剣の頂よ、幸せの道へと通じろ。   作:カサミノ

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二作目です。
ペースは週一未満だと思いますが読んでいただけると幸いです。


第1話

 幸せな人生だった。

 息を切らしながら、雲一つない強烈に青い空を見つめ、こう思う。

 全てはあいつのせいだ。あいつのせいで俺は苦しい思いをしているのだ。

 俺が今このような状況に陥っている理由を語るには第二の生を得た経緯から語らねばなるまい。

 

 俺は気がつくと白くとても広い部屋に立っていた。それが部屋なのかどうかは分からなかったし、そんな事は重要じゃない。

 大事なのは何故ここにいるかだ。

 俺は下校途中友人と別れ、自宅に向かっていたはず。何故このような奇妙な場所にいるのだ。手持ちのリュックとバッグもない。それが不可解でならない。

 必死に頭を働かせるも、俺の胡桃サイズ脳味噌では全く飲み込めなかった。誘拐事件に巻き込まれたにしても、拘束しないのはおかし過ぎる。この部屋の防御機構によっぽどの自信があるのだろうか。

 部屋を歩き回り探索するも見た目通り広いこと、白いことの二つしか分からない。

 なんだか、考え事をしていると喉が渇いてしまった。それにトイレにも行きたい。部屋を探しても探しても何処かに繋がるドアも無いし、水分すら無かった。

 我慢するしか無い。しかし、喉の渇き、尿意を忘れようとすればするほど酷くなってくる。忘れろ、忘れるんだ俺。声かけも虚しく、どんどん尿意と渇きは酷くなる。やばい、意識したのが不味かった。あぐらをかいて、呼吸に集中する。俺はこうやって、このようなピンチを乗り越えて来たんだ。おっ、だんだん落ち着いて来た。よしよし、この調子、この調子。

「おい」

「ひゃっ!!」

 思わず情け無い声を出してしまった。

 男の声がした方を勢いよく見ると光が投影されていた。プロジェクションマッピングみたいなもんだろう。そして、俺をこの部屋に封じ込めやがった犯人はおおよそ声の主だろう。

「俺は神だ」

 まずい。犯人は厨二病患者だ。昔の俺を見ているようで胸がチクチクする。

 胸を少し抑える俺を気にする事なく声は続ける。

「お前は手違いで死んだ。その補填として転生してもらう」

「ほーん…………えっ!?」

「転生する世界はお前もよく知る鬼滅の刃の世界だ」

「ちょっと待ったァ!!」

「?」

「俺が死んだぁ? そんな訳あるかぁ! じゃあ、なんで今ここにいるんだよ!」

「そうだ。お前は死んだ。我らの手違いで心臓発作を起こしてな。しかし、魂を回収し、ここに縛り付けている」

 転生もののテンプレ通りだ。でも、全く嬉しく無い。俺の楽しい生活はこいつのせいで奪われちまったのか。

「転生しなくていいから元の世界に帰してくれ」

「それは出来ない」

「なんで? あんた神なんだろ?」

「時間を巻き戻す事は出来るが、世界に与える影響も非常に大きい。世界が崩壊する可能性も捨てきれん」

 俺を手違いで殺したけど、お前を生き返らせるには世界が犠牲になるから別の世界で我慢してねって事か。神だってのにひでぇ話だ。俺はもうこれで友人に顔を合わせる事も出来ないってのか。

 現実感と死んだ実感があまりにも無く、これまでの事をむしろ冷静に受け止めることが出来た。どうやら転生するしかないようだ。

「納得したか?」

「あぁ、でも…………」

「どうした?」

「鬼滅世界はやめてくれないか?」

 あの世界はヤバい。人食い鬼が跋扈しているのだ。絶対に行きたくない。

「ダメだ」

「えっ」

「それでは早速」

「ちょっと待ってくださいよ旦那ぁ! あっしはあんなやべえ世界には行きたくないでやんすよぉ」

「決定事項だ」

「チートは? チートは? 何かあるんすよね? 手違いっすもんね」

「ない」

「嘘だろ!!」

 人生詰みルート確定ですわ。ワンチャン鬼に会わずに生きる事を祈るしかないか? 

「まぁ、才能は与えてやる」

「まじで! これで勝つる! …………とはならんだろ!」

 多少の才能で勝てるほど鬼は甘くない。才能があるものが死ぬほど鍛えた果てである柱。その柱が数人がかりでようやく倒せる上弦の鬼。いやいや、安全には程遠いですやん。

「案ずるな」

「案ずるよ! こっちは命かかったんだぞ!」

「フフッ。お前は面白いな」

 神を名乗る声は非常に楽しそうだ。こっちは全く楽しくない。むしろ正反対の気持ちで冷や汗だらだらだよ。

「おや、そろそろ時間のようだ」

「待ってぇ! まだ行きたくない! 行きたくない!」

 光に掴みかかろうとするも光を掴める筈もなく、手は空を切る。楽しそうにまた神は笑う。ちくしょう、むかっ腹が立つぜ! 

 足元から光が迸る。刻一刻と強くなっていくようだ。これが更に強くなれば転生してしまうのだろう。避けなくては! 

「さらば!」

 光の声と共に視界は真っ白に染まる。それと同時に意識が緩やかに遠のいていく。あぁ、転生したくない。転生しても鬼殺隊にだけは関わらない。そう強く誓った。

 

 そんなこんなで転生したのだ。

 前世の記憶とこの経緯を思い出したのは5歳の誕生日だった。前日に雨が降り、滑りやすくなった道を滑り、頭からこけて、その衝撃で記憶が全て戻った。ここまでテンプレっぽい感じだとは思ってもみなかった。

 俺の今世での名は一条銀。武家として名高い一条家の生まれだ。ここの家は三百年前からとある剣術を継承している。この剣術の奥義にして基本は呼吸法だ。この呼吸法は人を異常に強くする。膂力、持久力は常人の数倍を優に超えさせる。

 ここまで語れば、分かるだろう。この一条家は全集中の呼吸もどきを継承しているのだ。唯一の救いはこの剣術は一切鬼殺隊とは関係ない事だ。この呼吸法は初代一条家当主が作り上げたとされており、家に鬼狩りの逸話は一切残っていない。一切残っていないのだ。

 つまり、俺は鬼殺隊に関わらずに済む、とぬか喜びしたのも束の間。気が狂ったよう素振りと走り込みをし、実の兄と父にボコボコにされる日々。

 そう、俺がボロボロで空を眺めていたのはこの打ち込み稽古のせいだったのである。

「よし! 今日は終わりだ!」

 父の一条鋼はよく響く声で言い放つ。

 父は見た目から武人であることが分かる。整っているものの険しい顔付き、鷹のような瞳にがっちりとした体に190に迫るほどの長身。墨液よりも遥かに濃密で濃い髪を短く切り揃えている。見た目が非常に厳つい。

「今日も腕を上げたな、銀」

 そう声をかけるのは一条金。俺と二つ違いの兄だ。非常に整った顔立ちだ。時代が違えば二枚目俳優としてTVでもやっていけるのではないだろうか、とすら思ってしまう。髪色は父譲りで父よりも少し長めだ。

「兄さん、兄さん。着替えです」

 俺の着替えをわざわざ持ってきてくれたのは一条綾香、俺と一つ違いの妹だ。訳あって血は繋がっていない………………腹違いじゃないぞ! 彼女も非常に美しい顔立ちをしている。表情を変える事は皆無だが、きっと笑顔は凄まじく可愛いだろう。綾香について特筆する事があるとすれば、美しさだけでなく、生まれつきこめかみに浮かぶ炎のような痣と物が透き通って見えるという事だ。

「綾香、着替えはまだ早いわ。お兄ちゃんは着替えの前にお風呂に入らないとね」

 この人は俺の母。一条咲。やっぱりこの人も見た目がいい。そして、物凄く芯が強いのだ。武家の男である父を尻に敷いている。おぉ、くわばら、くわばら。

 こんな風に優しい家族と楽しく過ごしています。冒頭で苦しいって言ってたよなって? 家族と過ごすのは楽しいが訓練は別ですね。父も兄も化け物みたいに強い。一本はおろか、間合いに入って数合木刀を合わせるのが限界だし、何より走り込みを始めとする基礎トレーニングがあまりにもキツいのだ。

 こんないい家に転生させてくれた神の優しさには感謝するけど、こんなきついことさせなくてもいいじゃない…………。前世の持久走大会なんて比にならない。多分、前世で走った距離の倍はもう走ってると思うよ俺。

 飯と鍛錬と風呂と団欒という生活を十五になるまで送ったおかげで割と剣士としては強めかもしれない。呼吸も使えるし、神も才能をくれたし。でも、鬼殺隊入隊だけは死んでもお断りだぜ!! 

「さぁ、もう寝るぞ」

「はい」

 そんな風に俺の一日は過ぎる。明日の鍛錬も嫌だなぁ。

 

ヒロインは誰がいい?

  • 綾香
  • 胡蝶しのぶ
  • 胡蝶カナエ
  • 真菰
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