the blue   作:N ignite

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だいぶ内容を考えるのが大変になってきて、投稿が遅れがちになってきていますが、変わらずに読んで頂けると幸いです。


11話 turning point

爽やかな風が、俺の頬を撫でる。

目を閉じ、それを体全部で感じる。

この時間帯、屋上には俺以外の人影は無く、俺だけが切り離されたような空間になっている。校庭からは朝練に励む野球部の声、校門の方からは挨拶を交わす生徒達の声が聞こえる。俺はフェンスの側に立ち、道路を一本挟んだ向こうに見える海をずっと眺めていた。群れを成して飛ぶカモメや緩く波打って白んでいる海原を見ていると、自然と心が落ち着いてくる。

「すぅ……、はぁ……」

軽く息を吸い、吐く。

「花宮さん………」

まただ。

気付けば、彼女のことばかり考えている。

飛んでいる時の楽しそうな顔、会話の途中でふと見せた笑顔、俺に飛び方を教えてほしいと言ってきた時のきらきらと輝いていた目。

それら全てが、とても印象深かった。

「花宮さん、来てくれるかな……」

花宮さんの机に置き手紙を入れてきたが、花宮さんはそれに気付いてくれたのだろうか。花宮さんが学校に来るまで待って、そのあと一緒に屋上に来た方がよかったのかもしれない。

「はぁ……」

失敗したな、と思い、ため息をついた。

その時だった

ぎぃぃ、と屋上の古びたドアが開く音が聞こえた。

「ッ!」

俺は息を呑んだ。

花宮さん……なのか?

振り返って確認したい。でも、体が動かない。足が固定されたように、硬くなっている。

こつ、こつ、と足音がこちらへと向かってくるのが聞こえる。

それに比例し、俺の心臓が大きく鼓動する。

やがて、その足音は俺の後ろでぴたりと止まった。

直後、

「流川さん」

俺を呼ぶ彼女の声が、俺の耳に届いた。

意を決し、ゆっくりと振り向いて、

俺は、言葉を失った。

朝日を受けた薄い桃色の髪が風に揺れ、花宮さんがそれを手で押さえる。

えへへ、と照れくさそうに笑い、頬を僅かに赤く染めるその姿は、言葉では言い表せないほどに綺麗だった。

しばらく呆然としていたが、やがてはっと我に帰る。

「机の中に入れてたアレ、読んでくれたんだ」

なんとか平然を装い、声を出すことが出来た。

花宮さんはこくりと小さく頷く。

「はい。………あの、流川さん」

「花宮さん、待って」

花宮さんの言葉を遮って俺が言う。

「は、はい?」

咄嗟の出来事に目を丸くした花宮さん。更に俺は言葉を繋げる。

「まずは、俺から話させてもらえないかな?」

どうしても、最初に謝っておきたかった。

もし軽蔑されようが、罵倒されようが、俺に出来ることは謝ることだけだ。ならば、先に謝るのが礼儀というものだろう。

「は、はい。どうぞ…」

花宮さんから了承を得て、俺は、

「花宮さん、本当にごめん!」

勢いよく、頭を下げた。

「え、えぇ!?」

驚きと戸惑いが混ざった花宮さんの声が響いた。直後、

「ど、どうして流川さんがあやまるんですか?」

「………へ?」

間の抜けた声が俺の口から零れた。予想外の事態に対応できずに硬直する。

「ど、どうしてって、俺が花宮さんに怖い思いをさせたから…」

俺は顔を上げようとして、そこで、

一筋の光が、彼女の足下へ吸い込まれていった。

一つだけじゃない。また一つ、二つと光が生まれ、落ちて、消えた。

俺はゆっくりと顔を上げた。落ちてきた光を目で辿り、その先の花宮さんの顔が、その目に溢れていた涙が、俺の視界を奪った。

「はなみや……さん」

声が掠れ、思うように喋れない。

涙を流し、嗚咽を吐き、それでもその目には、しっかりとした意志の力が宿っていた。

「流川……さん……。わ……私……、」

弱々しい声で、途切れ途切れに、彼女は俺に何かを伝えようとする。

俺はどう言葉を掛ければよいか分からず、せめて彼女の言葉を最後まで聞こうと決めた。

「私……怖かった………。男の人に…腕を掴まれて…、逃げられなくて……、何されるか分からなくて……」

花宮さんはあの時の恐怖を思い出したのか、肩を少し震わせた。

「でも…、あの時…、流川さんが…助けてくれて……」

「………………」

俺は黙って話を聞いていた。掛ける言葉が見つからず、ただ、彼女の言葉に耳を傾けていた。

「なのに…、なのに私……流川さんに…、ありがとうも…ごめんなさいも……言えてなかったから……」

花宮さんの涙が勢いを増し、止まることなく頬に流れていく。

「……ッ!」

俺はそんな花宮さんを見ていられず、その華奢な体を自分の方へ抱き寄せていた。

「ふぇ?……流川…さん?」

俺の腕の中で花宮さんの体がびくっと跳ねる。それでも、俺は力を緩めなかった。

「ごめん…花宮さん」

彼女の耳元で、そう囁く。

「俺があの時、もっと気を付けていれば…、もっと配慮していれば……、花宮さんがあんな辛い思いをすることは無かった。あんな怖い思いをすることは無かったんだ。」

そしてもう一度、

「本当に、ごめん」

俺は、そう囁いた。

「……がう」

震えた声が、俺の耳元で微かに聞こえた。

「………ちがうんです…流川さん」

「俺は、花宮さんが無事だったことが、何より良かったと思ってる。花宮さんは何も悪くないんだ。だから、謝らないで欲しい。」

俺の言葉を聞いていた花宮さんは、遂に我慢が崩壊し、俺の胸に顔を押し付けて勢いのままに泣き叫んだ。

俺はその小さな背中を優しく撫で、花宮さんが落ち着くまで抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

「ぐすっ。す、すみません。見苦しいところを見せてしまって…」

しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した花宮さんは、涙を拭いながら恥ずかしそうに言った。

「気にしなくていいよ。泣きたいときは泣けばいい。それに…」

俺は少しカッコつけた感じで言った。

「泣いた分、また笑えばいいよ」

「ふふっ、そうですね」

うん、やっぱり花宮さんは笑顔が一番だな。

そう思ったが、言うのは恥ずかしいので口にはしない。

「さぁ、そろそろ戻ろうか」

俺は入り口の方へ体を向ける。

「あ…、待ってください」

しかし、花宮さんが俺を呼び止めた。

「ん?どうかしたの?」

「えっと、ここから見える海を、もう少しだけ見ておきたくて」

フェンスの外を見つめ、花宮さんはそう答えた。

「……そっか」

俺はそれだけ言って、花宮さんの隣に立つ。

そのまま二人で、少しの間、海を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ杏花」

「……なに?藍」

「なんか、見てはいけないものを見てる気がする」

「奇遇だね、あたしもそう思ってたよ」

「…………戻ろっか」

「…………そだね」

 

 

 

そのあと、あの現場を覗いていた二人にさんざん弄られたのは言うまでもない。

まぁ、なんにせよ。

俺達の日常が、これから始まっていくのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば、「あつまれ どうぶつの森」が発売されましたね。やりたいと思っているんですが、予約するのを忘れていて、買えるか分からない状況になってしまいました(T_T)
あつ森やりたい(切実)
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