「へぇ、まさか湊が部活を始める日が来るとはな」
時は放課後。
昼休みに部活について話し合った俺達は、早速行動に移っていた。
まぁ、主に動いているのは俺と杏花だけなのだが…
まず俺は如月先生のところへ行き、部活を立ち上げることについての報告、そして部活の顧問になってもらおうとしていた。
杏花は、知り合いだという生徒会の先輩のところへ部室の相談。その他のメンバーは職員室の前で待機させ、俺が代表して職員室へ乗り込んだ。
「一体どういう風の吹き回しだ?お前は今まで部活に興味を持った様子は無かったようだが?」
俺は如月先生に部活を立ち上げること、その部活は「スペルリサーチ部」と名付けたことを説明した。
「別に何かあったわけじゃないですよ。ただ、皆と何かをやろうって話し合ったんです。」
俺も以前から皆と何かやってみたいと思ったことは何度かあった。まさか、部活という形になって現れるとは想像していなかったが。
「そうか。でも、私にわざわざ報告しに来ただけじゃないだろ?」
「うっ…」
相変わらず勘の鋭い人だ。俺の考えてることが読まれてるような気分だ。
「実は、如月先生に部活の顧問をお願いしたくて」
「顧問?それはまた、何で私なんだ?」
俺は正直に、思ったことを伝えた。
「俺は、如月先生に教わりたいことがまだ山ほどあるんです。でも、俺はあの時、先生の期待を裏切った。先生が差し伸べてくれた手を、振り払ってしまった。そんな俺が、今さらこんなことを言うのは筋違いかもしれません。」
7年前、空を飛び始めた頃は、毎日が楽しかった。あの頃はエアリアル・スペルどころか、どの魔法もろくに使いこなせず、その度に如月先生に泣きついてやり方を教わっていた。日を重ねる毎に、様々な魔法を使えるようになり、それがとても嬉しかった。如月先生は俺の成長を自分のことのように喜んでくれた。
「湊……」
如月先生は真剣な顔で聞いてくれていた。俺は更に言葉を続ける。
「俺は、いや。俺達は、まだまだ成長できます。でも、俺達だけの力じゃ到底無理です。俺達は、皆で一緒に成長したいんです。だから、お願いします。」
そう言って俺は、深く頭を下げた。
「………」
訪れた静寂。
通りすぎる1秒1秒が、恐ろしいほどに長く感じる。やがて、はぁっと苦笑交じりのため息のあと、如月先生が口を開いた。
「お前は、私が思っていた以上に成長していたようだな」
優しく包まれるような声色。
俺はゆっくりと顔を上げた。
「分かった。その部活の顧問を、私が引き受けよう」
「ほ、本当ですか!?」
「お前が私の教えを求めているのなら、それに答えなければな」
如月先生はマグカップを手に取り、コーヒーを啜った。
「で、もう部室は見つけてあるのか?」
「まだ決定はしてませんけど、杏花が探してくるそうです。」
「そうか」
軽く頷き、言葉を続けた。
「なら、部室が決まり次第、またここへ来い。」
「はい。分かりました」
先生はデスクの引き出しを開け、一枚の紙を引っ張り出す。
「あと、これに部員と顧問、部室の名前を書いておけ。申請に必要だからな」
俺はその紙を受けとり、再度深く頭を下げて職員室を後にした。
「湊、うまくやってるかなぁ」
「流川さんならきっと大丈夫ですよ」
「花宮センパイの言うとおりっすよ!アニキはきっとやってくれます!」
「でも湊って危なっかしい部分あるじゃん?」
……俺がいない間に好き勝手言われてた。
「誰が危なっかしいだって?」
「そりゃあ湊が………って湊!?いつの間に!」
藍の背後にこっそり移動し、驚かすように声をかけた。
案の定、驚いた様子をみせる藍。
「おかえりなさい流川さん。それで、如月先生は何とおっしゃってましたか?」
「顧問は引き受けてくれたんですか?」
連続で問いかけてくる二人に、俺は答えた。
「あぁ、如月先生は顧問を引き受けてくれることになった」
そう言い、先ほど先生から渡された紙を見せる。
「じゃあ、あとは部室ですね!」
「杏花がうまくやってくれることを祈るしか無いな」
そのあと、俺達は一度教室へ戻り、杏花と合流することにした。
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