父親の会社が倒産、借金だけを残して両親とも蒸発。必然残った借金は血縁である子供に引き継がれ、葵は人身売買から化け物売買までしている澱切陣内という組織に商品として連れて行かれ出会った、美しき化け物に。
「この子は化け物を感じ取れるという子供ですか」
髪を縛った赤いリボンに眼鏡と黄色スーツを着た女性。
葵はその人物から今までも何度か感じた違和感を感じた。
「はい、私たちの商品探しに使えるかと」
「私は少しコレを様子見をしていきますので先に戻っていてください」
男は分かりました、と言って戻っていった。
牢屋に残ったのは、葵と女性の二人だけ。
相手が人間か化け物が分かる人間と、人間のフリをした化け物だけ。
「私をどう感じますか」
「…仮面をかぶった感じがします。愛想笑いしているような感じ……あと美人です」
「仮面をかぶったというのは、化け物を見つけた時に感じる感覚ですね。でも美人というのは?」
「あ、貴方がその綺麗だったので…その…恋をしています…」
これが
葵は愛という物が理解できなかった。
家族が大事というのは理解できた。
生まれた時から一緒に居て、社会という世界で唯一無二に無条件で助けてくれる存在。
友達が大事というのは理解できた。
人生という物語を色付かせる、日常を楽しく、意味のある物に変えくれる存在。
でもそれは存在として理解しているだけ。
学校でも一年が経ち、学年が上がりクラスが変われば友人も人間関係も新しく変えて、前に友人だった人も知人となる。
悪い言い方をすれば一年クラスで過ごすためのグループを形成する為だけに友人となっただけの他人。
そういう人付き合いをして生きてきた。
そんな中で人生の起点は父親の会社が倒産し、両親が蒸発。葵は借金の返済として人間から商品となり、鯨木かさねという初めての初恋の相手の所有物となった。
「葵、キスさせてください」
いつもの同じ表情でキスを要求してくるかさね。
「はいはい、どうぞ」
両手を広げて自分よりも背の高い、年齢不詳の吸血鬼を受け入れる。
頬に手を当てられ、貪るように愛を求められた以上の愛を返す。
その形がキスであれ、料理であれ、体であれどんな形であれ。
世間でいえば化け物に好きになるのは間違っているだろう、それでも葵は辞められない。一度知った蜜の味を忘れることなどできなかった。
それは鯨木かさねも一緒だ。
化け物と知ったうえで自分を受け入れた、葵はいくら自分が願っても手に入ることのなかった存在だ。
鯨木かさねという存在を取引で手に入れても居場所は手に入らなかった。
姪という存在を壊しても心は晴れなかった。
他人の商品として売って利益を儲け、金をいくら趣味に使って心は満たされなかった。
そんな時、偶然に偶然が重なって奇跡を呼んだ。
牢屋に閉じ込められた幼く親に捨てられ、借金のカタとして連れてこられて感覚的に化け物が分かる少年。
そんな少年はかさねに恋をしていると言った。
化け物にだ。
化け物と分かったうえで美しいと言った。
かさねはその言葉に僅かな期待をした。嘘なら捨てればいい、心を交わして人形とすればいいと思い手元に置いて見事に毒された。
毎日、笑顔で送られ、笑顔で迎えられ。求めた分だけの愛を返してくれる。
ある日、血を吸った。酒に酔い本能に負け欲求にままに首に噛みつき、歯を突き立て、血を吸った。
それでも少年は愛を口にした。
親に捨てられた化け物は、愛を知った。