コルヴォ トランクィラ   作:COTOKITI JP

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やっぱり音楽聴くとかなり捗ります。


鴉の目覚め

思った通り、四人に正確な情報を伝える事は難しかった。

そもそもこっちは喋れないのであの男に代わりに言ってもらう他ない。

自己紹介も済んでここにいる全員の名は大体覚えた。

 

朱色の髪の人がレオナ。

金髪でお嬢様っぽいのがエンマ。

温厚そうなのがザラ。

無表情で賢そうなのがケイト。

一番背が小さくて活発なのがチカ。

そして見慣れた飛行帽を被ってるのがキリエ。

 

男はここ、ラハマという街の自警団所属のニシカ。

 

こんな感じに脳内に記憶し、四人の顔を見た。

 

その四人はと言えばなんとか彼の状況を理解してくれたようだ。

 

「言葉が話せない……か」

 

「一種の障害でしょうか?」

 

「う……」

 

肩を竦めて自分にも分からない事をアピールし、溜息をつく。

 

ふとレオナの方に顔を向けると手に持った袋に目がいった。

視線に気付いたレオナはその袋を彼に渡した。

 

「あの戦闘機から見つかった貴方の持ち物だ。 戦闘機に関してはうちの格納庫で管理しているよ」

 

袋の紐を緩め、中から全てを取り出す。

飛行服、飛行帽、ゴーグルに携帯食糧、そして写真(・・)が入っていた。

 

「護身用と思われる拳銃と散弾銃、そしてそれの弾薬も入っていた。 悪いがそれらはこちらで管理している」

 

銃に関しては別にこの状況では必要は無いと思うので別に構わない。

それに銃撃戦になったとしても重傷を負っている自分ではまともに戦えないのは明白だ。

 

荷物の中から一枚の写真を取り出し、じっと見つめる。

 

「その写真、コックピットの計器盤に貼り付けられていたが貴方の同僚か?」

 

写真の中にはパイロット姿の彼と、彼を取り囲む同じ格好の男達が取り囲むように並んでいた。

 

皆良い笑顔でカメラに向かって笑いかけていた。

中心に写っている彼もまた微笑んでいた。

今の自分は笑っていないが。

 

写真を見てから俯いてずっと動かない彼を不審に思い、エンマが声を掛けた。

 

「そんなに見つめて、その写真に何かありましたの?」

 

異変に気が付いたのはニシカが一番早かった。

それでも彼が涙を流していた(・・・・・・・)事に気付くには少し時間が掛かったが。

 

「ど、どうした?」

 

彼は歯を噛み締めながら暫く涙を零し続けていたがやがて涙も収まり、患者服の袖で涙を拭った。

 

「……過去に何かあったみたいね……」

 

いつもはふざけているチカとキリエもこの時ばかりは空気を読んでか静かにその場に立っているだけだった。

 

涙に濡れた写真の裏にはこう書かれていた。

 

『1935、5、11 Giorno della gloria!!』

 

その意味を知るのは、今や彼しかいなかった(・・・・・・・・)

 

◇◆◇◆◇◆◇

病院で目が覚めてからそれなりの日にちが経った。

その間に彼の乗っていた戦闘機がナツオ班長の手腕によって直ったり、この世界の文字を勉強したりと色々あった。

 

文字を覚えたお陰で何日も遅れてしまったが漸く自己紹介をする事が出来た。

そのぎこちない字を見て苦笑いしながら彼等は漸く自分の名を呼んだ。

 

「ファウストと言うのか、改めて宜しく頼む」

 

差し出されたその手をファウストはしっかりと握った。

レオナの手は女性にしてはがっしりとしていて力強い印象を与えられた。

 

それからまた数日経って遂に退院の日が来た。

ここに来た頃はあんなに死にかけていたのが今では病室の外を二本足で立って歩ける。

 

その喜びを静かに感じながら彼らと病院を後にした。

 

この後は酒場でファウストの退院祝いとコトブキ飛行隊への入隊祝いが同時で行われるそうだ。

 

澄んだ空を見上げながらこれからの事に少しばかり心を踊らせるファウスト。

 

「おーい何してんのー、置いてっちゃうよー!」

 

「あぁ」

 

◇◆◇◆◇◆◇

「「「乾杯!」」」

 

テーブルを囲んで食事をとる彼女達。

その中に一人混じる男。 彼がコトブキ飛行隊に新たに入隊する事になったファウストである。

 

「でもマダムよく入隊許してくれたよね!」

 

「マダム、ファウストは只者じゃない気がするとか言っていたな」

 

「ユーハング人というだけでも私は凄いと思いますわ」

 

「同感」

 

ファウストはマダム・ルゥルゥと既に病室で会っていた。

と言うよりルゥルゥの方からやって来た。

 

その頃にはまだイジツ語を習得出来ていなかったファウストをよそにトントン拍子に話が進み、ファウストをコトブキ飛行隊の隊員としてラハマに引き取る事になった。

 

文字を覚えた後にも一度、今度はコトブキ飛行隊のメンバーは抜きで来て話をしたり、色々と聞かれたので文字に書いて質問に答えた。

 

コトブキ飛行隊のメンバーはそれぞれ仕事があったので中々面会が出来ず、話す機会が少なかった。

 

なのでこの時間で質問攻めに会うのは目に見えていた。

 

「ねぇねぇ!ユーハングって海あるの?」

 

『ある』

 

「海ってすっごい大きいんでしょ?行ってみたいなぁ」

 

『自分の故郷は海がすぐ近くにあって幼少期は夏にはよく泳ぎに行っていた』

 

「毎日海で泳げるなんて羨ましいですわね」

 

「ユーハングには美味しい酒ってある〜?」

 

『酒に関してはあまり知らないが確かワインが有名な街があった』

 

「ワイン?」

 

『飲んだことは無いが品のある味で金持ちが好んで飲んでいるそうだ』

 

「へ〜」

 

「じゃあさ!パンケーキ美味しい所ってある!?」

 

『実家が飲食店を経営していて人気メニューの一つにパンケーキがある』

 

「ホント!?」

 

「はいはい!カレーは!?」

 

『カレーは確か無かったと思う』

 

「え〜」

 

質問攻めのせいで手を休み無しに動かしたのでとても疲れた。

新しく買った手帳は革製のカバーに包んでいる。

レオナが金を出してくれたので有難く使わせてもらおう。

 

パーティも終わり、メンバーは全員解散した。

明日は自分も働く事になるので早めに寝よう。

 

そう思いながら自分の宿へと沈みゆく太陽を背に向かった。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「輪に乱れ無し。 空間接続に異常ありません」

 

空中に現れる巨大な三つの輪。

それを眺める一人の軍服を身に纏った男。

 

機械によって制御された輪の大きさは直径5kmを優に超え、不気味に揺れ動いていた。

 

その輪の下には夥しい数の飛行艦が待機していた。

 

「どうです?我が第17飛行艦隊は」

 

男に隣に立っていた白衣を着た老人は顎髭を弄りながら答えた。

 

「壮観ですな。 しかし相手もこれ程の規模で来ると思うと恐ろしくて溜まりません」

 

「レッドランドは何としてでも手に入れなければなりません。 しかし安心してください。 我々は如何なる大戦にも対処しうる程の力を持っています」

 

飛行艦に描かれた赤い星(・・・)が太陽に照らされて輝いていた。

 

 

 

 

 

 




赤い星……いやー何の事でしょうk…おっと誰か来たようだ。

感想、お気に入りは労働者の権利であり義務である!!

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