人修羅のヒーローアカデミア   作:ストラディバリウス

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クラスメートと仲魔

 個性把握テストとやらを始める前に相澤先生は「最下位が除籍処分になる」と言った脅しともとれる発言をした。生徒に発破をかけているのか、或いは本気で入学初日に厳しい受験を超えてきた生徒を追い出すつもりなのかは判断がつかなかった。

 そもそもフィクションでもなければ学校の一先生が自己判断で生徒を退学させる権利なんて無いはずだが、ここはメガテンの世界。何が正常であり、そうでないのかの判断をする為の基準が俺の中には足りない。そもそもこの雄英高校はヒーロー育成という特殊な場であり、他の学校との差異が想像できないのも判断基準の曖昧さに拍車をかけている。

 

 と長い前置きをしたが、結局やることは変わりはない。個性把握テストと大層な名前に身構えていたが、実際は体力測定と何ら変わらない内容のものであった。名前の通り、<個性>を使ってもいいと言う一点を除けばであるが。

 

 ここで問題となるのが俺の<個性>の汎用性だ。そう、<人修羅>の持つ<スキル>はどれもこれも癖が強く、多くが戦闘に特化している。しかも多少の汎用性を見せるスキル群も習得はまだ遠い。つまり、おれは素の身体能力で頑張るしかないのだ。

 幸い俺以外にも応用の利きにくい<個性>を持つクラスメートは数人居り、肉体のスペック上、俺が最下位になる可能性は非常に低い。ならばこれを機にクラスメートの<名>と<個性>を把握し、俺の仮説の補強をするとしよう。もちろん戦術や<個性>の応用を参考にすることは忘れない。前回の戦闘の時に自分には色々足りないことは把握済みだ。

 

 テストが始まってみれば、クラスメートはそれぞれ見事に自らの<個性>を使用、又は応用し、常人ではありえない記録を叩き出していく。その<個性>の種類も豊富で、放電や無重力発生、果ては透明化能力まで。まあ、流石に後者はこのテストに全く向いていない個性だが、本人は結構ガッツがあるらしく、女子にしては良い記録を出していた。

 

 驚愕したのは芦戸三奈だ。酸性の溶解液を分泌する<個性>は強力だが使いどころの難しい<個性>だが、問題はそこではない。最初に彼女の名前と<個性>を聞いた時、名前の意味と<権能>が一致していない為青山と同じく問題を抱えているかと思ったが、そんな素振りは一斉見せなかった。

 自分の仮説に疑問を持ち始めたとき、俺の脳裏に電撃が走った。そう、昔のヤンキーや暴走族が使っていた「夜露死苦」だ。これで「よろしく」と読む。酷い当て字だ。芦戸三奈、アシドミナ、アシド……アシッド。

 

 阿保か。

 

 馬鹿じゃないのか?なあ、馬鹿なのか?英語当て字もありなのか?俺はこれから英語にも気を付けながら<名>の分析をしなければならないのか?<アナライズ>する度に?戦闘中は恐らく不可能だ。神の権能はワールドナイズされていたのか。俺が古い人間なのがいけないのか。

 

 一気に疲れた気がする。しかしこのテストを通じて仮説は補強された。麗日お茶子は前述した触れたものを無重力にする権能の持ち主だが、名前を見るに当てはまっていない。そして案の定、能力を使いすぎると副作用で気分が悪くなるようだ。

 同じく緑谷出久、以前目に留まったオタクっぽい少年は自分の能力に振り回されており、指を骨折していた。<個性>を使用した瞬間、彼の体から溢れんばかりのMAGが溢れ出したのを確認した。身体が能力に全くついていけてないのだろう。彼の<名>からは自分が知る限り力に関係する<権能>は確認できなかった。彼もまたどこぞの強力な武神の権能に振り回されている人間なのだろう。

 

 MAGの話に触れたから補足しておくと、クラスメートを見て自分が如何に井の中の蛙であったかを認識せざるを得ない。今の俺を超えるMAGと圧倒的センスの持ち主、爆豪勝己。超攻撃的な性格と<個性>爆破を持ち、恐らく戦闘しても小細工なしには成す術もなく倒されるだろう。身体の使い方、個性の応用、どれを取っても他のクラスメートのレベルを大きく引き離している。MAGの総量、出力では他の追随を許さない轟焦凍。<個性>半冷半燃(氷しか使って見せていないが)も協力で本人も訓練を受けているのか身のこなしは常人離れしている。この二人は明らかに強い。アナライズでもレベルが不明と表示されているため、MAGの総量は俺を超えているのだろう。

 

 未だ複雑な感情を抱いている八百万に関してははMAG総量が俺に迫るものがあり、尚且つ応用力はピカイチだ。反則的な万能性を発揮するが、造り出せる無生物は彼女が分子構造まで把握する必要があり、今後は目指すヒーロー像に合わせて範囲を絞り、より強力で特定条件下で効果を発揮するものを選択していく必要がありそうだ。まあ、そんな展望とは無関係にこのテストでは一位は確実だろう。条件が有利すぎる。

 

 

 さて、他人を散々評価しておいてなんだが、俺は結果は平均より少し下だった。八百万は予測通り一位をキープし続けたようだ。俺の場合、身体能力は高いが、増強系の<個性>ほどではなく、更に<個性>を応用し好成績を収めた者には追い付けない。混沌王とは程遠い成績でホッとしていいのか、情けないと嘆けばいいのか……いや、他の権能の使い方、応用力を見れたのは大きな収穫だった。このテストで死ぬわけではないのだから、この経験から得られるものは全て自分のものにするくらいの貪欲さが必要だ。

 

 高校生活の始まりで今後真の意味でメガテンが始まるのなら、今の俺では力が圧倒的に不足していることは明白だ。前回の戦いで露見した応用力と経験の不足、クラスメート達から吸収できるのなら悪くはないが……どこまで彼らと交流したものか。

 

 成り行きで懐かれた八百万は別として、これまで俺は極力他者とは関わらないようにしてきた。下手に親密になって悲劇的な運命に巻き込む危険があったからだ。だがクラスメート達は俺と同じ学校に通っている時点で既に当事者だ。むしろある程度親睦を深め、互いの実力を高めあわなければ生き残れないかもしれない。

 

 いや、下手に親密度を上げて彼らの中から<メシア候補>や<カオスの体現者>が生まれてしまえば悲劇は避けられない。真・女神転生において序盤の仲のいい同年代は後半裏切り他勢力に加わるのはメガテンお約束の一つだ。今の所この世界で唯一神系カルト宗教の<メシア教>の存在は確認できていないが、思えば<個性>を持たない者と持つ者の確執、<個性>の使用を制限している社会への反発、ヒーロー制度そのものへの不信感など、燻っている火種は多い。これらが何らかの拍子に表面化した時、カルト的な勢力に代わる可能性は少なくない。

 

 そうだ、真・女神転生は基本悪魔の存在の介入があれど、大体の騒動は人類の内ゲバで始まるんだ。これまではどちらかと言えば自身の強化に専念していたが、社会情勢などについてより注意を払ったほうがいいかもしれない。ああ、面倒極まりない。

 クラスメートとの親睦にはもう一つ大きな懸念がある。あの喪服の女に渡された呪いのアイテム、<メノラー>だ。あれが発動すれば、ほぼ確実に周囲にいる俺の<仲魔>と認定されている者を巻き込んで魔人との戦闘空間に閉じ込められる。そう、<仲魔>だ。

 

 女神転生の醍醐味の一つ、悪魔を説得、或いは戦いで調伏し、<仲魔>として従えて戦略を練り、戦うのがメガテンというゲームの基本だ。

 ようは<悪魔>の仲間だから<仲魔>。ゲームでは契約によって悪魔が<仲魔>となる訳だが、この世界の<個性>を持つ人間は皆一種の<悪魔人>だ。仲良くするだけで<仲魔>扱いになるのか、誓約のようなものを結んで初めて<仲魔>となるのか。今は検証すらできる状況にないのが問題だ。下手に検証をしてクラスメートを<仲魔>にしてしまい、<魔人>との戦いに巻き込んだら目も当てられない。

 

 つまり俺は今後必要以上にクラスメートと仲良くせず、それでいて切磋琢磨し、互いに成長しなければならないことに……不可能では?

 

 そもそもクラス内を軽く観察して確認したが、明らかにコミュ力の高そうなのがチラホラいる。あれはこちらが深く干渉せずとも勝手に友達認定してくる奴らだ。放電の人や透明少女、件の英語当て字ことアシド嬢らはそんな気配を強く感じる。

 いっそ魔人戦に巻き込むのを前提に全員鍛えるか?いや、明らかに非戦闘系の権能を持つ人たちまで危険に晒す事になるし、こんなクソみたいな運命に道連れにするのは外道の所業だ。世界が今後混沌に飲まれていくのがほぼ確定な中学園生活を送り、更に<魔人>という懸念事項を増やす必要もないだろう。難しいかもしれないが、クラス内ではストイックなキャラで通して必要以上に仲良くなるのを避ける方向性で行くしかあるまい。

 

 

「お兄様!見ててくださいましたか?」

 

「八百万か……」

 

 

 期待の籠った眼差しでこちらを見つめているのはある意味俺の懸念にドンピシャで当てはまる幼馴染だった。彼女は俺の<仲魔>に認定されているのか?あるいは……!?

 今<マガタマ>が震えた気がする……!これはまさか、八百万と<仲魔>の契約を結ぶか問われたのか?冗談じゃない!!

 

 

「お兄様?な、何か問題でも?」

 

「い、いや。八百万は頑張ったのに俺は不甲斐ない成績だったからな。自分が情けなくて少し気が立っていただけだ、すまない。そしておめでとう、成長したな八百万」

 

 

 どうやら苛立ちが顔に出てしまっていたようだ。クソっ、ふざけるなよルシファー!

 いや、落ち着け……まだ確定じゃないが、<仲魔>の条件は俺が契約を結ぶ必要がある可能性が高まったんだ。彼女を巻き込む可能性は減ったんだ……本当に?

 

 

「わ、わたくしったらお兄様の気持ちも考えずに自分のことばかり……恥ずかしいですわ」

 

「八百万は俺に成長した姿を見せたかったんだろ。大丈夫、立派だったよ。俺のことは気にするな、今後成長すればいいだけの話だ」

 

「流石お兄様!その意気ですわ!」

 

「お前がさすおにって言うのか……」

 

「??」

 

 

 真・女神転生で<仲魔>になる条件は実は交渉や戦闘以外にも存在する。イベント上一方的に仲間になる悪魔もいるのだ。そもそも八百万相手に契約の有無を<マガタマ>に問われたということは彼女自身が<仲魔>になることを了承している事を意味している。

 何かの拍子で彼女が俺の<仲魔>になる可能性は確実に存在するのだ。

 

 

「ふふふ、でもこれからお兄様とまたクラスメートになれるなんて夢のようですわ。昔と違ってこれからはお兄様に頼ってもらえるくらい成長したことを見せてあげますわ!」

 

「はは、今日だけでも十分見せてもらったと思うがなあ」

 

「いいえ、今危険に陥ろうとお兄様は絶対に私を頼りません。あなたはそう言うお人ですわ。でも私が簡単に危険に陥ることはないくらい強い事を証明できれば、きっとお兄様は私を頼ってくれると信じています」

 

 

 言葉に詰まる。彼女は俺をよく見ている。いや、八百万は昔から勘が良く賢かったし、周りも見えていた。箱入りとはいえ、聡明な彼女は俺の心の壁を幼いながらに感じとっていたのだろう。結果、こうしてヒーロー育成高校まで追いかけて来たのだ。ある意味、彼女を巻き込んだのは過去の俺の無責任な態度が原因だったわけか……

 

 

「八百万、俺が他人を頼らないのはお前に落ち度があるからじゃあない。俺の心が弱いからだ。無理に俺に合わせようとするな。お前には自分の道を見つけて歩んでほしい」

 

「お兄様はいつもそうやって誤魔化すんですわ。でも負けません!必ずあなたに頼られるような女性になって見せますわ!」

 

 

 何を言っても今は聞く耳持たないようだ。

 俺はこんな調子で今後のメガテン的な破滅の未来と魔人の脅威に立ち向かっていけるのだろうか……?

 

 




次回更新は気長に待ってください。
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