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「おい知ってるか? 今グリフォン狩りが流行ってるんだってよ」
「あれだろ? レアの壊れ装備」
「未だに落ちたって聞いたことねーけどガセなんじゃねーの?」
「情報源が例の"店"らしいからな、間違いなく出る……はず」
「てめーも信じてねークチか、仕方ねーよなーこんだけ空振りだと」
「それでも挑みやすいし、しばらくは混みそうだ」
「ご苦労なこった」
冒険者ギルド本部、本部内の傍らにある酒場ではプレイヤーたちが食ったり飲んだりしながら話をしていた。
聞こえてくる喧騒の中から、面白そうな話を聞き分け、そいつを肴にこちらも酒を煽る。
「マスター、お代わり」
「はい」
グラスがひかれたと思ったら、すぐに新しいのが差し出される。
「流石」
「大したことじゃないですよ、特にあなたの場合は」
「そらそうか。初めて来て以来同じものしか頼まなかったしな」
「ふふ、おかげさまで一番上手く作れるようになってしまいまして。今では当店一推しとさせていただいてます」
「おーそりゃめでたい、めでたい祝いに追加で!」
「はい、どうぞ」
「くっそこれも予見済みかあ」
「ふふふ……」
ここのマスターとも長い付き合いだ。
しばらくして、俺は店を出た。
外は街の街灯やらを除けば真っ暗である。深夜というやつだな。
時計を確認すると、
思ったより時間が経ってなかったが、今は深夜なので特に予定もない。
贔屓にしている宿屋へ向かい、部屋のベッドへ入り込んだ。
機材を外し、一息ついた。
えーっとゲーム内は確か8倍速だったな。向こうで日の出ぐらいから活動しようと思うと……30分ぐらいかな?
軽くストレッチして、小腹空いたしなんか食べて、水分補給して、トイレ行って……まあそんな感じで時間潰せばいいや。
とまあ、こんな俺は現在31歳。無職。童貞。天涯孤独。
そして超を付けても許されそうなぐらいのゲーム廃人である。
名前はまだない。嘘です。
再ログイン。
ど平日の昼過ぎだと言うのに、プレイヤーの数はかなりのものだ。
お前ら働け。俺は働かん!
ゲーム内時間的には日が昇り始めた、まだ薄暗い街中にも関わらず人の行き来は激しい。
それはプレイヤーのみならず、キャラクターたちも含まれている。
キャラクターの大半は、日の出と共に目覚め、日の入りと共に眠る。
プレイヤーが直接関わり合うキャラクターは、24時間起きてる。ブラックすぎるわ。
まあモブとメインの差ってところか。モブの方が楽そうではあるが。
ちなみにさっきのマスターもブラック社員です。深夜に俺ことプレイヤーと喋ってたしな。
街中は騒がしいとは言え、街から離れていけば静かになっていく。
あの喧騒の大半は深夜から今までどっかで稼いできた奴らと、それを狙う商人プレイやってる奴らだ。
なんで街の外へ向かえば、賑やかさも遠ざかる。
ブラック門番に挨拶をしつつ、俺は外へ出た。
平原、平原、平原。地平線まで続いている。
ここは街の東口。ひたすら平原が続くエリアだ。
ちなみに南には森林、北には山岳、西へは広い街道と、拓かれた自然を見ることができる。
典型的な配置だと思う。まさにスタート地点って感じ。
実際スタート地点です。ゲーム開始時はみんなここから。
その中でも平原ってのは、出てくるのは雑魚ばっか、ドロップも美味しくない、そして無駄に広いと三拍子揃ったクソ狩場である。公式からもそれとなく言われてた気さえする。役に立たないとかなんとか……。
でも俺はここが好きなんだ。好きすぎてこの街をずっと拠点にしてるぐらいには、ね。
平原は相変わらずだだっ広くて、そしていつもの通り誰もいなかった。
攻略サイトに潜む検証中毒の
しかし、ほぼ全プレイヤーの中で多くて1人しか満たせないような特殊クエストとかもあって、細かいところはブラックボックスなようで。
とにかく、その攻略サイトにもボロクソ言われてる存在意義皆無の場所なわけだ。
でも俺は、ここが好きなんだ。ここに来たくて、スタート地点の……これさっきも同じこと考えてたな。とにかく好き。
さて、だったらどうしてこんな場所が好きで好きで堪らないのか。
理由は一つ。
僕もブラックボックス側のプレイヤーだからですね。
「これだけ離れれば誰にも見えないかな。そもそも【隠密】とか【無音】とか【気配希薄】とか色々併用してるし見つかることもないとは思うけど」
これらのスキル、結構強いんですよ?
少なくともスタート地点にいる奴が使えるものではないね。
「よし。《次元門解放》、いつもので」
あいよーってな幻聴を聞きつつ、《門》に入った。
この《門》も、トップシークレットスキルみたいなものですね。俺はブラックボックスのおまけでほんの少しだけ使うことができる。
というか俺の開く《門》は行き先が1つしかない。一部のプレイヤーが持つトップシークレットとしての《門》はだいたいこの1つだけって奴だ。
それだけでもトップシークレット扱いされているので、本当のこいつは、もっとやばい。つまりブラックボックス。
まあそんなことはどうでもよろしい。
門を通り抜けるとそこは、スライムだった。
「おっすーただいまー」
俺が声をかけた途端、多種多様なスライムが俺に押し寄せてくる。
押し寄せて、のしかかり、それはもう押し潰さんとばかりに集まる。
ここは『楽園』。スライムの、スライムによる、スライムのための世界だ。
スライム、と言われると割とたくさんのイメージがあるだろうが、ここのスライムはすべて水まんじゅうみたいな奴だ。ぷにぷにのもちもちでうちょーんもねじねじもできる。
しかもカラフル。たくさんのカラーバリエーションがある。
なんなら1スライムがマーブル模様みたいになってるのすらいる。
さて。
いい加減俺のブラックボックス、もといこのゲーム内にて所有者が俺しかいない固有スキルをお披露目しよう。
そう! 我こそはスライムの頂点に君臨するもの!
【スライム園の園長】である!!!!!