インフィニット・ストラトス~彼から主人公補正が消えた話~ 作:カイナ
これは二話連続投稿の後編です。
もしも前編を読んでいないまま間違えてここに飛んできた方は前編への移動をよろしくお願いいたします。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ死にたくない!
成志はそんな思いだけを胸に通路を走り続ける。ハーレム?学園の王?そんなもの自分の命の前では何の意味もない。
──なんでシェルターが開かないの!?
──閉じ込められた!?
──誰か出してくれ! これは罠なんだ!!
避難用シェルターの中から助けを求める悲痛な叫び声が聞こえるのを、奴らが追いかけてこないかを探るために頭部のみ部分展開しているISのハイパーセンサーが僅かに聞き取る。しかしそれを助ける余裕なんてない、そんな事している暇があれば少しでも遠くに逃げる。
遠く。そう、IS学園から逃げれば追いかけてこないかもしれない。成志はそう信じて防護用シャッターが閉じられていない通路をひた走る。シャッターが開かれた先は上手い具合に校門前に繋がっており、成志は運が向いていると笑いながら、
「はぁ~い♪ またまた一名様ごあんな~い」
その希望を砕く死神の声が成志の耳に届く。
「いやああぁぁぁぁっ!!! お願いします助けてください命だけは──」
「申し訳ありません。ノロマはいらないと、我が王の命令ですので」
グチャリ、と女子生徒が褐色肌にバイザーで目元を隠す少女が駆るISに無感情に踏み潰される。
「そんなうそなんであなたたちみたいなアイドルが──」
「「さあさあ聞かせて、あなたの声で。我が王に捧げる断末魔という名の最期の歌を!!」」
世にも珍しい二人で一つのISを操る、天使のように可愛らしい、しかし武骨なバイザーで目元を隠す少女達が、自分達の正体を言い当てた女子をまるでご褒美だというように銃でハチの巣にする。
「え、あれ? あなたはさっき避難誘導を──」
「あーごめんね? 驚かせちゃったかな? でも、センパイの言葉を無視して外に逃げ出そうとした君が悪いんだよ? これは我が王の定めたその罰だからね」
さっきまで校舎内で避難誘導をしていたはずの三年生が校門前でISを纏っている意味を理解できずに呆けている生徒が、ダイヤモンドのような輝きを放つ拳に殴り潰されて拳が血に赤く染まる。
「嗚呼、時と場が違えばあるいは愛でられたかもしれない花を自ら手折る事になるとは……だが仕方がない。せめてその散り様で我が王を愉しませてあげておくれ」
「我が王の命よ。死になさい」
「あなた達、いらないって王様が言ったの……だから、死んでね」
校門前に広がる阿鼻叫喚。さらに現れた専用機持ちが、抵抗の手段を持たない一般生徒を皆殺しにしているもう一つの地獄がそこには広がっていた。
それに絶句し、辛うじてISを展開しながらも動くことはできずにがくりとへたり込む成志を、バイザーで隠していても分かる程に見下す視線を向けて口元をにやつかせながら少女が覗き込む。
「な~によ、あっけないわね。せっかく邪魔な教師を全員シェルターにぶち込んでようやくって思ったのにこれじゃあつまんないじゃない」
やれやれと両手を掲げて呆れたポーズを取る少女の後ろで他の専用機持ちもクスクスと嘲笑を零し、「残念だったね」「お気の毒様」と言葉を投げかける。
「もういいわ。絶対防御をカットしなきゃ死にゃしないでしょ。せめて気絶するまでくらいは悲鳴とかで愉しませてよね」
興味を失ったように顔を逸らす彼女の駆るISの背部から伸びる竜の咢が成志の方を向いて開き、エネルギーが溜まる。
「待て」
声が響く。地の底まで響くような厚い声に、その少女達ははっとなると全員同じ方を向いて跪いた。
「嗚呼、貴女の手を煩わせるつもりなどなかったというのに……親愛なる我が王、織斑壱花!」
「織斑一夏だと!?」
銀色の髪をショートカットにした少女が芝居がかった声を上げると、その中の言葉に反応する。
彼女らの向いている方に目を向けると、そこには黒きISを纏い、人の死骸で出来た王座に座っている少女の姿があった。そして少女はニヤリと口元を歪ませ、王座を立つ。
「なに、少しばかり興が乗った。この者は私が狩る、異論はないな?」
「はい、我が王!」
少女の言葉に竜を背負うISの少女は頷いて成志の前を離れ、校門前で虐殺を繰り広げていた他の専用機持ちと同じ場所に移動すると再び跪く。その間に少女はPICを使うまでもないというようにガシャリガシャリと成志の前まで歩行し、数メートルほど距離を取って立ちはだかった。
「お前が……織斑一夏なのか?」
「その通り。冥途の土産に教えてやる……我らは
少女──壱花はそう言って一瞬で黒色の剣を展開すると己の背後向けて一閃、己のすぐ後ろに一本の線を引いた。
「我が臣下の遊び心とはいえ、ここまで生き延びられた褒美だ。一つゲームをしよう」
「ゲ、ゲームだと?」
壱花の言葉に成志がぼやくと、彼女はこくりと頷いて先ほど引いた線を指す。
「お前が今できる最大の攻撃を仕掛けてこい。私はそれを受け止めてやる。もしそれに私が少しでも押され、この線をまたぐことがあればお前の命を助けてやる。どこへ行くにも自由だ。だが出来なかった場合──」
「じょ、上等だ!!!」
壱花の説明を遮って成志が叫び、両腕を掲げる。するとその両腕、いや、背中や腰、身体中に黄金の光が奔流。僅かな時間を置いて彼の身体中をマシンガンにガトリングにキャノン砲にミサイルと言った様々な重火器が埋め尽くした。
「織斑一夏なんてエネルギー無効化の零落白夜さえ封じればなんにも出来ない! つまり実弾の嵐で終わりなんだよ!!!」
叫ぶと共に全身の重火器のロックが解除される。数秒もせずにそれらから弾丸が放たれるだろう。だがその数秒もあれば充分だというように、壱花は左手を前に向けた。
その動作だけで彼女の左手に漆黒の光が奔流。巨大な十字架をくっつけたような形の巨大な
「死ねええええぇぇぇぇぇっ!!!」
成志の怒号と共に、マシンガンやガトリングから弾丸が次々と放たれ、キャノン砲が火を噴き、ミサイルが全弾発射される。
「
イヤアアという少女の悲鳴のような音と共に放出されたエネルギーが物質化を開始し、彼女の目の前にモザイクがかった城壁が出現。成志の放つ全ての攻撃を防ぎきる。
やがて弾切れになったか弾丸の嵐が止んだが、城壁が消滅した後その跡地に立つ壱花は一歩たりとも動いておらず、それを見た成志は目を見開いて顔を真っ青にし唇を震わせる、絶望というものの見本というべき顔になっていた。
「ば、馬鹿な、あり得ねえ……」
「児戯だったな……だがしかし、お前の全力とやらに返礼をせねばなるまい」
左手の盾が消滅し、右手を掲げると黒く染まった剣が握られる。
──
──ダメダ……
それは紛うことなき聖剣。本来ならば人理を守るために振るうべきもの。しかしそれは変質し、あり方が変貌していた。
「是は世界を救う滅ぼす戦いである」
人理を守るべき力が歪み、反転する。世界を救うことはすなわち世界を滅ぼすこと。高潔なる騎士ならばけして承認出来ぬこと。
──ヤメロ……
──
しかし行われるは暴君の王権。本来ならばかの王の下に集う騎士達の承認によって解放されるべき力を、担い手たった一人の暴権によって強制的に承認、解放させる。
「これで充分か……」
壱花がぼそりと呟く。同時にその剣から漆黒のエネルギーが迸った。
「卑王鉄槌、極光は反転する。光を呑め!
「あ、あ、あああ……や、いや、やだ……」
漆黒のエネルギーが天まで届かんばかりの柱のように奔流し、それを見た成志は逃げる気力さえも失ったのかがくりと腰を抜かして倒れ込み、怯えて震えるのみ。
それを見下すような目で見ながら、壱花はガシリ、と振り上げた剣を両手で握りしめ、ズン、と一歩踏み込む。
「
「死にたくねええええぇぇぇぇぇっ!!!」
振り下ろされた剣から漆黒のエネルギーが放たれ、成志を一瞬でその悲鳴ごと呑み込む。それだけでは飽き足らず、射線上にあった学園の一部をも消滅させてようやく漆黒の光が消えた時、成志はISを解除してブクブクと泡を吐いて白目を剥き気絶していた。
だが学園の一部を破壊どころか消滅させるような一撃が全身を飲み込んだにも関わらず原型を止めている辺り、絶対防御をカットする機能をカットして相手の命だけは守っていた事が分かる。
壱花は、情けなく涙、鼻水、泡を垂れ流しながら気絶してしばらく目覚めないだろう彼の下に寄るとISを解除。今までバイザーに隠れていた金色の瞳を宿す目を不快そうに細めて彼を見下し、腕を組んでフンと鼻を鳴らす。
「死ぬ? バカじゃないの。あなたはこれから亡国機業の大切な資産になるのよ? そんな勿体ない事するわけないじゃない」
そう呟いた後、彼女は今の今まで校門の外で待機していたらしくぞろぞろと入ってくる、マシンガンなどの歩兵用武器を装備している男達に目線を向ける。
「さ、流石は壱花様率いるモノクローム・アバター・オルタナティブでございます。私達が出る幕など……へへへ……」
媚びへつらうのはヘルメットの違い的にこの男達──雑用係のリーダーだろうか、だがどうでもいい。媚びへつらいながらもゴーグルで隠れた視線は壱花の身体に向けられており、さらには気づかれていないとでも思っているのか、その部下も身体のラインがぴったりと出るISスーツに身を包む操縦者達──壱花にとっては臣下たる彼女達に同様の視線を向けている。
その下卑た視線や伸びた鼻の下に壱花は不快感を覚えると右腕のみにISを部分展開。同時に先ほど成志を屠った黒き聖剣を展開すると無造作に一閃。リーダーらしき男の首を刎ね飛ばした。頭の消えた首から鮮血が吹き出、返り血を数滴顔に浴びた壱花は忌々しそうに目を細めてチッと舌打ちを叩き、じろりと男達を睨みつける。
「くだらない事をしている暇があれば、こいつ及び檻に閉じ込められた者達を回収しなさい」
「は、ははっ!」
なんの躊躇いもなく自分達のリーダーが殺されたことに怯えの表情を見せる男達だが、壱花の命令を受けた数人が成志からISの待機形態である金色の腕輪を奪い取る。
「い、壱花様、どうぞ……」
「フン」
不興を買えば自分も殺されると思っているのか、ヘルメットやゴーグルで隠れていてもなお分かる程に顔を青くして跪き震える手で金色の腕輪を献上する男に壱花は鼻を鳴らして、右手は剣を握っているため左手で腕輪を奪い取る。
その間に男達は成志自身も縛り付けて移動手段らしい車の中に放り込む。さらに男達が要請していたのか、より大勢の人間を運ぶための巨大ヘリまで数台がかりで到着した。
「用意のいいことね……まあいいわ。出来た犬には褒美をくれてやるのも王の務めってやつよね」
ぼやき、彼女は再び男達を見て、ニコリ、と形だけは相手を労わるように美しく、しかし実際は心の底からどうでもいいと思っているような無機質な笑みを向ける。
「任務が完了した後ならばあれらへの手出しを許します。ただし殺さないように、あれらもこれから組織の大切な資産となるのだから」
そこまで言った瞬間、壱花の顔から笑みが消え、その形相が憤怒のものに変わる。
「その代わり、二度と私達に許可なくその下品な視線を向けるな。私だけじゃない、彼女らは私の
その憤怒の形相に男達は怯むが、そこまで言い終えて満足したのか彼らに対して興味を失ったように目線を外して学園の玄関を解放するようにその場をどくと、男達からウオオオオオオ!と雄叫びにも似た歓声が走る。
学園のうら若い、未来のエリートの座を狙えるような立ち位置にいた乙女達を穢す権利を与えられた彼らは意気揚々と学園内に駆け込んでいき、獣欲に支配された男達を壱花は軽蔑の視線で見た後、校門前へと馳せ参じた臣下を見据える。
「ISコアは全て回収した?」
「滞りなく。抵抗してきた専用機持ちも全て無力化、それらの座標データも送信済みです」
──IS学園に保管されている全データの回収及び元データの完全破壊も完了しました
紅黒色の機体を駆る少女と、この騒ぎの間にIS学園のシステム中枢へと侵入し、IS学園の全データ回収作業を行っていた少女から同時に報告が入る。
「うん。じゃあ後はあの犬共に任せておいていいわよね、犬だって檻に閉じ込めた獲物を運ぶくらいの芸は出来るだろうし」
そう言い、壱花は再びISを展開。目元をバイザーで隠しつつ、己に跪く臣下を一瞥する。
「任務完了。撤収する!」
その日、IS学園がテロリストに敗北したというニュースは全世界に報道される。
学園が物理的に破壊されているだけではなく生徒教師合わせて死傷者・行方不明者は数え切れず、しかもIS学園が保有していたISコアだけではなく、IS学園に在籍していた専用機持ちが持っていた専用機のISコアも全て強奪。さらに学園の全てのデータは盗まれた上に学園に保管されていた元となるデータは全て壊されて復旧不可能。そして
すなわちIS学園の完全敗北だった。
というわけで改めまして。「彼女達が
…………サーセンでした!(土下座)
いや……思いついちゃったんですよ。「IS学園じゃなくって、壱花含めてヒロイン全員亡国機業に放り込んだらってどうだろう?」とか、ふと思いついちゃったんですよ……。
でもまあそんなの一発ネタにしかならないっていうか絶対続きが思いつかないってのは分かってるし、加えて全員亡国機業に放り込んだら流石にIS学園側に味方がいない。そうなった時に思ったんですよ「ああ、いたじゃん。圧倒的不利になるIS学園に放り込んでも良心が痛まず、なおかつチート専用機(絶対勝てるとは言ってない)持たせられるやつ」って。
はい、構想完成です。(酷)
……え?一夏が壱花になったのは「IS学園一年一組の男子」という主人公補正剥奪条件を潜り抜けるためだから亡国機業に入れたなら一夏でよくねって?
まあごもっともなんですが……一夏に亡国機業として悪逆やらせるくらいなら壱花をセイバーオルタ化させてやらせた方がこっちの精神衛生上マシというか……あとヒロインズに悪堕ちの一環として男一匹とか獣呼ばわりとかで人間扱いさせない、彼女達まで女尊男卑に染まりあがっていた的な感じをやらせたかったし、それなら壱花の方が都合が良かった。むしろ反転してます超キャラ崩壊中ですって前提の上にオリジナルキャラって事で一番ノリノリで書けた。(笑)
ちなみに今回どうしてこの子達
さて、またこんな電波を受信すれば定かではありませんが、一応ホントにこれは続きを書くつもりはありません。だってもう続きを書きようがないもの、IS学園壊滅してるし。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
インフィニット・フェイトヒーローズのカップリングはどちらとがいいですか?
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原作ヒロインズ
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アキブレヒロインズ