人修羅のヒーローアカデミア   作:ストラディバリウス

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再会と新たな仮説

 ああ、とうとう入学初日だ。先日は両親に非常に青いやり取りをしたわけだが、これに関してはもう開き直る事にした。この思春期特有の精神のブレも俺がまだ<ヒト>の範疇に納まっている証拠だと捉えるならば、受け入れざるを得ない。例え後日気恥ずかしくなって、まともに親の顔が見れなくなったとしても、受け入れるしかないのだ。

 

 

「くそ、せめてあのやり取りが入学前日だったら……!」

 

 

 過ぎた事を蒸し返しても仕方ないので、今直面している状況に目を向けてみよう。既に校舎は近く、早めに登校したと思っていたにも拘らず、結構生徒の姿を見かける。ちなみに手荷物は鞄だけだ、寮で使う荷物は事前に送ってある。片っ端から<アナライズ>を発動しながら適当に歩いていると、見慣れた人物が前方に見えた。実技試験中に出会った異様にキラキラした少年だ。

 

 

「あ、キミ!また合ったね☆キミも無事合格していたんだね、よかった!」

 

 

 どうやら結構心配していたようだ。気絶する前に最後に見たのが彼だったから、印象に残っている。

 

 

「試験の時は世話になった。遅くなってしまったが、ありがとう。」

 

「ふふ、何を言っているんだい。キミも身体を張って周りの受験生達を守ったって聞いたよ。そんなキミを助けるのは当然じゃないか☆」

 

 

 そう言いながら白い歯を煌かせながら髪を掻きあげる仕草は様になっている。まるで劇のワンシーンを見せられている気分だ。

 

 

「そう言ってもらえると助かる。自己紹介がまだだったな。阿久間……人修羅だ。」

 

「うん?なんだか変な間があった気がするけど了解だよ!僕は青山優雅、よろしく☆」

 

 

 正直自分のことを「あくまひとしゅら」と名乗るのは未だに抵抗がある。人修羅が自分の名前だっていい加減受け入れてはいるが、この名乗り方ではまるで俺が人ではなく<悪魔>だと認めてしまっているようで……理屈じゃなく生理的な嫌悪を感じる。

 

 

「じゃあアクマくん、よろしく☆」

 

「いや、その呼び方はアウトだ」

 

 

 往年のアニメ主人公のように呼ばれるのはノーサンキューだ。話し合いの結果、俺の事は人修羅と呼んでもらう事にした。付き合いもまだ浅い事もあり、青山は苗字呼びを拒否する理由は深くは突っ込んでこなかった。こちらとしては非常にありがたい。他に知り合いもいない事だし、青山と雑談を交えながら巨大な校門を過ぎる。

 近未来的なデザインの校舎やその規模に驚きはあったが、校内を歩き何とか一年A組に辿り着いた。まだ生徒はあまり揃ってないようだ。

 他に知り合いは……!?

 

 

「八百万!?え、いや、は?」

 

 

 一瞬勘違いかと思ったが、<アナライズ>は誤魔化せない。同じクラスの奥の席に座っているのは明らかに幼馴染で自称妹分の八百万だ。どういうことだ。彼女はお嬢様高校へ進学したんじゃなかったのか?おいおい、これから始まるんだぞ?ここが爆心地になる可能性が高いんだぞ?くそ、ダメだ、考えが纏まらない。

 

 

「あ、お兄様!やっぱりお兄様も合格していたんですね!」

 

 

 嬉しそうに顔を綻ばせて手を振っている。ああ、暢気に、平和そうに……

 

 

「うふふ、やりましたわ。お兄様をビックリさせる事に成功しました!

 実は推薦入学で一足先に入学が決まっていたんですわ」

 

「そ、そうか。これからも一緒のクラスで学べるのは嬉しいな。これからも宜しくな」

 

「はい!」

 

 

 俺は自然に笑えているのだろうか。巻き込むというなら先ほど自己紹介を済ました青山も同じな筈だ。しかし巻き込まないと安心していた気心の知れた相手がいきなり世界の命運を分ける戦いの中心地に訪れれば気も動転する。いや、<人修羅>と幼い頃から関わりがあった時点で運命に巻き込まれていた可能性もあるのか……

 

 

「おや、何だい人修羅くん。既にこのレディーと知り合いだったのかい?」

 

「ああ、幼馴染なんだ。地元が一緒でね」

 

「始めまして、八百万百です。よろしくお願いしますわ」

 

「青山優雅だよ。こちらこそよろしく☆」

 

 

 二人に内心の動揺を察せられても面倒だ。下手な言い訳を言っても、現在の不安定な精神ではボロが出そうな気がする。そうだ、今は悩むべきではない。ああ、くそ……最近心に棚を作る頻度が増えた気がする。今後起こりうる全ての懸念に対応していたら、いざと言うときに動けなくなりそうだ。自分の限界を見定めて、出来る範囲で対処していくほか無い。俺は万能でも、ましてや全能ではないのだから。くそっ、彼女が雄英に居る事さえルシファーの陰謀に思えてしまう。

 

 

 

………

……

 

 

 二人と簡単なやり取りをしている内にクラスの席が埋まっていく。何やら騒がしいグループもいたが、身内同士のじゃれあいらしく、騒動は無視して俺らは軽く互いの<個性>について紹介し合っていた。ここで驚いたのが青山の<個性>についてだ。

 まず俺が以前から立てていた仮説である<個性>≒権能と個人が持つ<名>の関連性に当てはまらない。試験の時に印象に残った事もあり、名前から彼の<個性>についての推測をしていたのだが、それらは見事に外れていた。苗字から自然由来の権能か、或いは名前の通り魅了のような権能を発揮しているかと思っていたが、実際には腹部から発光するエネルギーをビーム状に撃つ<個性>だという。

 

 しかも反動で体調不良を起こすおまけ付きだ。これを聞いた時、当初は俺の仮説に穴があるのかと思っていたが、彼が言うには稀に<個性>が本人に合わない場合があり、自分の体調不良はそのケースに当てはまりと言うのだ。

 

 つまりは、だ。その反動とやらは<名>と権能の間に齟齬が発生しているから起こる事ではないのか。神格を定義付ける<名>と本人が実際に操る権能が違えば不具合も発生するのではないか。俺が以前立てた仮説が正しいのなら、この新たな仮説も筋が通る。より核心に迫るためには他のケースも確認する必要はあるか。

 情報は力だ。今後起こるであろう時代の節目を乗り切るためにはより多くの情報を手に入れなければならない。懸念は増えるばかりだが、備えは必要なんだ。

 

 他愛無い会話を続けつつそんな事を考えていると予鈴が鳴り、ホームルームの時間が来たにも拘らず、担任の先生が見当たらない。不思議に思っていると寝袋がもぞもぞと入り口から侵入してきた。寝袋の中からは目の周りに深い隈を作った男が立ち上がった。

 強い。格上なのは確実だ。

 〈アナライズ〉が効かないため、レベルは感覚でしか分からないが、50前後だろうか?隙が見当たらない。

 彼は軽く騒いでいる連中を戒めると自己紹介を始めた。

 

 

「担任の相澤消太だ」

 

 

 周囲は唖然としているが、彼が教師である事がそんなに意外だったのか。彼から溢れるMAGから実力を測れないのだろうか。MAGの濃度もそうだが、奴の立ち姿は余りにも隙がなさ過ぎる。実戦経験豊富な戦士のそれだ。雄英に入るほどの力を持つなら少なくとも先生の実力の片鱗くらいは感じ取れる筈だが、最初の奇行と見た目のインパクトに惑わされているのだろうか。そもそもメガテンの登場キャラクターは一癖も二癖もある連中が多い。毎回驚くつもりが無いのなら皆も今の内に慣れたほうがいい。

 

 

「体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 

 有無を言わせないと言った感じで放たれた指示にクラスメートは慌てて動き出す。ついでに回りに軽く自己紹介をしているようだ。ヒーロー育成高校ともなるとまともな自己紹介もさせずにいきなり授業へと移行するのだろうか。しかし、この流れだと俺もクラスメート相手に自己紹介をすることになるのだろうな……

 

 

「人修羅だ。出来れば苗字の阿久間ではなく名前で呼んでもらえると嬉しい」

 

 

 これでどうだ。悪魔くんの悲劇を繰り返してはいけない。

 

 

「名前呼びなら兎も角、苗字を嫌がるなんて珍しいね。えと、人修羅君、でいいのかな」

 

「何か事情があるのかもしれない。あまり深く聞くのはマナー違反になるぞ諸君!」

 

「阿久間……?もしかしてあの人気ブランドの?」

 

「ああ、父がメインデザイナーを務めているが……よく分かったな」

 

 

 ピンク髪の少女が反応した。そうか、父さんのブランド、若者に結構人気が出てるんだったか。クラスメートが話題にしていたと今度父さんにメッセージを送っとこう。態度には出さないかもしれないけど、多分喜ぶだろう。

 

 

「そっか、親が有名だとヒーローになってもコネのお陰だとか色々勘ぐる人出てくるもんね」

 

「ああ、そう言う……すごい親がいるのは羨ましいけど複雑ー」

 

 

 何やら勝手に勘違いが始まってしまった。苗字呼びが嫌なのは確かなわけだし、無理に訂正する必要も無いだろう。

 騒がしくクラスメートと親交を深めつつグラウンドまで辿り着く。

 

 既にグラウンドで俺らを待っていた担任の相澤先生は静かに告げる。

 

 

「全員揃ったな。これから個性把握テストを行う。」

 

 

 

 新しい仮説の名前と権能の関係性の検証は思ったより早くできそうだ。

 

 

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