なかなか最後が決まらず、書いては消して書いては消してを繰り返してました。
今回でひとまず終わります。
巨大生物が
攻撃を手を休めず、追撃をしていく二体のウルトラマン。
その動きは、先ほどまでとは全く違っていた。
さっきまでは闇雲に立ち向かっては返り討ちに遭うだけだったのが、ブルの特攻をロッソが援護したり、先ほどのように連携して攻撃するなど攻め方に工夫が見られる。
もうひとつ、変わったのは動きだけではない。巨人から感じ取れる雰囲気も、さっきまでとは違うと有咲は感じていた。何かやるべきことをはっきりとさせたような感じ。縮こまっていた背中が大きく、そして頼もしく見える。
「有咲……もしかして、あの巨人は私たちの味方なんじゃないかな」
さっきまで真っ青だった香澄の表情に、微かさな明るさが戻っている。それは、あのウルトラマンに希望を
この絶望的状況──世界の終わりを連想するこの状況を、覆してくれるであろう希望の光。
「……かも、しれない」
それは有咲も同じだった。有咲も、あのウルトラマンに希望を抱き始めている。巨大生物を倒し、世界の終わりを阻止してくれると。
最初は戸惑いしかなかった。もしかしたら、あの巨大生物を排除したあと、改めて世界を破壊するのではないかと。
しかし違った。あの巨人は自分たちを守ってくれたのだ。巨大生物の攻撃から、その身を盾にして。
そして、今も必死になって戦っている。
『GYAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOO!!』
巨大生物が吠え、背中のコイルから電撃を放つ。狙いを定めたものではなく、手当たり次第にあたりを撃ち抜く雷。分散して放たれた雷撃に翻弄され、二体のウルトラマンは雷撃を受けてしまう。
轟音と共に火花が散り、二体のウルトラマンは膝をつく。
それは、雷撃のダメージに加えて、ふたりの体力が限界に近いからだった。ウルトラマンに変身している詩希と律希は、滝のような汗をかいており、肩を上下に揺らして激しい呼吸を繰り返している。普段から運動をしている詩希でさえ、かなりの疲労を感じているのだ。インドア派である律希の方は限界が近いだろう。
そして、
「──あれ? なんか、今、一瞬体の力が抜けたような」
「兄貴も? 俺もだわ。それになんか、胸がドキドキしてきたような」
「──! 律希! 胸のタイマー!」
「え? って、なんか赤に点滅してんだけど!?」
二体のウルトラマンの胸にあるカラータイマーが青から赤の点滅に変わっている。まるで危険信号のように点滅するそれを見て、詩希はある可能性に行き着く。
「……もしかして、おれたちがこの姿でいられるのには、時間があるのか」
「じゃあ、この点滅が消えたら!?」
「おれたちの負けってことになる
ふたりは息を呑んだ。赤の点滅がいつ消えるのか正確にはわからないが、それほど長くないことは直感的にわかった。決して多くないであろう残り時間内に、あの巨大生物を倒さなくてはいけない。ふたりに大きな重圧がのしかかった。
──できるのか? いや、やるしかない。
決意をして、ロッソとブルは駆け出す。巨大生物に掴みかかり、振り解かれないように踏ん張る。ブルが機転をきかせて巨大生物の足を掴むと、そのまま持ち上げて後ろへ転倒させる。そのまま二体して足を掴み、力一杯持ち上げ、放り投げる。
「決めるぞ! 律希!」
「ああ!」
決めるチャンスはここだ! そう判断したロッソとブルは両腕にエネルギーを集中させる。ロッソは赤い球体のエネルギー。ブルは両腕にエネルギーを纏わせる形で。そのエネルギーが十分に溜まった時、ロッソは腕を十字に、ブルはL字に組みエネルギーを解放する。
「“フレイムスフィアシュート”!!」
「“アクアストリューム”!!」
放たれし巨大な火炎球と水属性のエネルギーが巨大生物を撃ち抜く。
断末魔を上げ、爆散する巨大生物。轟音と黒煙が空に登っていった。
「はあ、はあ、はあ、勝った……?」
「……ああ、おれたちの勝ちだ」
「っだああああ! 勝ったあああああああぁぁぁ!!」
勝利を実感して、ブル──律希が大声を上げてガッツポーズをする。それを見たロッソ──詩希もまた大きく息を吐いた。その瞬間、どっと疲れがやってくる。その疲れに負けて、ブルが大の字で寝転んだ。
「おい、おれたち今巨大化してんだぞ。寝たら大変なことになるって」
「ああ、それそうか。いや、でもまじで疲れた起き上がれないって」
「お前な……」
とは言え、詩希も寝転がりたい気分だった。経っているのもやっとで早く元の姿に戻りた──、
「──あれ? おれたち、どうやって元に戻るんだ?」
「え? 兄貴知らないの?」
「知るわけないだろ。お前知ってんのか?」
「いや、知らない」
「……」
「……」
ふたりの間に静寂が訪れる。
ブルが勢いよく立ち上がりながらロッソに迫る。
「本当に知らないの!?」
「逆になんで知ってると思うんだよ」
「だって、え、嘘ー!? どうやって戻るんだよ、俺たちこのまま巨人のまま!?」
「そんなわけないだろ。ほら、胸のタイマーが切れたら勝手に戻れるんじゃないか?」
「いやそれ絶対アウト的な意味あるでしょ」
どうするのさー、と慌てる律希。
弟を宥めようにも、方法がわからないのだからなんと言えばいいのかさえわからない。
と、考えている内に胸のタイマーが一度赤く光ると、その輝きを消した。
「あれ……なんだか急に眠く……ふぁーあ……」
「おい律希!? って、なんだかおれも……」
突然の眠気に襲われるふたり。争うことができず、そのまま流れるように体が倒れていく。
同時に、二体のウルトラマンも光となって消えていった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
体が揺れている。
ゆさゆさと誰かに揺すられている。
「────ん!」
遠くから声が聞こえる。
「──さん!」
次第に近くなっていく声。
その声につられて、眠っていた詩希の意識が覚醒していく。
「詩希さん!!」
「……ん、香澄、ちゃん?」
「!? 詩希さん!! 有咲! 詩希さん目を覚ましたよ!!」
「本当か!?」
「有咲、ちゃんも……あれ、おれ、どうしたんだっけ……?」
寝ぼけてぼやけた視界の中には、涙で瞳を濡らしているふたりの少女が見えた。
戸山香澄と市ヶ谷有咲。ふたりは覗き込むようなかたちで詩希の顔を見下ろしている。
そこでようやく、自分が草むらに仰向けで倒れているのだと理解した。体に力を入れて起き上がろうにも、極度の疲労感が邪魔をする。体が鉛のように重く、いうことを聞かない。
やがて瞼が再び重くなってきて、できればこのままもう一度眠りにつきたいと思った。
だが、涙で瞳を濡らした少女たちがそれを許さない。
「詩希さん!!」
ガバッと香澄が詩希の胸に顔を当てた。
そして、香澄の体が震えていることに気づく。
「よかった……生きてる……生きてるよおお……」
涙が混ざった声。
「本当に、本当に生きてる……」
「え……なんで、おれ死んだことになってるの……?」
「だって! 巨大生物の雷に打たれたんですよ!? ふつう死んじゃったと思うじゃないですか!!」
「あ……そっか」
言われて思い返してみれば、詩希は巨大生物の気をふたりから逸らすために危険な行動に出たのだった。石を投げつけ、大声を上げ、そして律希と一緒に雷に打たれた。詩希たち側から見ればそこからウルトラマンとなってさっきまで巨大生物と戦っていたのだが、香澄たち側から見れば雷に打たれそこから姿が消えたことになる。死んだと思われても、いや、むしろ死んだと思われて当然だろう。
「心配……かけた、ね……」
「本当ですよお……」
あははは、と苦笑いしながら香澄の頭を撫でる詩希。
「でも、どうやって助かったんですか? 見たところやけどもしてなさそうですし」
と、有咲が問いかけてきた。
その問いに詩希はなんと答えるべきか考えた。
「え? えーっと……ウルトラマンに助けてもらったんだよ!」
「「ウルトラマン?」」
「そう。ほら、さっきまで巨大生物と戦ってた巨人。赤い方がウルトラマンロッソで、青い方がウルトラマンブル」
「ウルトラマン、ロッソ……」
「ウルトラマン、ブル……」
ふたりはそれぞれウルトラマンの名前を口に出す。
「雷に打たれるギリギリのところで、助けてもらったの。まあ、すぐに気絶したからあんまり覚えてないけど」
ちらりと、ふたりの顔色を伺う。香澄はなんとなく納得してそうで、有咲の方は怪訝な顔をしている。概ね詩希の見解通りの反応だ。
──まあ、ふたりから見れば、詩希の姿は完全に消えているのだからこの意見は苦しいだろう。
それは詩希自身も充分に理解している。だからどうしようかと悩んでいると、
「お〜い、なんで俺の方には誰もいないわけ〜? 俺の心配は〜?」
と、気の抜けた声が聞こえてきた。
「律希さん!」
声の主は律希だった。首を動かして視線を向けると、うつ伏せで倒れている律希の姿が、ほんの数メートル先に見えた。ぐったりとした様子の律希は、詩希より消耗が激しいのかほとんど動けない様子。
香澄が無事を確認しに行くと、唸り声を上げている。
「律希さん、大丈夫ですか!?」
「うー、ダメだ……体に力が入んない……」
「しっかりしてください!」
「俺は……ここまでみたいだ……かすみん……あとは、頼んだ……」
「律希さん! 律希さーん!!」
「……いやまあ、生きてるけどね」
思わずポカポカと背中を殴ってしまった香澄は悪くないはずだ。
「……何やってんだ」
ふたりのやりとりを呆れた様子で見ていた有咲はポツリと呟く。詩希も苦笑いをしつつ香澄と律希のやりとりを見ていた。
しばらくして、詩希は体に力を入れてみる。力が入る程度には回復しているが、まだ完全に起き上がることはできない。
「手、貸しましょうか?」
起き上がろうとしている詩希に気づいたのか、有咲が声をかけてきた。
「ありがとう。頼めるかな。せーのっ」
詩希は有咲の手を取り、上半身を起こそうと力を入れる。
しかし、
「きゃっ!」
「おあっ!」
有咲ひとりに成人男性ひとりを持ち上げる力はなく、結果詩希は再び地面に倒れ、その上に有咲が覆いかぶさる形になってしまった。
「いっててて、有咲ちゃん、大丈夫?」
「あ、はい。大丈、夫……」
至近距離で詩希の目と合う有咲。
整った顔立ちにややタレ目でブラウン色の瞳。
初めて至近距離で見る詩希の顔に吸い込まれそうになる有咲だったが、
「──ハッ!? ほあああああああ!?」
「あだ!?」
すぐに顔を真っ赤にして起き上がる。
バクバクと心臓の鼓動が自分でも聞こえるくらいに脈打っており、頭がこんがらがっている。それでも、ひとつ思ったのは、もし今のを香澄にでも見られたらどうなるかということ。どうか見られてませんようにと願う有咲だったが、
「おお〜、有咲大胆」
「兄貴、やっちまったな。母さんに報告しよっと」
最悪なことにふたりにバッチリと見られていたようだ。
「──────!?」
声にならない悲鳴を上げる有咲。
その下で詩希はひとり、どう弁解するかを考えるのであった。
第一章:俺たち、ウルトラマンになります─完─
登場怪獣:超合成獣 サンダーダランビア
あとがき
以上を持ちまして、第一章終了です。
もしこの作品を読んでくださった方の中に、ウルトラマンR /Bを見たことない方がいましたらこれを機にどうぞ。他のシリーズにはないわちゃわちゃ感がいいですよ。
その雰囲気、この作品でも出していきたいなー。
次回は、ウルトラシリーズでおなじみのお話。
どうぞ、よろしくお願いします。
次章予告
突然「ウルトラマン」の力を手にした葵兄弟。その力の大きさに強い使命と責任を感じる兄・詩希とは反対に、弟・律希は「ウルトラマン」の力に浮足立っていた。
そんな中、今度は市街地に怪獣が出現。早速律希はウルトラマンブルに変身するが、その軽薄な行動が大変な事態を招いてしまう──。
次章:チカラの意味。お楽しみに。