【園長】とは言うものの、特に管理をするようなことはない。大勢のスライムに導かれるまま『楽園』へ行き、遊んだりぼーっとしたりと気ままに過ごしている。
自分用に買っていた料理アイテムを一緒に摘むことはあるが、わざわざ食べ物を用意しなくてもいいのだ。
そもそもスライムにとって食事は娯楽であり、摂る必要はない。味よりもどこで誰とといったシチュエーションに重きを置くようだ。
……あるいは攻撃方法として喰らいつくことに使われている。俺は戦いたくはないんだけど。
さて、癒しを求めてゲームを始め、すぐに辿り着いた俺にとってもはやゲームは完結しており、やれレベルだスキルだステータスだ装備だレアアイテムだなんてもう全然興味がない。
そうすると、宿は『楽園』で済ませられるから費用0、必要なアイテムもないからなーんにもお金がかからなかった。
最初に貰えるお金は最終的に当時は遊びアイテムだった料理に全部使った。そしてしばらくしてから、満腹度なるものが実装されてしまったのだ。
満腹度はログイン中にじりじりと減り、行動を起こせば起こすほど減りも早くなる。数値がゼロになるとバッドステータスを患い、そこから時間経過で死亡する。
そしてデスペナルティを受けるわけだが、なんとこいつがリアル時間で1時間ログイン不能になるという恐ろしいものだった。
何が恐ろしいって、ゲーム内は時間の流れが現実の8倍。つまり8時間分の癒しタイムが持っていかれることになってしまった。
しかもゲーム内の俺は素寒貧で、換金できるアイテムも無く、初期装備だけで稼ぐ必要が出てきたのだ。
悪いことってのは他にもあって、当時の俺は未だにメンタルに難ありだったため、キャラクターはともかく、中身に他人が入ってるプレイヤーと関わりを持つことが不可能だった。
もっと言うなら近くにたくさんいるだけで挙動不審になるレベルだったので、冒険者ギルドすら使えない始末。
ギルドで発行される非戦闘クエストは受けられず、ソロ且つ初期装備、当然プレイヤースキルも無いのでゲームアシストだけで戦うという絶望感溢れる環境だった。
で、ソロだと当然時間がかかるために、その分『楽園』にいられる時間が減る。
で、満腹度問題を片付けるために動こうとしていることで満腹度の減りが通常より僅かに上がる。
しかしそれを回復するアイテムを稼ぐのに……という悪循環、負の連鎖、絶望の無限ループによって、ぶっちゃけ諦めた。
もーいーや死ぬまでスライムと遊んで死んだらリアルで寝て過ごすかとか適当に考えて、とりあえず実行した。
そしたらさ。もうあれよ。
俺がまずバッドステータスを負った時点でスライムたちがあわあわと焦り出して、もう死ぬって時はなんかもう目とか見当たらないのにみんな泣きそうになってて。
実際の俺はゲームシステム的に動けないだけであってその様子をただ見届けるしかなくて。
現実に帰ったらもう涙ぐちゃぐちゃで大変だった。
そして決意した。もうぜってー死なねえと。スライムたちを悲しませるわけにはいかんと。
ヘンな話だが、この出来事で俺は精神を少し立て直したんだ。
で、気を取り直してログインしたら普通に『楽園』でリスポーンしまして。
ああここセーフティエリア兼リスポーン地点になるんだなって思った矢先に四方八方からスライムが飛びかかってきて組んず解れつの押しくらまんじゅう饅頭と化した。
みんなに謝って、これからはちゃんと死ならないように、戦って稼いで帰ってくるって約束をした。
……が、信じてもらえず。俺にまとわりついたスライムは離れなかった。いや動けないんですけど?
倒れ込んだ俺の全身をこの可愛い饅頭たちに拘束されたまましばらくすると、なんだか非常にカラフルな集団が『楽園』の奥地からやってきた。
つまりいろんな色のスライムたちが。
で、さっきまで俺を包み込んでいたスライム達が急に退いて、そのカラフルさんが代わりに俺を文字通り包み込んだ。
火のように赤いスライムは右腕を肩から手首まで。
水のように青いスライムは左腕を同じく肩から手首を。
木の樹皮のような焦げ茶色っぽいスライムが首から頭を兜のように。
土のような色合いのスライムは右脚を付け根から足首まで。
金属を思わせる光沢を持つ鉄色スライムが左脚を同じく。
そして最後に、透き通って少しキラキラと輝いているスライムが、俺の前面背面を鎧のように覆った。
そして俺は、全身にスライムを装備したのだ。なんで?
なんで???