コロナのせいで数学漬けで死んでしまいそうです。もう二度とチャートを拝みたくない…………。
今、俺は山を駆け回っている。こうやって走っていると瑠火さんを背負って山を突き抜けた日の事を思い出す。
「人肉ゥ〜。久方ぶりの人間だぁ!」
両腕を刃物のように変形させた鬼が現れる。鬼は俺に向かって飛びかかるが遅い。遅すぎる。そんな動きでは俺を捉えることは到底出来ない。勢いを落とすことなく鬼の頸に刀を振るい刎ね飛ばす。このレベルなら型を使用する必要もなさそうだ。落とされた頸が何か喋っているが聞いている暇はない。もっと、鬼を斬らなければ。
今日は最終選別三日目だ。一日目は真菰さんを上手く捉えて追いかける事ができたが、二日目に鬼数匹に囲まれて全員の頸を飛ばしている内に真菰さんを見失ってしまった。真菰さんはただでさえ足が物凄く速い。韋駄天の生まれ変わりかと思ってしまうほどの走力だ。そんな彼女を一度見失えば追跡は不可能。偶然を祈るしかない。
だから、作戦変更して鬼の頸をなるべく多く飛ばす事にした。そうすれば、真菰さんの消耗も抑えられるだろうし、最終選別を突破する人の数が増え、鬼殺隊の戦力増強にも役立つ。
しかし、真菰さんはこのまま放っておけば死ぬだろう。『アレ』の強さ自体は真菰さんには及ばないかもしれないがアイツは鱗滝さんの弟子に対しては非常に強い、というよりレスバトルに強めだ。
やばい。早く見つけないと真菰さんが危ない。
焦っても、焦っても真菰さんらしき人影を見つける事が出来ず三日目は終わる。
四日目に突入する。今日も今日とて見つからない。もしかして、もしかしてだけど奴と真菰さんはもう既に衝突してしまったのか? いや、だめだ。そんな事を考えるな。気が滅入って悪い事ばかり考えてしまう。鬼の脅威で命を落とすのは彼女だけじゃない。他の志望者を助ける事を考えて動こう。そうすればいずれ何処かで合流するかもしれないし。
五日目に突入する。もう一度作戦を変更する。真菰さんが見つからないなら先に奴の頸を刎ねてしまえ。奴は大柄で匂いも凄まじいらしいから一瞬で分かるはず。そう考えて探す。探す。探す。見つからない。あぁ、クソ! アイツデカいんだろ! どこにあんなデカい体隠したんだよ! 代わりに現れるのは雑魚鬼だけ。山中を駆け回っているおかげで何人もの隊士志望者の危ない所を助けることが出来た。それが唯一のいい事だった。
六日目に突入する。やっぱり今日も見つからない。これでもかというくらい雑魚鬼は出てくるのに目的の鬼は出てこない。当然、真菰さんも見つからない。本当に護衛対象を見失うSPが何の役に立つというのか。いや、何の役にも立ちはしない。…………これじゃ、ただのストーカーだよ……。もう、ストーカーでもいいから真菰さんに会わせてくれよ。
七日目に突入する。朝を迎えれば最終選別の終了だ。今日は空気がピリピリする。全身の毛が逆立つのを感じる。ヤバイ。俺の勘がそう告げている。昨日までは無かった感覚だ。これは真菰さんの命に対する警告じゃない。俺の命に対する警告だ。間違いなく奴は付近にいる。探そう。
凄まじい物音がする。木が折れる音。誰かが駆ける足音。足音は凄まじいスピードで移動している。良かった真菰さんは生きている。物音の方向に向かう。
「チッ、すばしっこいな」
身体中に手が無数の手が巻き付いた不気味で巨大な鬼は何本もの手を少女に向かって伸ばすが避けられてしまう。凄い! 俺が介入しなくてもこのままなら倒せてしまいそうだ。
「なぁ、知ってるか? 俺は鱗滝の弟子を食ってきた」
「ッ!?」
一瞬真菰さんの動きが遅くなる。駄目だ! 真菰さん、奴の挑発に乗るな! その声は届くはずもなく。手鬼に足を捕らえられてしまう。
「馬鹿だなぁ、鱗滝。厄除の面なんてもん彫っちまうから俺に喰われるんだ」
「鱗滝さんを馬鹿にするな!」
「馬鹿にするさ」
凄まじい剣幕で怒る真菰さんを見て更に喜ぶ手鬼。足を掴まれて真菰さんは宙ぶらりだ。そのまま宙ぶらりの真菰さんを別の手で掴む。
「弟子は鱗滝が殺したようなもんさ。お前も恨むんなら俺じゃなくて鱗滝を恨むんだな」
「殺してやる! 殺してやる! 絶対に許さない!」
そう言って足を引きちぎろうと力を入れる。真菰さんは涙を流す。表情は歯をキツく噛み締め、怒りが表情全てに現れている。
先程までは戦闘が激しくかえって邪魔になってしまうから介入出来なかった。しかし、戦闘の勢いが完全に止まった今なら入れる。
___空の呼吸 壱ノ型 蒼穹
力強く踏み込んで飛び出す。そして刀を振るうと青空が鬼の腕を切り裂く。手鬼は驚いたように目を見開く。真菰さんは斬り裂かれた腕と一緒に落下する。
「なんだ! お前!」
鬼は戸惑いつつも流石は歴戦の個体というべきか手を何本も伸ばしてくる。前方が埋め尽くされてしまう。中々、迫力ある光景だがそんなものじゃ俺の命はもぎ取れない。
___空の呼吸 弐ノ型 曇天・嵐気流
前方を強くなぎ払うと真紅の刀から流星の尾のように真っ黒な雲が流れていく。雲は腕を全て弾き飛ばした。
弾き飛ばされた腕以外にも数本残していたようでそれらを伸ばすが遅い。遅い。杏寿郎の剣よりも遥かに遅い。だが、これは本命じゃないな。真菰さんを脇に抱えて飛び上がる。地面からは手が伸びてくるが足りない。
「強いな。俺が喰った中でも五本の指に入る!」
「そりゃ、どーも」
脇に抱えていた真菰さんを下ろす。彼女も相当驚いているようだ。まぁ、当然だろう。死んでしまうと思ったら急に助かってしまったのだから。
「君は誰?」
「俺は一条銀。まだ鬼さんは元気だから話は後でな」
「うん。でも、一つだけ。アイツの頸は私が斬りたい」
彼女は涙を拭って刀を握り直した。全集中の呼吸が先程までは途切れていたが今はしっかりと成されている。
「もう、負けない。鱗滝さんの為にも、みんなの為にも」
そう言った彼女は決意が全身に漲っていた。
テンポについて
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速い
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ちょうどよい
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遅い