the blue   作:N ignite

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2月から投稿を始め、3ヶ月が過ぎました。
やっと、20話まで投稿することができ、とても嬉しく思います。
今年中に50話までの投稿を目標とし、これからも活動を続けて行くので、よろしくお願いします!

では、20話どうぞ!


20話 再臨

「だから俺は、SCを辞めたんだ」

しばらくの沈黙の後、花宮さんは重い口を開いた。

「そう、だったんですか…。そんなことが……」

「あぁ、あの時は本当に辛かったよ。生き甲斐だったSCを辞めなければならなくなって、チームの仲間とも別れることになったんだ」

俺達は海を見ながら砂浜に座り、かれこれ一時間以上経過していた。藍と瞬は、今もなおお互いに魔法を打ち合っていた。

「あの、流川さん」

「ん?」

藍と瞬に向けていた視線を、花宮さんに向ける。

「そのチームは、その後どうなったんですか?」

俺は軽く息を吐き、

「………解散した」

短く、そう答えた。

「そ、そんな…」

「葵葉さんから聞いたんだ。世界大会を辞退し、チームは解散したってね。メンバーはそれぞれ違う所でSC関連の活動を続けているらしい。………ほんと、何でだよ…!」

俺は砂を握りしめた。

「俺なんていなくても、代わりのメンバーを探せば世界大会に行けたのに……!」

「流川さん……」

俺の手に、花宮さんが手を重ねた。

「……ごめん、取り乱して…」

俺は握った拳を緩めた。

「もう、あの時の俺達はいない。俺はSCが出来なくなり、葵葉さんは…」

「如月先生は…?」

俺は目を伏せた。

「俺と一緒に、SCを引退した」

顔を上げ、遠くを見る。

「誰よりも世界に行きたかったのは、葵葉さんのはずなのに……。俺を一人にしない為にSCを辞めてしまったんだ」

目の奥が熱くなってくる。抑えていた感情が押し出されようとしていた。

「俺のせいで……、葵葉さんの選手人生は…終わってしまった……。俺の…せいで……」

視界が歪む。俺の頬を伝う涙が、次々に溢れてくる。

目を抑え、涙を押し留めようとするが、一向に収まる様子はない。

「流川さん」

「っ!」

優しく、全てを包み込むような柔らかい声。

俺の涙が、その勢いを止めた。

「如月先生は、流川さんのせいだなんて思ってないはずです」

俺の肩に手を置き、囁く。

「でも…、でも……俺は…!」

強く握った俺の手を、花宮さんが両手で包み込んだ。

「如月先生は、待ってるんだと思います。流川さんが再びフィールドに戻って来る日を…」

俺の目を真っ直ぐに捉え、微笑む。

「だから、一緒に行きましょう。流川さんは一人じゃないんです。私が、皆がいます」

「…花宮……さん……」

俺の身体にのし掛かっていた、重りがすっと消えていくような感じがした。俺の目から涙は消えていて、心の隅に残っていた希望に再び火が着いた。

「……ありがとう。花宮さん。気持ちが楽になったよ」

小さな両手を今度は俺の手が包む。

顔を上げ、花宮さんを真っ直ぐに見る。

「俺、諦めない。あの時出来なかったことを、葵葉さんとの約束を、これから果たす!」

花宮さんは少し恥ずかしそうに、微かに頬を染めた。

そして、最大級の笑顔を浮かべた。

「…はいっ!」

すでに夕日が傾きかけて、辺りに淡い橙色の光が射し込んでいる。

俺達はしばらくの間、海を眺めながらお互いに笑いあっていた。

 

 

 

 

「行くよ!湊!」

「来い!藍!」

20メートル程距離を空け、上空に留まる俺と藍。

「うりゃぁぁぁ!!」

少々子供っぽい掛け声と裏腹に、巨大な氷が藍の手によって生成され、俺に向かって飛んでくる。

「ふっ!」

軽い動作で上昇し、氷をかわす。

「まだまだ!」

氷が軌道を変え、俺を追従する。

「くっ!」

なんとか振り切ろうとするが、氷はしつこく俺に纏う。

「(藍のやつ、いつの間にこんな技術を身につけていたんだ…!)」

俺は感心した。

だが、

「はあっ!」

俺は右手に力を集中させ、薙いだ。

瞬間、風の刃が氷を迎え撃ち、切り刻んだ。

「ふぅ…、やるな!藍!」

「湊も凄いじゃん!あんなの見たことないよ!」

俺は花宮さんの激励を受け、再びSCに戻ることを決意した。

現在は、一対一の模擬戦をしているところだ。

「次は瞬だ!かかってこい!」

「よっしゃ!行くぜアニキ!」

 

 

 

「湊、張り切ってるね〜」

「よっぽどSCが好きなんでしょうねぇ」

流川さんとの模擬戦を終えた藍ちゃんが私の隣に腰を下ろす。

「遥は、SCのこと知ってるの?」

「何度か見たことはあるんですけど、実際にやったことはないんです」

藍ちゃんはそのままごろんと寝転がった。

「じゃあ経験者は湊だけか〜」

「でも藍ちゃん、凄く魔法の扱いが上手ですよね?」

「そうかな?」

 

その後も、他愛ない会話を繰り広げていた。

 

 

 

「よし、今日はここまでにしよう」

模擬戦を終え、俺と瞬は二人の元に向かった。

「お二人とも、お疲れ様です!」

花宮さんが労いの言葉をかけてくれる。

「ありがとう。花宮さんの方はどう?」

「はい!ようやく一人で飛べるようになりました!スピードはまだまだですけど…」

やはり花宮さんの成長は早く、俺よりも短い期間でここまで技術を身につけていた。

 

「ねぇねぇ。二人とも何でお互いにさん付けなの?」

「……はっ?」

あまりにも唐突で、変な声が出てしまった。

「…別に、ずっとこうだったろ?今更どうしたんだよ」

「いや〜、せっかくの部活なんだし、お互いの距離を縮める為にもまずは呼び方から変えてみたらどうかな〜って」

「ふむ……」

確かに一理ある。

SCだけでなく、あらゆるスポーツにおいて、お互いの信頼関係というのはとても重要だ。そしてその為にも、普段からのコミュニケーションも必要になる。

もっとも、藍はそんなこと、微塵も思っていないのだろうが。

「確かにそれもそうだな。じゃあこれから花宮さんのことは遥って呼ぶことにするよ」

「じゃあ、私は流川さんのことを湊くんって呼ぶことにしますね!」

こうして、俺達の部活にちょっとした変化が起こりつつあった。

 

 

 

 

 

次の日、如月先生から大事な話があると言われ、俺達は部室に急遽集合した。

「よし、皆集まったな」

如月先生が全員集まったことを確認する。

「それで先生、話って一体?」

俺の問いかけに、如月先生は軽く頷いた。

「私からの話は二つ。一つ目は、新しいメンバーの加入だ」

「「おぉーっ!」」

遥と藍が同時に歓声を上げる。

「先生……どこから誘拐してきたんですか?」

この部活ができてからまだ間もなく、しかも今は俺達しか知らないのに、新メンバーが来るとは思えなかった。

「誘拐だなんて人聞きの悪いことを言うなよ。ちゃんと、本人の希望もある。おーい、入ってきてもいいぞ!」

「は…、はい…!」

随分と控えめな声と共に、部室のドアが開いた。

「お…、おじゃまします…」

ぴょこっと、一人の少女が顔だけを覗かせる。その姿は、兎を連想させるものだった。

「じゃ、ここに来てくれ」

如月先生に手招きをされ、そそくさと歩く。

「紹介しよう。こいつは神田希(かんだ のぞみ)、一年だ」

「神田…?」

聞き覚えのある名字に反応した。そう言えば、この少女も誰かに似ている。

「湊、察しの通りこいつは奈々美の妹だ」

「そうだったんですか、どうりで…」

穏やかで優しそうな雰囲気は、まさに奈々美さんそのものだった。

「は、はじめまして…。神田希です」

軽く自己紹介をし小さくお辞儀をする。

その後、俺達も自己紹介を済ませ、希(後輩なのでさん付けはしなくていいと言うので)を新メンバーとして歓迎した。

「そう言えば先生、もう一つの話って?」

藍の声に如月先生は腰に手を当てた。

「あぁ、実は来週の土日、他校との合同練習を予定している」

「え……、えぇぇっ!!」

全員が硬直する中、俺が声をあげた。

「ちょ、ちょっと待って下さい!唐突過ぎます!」

「大丈夫だ、既に向こうの了承は出ている」

「いや、そういうことじゃなくて……」

俺は深いため息をついた。

「俺達はまだまともな練習を一度もしてないんですよ?なのにいきなり合同練習だなんて」

先生は相変わらず、涼しげな表情のまま、

「一週間もあるじゃないか。それだけあればなんとかなるさ。それに……」

「それに…?」

俺は恐る恐る尋ねた。

「見たいんだ。まだまだ未熟なお前達が、これからどう成長していくのかを、な…」

不敵な笑みを浮かべ、先生は答える。

一瞬、俺の背中がゾッとした。

だが、それは純粋な恐怖ではなく、

所謂、武者震いというやつだった。

 

 

 

「いいか、SCは一人の力だけでは絶対に勝てない。皆の力を如何に上手く合わせられるかが重要だ」

その日の放課後、俺達は部室で如月の「SC講座」を受けていた。基本的なルールから戦略まで、SC初心者の皆は学ぶことが多い。

「まずはポジションの構成だが…。湊、お前ならどう構成する?」

「そうですね…」

俺はしばし考え、答えた。

「俺と遥が前衛、藍と瞬が中衛、そして希が後衛。俺ならこの構成にします」

「ほう…」

先生が何度か頷く。

「ねぇ湊、何でその配置なの?」

藍の問いに、俺はホワイトボードに図を書きながら説明した。

「俺と遥が飛行術で相手を撹乱でき、相手の状況を確認する。その間に藍と瞬は高火力魔法を展開、場合によっては挟み撃ちも可能だ。そして希は後方支援、という感じだ」

まさにあの頃、あのチームで戦っていた頃の戦略だ。

「なるほどね〜。じゃあその練習もしなきゃだね」

「なんせ一週間しかないからな。練習もより実戦的なものになるだろうな」

一週間という限られた時間の中で、皆をどう成長させるのかは俺に懸かっている。自然と身体に力が入る。

「そういうことだ。皆、気合い入れていけよ」

先生が立ち上がり、そう告げた。

「「「「「はいっ!」」」」」

俺達は同時に答え、練習に取り掛かった。

 

「湊……、頑張れよ…」

一人取り残された部室で、如月先生が呟いた一言を聞いた者はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?
魔法、やっぱり使ってみたいですね〜。皆さんはどうでしょうか?
因みに私は氷の魔法を使ってみたいです。暑いときとか便利そうw
そう言えば、最近暑くなってどんどん夏に近づいてるような気がします。皆さんも体調管理に気を付けてお過ごし下さい。


〈次回予告〉

一週間という時間が矢のように流れた。

緊張を胸に、彼らが向かった場所は

県内トップクラスの設備が整った、強豪校。

そんな強豪校が何故、冷泉との合同練習に応じたのか。


次回「廃れた栄光」

是非、ご覧下さい!
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