「で、あるからして……」
お決まりの台詞と共に教壇に立つ教師は黒板にチョークで板書をしていく。今は国語の授業をしている。俺の隣に座っている遥とその前に座っている杏花は真剣にノートをとっているが、俺の前に座っている藍は、堂々と机に伏せている。しょっちゅう寝てるのにテストでほぼ毎回100点を取っているのが不思議でならない。
などと考えつつ、俺もノートをとる。やがて授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、昼休みに入った。
「さて、飯にするか」
「流川さん、一緒に食べませんか?」
俺はバッグから弁当を取りだし、
「あぁ、もちろん。ほら藍、起きろ、飯だぞ」
未だ眠っている藍を起こした。
「んぁ〜、何?夜這い?もー湊ったら〜w」
「お前ずっと寝てろ」
藍の後頭部に軽くチョップする。
「あいたっ、ごめんごめん冗談だって」
「まったく……」
女子とは思えない発言に呆れてしまう。
俺達はそれぞれの机をくっ付け、弁当を広げる。
「湊、唐揚げ一個ちょーだい!」
「あっ、お前!俺の自信作を!」
「まぁまぁ、あたしの煮物あげるから!」
俺は苦笑し、藍と交換した煮物を口へ運ぶ。
……悔しいけど、旨い。
「流川さんは、自分でお弁当を作ってるんですか?」
隣で弁当を食べる花宮さんにそう聞かれる。
「まぁね、家は両親が忙しいから、自分の弁当くらいは自分で作らないと」
「それ全部、流川さんが作ったんですか?」
花宮さんは俺の弁当を見て驚いたように言う。
俺の弁当のおかずは、唐揚げ、卵焼き、ミニハンバーグ、プチトマト、きんぴらごぼうといった感じだ。確かに作るのが大変そうなものばかりである。
「まぁ、料理は昔からやってたから。」
そう言って俺は白米を咀嚼する。
「料理出来るなんて、女子力高いよね〜」
コンビニのサンドイッチを頬張ながら、杏花が言う。
「そうか?」
「寧ろ、普通の女子より女子力あるんじゃない?」
いつも通り雑談をしながら、俺達はそれぞれの弁当を食べる。
「さて、確か午後は風術学の実習だったな」
食べ終えた弁当を片付けながら俺は言った。
「うぇ〜、あれめんどくさいんだよね〜」
藍が気だるげに答える。
「お前は何でもめんどくさがるからな」
「流川くん、風術学得意だもんね」
俺はペットボトルのお茶を一口飲み、
「得意と言うか、慣れてると言うか」
「風術学の実習は、どんなことをするんですか?」
花宮さんが俺に訪ねた。
「そうだな、主にエアリアル・スペルを使って実習をするんだけど、空を飛んだり、物を浮かばせたりするんだ」
「何だか、大変そうです。私はまだ自力で空を飛べないので…、早く飛べるようになりたです」
「焦る必要はないよ。エアリアル・スペルを使うことに慣れたらすぐに飛べるようになるよ」
俺が花宮さんに話していると、教室のドアがガラガラと開けられた。
「あっ!いたいた、アニキ!」
声の主は教室に入るなり、俺の元へ駆け寄ってきた。
「学校でその呼び方は止めろって言ってるだろ?」
ため息混じりで俺が答える。
「え〜、いいじゃないっすか!」
「あのなぁ……」
そこで俺達の話を隣で聞いていた花宮さんが口を開く。
「お二人は、お知り合いですか?」
「あぁ、こいつは黒瀬瞬(くろせ しゅん)。俺の後輩だ」
「はじめまして!黒瀬瞬と言います!」
瞬は小柄な体でお辞儀をした。
「見ての通り、元気だけは一人前だな」
「『だけ』って何ですか!」
俺はスルーしてお茶を飲み、
「んで、何しに来たんだ?」
瞬はにかっと笑って
「何となく!」
「帰れ」
そうこうしてるうちに、チャイムが鳴り、昼休みが終了した。
瞬は自分の教室に戻り、俺達は次の授業のため、校庭へ移動した。