というか今のペースだと完結までに50話は余裕で越えてしまいそうです。長くなるかもしれませんが、最後までお付き合い下さい!
では、18話どうぞ!
「いいぞ!昨日よりもバランスが安定してる。……よし、一旦降りてきてくれ」
「はーい!」
俺の呼び掛けに応じ、ゆっくりと高度を下げ、両足で着地する。
「ふぅ…、どうでしたか?」
「驚いたよ。まさか三日でここまで上達出来るとはね」
飛行術の練習を始めてから今日で三日目になるが、花宮さんは驚くべきスピードで上達し、今では当初の目標である離陸から上昇、高度の維持と下降、そして着地を難なくこなせるまでに成長していた。
「やっぱり、"それ"があると安定してるみたいだね」
「はい!すごく助かってます!」
俺の言う"それ"とは、俺が今まで使っていた腕時計である。この腕時計には秘密があり、それは「モバイルバッテリーのように魔力を溜め込み、それを己の魔力として使う」ことが出来る、ということだ。花宮さんの魔力が平均より少ないという問題をこれ一つで解決することが出来たのである。
「それは良かった。その腕時計は花宮さんがそのまま持ってて良いからね」
「い、いえ!こんな高そうな腕時計、頂けませんよ!」
ぶんぶんと首を振る花宮さん。
「あはは!実はそれ、俺が作ったものなんだ」
俺は思わず笑ってしまった。
この腕時計は俺が中学の頃、一から自作したものだ。何度も失敗し、その度に作り直し、如月先生の力を借りてやっとの思いで完成させた思い出がある。
「えぇ!これ、流川さんが作ったんですか!?あまりに精巧だからお高いやつかと…」
「まぁ売り物じゃないんだし、俺にはもう必要ないから花宮さんが使ってくれた方がいいと思うんだ」
花宮さんはしばし悩む素振りを見せるが、
「分かりました。そう言ってくれるのなら、ありがたく使わせていただきます」
そう言って左の腕に着用しているそれを、優しく指先で撫でた。
「じゃあ、少し休憩したら再開しようか」
「はい!」
俺はそう言って花宮さんにスポーツドリンクのボトルを手渡す。花宮さんが受けとり、キャップを開けて中身を三分の一ほど飲む。
「よう、二人とも頑張ってるか?」
後ろから聞こえた砂を踏む音と声に気付き、俺達は揃ってそちらに視線を向ける。
「あっ!如月先生!」
花宮さんが俺よりも早く声をあげた。
相変わらず教師というイメージから掛け離れた派手な服装の如月先生がこちらに歩み寄る。
「先生、どうかされたんですか?」
普段は職員室にいるはずの如月先生がここに来るのは始めてのことで、俺はつい身構えてしまう。
「なに、一応顧問として部活の様子は見ておかないとな。それで、どうだ?飛行術の練習は順調か?」
何故俺達が飛行術の練習をしていることが分かるのか疑問であるが、如月先生の前では嘘や隠し事は通用しないことを思いだし、自分を無理矢理納得させた。
「はい、とても初心者とは思えない上達ぶりです。たった三日でハイアップ、ステイ、ローダウンを完璧にこなせるようになっています」
俺の言葉に先生は愉快そうな顔で答える。
「そうかそうか、それは凄いな。確か湊のときは一週間もかかったな」
「うっ…。せ、先生の説明が雑すぎたんですよ。ドーンとかバーンとか、訳の分からない言葉ばかりでしたから」
事実、如月先生の教え方は分かりやすいとは言えたものじゃない。逆にその説明でよく飛行術を習得出来たものだと自分を誉めたい。
「ふふっ。ほんとにお二人は仲良しですねぇ」
直後、俺達のやり取りを聞いていた花宮さんが漫才でも見ているように笑いだした。
「あぁ、私と湊は昔からの付き合いだからな」
「確かに付き合いが長いのは認めますけど。……それで先生?何か用事があったんじゃないですか?」
肩を組もうと伸ばしてくる手を避け、俺は尋ねた。
「おぉ、そうだった。すっかり忘れてたよ」
「そこはちゃんと覚えておきましょうよ…」
呆れてはぁっとため息をつく。
「あはは……」
花宮さんは俺の隣で苦笑した。
「実はな、お前たちに提案があるんだ」
「「提案?」」
俺達はぼぼ同時に同じ言葉を口にした。
「提案って、一体何のですか?」
俺の問いに先生は軽く頷き、
「お前たち、SCを知ってるか?」
"SC"というワードに俺の眉がぴくりと反応する。一方、花宮さんは分からないといった様子で先生に聞いた。
「先生、SCとはなんでしょう?」
「spell collision(スペル コリジョン)、通称SC。魔法を使ったスポーツの一つだ」
━━spell collision━━
魔法の存在が科学的に証明されてから二年後、今から30年前正式にスポーツとして認められた競技だ。通常五対五で行い、フィールドはサッカーのコートとほぼ同じ大きさで、相手を全員続行不能状態にするか試合時間20分が経過した時点で続行不能状態の人数が少ない方が勝利となる。
「……とまぁ、こんな感じだ。どうだ?やってみないか?」
先生の説明を楽しそうに聞いていた花宮さんは目をキラキラと輝かせた。
「魔法を使ったスポーツ……!やってみたいです!」
やる気十分な花宮さん。だが、一つ問題があった。
「でも、杏花は魔法の実技が不得手です。あいつはマネージャーの方が向いていると思います」
「となると、もう一人部員がいるな。」
俺はしばし考えるが、誰も心当たりのある奴はいない。
「あとで藍と瞬にも聞いておきます」
「あぁ、頼んだぞ」
それだけ言って、如月先生は身を翻した。
「じゃあ、私はまだ仕事が残ってるから行くことにする。頑張れよ、花宮」
「はいっ!」
先生は背中を向けたまま、スムーズな動作で飛び、校舎の方へ戻っていった。
「あの、流川さん」
少しの休憩の後、練習を再開しようとした時、花宮さんが俺を呼んだ。
「ん?どうかした?」
花宮さんは俺の目を真っ直ぐに見据え、強い視線を向けている。
「流川さん、本当はSCをするのに反対なんじゃありませんか?」
「ッ!」
俺は息を呑んだ。まさか花宮さんにそんなことを言われるとは思っていなかったのだ。
「……どうして、そう思うんだ?」
聞きたくなかった。でも、自然と口が動き、俺は無意識に聞き返していた。
「なんとなく、なんですけど、如月先生がSCの事を話し始めた時、流川さんの表情がよくなかったというか……」
「…………ははっ」
俺は自嘲するように小さく笑い、
「まさかそこまで顔に出てたなんて……。その通り、俺はSCをするのは反対なんだ。反対、というかやりたくないんだ。俺の我が儘だけどね」
「…それは、どうしてですか?」
いつもの俺なら答えることは無かっただろう。しかし、俺は吹っ切れたように言葉を繋いでいく。
「トラウマなんだよ。……実は、俺はSCの経験者なんだ。6年前、俺に飛行術を教えてくれていた如月先生に誘われて始めたんだ」
「………………」
俺の言葉を、花宮さんは静かに聞いていた。何かを聞こうとする様子も無く、ただただ俺の話に耳を傾けていた。
あの時の事を思い出すと、胸が痛くなる。頭が熱くなり、脳が俺に「思い出すな」と命令しているようだ。
もう思い出すことは無いと思っていた。
もう思い出したくなかった。
過去の記憶が鮮血のように溢れ、俺はゆっくりと口を開き、その一言を告げた。
「俺は━━━━━」
如何だったでしょうか?
内容の殆どは「魔法があったらこういう学校生活を送りたい」とか、「魔法でこんなことをやってみたい」といった私の妄想なので、やはり適当です。
次回の更新の前に、キャラクター紹介をまとめて投稿したいと思っています。キャラが分かりづらい、もっとこのキャラを詳しく知りたい、という方がいらっしゃると思うので、各キャラクターを出来るだけ詳しくまとめておきますので、是非そちらもご覧下さい。
〈次回予告〉
明らかになる、少年の過去━━
少女は、知らなかった。
彼の苦しみを、抱え込んだ闇を━━
少年は、知りたかった。
次回「真実」
では、また次回お会いしましょう!