the blue   作:N ignite

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お待たせしました!今回はいつもより少し長めになっています。
そう言えば、前回のキャラ紹介、如何でしたか?
これからキャラクターをもっと増やすつもりなので、その都度キャラ紹介を挟みます。是非そちらもご覧下さい。

では、19話どうぞ!


19話 真実

「俺は、病気を抱えているんだ」

短く、はっきりと、

俺は言った。言ってしまった。

「え…………」

目を見開いた花宮さんの口から溢れたそれは、声になっていなかった。

「病名は『魔力衰体症』。発症したのは五年前、俺がSCの選手として葵葉さんのチームで活躍して二年目のことだった」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

その日も俺は、葵葉さんのチームの一人として、戦っていた。

『皆、今日もいつもどおり、落ち着いていこう』

チームのリーダーである葵葉さんは、いつも皆を気遣い、まとめあげていた。

『よっしゃ!この試合に勝ったら、とうとう世界へ行けるんだな!燃えてきたぜ!』

皆よりも体が大きく、引き締まった筋肉を持つ男の人(皆からはゴリという愛称で呼ばれている)。彼もこのチームのメンバーで、頼れる兄貴的存在だ。

『楽しみなのは分かるけど、少し落ち着けよ。湊が真似したらどうするんだ』

妙なポージングをとるゴリを見ながら俺の頭に手を置き、冗談半分で話す男性。

『そんなことしないよ。藤兄は俺のことなんだと思ってるのさ』

頬を膨らませ、頭に乗った大きな手をどかす。

『ははは、すまんすまん。湊が緊張してるんじゃないかと思ってな』

『もう…』

なおも愉快そうに笑うこの人は藤川頼斗(ふじかわ らいと)。因みにゴリの本名は本田剛明(ほんだ たけあき)。どちらも22歳と俺よりも10歳年上だ。

『まぁまぁ、二人とも湊くんの緊張をほぐしてあげたかったのよ』

ゆったりとした声で話す女性の名は神田奈々美(かんだ ななみ)。優しいお姉さんといった印象が強いが、試合となると一転、とても頼もしい存在となる。

『お、俺は別に緊張なんかしてないよ!』

俺の言葉などお構い無しといった様子で執拗に俺の頭を撫でる。俺は耐えられなくなり、奈々美さんから逃げて葵葉さんの後ろに隠れる。

『皆、湊をいじめるのはこれくらいにして、そろそろ作戦の確認をするぞ』

葵葉さんの言葉に、皆の顔が一斉に引き締まった。

『相手は全国の常連だ。なめてかかると一気にやられてしまう。そこでだ』

葵葉さんは真っ直ぐ俺を見た。

『まず私と湊が突っ込んで相手を撹乱する。私が一人くらいは相手をするから、皆は特に湊のサポートをしてくれ』

『えぇ!そんな重要な役割を、俺が…?』

もし俺が失敗してしまったら、一気に差をつけられてしまう。そんなプレッシャーが俺を襲う。

『心配するな湊。俺達がお前をサポートしてやる。なぁ皆?』

『おう!俺達に任せとけ!』

『大丈夫!心配しないで!』

藤兄の問いかけに快く応じる二人、今更ながら仲間の頼もしさを改めて実感する。

『うん、わかった!俺、やるよ!』

『よし、皆』

葵葉さんの合図で皆が水平に拳を突きだす。俺は皆よりも背が圧倒的に低いため、やや斜め上に拳を付き出す形になる。

『勝つぞ!』

葵葉さんのピンと張った弓の弦のような声が響く。そして、

『『『『おう!』』』』

俺達は、一つになった。

 

 

 

 

 

 

『湊!細かい動きで相手の魔法を避けるんだ!』

『うん!』

葵葉さんの指示に従い、縦に横に蛇行を繰り返し、飛んでくる魔法を次々に避ける。

しかし、

『うっ!』

俺は魔法をかわしているのだが、それはいつもギリギリで、常に紙一重だ。

『(何で……、こんなはずじゃ……。)』

俺は内心で焦っていた。あんな程度の魔法、余裕で避けられるはずだったのに、何でこんなにギリギリなんだと理解できなかった。

『うおぉぉぉっ!!』

俺と葵葉さんが作り出した相手の隙を逃さず、ゴリが自慢の炎魔法を大規模に展開させる。

『はあぁぁぁっ!!』

それに続くように藤兄の雷魔法が地を這い、相手の選手に容赦なく襲いかかる。

『やぁぁぁぁっ!!』

絶えず魔法の標的となる俺と葵葉さんの身体を、優しい光が包む。奈々美さんの魔法によって俺達の傷付いた身体から痛みがみるみる内に消えていく。

『湊!行くぞ!』

葵葉さんが俺に合図を送る。

『う、うん!』

俺は答え、慌てて葵葉さんの隣へ並び、二人同時に風魔法の準備を始める。大きく旋回し、まとまって陣形を組んでいる相手に突撃する。

『せやぁぁぁぁっ!』

『はあっ!』

俺と葵葉さんの掛け声が重なり、俺は右手を、葵葉さんは左手を突き出した。次の瞬間、巻き起こった暴風が相手の陣形を崩し、隙を晒した身体に向かって風の刃が振り下ろされた。

轟音と共に砂煙が上がり、俺達は結末を待った。

やがて砂煙が晴れ、俺達が目にしたのは、五人の倒れている相手選手。同時にホイッスルが甲高く鳴り、電子掲示板には「WINNER 〈ETERNAL BLUE〉」、つまり俺達の勝利が写し出されていた。

『や…、やったのか……?』

疲労困憊の身体から声を絞り出す。直後、俺の肩に細い手がそっと置かれた。

そちらを見上げると、額に僅かな汗を浮かべた葵葉さんが優しい微笑を見せていた。そして、葵葉さんはゆっくりと頷いた。

『や………、やったあぁぁぁぁぁ!!』

俺の心は喜びに満ちた。両手でガッツポーズをとり、叫びだす。

『湊ぉ〜〜〜っ!』

大声で俺の名前を呼ぶゴリに続いて藤兄、奈々美さんが駆け寄ってくる。

『うおぉぉぉぉ!湊ぉぉ!』

『やったな!湊!優勝だぞ!』

号泣するゴリと爽やかな笑顔を見せる藤兄が俺の身体を持ち上げて胴上げをする。

『よく頑張ったねぇ!お疲れ様ぁ!』

ゴリ程ではないが目元に涙を浮かべた奈々美さんが俺の頭を撫でる。

俺はしばらく、仲間達と勝利の喜びを共有していた。

ふと目に写った、少し離れた場所でこちらを見守る葵葉さんの顔は、喜びと淋しさが入り交じったような複雑なものだったが、俺はまだその理由を知らなかった。

 

 

 

『湊』

大会も無事終了し、俺達はそれぞれ帰路を辿ろうとしていた時、不意に葵葉さんが俺の名前を呼んだ。

『葵葉…さん?』

俺は普段の優しい声色とは違う、少し硬い声に戸惑いながら振り向いた。正面に立つ葵葉さんの表情はとても真剣なもので、俺は思わず身構えてしまった。

『湊。今から私と病院に行こう』

『え……、えぇぇっ!』

俺は理解が出来なかった。俺はどこにも怪我をしていないというのに、何故病院へいかなければならないのか。

『葵葉さん。俺、どこも悪くないよ?』

『いいや』

葵葉さんは首を横に振って即答した。

『お前は気付いていないんだ。自分の身体に起きている異変にな』

『俺の身体の……、異変…?』

背筋のあたりがゾッとした。握りしめた拳には汗が滲んでいる。

そこで葵葉さんはいつもの優しい表情に戻った。

『何もなければそれだけのことさ。さぁ、行こう』

そう言って差し出された手を握り、俺は葵葉さんと共に近くの大きな病院へ向かった。

 

 

 

『次の方、どうぞお入り下さい』

医師に促され、俺は葵葉さんに続いて診察室に入った。

『本日は、どうされました?』

椅子に座ると同時に聞かれ、答えたのは葵葉さんだった。

『えぇ、実は……』

そこから先は、12歳の俺には到底理解できるものではなかった。俺の不安は一層強まり、医師と葵葉さんのやり取りを固唾を呑んで見ているしかなかった。

『そうですか……』

区切りがついたようで、医師は視線を葵葉さんから俺に移す。

『では、一度検査をしてみましょう』

俺は医師の隣に立つ看護婦に連れられ、数ある部屋の一つに入った。

身体のあちこちに吸盤のような電極を貼られ、力を入れたり抜いたりを繰り返した。

やがて検査が終わり、電極を全て剥がし、その部屋を後にした。

途中でトイレに寄り、用を足したあと、先程の診察室に向かった。ドアのを開けようとした時、中から医師と葵葉さんの話し声が聞こえてきた。

『もし、湊がそうだとしたら、治ることはないんですか?』

葵葉さんは焦った様子で医師に問いかけた。葵葉さんが焦っているのを見るのは始めてで、俺はドアの前で立ち尽くしていた。

『何しろまだ身体が未成熟ですからね…、治るにはかなりの時間がかかります』

『そう……ですか………』

俺は恐る恐る、ドアをゆっくりと開けた。

『湊…、検査は終わったのか?』

『うん……』

それ以外は言葉を交わすことなく、ただ検査の結果を待った。

 

 

『すみません。お待たせしました』

10分程が経過し、一枚の紙を手にした医師が戻ってきた。

『それで、結果は?』

俺よりも先に葵葉さんが反応し、医師は重々しく口を開いた。

『……やはり湊君は、魔力衰体症であることが判明しました』

聞いたことの無い単語に、俺は首をかしげる。

『そ……そんな………!』

葵葉さんはその単語を聞いた瞬間、椅子から勢いよく立ち上がり、絶望したかのように目を見開いた。

『なんとか、治らないんですか…?』

医師は首を横に振った。

『今の医療技術ではどうにも……。自然に治るのを待つしかありません』

俺は隣に立つ葵葉さんの袖をぎゅっと掴んだ。

『湊……』

すると、葵葉さんは少し落ち着きを取り戻し、再び椅子に腰を下ろした。

『そうか…、一番辛いのは……湊だもんな…』

そう呟いて、俺の頭を優しく撫でる。

『湊、よく聞いてくれ』

『う、うん』

俺の理解が追い付かないまま、葵葉さんは説明をした。

『お前は、SCを辞めなければいけない』

『えっ…………』

それは、俺にとって一番残酷な事実だった。

『な…、何で!?俺、SCを辞めたくない!』

俺は声を荒げ、否定した。

俺にとってSCは生き甲斐で、葵葉さんや皆と出会えたきっかけだ。そんなSCを手放すなんて、俺には出来ない。

『私だってそうさ……。お前と一緒にSCをしたい…。一緒に戦いたい……』

『じゃあ…何で……』

葵葉さんの視線が、俺を真っ直ぐに捉える。

『魔力衰体症。それがお前の持つ病気の名前だ。体内の魔力がだんだんと衰えてしまい、もし今のままSCを続けていたら、体内の魔力が消滅し、最悪の場合、死に至ってしまうかもしれないんだ。だから……』

一拍間を置き、

『湊、お前はSCを辞めなければいけない』

俺は、絶望した。

生まれて始めての、絶望。

胸が張り裂けそうなほど痛い。頭の中がぐちゃぐちゃで、何も考えられない。

『う…、うあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!』

俺は崩壊し、涙が止めどなく溢れてくる。

ただひたすらに泣き、叫んだ。

葵葉さんが俺の肩を抱き、背中に手を回す。

『辛いな…、湊…。私も辛いよ……』

その言葉に、俺の涙は勢いを増す。葵葉さんは、俺の涙が止まるまですっと、俺を抱き締めていてくれた。

 

『大丈夫だ、湊。私が、ずっと一緒だ』

 

俺の耳元で囁かれたその言葉は、俺の心に大きな温もりを与えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?
過去に何かしらの闇を抱えてる主人公って個人的に好きなんですよね。今後のストーリーも考えやすいし(本音)
何はともあれ、これからも更新を続けて行くので、どうぞご覧下さい!

〈次回予告〉

かつての牙を失くした少年、

しかし、その心に宿った炎は今も燃え続けている。

大切な人との約束を守るため、

己の誓いを果たすため、

少年は再び、フィールドに舞い戻る。


次回「再臨」

是非、ご覧下さい!
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