1話 別れ、そして、出会い
「……そろそろ、行かなきゃな…。」
広い空が一望できる丘の上で、俺は隣に立つ少女に告げた。
「………うん……。」
今にも泣き出してしまいそうな顔で、少女は答える。
「おい、そんな顔をするなよ。そういうのはナシだって約束しただろ?」
「……でも、でもぉ…。」
少女の頬を伝う何かがあった。
涙だ
「ったく、しょうがないな。じゃあ、ほら。」
見ていられなくなった俺は、大事にしていたペンダントを首から外し、少女に差し出した。
「え、これって…。」
一瞬だけ、少女の涙がその勢いを止めた。
「これを預かっていてくれ、俺の大事な物だ。いつか必ず会いに行くから」
少女は再び涙を流してしまったが、その顔にはいつもの笑顔を浮かべていた。
「…うんっ!」
俺からペンダントを受け取り、自らの首に下げた。
「また、会えるよね!」
「あぁ、約束だ。必ず会おう。」
俺達は誓った。
必ずどこかで、また会うと。
この日の空は、遥か先の彼方まで、どこまでも澄み渡っていて。
上を見上げた俺達の視界を、鮮やかな蒼に染め上げていた。
あの頃は、怖いものなんて無かった。
絶望も、挫折も、一度もしたことが無かった。
俺はあの蒼い空に憧れ、手を伸ばした。届くことはなくても、
いつの日か、あの空を越え、どこまでも飛んでいける気がした。
でも、現実はそんなに甘くは無かった。高く積み上げた自信も、プライドも、一瞬にして打ち砕かれることを、この頃の俺はまだ知らなかった。
夢を見ていた。
俺と一人の少女との約束。どこか懐かしく、俺にとってはつい昨日のことのように思える。
「……ん」
窓から差し込む朝日が俺を現実へと引き戻し、俺は自室で目覚めた。
「…朝か。」
俺はゆっくりと体を起こし、そこで違和感に気付く。やけに視界が歪んでいる。瞬きと同時に、それは頬から顎へ伝う。
俺はようやく「それ」が涙であることを理解した。
「あれ…俺、何で…。」
もう夢の内容は思い出せない。俺は諦め、目に溜まった涙を拭った。ふと壁に掛けてある時計に目を移す。その時計が示す時刻は、7時56分。寝坊だ。
「やべっ!」
俺は慌ててベッドから飛び降り、制服に着替える。朝食を取る暇もなく、俺はバッグを抱えて家を出た。
「よし、行くか。」
今から走っても始業には間に合わない。しかし、俺の秘密兵器を使えばギリギリ間に合うだろう。
俺は素早く腕時計を操作する。途端、俺の体が浮かび上がった。
これが俺の秘密兵器、「魔法」だ。
全世界で魔法が使える人間は少数で、俺はその内の一人だ。そして、俺が通う学園は、所謂「魔法学校」というやつだった。
「よし、これなら間に合う。」
俺は学園に向かって一直線に飛ぶ。法律によって飛行速度に制限があるが、十分だ。
「それにしても、何にも無いところだな、此処って。」
それもそうだ、ここは日本の最南、沖縄県の中で最も小さい島なのだから。魔法が使える人間が少ないため、都会に学園を設立する必要がないのだ。
「東京にあるっていう、国内トップの魔法学校、行ってみたいなぁ…。」
東京の魔法学校は、エリートのみが集まる名門である。そのため生徒の数も非常に少ない。
「うちはまだまだレベルが低いもんなぁ。」
などと考えながら飛んでいると、ふと道路を走る人の姿が目に写った。
「あれ、うちの制服だよな…。」
走っているのは、俺と同じ「冷泉学園」の制服に身を包んだ女子生徒だ。懸命に走っているが、このままでは間に合わない。
「仕方ないな。」
俺は降下し、女子生徒の前へ降りた。
小説の投稿は初めてでしたが、いかがだったでしょうか?
誤字、脱字や分かりづらい箇所が多かったと思いますが、少しでも多くの方に読んで頂けたら幸いです。