俺達は次の授業のため、校庭へ移動した。
「よし、じゃあ今日は前回に引き続き、エアリアル・スペルを利用した飛行技術を身に付けてもらう。」
この授業の担当である如月先生が前に出て説明をする。
「うぅ……飛べるか不安です……」
俺の隣で花宮さんが不安そうに呟く。
「大丈夫だよ。湊が教えてくれるから」
近くで聞いていた藍がいきなりそんなことを言う。
「お、おい。お前なぁ…」
俺は呆れて言葉を返す。
はあっと小さくため息をつき、
「まぁ、花宮さんが良ければいくらでも教えるけど…」
「いいんですか?是非お願いします」
確かに今の花宮さんは一人で飛ぶことすら覚束ない。故に誰かがしっかりコーチした方がいいのだろう。
「今日は速い速度で飛べるようになってもらう。そこで湊、手本を見せてやってくれ」
「………はっ?」
説明を続けていた如月先生から突然名前を呼ばれ、変な声が出てしまった。
「えっと……なんで俺なんですか?」
如月先生は涼しい顔のまま、
「なんでって、お前がこの中で一番飛ぶのが上手いだろう」
うんうんと、クラス全体が頷く。
「何でそうなるかなぁ……。分かりましたよ、やります」
俺は諦めて肩を落とす。
「じゃあ早速スタート地点まで行ってくれ」
「…はい」
俺はエアリアル・スペルを展開し、自分の体を宙へ持ち上げた。そのままスタート地点まで飛び、
「ここでいいですか?」
少し離れた位置の如月先生へ呼び掛ける。
「あぁ、そこから100メートルほど全力で飛んでくれ。いいか、全力だぞ」
「うぐっ…」
こっそり手を抜こうとしていたのがバレていたらしい。
「わ、分かりました。いつでもいけます。」
俺はそう言って如月先生の合図を待った。
「流川さんって、そんなに飛ぶのが上手なんですか?」
如月先生の近くで花宮さんが藍と杏花に訪ねている。
「かなりね。あれは異常だよ」
「そ、そんなにですか?」
藍の言葉に驚いている様子の花宮さん。
「まぁ、見てれば分かると思うよ」
杏花が続けて言う。
(やめろ、プレッシャーをかけないでくれ。)
「湊、いいかー?」
如月先生が手を振って合図を送る。
「はーい」
俺も手を振り返して返事をする。
「それじゃ行くぞ。よーい…」
俺は素早く飛行体勢をとり、両膝を軽く曲げて待機する。
「ドン!」
瞬間、俺は全力で前方に飛んだ。曲げていた膝を伸ばし、一気に加速する。
「は、速い!」
花宮さんがまたもや驚いた様子で声をあげる。
「ほう……」
ただ、如月先生だけは他とは反応が違った。
「……っ!」
俺は残りの距離を高速で飛び、あっという間に100メートルを飛び終える。
「5.8秒…、どうやら腐ってはいないようだな」
如月先生のその言葉は、誰にも聞こえることは無かった。
「はあ…はあ…」
こうやって全力で飛ぶのは何年ぶりだろうか。すっかり鈍ってしまった体を落ち着けるように、俺は肩で息をする。
「湊、よくやった。戻ってきてもいいぞ」
俺は呼吸を整えながら、ゆっくりと戻る。
「ふぅ……」
ようやく体を落ち着けた俺は空中で魔法を解除し、花宮さんの隣に着地した。
「よっ…と」
「ね?言ったでしょ?」
近くにいた藍がいきなりそんなことを言った。
「ん?なんのことだ?」
俺は理解ができずに聞き返すと、
「る、流川さん、凄いです…。あんなに速く…」
「そ、そうかな?」
目をキラキラさせた花宮さんが俺に迫る。
「いい手本だったぞ、湊」
如月先生が俺達に割って入った。
「あ、ありがとうございます」
先生は軽く頷き、
「じゃあ二人一組のペアを作って練習するように!」
いつも通りの凛とした声で言った。
「じゃあ杏花、組もっか!」
「おけー!」
藍と杏花がペアになり、二人で練習を始めた。
「さて、じゃあ俺も…」
俺がペアを探そうとしていると、
「湊、お前は花宮を見てやれ」
如月先生に呼び止められ、俺は咄嗟に振り向く。
「お、俺が、ですか?」
「あぁ、何か問題でもあるか?」
先生は表情を一切変えずに答える。
「その、俺なんかに教えることが出来るんでしょうか?」
「少なくとも、こいつは教わる気満々だぞ」
俺は先生の隣に立つ花宮さんに視線を向けた。期待しているような目でこちらを見ている。
俺の脳内で選択肢が発生した。
教えてあげますか?
→はい
いいえ
俺は即答で『はい』を選択。
「わ、分かりました。俺で良ければ」
俺がそう答えた瞬間、
「あ、ありがとうございます!」
同時に勢いよく頭を下げる。
「じゃあ頼んだぞ、湊」
「は、はい…」
結果、俺と花宮さんがペアを組み、俺が花宮さんに飛び方の基本を教えることになった。
最近暇な時間が多くて何しようか悩んでいます。
休校中なのでしばらくは暇な時間が続くんですよね。