バトラーウォッチをつけるぐらいで、オレは普段通りに過ごす。といっても、仮面をつけた状態での普段通りだけど。記憶じゃ放課後だったけど、念のためにね。
まぁ結局アラームが鳴ったのは放課後で制限時間は10分だった。
「ふふっ」
わたしはオレの教室近くの廊下へと飛ぶ。すると、オレが教室に戻ろうと慌てて向かってるところだった。
「ソラ!?……その腕につけてるのって!!」
「昨日、手に入れたんだよ」
「そうなんだ……」
なんて会話していたら、バトル開始の合図がなった。
「ってことで、ごめんね。大丈夫、壊すのはボスウォッチだけだから」
「……ええええ!?」
なんで驚いてるんだろうとわたしは今回のルールを説明する。
「ボスウォッチが壊れれば、参加資格を失うんだよ。わたしの邪魔をしそうなのは、君のチームでしょ。もちろんヒバリさんがこの場に居れば、譲ったけどさ」
「ヒ、ヒバリさん……?」
「そ!だってヒバリさんがくれたから」
そう言ってわたしはバトラーウォッチを見せる。
「ほら、死ぬ気になるのを待ってあげる。1分だけね」
「む、無理だよ!オレはソラと戦えない」
「じゃそれを壊すだけだよ。わたしを止めるんじゃないの?」
ハッとしたオレは毛糸の手袋をつけ死ぬ気丸をのんだ。骸、悪いね。先に出会ったのはわたしだから許してね。まぁズルしちゃってるけど、骸は……許してくれる。
なんて思ってると超直感が働き、視線を向ける。爆風が起きた。
「よぉ、困ってるようだな。父さんが助けてやるぞ」
「なっ!?」
うわー、そういうことするんだ。わたしは思わず声を出して笑ったよ。ほんと、最高だよ……リボーン。
「父さんの助けはいらない!というか、こっちに来るな!」
「そういうなって。父さん、悲しいぞ。それに……これも仕事だ」
「仕事?」
「ちゃおっス。オレがコロネロに頼んで、同盟を組んでもらったんだぞ」
「はぁ!?お前なにやってんだよ、リボーン!!」
まぁオレからすれば、わたしが殺そうとしている人物が目の前にいるから何やってるのとは思うだろうけど、リボーンからすればこの同盟は必要だ。オレを鍛えることも出来ず壊されるよりはマシだから。でもあのリボーンが最初からコロネロに頼むとは思わなかった。それだけわたしの強さを認めてるってことなんだろうね。
「わたし、彼と違って壊すよ。あなたも」
「オレはあんま殺りあいたくねーんだけどな。どんな危うい思考をしていたとしても、ガキの頃からツナと奈々を殺し屋から守ってくれていたらしいからな。つっても、お前は手加減して勝てる相手じゃない、ましてお前はオレを恨んでるだろう。だから全力で相手をする、それが礼儀ってもんだ」
「え……」
「悪い、ツナ!オレがミスったみたいで、家にわんさか殺し屋が来てたみたいなんだ!」
カッとオレの目が見開いて、そのあとわたしに視線を向けた。わたしの口からも聞きたいみたい。
「……今考えたら、来てくれてよかったと思う。当時は苛立ちしかなかったけど」
オレはわたしの言葉にぐっと堪えて、あいつに殴りかかった。死ぬ気の炎の量が増えてるけど、ダメだね。
「まだまだ弱いな、ツナ。お前はまだコイツの相手は早い。正直父さんもキツくってな、お前を庇ってやれる余裕はないんだ」
怒ったオレの一撃と確実に気絶させるための渾身の一撃、まず音が違った。そしてオレは怒りに任せて直線的すぎた。随分ぶっ飛ばされたなぁ。まぁオレだから大丈夫かな。
「さて、始めるか」
「では、死んでくださいね」
メスを取り出し、こいつに左手でメスを投げる。交わされたり起動を逸らされて、わたしとの距離を詰めようとした。けど、わたしの攻撃はまだ終わってないよ?
掴むか、床に叩き落とさないとね。私の投げたメスは夜の炎で永遠にあなたの周りを飛び続ける。
……ああ、もちろん刺さっても止まるよ?
「くっ」
残念。逃げ道がないと瞬時に判断されて、床を壊して一階に逃げちゃった。
「あーもう。あんまり壊さないでよ。それとCEDEFが払ってよ、修理代。わたしお金ないよ」
「よっと。すまんすまん、壊したところはCEDEFが責任をもって直す」
二階にもどってきたけど、頬に傷がついた程度かぁ。本人はピンピンしてるね。
「ね、次はどう踊ってくれる?」
「いや、踊るのはお前さんだ」
手から炎だして一気に距離を詰めてきた。瞬時に移動するけど、そこに死ぬ気の炎が迫る。けど、たいした威力じゃないからそのままメスで斬り裂く。その隙をついて、わたしを殴ろうと拳が迫っていた。
「……確実に決まったと思ったんだがな」
「もっとスピードあげなきゃ、遅いよ」
何ごともなくわたしは教室で立っていた。夜の炎の恐ろしさはこれだよね。ワープでの移動が、人の速度では追いつかない。
「さすが……オレと母さんの娘だな」
……気付いていたのか。いや、違うね。今の攻防で気付いた。
「わたしにはあなたみたいな父親がいた記憶ないよ。彼女には世話になった記憶はあるけどわたしの母親じゃない」
「いいや、間違いないさ。一度も抱きあげたこともない、育てられなかった可愛い娘だ。……前言撤回はしない。全力で相手になる」
「……そこは評価してあげる」
特に謝らなかったことを、ね。
「でももうわたしの相手にはならないよ。弱すぎて話にならない」
「父さん、まだまだ頑張れるぞ」
「……。さっき、床を壊して逃げたよね。今度はあなたの移動に全部合わせてあげる。そしてメスもどんどん追加してあげる」
ああ、やっと顔色が変わったね。わたしはその顔を見たかったんだ。死を想像した青ざめた顔が。
「ひとつ忠告、炎を放って壊そうとするのは悪手だよ。自分に戻ってくるから。じゃ、楽しんで踊ってね」
メスを移動させるだけの量じゃない。全身を覆うような炎の量だ。ねぇ、この闇の景色からあなたは生きて帰って来れるかな?
戦闘終了の合図を聞いて、炎を消す。
「うわぁ、まだ生きてたよ。それにボスウォッチも壊れてないや」
でも誰に聞いてもボロボロって答えるだろうね。致命傷のところにも刺さってないけど、このままだと出血死しちゃうぐらいは負傷している。
「頑張ったご褒美に、良いこと教えてあげよっか」
わたし達の戦い……ううん、戦いにすらならなかったね。最後まで手を出さずにわたしの行動を見守っていたリボーンとコロネロ、そして何とか倒れまいとしている目の前の男に語りかけるように話す。
「わたしって規格外の強さかな?なんて思うんだ。けどね、わたしなんてたいしたことないんだよ。ふふっ、あの子優しくてね。ずーーーっと手加減してくれてるの。わたしが負けをあっさり認めるぐらい、普段表に出ているわたしは強いんだ。よかったね、わたしが相手で。生き残れたよ」
じゃわたしは後は任せるねーと引っ込む。もう一人のわたしはまた頭を抱えてたよ。怒っていいのに、ほんと優しいよねとわたしは笑った。
「……オレ、そんな強くないってば」
はぁと首を横に振る。そもそもオレだけじゃ夜の炎出せないんだよ。なんでオレの方が強いってなるの。
「家光の治療をしてもいいか?」
「あーうん、どうぞ。わたしも割と気が済んだみたいだし、いいと思うよ。こういう機会があれば、またやるだろうと思うけど、今回はもういいみたい」
「そうか」
オレなんもしてないのに疲れたよ。バトラーウォッチ、ヒバリさんに返そうかな。……うーん、まだ捨てない方がいい、かな?
「ちょっと彼の方へ行ってみる。結構飛ばされちゃったみたいだし」
「頼んだぞ」
はいはいとオレはピョンっと二階から飛び降り、オレを探しに行った。
完全にノビてるオレの頬をペシペシと叩く。
「んっ……ん、ソラ!!!!」
うわ、すごい。飛び起きたっていう表現がまさしくピッタリだったよ。
「おはよう」
「へ?うん、おはよう。って、おはようじゃないよ!!その、どうなったの……?」
「殺してないよ。すっげーボロボロだったけど、なんとかなるんじゃない?オレがみたところではちゃんと治療すれば、後遺症もなく動けるよ」
ホッと息を吐いていた。けど、すぐにオレに不安そうな視線を送った。……オレが今わたしをおさえるのが大変じゃないのかなって感じかな。
「今回わたしは本気で殺す気はなかったよ」
「ほ、ほんと!?」
「うん、死んじゃったらそれでいいとは思ってただろうけど」
「……そうだよね」
「ただ殺すだけなら幾らでもやりようはあったのに、それをしなかったからね。多分会話して気が変わったんだと思う、君がわたしの口から聞きたいと望んだ時に」
キョトンとオレはしていた。今のオレはこっち方面も鈍いよね。察し悪すぎだよ。
「君は何も知らなかったから、さっきいろんな感情が渦巻いたと思う。けど、もしあの時に殺し屋が来なければ、君の目の前に現れることはなかったよ。全部調べ終わって、あの家から踏ん切りをつけようとしたところだったんだ」
「だからあの時……」
「うん、ちゃんとわたしの本音だったよ。だから君は止めたよ、わたしを」
あーあ、泣き虫だなぁ。ブーメランな気もするけど、オレは優しく抱きしめてあげる。
「っと、そうだ。泣いてるところ悪いんだけど、ひとつ報告。オレの正体が君の父親にバレた」
「な、なんだってーーー!!」
驚きすぎて涙も止まったよ。そのことにこっちがビックリした。
●●●●●●●●●●
「骸ー!」
「……急に出てくるんじゃありません」
抱きつくのはいいんだとわたしは笑う。
「結果みたよー、凄いね!」
「当然です」
まさかユニチームが後2人になってるとは思わなかったよ。まぁクロームもいるし、当然といえば当然かな。
「師匠、誰ですかー?」
「そういえば、フラン、あなたはあの時会えなかったですね」
「一応ソラって名前で活動してるよ。こうやって骸に飛びついてるだろうけど、ほっといていいよ」
「わかりましたー」
「おや?君にしては随分素直ですね」
「ミーは殺されたくありません」
この子、良い直感持ってるね。じゃ遠慮無くとぎゅーっと抱きしめる。騒いでるのはいつもの人とヴェルデだし問題ないよ。というか、わたしスパイじゃないってば。
「それでどうやって雲雀恭弥からバトラーウォッチを貸してもらえたのです?」
「ヒバリさんから借りれたのは、もう一人のわたしの功績だよ」
「……ああ、そういうことになりましたか」
パッと骸から離れ、オレは隅っこに蹲る。……なんでこいつ気付いてんの。え、本当にオレ鈍かっただけなの。
「なんだ、この女?」
「気にする必要はありませんよ、ヴェルデ博士。ただ人格が入れ替わっただけです」
「ふむ。こう間近で見ると面白いな」
面白くないっつーの。見世物じゃありません!……ごめんね、骸がいる時になのに急にオレが出ちゃって。もう満足してるから大丈夫?ほんと?……うん、ありがとう。
「じゃ、オレ帰るね」
「……ソラ。いえ、あなたのままで」
入れ替わった方がいいのかなと思ったけど、オレの方に用事があったらしい。でもなんだろうね、わたしを通しても聞けるのに、わざわざオレを引き止める意味って。
「あなた方が決めたことに、僕はどうこう言う気はありません。ですが、あなたは鈍い」
「……知ってる」
反発する気はないよ。コイツがわざわざ言うんだから意味があるんだろうし。ただ、ちょっとオレの心にグサっと刺さっただけ。
「あの男にはまずあなたが会いなさい」
「わかった」
いや、あの男が誰かわかってないけど。でも骸がこれ以上ヒントくれると思えないし。どういう意味かは帰ってから考えよ。仮面をつけたオレは飛んだ。
部屋に戻ると、ヒバリさんが居た。ちょっと驚きつつも、すぐにヒバリさんが並中へ行こうとしなかったから、バトルは後でいいみたい。
「君、壊さなかったんだね」
「はい。でも用事はもう終わりましたよ」
「ふぅん。じゃぁもういらないの?」
「まだ持っていた方がいい気がして」
「そう」
ヒバリさんは気にしてないみたいだから、このままでいっか。……そうだよな、この疑問もあったよなぁ。
「悩み事?」
「そうですね。なんで、ちょっと寝転がります」
「……君、僕に押し倒されたこと忘れてない?」
「油断してないんで、問題ありません」
ヒバリさんがイラッとしてる間に、仮面をとってベッドに寝転がる。帰るかなと思ったけど、残るみたい。オレはクルクルとメスをまわす。
「君って左利きだった?」
「どっちもいけます。正確にいうと、オレが右でわたしが左です」
「へぇ。もう一人の君の悩み事なんだ」
「違いますよ。うーん、癖になっちゃったのかな、わたしが落ち着かない時にやっていたから」
「君はそんな癖つくらないよ」
チラッとヒバリさんを見る。この人がそういうとそうなんだろうなという信頼がある。ってことは、わたしが落ち着いてないのか。……返事はないし、間違いないね。
「……あ、わかった。ヒバリさん、ありがとうございます!じゃオレ行きますね!」
「僕との時間は?」
「わたしのためにも急いだ方がよさそうなんです。終わったら応接室に行きますよ」
「そう。待ってるよ」
ヒバリさんの返事を聞いた途端、オレは仮面をつけて飛んだ。XANXUSの元へ。
「……いや、オレだしいいんだけど。お前が物騒すぎてビックリした」
炎で移動をしたのもあるんだけど、いきなり銃をぶっ放してくるとは思わなかったよ。もちろん飛ばしたけどさ。炎を感じ取ったのか、ヴァリアーの面々が集まってくる。
「オレ今バトラーウォッチつけてるから。次からは失格になると思うよ。……ほんと、今の見逃されてよかったね」
とりあえず先にこの場にいる全員に注意する。マーモンがXANXUSの行動にショックを受けてるよ。一番呪いを解きたがってたしね。
「なんだ」
「あー待って。先に謝るよ。わたしの方じゃなくってごめん」
イラついてまた銃を握るかなと思ったけど、そんなことはなかったよ。にしても、静かだね。何この見守り体制、そりゃXANXUSがイラつくわけだ。
「お前なら言わなくていいかなって思ったんだけどさ、念のためにオレが来たんだ。わたしを守るためにオレが居るからさ。……未来は変わったよ。オレ達が夢で知ってしまった時点で、変わっちゃった」
ヴァリアーの面々がうるさくなった。……もしオレが今バトラーウォッチをつけてなかったら、うるさくなるだけで済んだのかな。
「実際!!……オレ達は夢を見たやつに一度狙われたよ。11代目を産める存在という理由で」
……静かになっちゃったな。一瞬でも、一度でもそう考えたことがあったから黙った。その反応にXANXUSが悪態をついたから、本人はそういう風に考えてなかったのが救いだけど。後はマーモンぐらいかな。この騒動が面倒だと思ってそうだし。
あの時、オレは鈍くって全然わからなかったけど、わたしは感じ取ったんだ。だからあんなにも悲しんでいた。
「……今オレが出てるから普通に話せるけど、多分未来の経験を継承されたお前なら気付いてるだろ。わたしは悲しんでるって。けど、XANXUSの名前が出れば動揺するぐらいは好きなんだと思う。……今のでも心臓がはねたし」
ふぅとオレは大きく息をはく。わたしの心にオレも釣られそうだから。
「夢をみてから、いろいろあったんだ。未来はかわったと、オレもわたしも実感してる。お前にも関係あるから言っておくけど、選ぶ権利がオレにもあるようになったから。……オレ、お前のこと嫌いじゃないけど、好きでもないから。それだけはハッキリ言っておく。で、お前らは最悪」
視線と共に殺気をおくれば、何も言わなかった。文句を言ってたら、多分オレはキレてた。
「とりあえず邪魔だからどこか行ってよ。オレはわたしを守るためにいるから、お前らが居たらわたしが出せない」
「退け」
XANXUSが協力するような言葉を発するとは思わなかったなぁ。やっぱかなり鬱陶しかったのかも。出て行ったのをみて、やっとわたしを出せるよ。……大丈夫だよ、XANXUSはバカなこと考えてなかったよ。出てきなよ。
「……ごめん。もう一人のわたしがいろいろ言って」
「おい」
あまり気にしてないのかな。普通に呼ばれたし。
「なに?XANXUS」
「取れ」
「……嫌いな顔だよ?」
「るせぇ」
嫌だなぁなんて思いながらも、わたしは仮面をとった。
「似てねぇ」
それだけ言って寝る体制に入るのはズルいと思う。
「あのさ、本当にいろいろあったんだ。……あの子はわたしを優先するから何も言わなかったけど、あの子を好きって言う人だって現れたよ」
怒ったりするかなと心配したけど、目をつぶったまま。でもちゃんと聞いてる。それがわたしにはわかるんだ。
「いろいろあったのに、わたしは進めなかった。会うのが怖かったんだ。だって、よくわかんないから。急に意識するようになったし……」
「くだらねぇ」
「うん。そう、くだらないことだよ。未来のわたしの気持ちに振り回されて。でもXANXUSも振り回されてるよね。わたしにはわかるよ」
……無視しないでよ、もう。負けず嫌いなんだから。アルはそういうところを似たんだよ、絶対。
「似てないって言ってくれて嬉しかったよ。他の人に言われたら悲しかっただろうけど、XANXUSに言われるとすごく嬉しい」
「チッ」
舌打ちやめてよね。言わなくていいこといったとか思ってるんだろうけどさ。まぁ振り回されてる証明みたいなもんだし。
「XANXUSは大丈夫でも、わたしがよくわかんないからさ。それにもう一人のわたしを好きと言った人も現れたのもあるから、互いに認めた人にしようってわたしが提案した。もう一人のわたしはさっきハッキリいったでしょ、信頼できるんだ。……そっち方面には鈍いけど」
ふふ、スネないでよ。ともう一人のわたしに声をかける。
「だからさ、ちゃんとやり直し?したい」
「勝手にしろ」
「うん、じゃぁまた来るよ」
今のXANXUSの勝手にしろは、全部わたしの好きにしろってことだもんねと笑う。本当になんでもわかっちゃうんだなぁなんて思いながら、わたしは飛んだ。
向かった場所は応接室。もう一人のわたしがあわあわしてるけど、放置。だってねぇ、話さなきゃちゃんと。
「やぁ」
「あの子は黙ってたけど、XANXUSに会ってきたよ」
「ふぅん。それで?」
「わたしの好きにしろって言われたから、たまに会いに行くことにしたよ。けど、わたしが進むかの判断はもう一人のわたしに頼んだから」
さっきもう一人のわたしが黙って向かったことには機嫌悪そうだけど、決まった内容は悪くないとは思ってそう。だって、条件は一緒だから。
「怒っちゃダメですよ。わたしのために向かったんですから」
「……わかった」
「ふふ、ありがとうございます。では、変わりますね」
ひぃ!とか言ってるけど、大丈夫だよ。だって怒ったら、わたしに好かれないってことだから、ね?
「……す、すみませんでした!!」
わたしはそう言ったけど、オレには無理だって。謝る以外に道はないんだよ!堂々と居るなんてオレには出来ません!!オレが悪いとわかってることには普段通りなんて出来ないって!!
「はぁ、もういいよ」
「ゔ、すみません」
気まずくて必死に話題を探す。……あ、そうだ。
「これ返します。もう要らなくなったみたいで」
そう言ってオレがバトラーウォッチを差し出すと、ヒバリさんはまたため息を吐いた。……まぁヴァリアーへの牽制に使ったってわかるよね。
「壊すよ」
「はい。オレがそれをつけることはもう無いんで。好きにしてください」
バキッと音が鳴った。……トンファー使わなかったんですけど。この人、オレに対する怒りを全部そこに込めた気がする……怖っ。
「って、怪我してないですか!?」
慌ててオレはヒバリさんの手を掴んで調べる。多分、大丈夫かな?血とかは出てないし。オレがホッとしたら、すぐさま手を引っ込められた。あ、嫌だったかな?
「すみません」
「……嫌とは、思ってないよ」
本当かな?とオレはヒバリさんの顔を見て、なんとなくわかった。多分ヒバリさんも戸惑ってるんだろうなって。本当に未来に行くまではそういうことに興味とかなかっただろうし。そこはオレと一緒だから流石にわかったよ。……その割にはオレを食う気満々だけどね、この人。
「ええっと、屋上で戦いますか?」
「別に僕はかまわないけど……」
ん?なんかヒバリさんの反応が変だよね。いやまぁ戸惑ってたのはわかってるけど、バトルに関しては別で喜んでしそうなのに。というか、今日の分だってまだだよね?
「……君、もしかして勝負していた理由を忘れてるとか言わないよね」
「へ?」
「君が意識するようになったんだから、僕としては次に進みたいんだけど」
……そうでした。別にバトルしなくていいじゃん。あれはオレが食われないためにやってたんだ。いや別に今は食われていいなんて思ってないけどさ。それにヒバリさんにしてはまともな提案だった。
「そ、そうですよね。でも次に進むって?」
「僕のペースでいいの?」
「……なしで」
そんな残念な顔をしないでください。というか、それ絶対また戻るから、バトルに。……この人、本当に戸惑ってんの?
いろいろ提案した結果、ヒバリさんに見つかったら食事に連れてってもらえることになった。……オレが損してない!と衝撃をうけたよ。や、今までがおかしかったんだけどね。
あーでもなぁ、お金は完全にヒバリさんに依存してる状態だよなぁ。戸籍ないけど、バイトって出来るのかな?
家光、死す!!とは、ならなかった。
まぁツナが止めたからですし、ソラ(オレ)が言ったようにこれからも機会があればします。その度にツナが頑張るでしょう。もちろんソラ(わたし)のためにね。
そしてある意味、大本命のXANXUS。
前提条件が未来と違いすぎました。
未来の経験に振り回されて、先にお互いが意識してる状態です。
XANXUSなんてちょっと前に何としてでも殺そうとした相手ですよ。それがたった一夜で愛してる女にランクアップだよ。それも決着次第では最期になる前日に寝かさなかったぐらい愛した女。……え、何段階アップしたの?そりゃ整理つかないわ。思わずぶっ放すのもわかる。当たらないのはわかってますし。ましてまだ相手はガキって言えるぐらい年下です。同じぐらいの歳ならまた違ったのにね。ヴァリアーの面々が思ってる以上にXANXUSは混乱してます。イラついている程度にしか見せなかったのは彼のプライドでした。
未来編の後書きに長々と二人が結ばれた流れを書いたのはこの話のためでもありました。本当は本編に入れたかったんだけど、本編に入れて説明しちゃうと継承されちゃうから後書きにしか書けなかったんですよね。
割り切って身体の関係から始まってるなら、わたしはヴァリアーの態度に傷つかないんですけど、意識してる状態だったんでね。もう最悪でしたね。あんな事件の後でしたし。
でもXANXUSのことが好きな彼らは一瞬でもそう考えてしまったのはわかるんですよね。実際未来のXANXUSは悪くねぇという判断から関係を持ちましたし。そんなこと今のXANXUSとソラは知らないからややこしい。
で、2人が出した結論はやり直しでした。
2人っきりで会う時間がもっと必要と判断した感じ。
ヒバリさんが入り込む余地を与えてるのも、ソラ(オレ)に判断されるのも仕方ないという考えですね。だってね、本人らもよくわかってないんですから。
ゆっくり歩んで整理していくしかありませんね。