コルヴォ トランクィラ   作:COTOKITI JP

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最近色んなネタがポンポン浮かぶので面白そうな物を手当り次第に小説として投下していきます。


ラストレイヴン

イジツに存在する幾多もの街の一つ、ラハマ。

そこはかの有名なコトブキ飛行隊の始まりの地でもある。

 

イケスカ動乱終結からまだ間も無いが事態は収束に向かっており、平穏を取り戻したラハマの街中は人々が行き交い、平穏を享受していた。

 

コトブキ飛行隊のとてそれは同じである。

しかし、羽衣丸の喪失はオウニ商会だけでなく彼女らにとってもかなりの痛手だったらしく、活動領域は以前より随分と狭まってしまった。

 

平穏を享受しつつもいつまでもやってこない仕事に焦りを覚え、行動を開始し、なんとかラハマでの働き先を見つける事が出来た。

 

空を飛び、数々の敵を撃ち落としてきた彼女らはそれ以外に特にやっていた事は無く、結局アルバイトという身分で働く事になっていた。

 

僅かな賃金だが、こうして働けるだけでもこのイジツでは充分有難い。

今のイジツの情勢は最早就職氷河期を通り越した何かだ。

 

ラハマはまだ少ない方だが、遠くの街に行けばきっと路上は汚い乞食と草臥れた服装に絶望に満ちた表情でうろつき回る失業者で溢れ返っている事だろう。

 

そんな救いようの無い世界で彼らは弱者を見下ろしながらまだ自分は大丈夫だと安堵するのだ。

 

勿論、そんな意図が無い者がいるのは当たり前だ。

図書館で慌ただしく歩き回っているこの溌剌とした少女達もそんな事をする程落ちぶれてはいない。

 

キリエとチカ。 それが少女達の名前だった。

図書館にいるからと言って司書の仕事をしている訳では無い。

毎日が喧嘩になる彼女等ではそもそも話にならないだろう。

 

その代わりではないが、館内の掃除を任されていた。

 

「ちょっとチカサボんないでよ!」

 

「こっちはもう終わったもんね〜」

 

「うっそだぁ!」

 

嘘だろうと思って来てみれば、余程キリエを見下したかったのかチカに任されていた場所は確かに先程より綺麗になっていた。

 

「ね?」

 

たった一文字。 それに言い返す事も出来ないキリエは下唇を噛み締めながらぐぬぬと唸る。

 

その時だった、外から聞こてえてくる謎の音を聞いたのは。

館内にいる人々も何事かと窓際に集まり、空を見上げた。

 

人々の視線の先にいたのは一機の航空機。

彼等の知識の範囲内で言えばあれは戦闘機だ。

 

しかしその姿は異常だった。

エンジンは黒煙を吐き、胴体や翼の各所に穴が開き、そこから燃料が漏れだしている。

 

尋常ではないその姿に暫時呆けていた二人は掃除道具を放り出し、外へと向かった。

 

一方であの戦闘機の中の様子はといえば無線機からひっきりなしにここの自警団員の声が響いていた。

 

《おい!その先は市街地だ!!直ぐに進路を変更しろ!!死にてえのかてめえ!!》

 

自警団員の声は聞こえどもそれに反応するパイロットの声は一向に聞こえてこない。

大破した戦闘機は徐々に高度が下がり、豆粒大だった市街地がすぐ目下に映っていた。

 

パイロットは進路変更どころか操縦桿を握る手が動いていない。

彼は文字通り生と死の狭間を彷徨っている最中だったのだ。

 

《おい!!聞こえてんのか!?応答しろ!!おい!!》

 

意識の朦朧とする中で無線に答える事は出来ず、ただ今にも失いそうな意識を保ち続ける事が彼の出来る唯一の行動。

 

もういつ機体と地面が接触してもおかしくない距離で戦闘機は漸くランディングギアを展開した。

 

だが遅すぎた。

展開が間に合わず、展開途中で接地したランディングギアは自重に耐えられずに折れ、胴体を地面に擦り付け、粉塵を発生させながら数百メートル先の道路で漸く停止した。

 

幸いなのは市街地に直撃しなかったのと胴体着陸の衝撃で機体が崩壊しなかった事だ。

 

煙を上げながら横たえる戦闘機の傍に野次馬が集まり、取り囲む。

その野次馬の間に割り込んで戦闘機に近寄った人が二人いた。

キリエとチカだ。

 

彼女の性格なのかそれとも用心棒としての本質なのかは分からないが、キャノピーが開き、コックピットから男が引き出された。

着陸した頃からなのか、男は既に意識を失っていた。

 

◇◆◇◆◇◆◇

深い眠りから目が覚めればそこは病室。

見覚えの無い景色に男は僅かに首を傾げ、自分の身なりを確認すると患者服を着ていた。

 

それと体のあちこちに包帯やらガーゼが施されており、治療は既に済んでいたらしい。

あのような重傷を負ってよく生きてこれたと我ながら感心する。

 

暫くどうしようかと状況の整理を行っていると病室のドアがノックされた。

入ってきたのは見知らぬ中年の男一人とこれまた見知らぬ少女二人だ。

 

暫定的にこの内の誰か、もしくは全員が自分を助けたと見て特に警戒はせずに三人の方へと顔を向けた。

 

「その様子だと大丈夫みたいだな」

 

男は安心したような声を出すとベッドの脇にあった椅子に腰掛け、改めて彼に向き直った。

 

所々皺が目立つ顔にカジュアルな服装。

年齢的には四十代後半といった所か。

 

素早く男を分析している間に話が始まった。

 

「お前を助けたのはコイツら二人だ」

 

そう言いながら男は後ろにいた少女二人を指さす。

助けてくれた人が分かって彼は感謝の気持ちを伝えたかったが、彼にはそれが出来なかった(・・・・・・・・・)

 

感謝の言葉が出ない彼に対して彼女達は少し怒ってしまったのかむっとした表情になった。

 

男も溜息をつきつつ礼は言っておけと促された。

 

「お前がどういう境遇の人間か知らねえがコイツらはあんまり怒らせない方がいいぜ」

 

「え……あ…う……」

 

「なんだ言葉の一つも出ねえのか?」

 

「あ、え……あ」

 

この明らかに不審な様子に男は一つの確信を持った。

 

「……まさか……お前喋れないのか?」

 

「…………う」

 

小さく頷いた彼を見て男は更に大きな溜息をつく。

 

仕方が無いからと懐から手帳とペンを取り出し、彼に手渡した。

 

「お前の名前をまずは教えてくれ」

 

手帳とペンを受け取り、真っ白なページになるべく大きめの字で自分の名前を書いて男に返した。

 

しかし、手帳の中身を見た男は首を傾げるだけで書いてある事を理解している様子は無かった。

 

「なぁ、これなんて書いてあるか分からねえぞ。 どこの言葉だ?」

 

「これユーハング語じゃない?」

 

「昔サブ爺の所で見た事があるけどこんなヒョロヒョロした文字じゃなかったよ」

 

彼は自分の故郷の言葉で書いたのだが、どうやらやはり理解してくれなかったようだ。

想定はしていたが喋る事も出来ず、他に良い手段も思い付かないので参ってしまった。

 

どうするべきか悩んでいたその時に、またもやドアがノックされ、今度は四人の女性が入ってきた。

 

この部屋の男女比率のおかしさを感じつつも視線を男からドアの方へ移した。

 

「貴方が先程の戦闘機のパイロットか。 私はレオナだ」

 

状況の説明には、きっととても苦労する事だろう。

 

 

 




音楽を聴きながらすると思った以上に執筆が捗ります。
やっぱり音楽は偉大ですなぁ。

我、感想ヲ求厶。
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