オーバーロード in Infinite Dendrogram   作:(◕(エ)◕)クマネーサン

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原作開始前
第2話


―――チュートリアル 鈴木悟―――

 

 

 新たな世界で生きていく事を決めた悟はチェシャ達管理AIが運営するゲームの世界へ旅経つことになった。その為にまずやらなければならないことがあった。

 

「さて、早速アバター作成といこうか。デンドロでは大まかなアバター変更は後々出来ないからここでしっかり決めるんだよー。ベースにはリアルの自分の背格好や創作の登場人物なんかも使うことが出来るから。必要だったら言ってねー」

 

 そう言ってチェシャは手元のタブレットを捜査してポリゴン状のマネキンを悟の前に投影した。のっぺりとした起伏に乏しい顔に中肉中背の身体、そんなマネキンが腕を水平に広げ脚を肩幅に開いた格好は滑稽に見える。

 

「その辺は普通のオンラインゲームと変わらないんだな」

 

「自分の姿を少しだけ変えるプレイヤーも居れば、全く変えない強者プレイヤー。地球時間単位で一ヶ月かけた猛者もいたねー。動物の特徴を入れた獣人型アバターも可能だし、少ないけど僕みたいな動物型にしたプレイヤーもいたよー」

 

「自由度はユグドラシル以上に高いみたいだな…。リアルの自分をアバターにする事もできるって言ったけど、どうやって再現するんだ?」

 

「ちょっと原理は教えれないけど、プレイヤーの記憶を読み取ってそのマネキンに投影するんだー。企業秘密だからあんまり突っ込まないでねー」

 

「記憶を読み取る…なら俺がユグドラシルで使ってたアバターって読み取ることが出来るか?」

 

「ちょっと待ってねー。…って、これ本気ー?流石にこんなアバターを作ったプレイヤーは今までいなかったよー?」

 

「構わない、やってくれ」

 

「…ま、君がいいならいいけどさー」

 

 戸惑いつつもマネキンに悟の記憶から読み取ったアバターを投影するチェシャ。マネキンに投影されたアバターは全身骨格、人間として本来あるべき筋肉や内臓、皮膚に至るまで一切身につけていない、正真正銘骨だけの姿だった。

 かつて悟がユグドラシルで選択したアバターは【死の超越者】(オーバーロード)という、死してなお魔導の神髄を極めんとする≪異業種≫(モンスター)である。この姿でかつては魔王ロールを行い、所属ギルドの悪名と相まって『非公式魔王』の異名を頂いていた。

 

「これだとモンスターと間違えられてPK(プレイヤーキル)されちゃうんじゃないのー?」

 

「構わないよ。何も持っていない俺にとって、せめて思い出の中の姿だけでも形にしておきたかったんだ。…元の世界とゲームには決別したつもりだったんだが、女々しいかな?」

 

「…そんなことないと思うよー。君にとって大切な思い出なんだから、少しくらい残しておいてもバチは当たらないんじゃないかなー。PKもそうだけど、差別や偏見を受ける覚悟があるなら僕は何も言わないよー」

 

「それはユグドラシルで慣れてしまってるから大丈夫だ」

 

「プレイヤーネームはどうするー?」

 

「うーん…じゃあ『モモンガ』で頼む」

 

 それからアバター作成はサクサクと進んでいった。ユグドラシルのアバターと同じだから変更点は殆どなく、身長を少し変更して初期装備を肌が見えないものにするくらいで終わった。

 全身を覆い隠すゆったりとしたローブに、魔法使いが使う様な木製の杖を装備したアバターは、その白磁の骨格と合わさってモンスターの【死者の大魔法使い】(エルダーリッチ)にしか見えなくなった。その出来栄えに満足そうに見つめる悟に、何を思ったのかチェシャがとんでもない装備を付け加えた。

 

「骨の姿だけだと街に入れないからコレをおまけにつけてあげるねー」

 

「おまけ?ってこれは!?」

 

「君にとって思い入れの深いアイテムでしょー?ちょうど顔を隠せる装備だし、これなら普通に街に入れると思うよーきっと多分」

 

「だからってこれは無いだろ…嫌がらせか?」

 

 チェシャがおまけとして付けた装備、その名は『嫉妬する者たちのマスク』通称『嫉妬マスク』である。ユグドラシルで一年の内、聖夜と呼ばれる日に一定時間ログインしていると強制的に手に入ってしまう恐ろしい呪いのアイテムである。ユグドラシルが12年間だったが、悟は勿論12個持っていた。

 ギルドメンバーで持っていない者に対して、無理矢理持たされた者たちがこれを装備にてギルド拠点の中で追い掛け回したのはいい思い出である。

 

「思い入れ深いって…こんな呪いじみたアイテムを選ぶとかお前も性根が悪いな…」

 

「何の事かなー?これで【死者の大魔法使い】から【怪しい大魔法使い】にジョブチェンジ出来たねー。褒めて褒めてー」

 

「褒めるかっ!!記憶を読み取ることが出来るならこれがどんなアイテムか分かってるんだろ!!」

 

 チェシャの半ば嫌がらせに疲れ果てる悟。そんな悟を尻目にアバターに意識を移し替える作業に入るチェシャ。人間の時よりも少し高くなった目線に違和感を覚えつつも、アバターの慣らしをするモモンガ。ユグドラシルの時には無かった服が肌をなぞる感覚に驚く。

 

「本当に五感を完全に再現してるんだな。俺のいた世界だと五感の完全再現は脳が錯覚を起こしてしまう可能性があるという事で電脳法で違法となってるんだが」

 

「僕達が管理するデンドロではそんな事は一切起こらないよ、その辺は安心してねー。それじゃ、<エンブリオ>の移植を始めようか」

 

「<エンブリオ>?」

 

「<Infinite Dendrogram>最大の特徴、プレイヤーによって千差万別の進化をするオンリーワンの力。どんな進化をするかは僕らにも分からない。大まかなカテゴリーはあるんだけどねー」

 

プレイヤーが装備する武器や防具、道具型のTYPE:アームズ

プレイヤーを護衛するモンスター型のTYPE:ガードナー

プレイヤーが搭乗する乗り物型のTYPE:チャリオッツ

プレイヤーが居住できる建物型のTYPE:キャッスル

プレイヤーが展開する結界型のTYPE:テリトリー

 

「これら以外にもレアなタイプがいくつかあるんだけどねー。進化によって<エンブリオ>は複数のタイプを持つこともあるよー」

 

「へぇ、面白いな」

 

「それじゃ<エンブリオ>の移植を始めようかー。…はい完了ー」

 

「何か随分あっさりしてるな。もっと神聖で厳かな物かと思ったんだが」

 

「あはは、これはまだ卵の状態だからねー。『ち、力が溢れてくるっ!』みたいになるのは孵化するまで感じないよー」

 

 モモンガは白骨化した左手の甲に埋まった淡く輝く卵状の宝石をまじまじと見つめた。一見すると手の甲の骨と一体化しているような状態だが、がたつくことなく収まっている。

 

「説明を続けるよー。今は左手に移植して何の変哲もない第0形態と呼ばれる状態だけど、これが孵って第1形態になって初めてオンリーワンの<エンブリオ>となるんだ。<エンブリオ>が孵るまでは職業(ジョブ)に就いてレベル上げしていけばいいよー。職業は『下級職』『上級職』『超級職』に区分されていて、その国でしか就けない職業や条件をクリアしなければならない職業もあるよー。1人につき下級職は6つ、レベル上限は50。上級職は2つ、レベル上限は100。合計8つ500レベルまで就けるよー」

 

「複数の職業に就くことが出来るのか…。超級職っていうのは?」

 

「超級職に就くには厳しい条件のクリアと運の巡り合わせが無ければ困難なんだー。しかも各職に就けるのは先着1人だけ。その代わり強大なスキルが手に入って、レベル上限も撤廃されるんだー」

 

「成程…大体の流れは理解した。あとは所属する国だけなんだが…どこにしようかな」

 

 先程チェシャが投影した国の様子をじっくりと見なおすモモンガ。気になっているのはユグドラシルの原型となった世界樹の世界に酷似している国だが、機械国家で男の浪漫、ロボットが無いか探してみたい気もする。大海原を駆ける船で世界一周してみるというのも楽しそうだ。

 

「チェシャのオススメってどこだ?」

 

「そうだねー…『アルター王国』かなー。中世の騎士国家がモチーフになってる国だよー」

 

「これか…理由を言いてもいいか?」

 

「それはやってみてからのお楽しみってやつさー。まっ、損な事にはならないとだけ言っておこうかー」

 

 意味不明なチェシャの物言いに若干の不信感を抱きつつ、後々所属国家を変えることも可能だと知ったモモンガはアルター王国を選ぶことにした。

 アバター作成、<エンブリオ>の移植、所属国家が決まりいよいよ始めようとした瞬間、チェシャの雰囲気がガラッと変わった。

 

「さてモモンガ君、これから始まるのは君の手にある<エンブリオ>と同じく無限の可能性が広がっている。<Infinite Dendrogram>へようこそ。『僕ら』は君の来訪を歓迎する」

 

 


 

 

―――??? チェシャ―――

 

 

 モモンガ()を無事インフィニット・デンドログラムの世界へと送り出したチェシャ。彼が去った後の場所を暫く眺めていたが、手元のタブレットサイズのディスプレイ画面を操作して今いる場所とは違う電脳世界へと移動した。そこはチェシャ達管理AIのみが存在することを許される場所で、どんな手を使ったとしても他人がそこに侵入することは叶わない特別な場所である。

 普段は重大な事件でも起きなければ管理AIが集うことは無いのだが、今日は特別なことが起こり管理AIの1人が徴集を行ったのだ。現実世界ではない遠い先の未来、それもこの世界軸からは異なる世界からの来訪者があったのだから、当然といえば当然だろう。

 

(あの子からは危険な思想や悪意は感じられなかった。暫くは様子見をするべきかなー)

 

 そんなことを考えてると、続々と管理AI達が集まってきた。いつの間にか現れた円卓の席に座ると、チェシャ達を徴集した管理AI1号『アリス』が口を開いた。

 

「忙しい中集まってくれてありがとう。今日は急に徴集して悪かったわね」

 

「いや、今回ばかりは仕方ないんじゃないかなー?なんたって異世界転移してきたプレイヤーについてだからねー」

 

「そう言ってくれると嬉しいわ。早速だけどその彼について話をしましょうか。管理AI1号アリスはプレイヤー名『鈴木悟』アバター名『モモンガ』を即時抹殺処分することを提案するわ」

 

「なっ!?」

 

「だってそうでしょう?自由度の高いアバター作成が可能とはいえ、あんなモンスターの様な姿になるなんて…モンスターと間違われて誤射したら攻撃したマスターが可哀想だわ」

 

「あれは彼が望んで取った姿だ!僕達がそれを否定する理由にはならない!!」

 

「そもそも、異世界からの転生者とは我々の手に負える代物ではない。今は限定的に我々と同じ位置付けだが、何かの拍子で真の目的を悟られるわけにはいかない」

 

「なら彼がログアウトしている最中は僕の単一サーバーに隔離すればいい!その時は僕が四六時中監視する!」

 

「そぉれは難しぃいのではぁ?あなぁたの仕事は雑用担当、今後ワァタクシ達の中でももぉっとも多忙になるでしょぉ」

 

「でもっ…!しかし…!」

 

 いきなり悟の事を抹消しようとする事に同意する他の管理AI達をどうにか説得しようとするが、管理用AIの真の目的を果たす為、鈴木悟という異物を排除するべきだという事が最善の方法だというのは理解している。

 それでも、チェシャは鈴木悟というマスターに過去に囚われず今という時間を楽しんでもらいたいと願わずにはいられないのだ。悟と面と向かって話し、過去を知ってしまったチェシャに彼を抹消することは出来なかった。

 

「フフ、そんなに彼の事を守りたいの?彼に入れ込む理由が分からないわぁ、何がそんなに気に入ったのかしら?ならこうしない?」

 

「なに…?」

 

「彼には次代の■■として、世界に混乱を齎してもらいましょう。彼の見た目と、かつての世界で培った経験を駆使すれば■■になることは容易でしょう?その為に、彼には相応しい力を身につけてもらわなきゃね」

 

「なっ…!?そんなことをしていいと思っているのか!?職業はまだしも、エンブリオに対して過剰な干渉をするつもりなのか!!エンブリオはその人物の深層意識から生まれる偶然の産物、僕達が無理に干渉して捻じ曲げていい物じゃない!!」

 

「いや…むしろその方がいいかもしれん。■■になったとなれば、それに対抗する為に他のマスターが成長するための起爆剤になりえるからな」

 

「ジャバウォック!?」

 

 チェシャはそんな事は絶対にさせられないと必死にその提案を否定する。しかし他の管理用AIはアリスの出した提案に賛成する動きを見せる。結果的に、チェシャを除く全員がアリスの提案に賛成した。

 

「では、プレイヤー名『鈴木悟』アバター名『モモンガ』を次代の■■へ成長させるため、我々管理用AIの庇護下へ入れる、という事でよろしいかしら?」

 

「「「「「異議なし」」」」」

 

「じゃあ今日はもう解散ね。あぁ、安心して。それ以外に関しては不干渉を貫くと誓うわ。折角の異世界ですもの、四六時中監視対象になるなんて窮屈ですものね」

 

「…すまない、悟君っ…!」

 

 チェシャ以外いなくなった部屋の中、呟いた慟哭は誰に聞かれることもなく消えていった。

 

 

 




(●..●)<漸くゲームが始まる…長かった…

(◕(エ)◕)<私事とは言え申し訳なかったクマー

(◕(エ)◕)<今後も不定期掲載になるけど、よろしくクマー
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