インフィニット・ストラトス~彼から主人公補正が消えた話~ 作:カイナ
──NN~チャンネルー!
「……え?」
どこからともなく聞こえてきた声に、男は声を漏らす。真っ白な何もない空間、そこに自分は立っている。そう彼が認識した時、その空間に揺らぎが走った。
「は~いどうもこんにちは~。何にも出来ずに死んじゃった憐れな子豚さ~ん、お元気ですか~?」
揺らぎが走った空間から出てきたのは小麦色の肌をして紫色の水着のようなパンクな衣装を纏った一人の少女。その胡散臭い笑顔での言葉に男は唖然とするが、その直後彼女の言葉の一部にはっとした顔になった。
「ま、待て! 今のなんだ!? 何にも出来ずに死んじゃったって……どういうことだ!?」
「あらら、覚えていませんか? まあ無理もありませんが……わざわざ思い出す必要もないでしょう」
少女は両手を肩くらいの高さまで上げてやれやれと首を横に振るアメリカンな呆れポーズを見せた後、にぱっと微笑んだ。
「残念ながら、あなたは死んでしまいました!」
「な、に!?」
「ですがご安心を」
笑顔での死の宣告に男が絶句するが、そこに少女がびしっと指を突きつける。
「あなたは幸運にもこの女神である私に選ばれました! そう、色んなラノベでお約束、転生のお時間です!」
「ほ、本当か!?」
女神を名乗る少女の言葉に、男の顔がパッと輝く。その口元には歪んだ笑みが僅かに見え、それを見た女神も僅かにニヤリと微笑んだ。
「もちろんタダでの転生なんてケチなことは言いません。あなたのお望みの世界に転生させ、お望み通りのチート能力を差し上げましょう」
女神の言葉を聞いた男は再び笑みを浮かべる。自分が望む世界、と聞かされて思い浮かぶ世界。それは他の男の介入がなく、自分のハーレムが簡単に作れる世界。その望む世界の名を聞いた女神は空中に座るようなポーズで浮かび、足を組む格好をして笑顔でふんふんと頷いた。
「インフィニット・ストラトス、ですね。了解でーす♪ その世界への転生、たしかに承りました。で、続けてチート能力ですが……」
女神の言葉に男は再び己の望みを話す。まず一つ、自分を女子にモテるようなイケメンにしろ。次にインフィニット・ストラトスの世界に転生する以上、自分も男だけどISを使えるようにしろ。さらにどんな敵にも負けない、当然インフィニット・ストラトスの主人公織斑一夏には絶対に負けないようなチート専用機をよこせ、そして──
「織斑一夏から主人公補正を消してくれ。ですか?」
女神がきょとんとした顔になり、男は嫉妬に歪んだ顔を彼女に見せる。
「ああ。あいつは所詮主人公補正なんてものでチヤホヤされてるだけだ。それがなければ俺の天下は間違いない」
「ふむふむなるほど~……いいでしょう。あ、でも神にもちょっと限界がありましてですね。世界に影響を及ぼすような願いを叶える場合、少々世界に不具合が起きる可能性がありますし、その願いが少々ずれる可能性があります。ですが願い自体はきちんと叶えられるように取り計らいますのでご了承くださいね?」
「なんでもいいさ」
「分かりました。あ、ではおまけにあなたもIS学園の一年一組に入学できるように操作しておきましょうか? その方が篠ノ之箒やセシリア・オルコットとフラグを構築しやすいでしょう?」
「そうだな」
「はい。ではご注文を繰り返しますね。まずはあなたのイケメン化、次に男のままIS操縦可能な能力、さらにチート専用機の制作、そして織斑一夏なる男からの主人公補正の剥奪、最後にあなたのIS学園一年一組への入学。以上でよろしいですか?」
「ああ」
「はい。確かに承りました」
男の願いを聞いた女神が笑顔で了承、宙に浮かべたメモ帳に同じく虚空を走るペンでさらさらっと何か書き込んでいた。
「では貴方にも特別サービス、その主人公補正として女神の加護を与えておいちゃいましょう!」
まるで炎が走ったように彼女の周囲を赤い光が踊り、同色の光が男を包み込む。
「フ、ヒヒヒ……俺にも運が回ってきたってわけか……」
男の口元から歪んだ笑みが覗き、女神はニヤリと笑みを漏らす。そして男は己の意識が静かに遠のいていくのを感じるのであった。