもん。

 

やっとオレが落ち着いたころ、オレがみんなを送る。復讐者は帰っちゃったしね。もう暗くなっちゃったし、みんな並中でいいってさ。送った後、オレも部屋に飛ぼうとしたんけど、それをオレが引きとめた。

 

「ソラ、家まで送るよ。ランボはらうじさんと帰るみたいだから安心して。仲直りするんだって」

 

一緒に帰るのは口実でオレと話したい……仲直りしたいってことだよね。でもオレ、靴ないし。……話したいのは同じみたい。

 

「……わたし、重いよ?」

「大丈夫」

 

おんぶだからと言い訳し、わたしは後ろからギュッと抱きしめる。わたしの行動にオレが少し息を飲んだ。

 

「……ごめんね」

「ソラはなにも悪くないよ」

「未来のわたしも言っただろうけど、もしもの時は……わたしを殺してね」

「絶対やだよ」

 

困ったなぁとわたしは息を吐く。

 

「だからさ、ソラが言うもしもの時になったら、真っ先にオレを殺しに来て」

 

えっ……とわたしは息をのんだ。

 

「そしたらさ、オレが止めてみせるから。絶対に止めてみせるよ」

「……いい、の?」

「うん。オレがいるよ。抑えきれなくなっても、大丈夫。オレがいるから」

 

やっぱわたしはリボーンの言うとおり、泣き虫なんだなぁ。すぐにポロポロ溢れるよ。

 

「約束、する。その時は、君を殺しに行くよ」

「絶対破っちゃダメだからね」

「ゔん!」

 

話している内容は物騒なのに、視界は歪んでいたはずなのに、今日の夜空は今までで一番綺麗だと思ったんだ。




シスコン、爆誕!!

……まぁそうなるよねと思いながら作者は書いた。
クロームが報告しリボーンから狙われた理由を教えてもらったからね。ブチギレ案件でした。
オチはちゃんと最初の一文に書いてたしと開き直る。
キレた未来のツナも似たようなことをしたとちゃんと本編で書いたしね。
そして今回の一件で彼はさらに過保護になるでしょう。

この作品ではD・スペードはもしかしたら家光より不憫かもしれない。
ちなみにソラをジョーカーと例えたのは、トランプを使うD・スペードが欲しがるという意味もありました。
もちろん彼はエレナを愛してますので、ソラのことは道具としか思ってません。ツナにぶっ飛ばされるのも仕方ないね。

未来を知った結果、いろんなところに余波が出てきてます。
ツナもそうですが、9代目だってね。
夢を見てボンゴレを継いでくれなんて、すぐ言えるわけないね。ツナの答えはソラの件で決まってますし。時間を置くのは当然です。あと9代目はXANXUSとソラのフラグを折りたくない。彼は孫が見たい。

多分、ソラがよく関わってる人の中で余波を受けてないのは骸ぐらい。夢を見る前から、汚したくないぐらいソラを愛してますから。その愛が歪んでるのは本人達も自覚済み。

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