インフィニット・ストラトス~彼から主人公補正が消えた話~ 作:カイナ
10月31日。たまたま日曜日と重なった今日はハロウィンという事で、生徒会長である更識楯無が10月上旬に急遽立ち上げた「IS学園ハロウィン特別運営委員会(委員長:更識楯無)」が教職員と交渉した結果「節度や風紀を守ること」「終わったら翌日の生活や授業に支障が出ないように片付け・掃除を行うこと」などを運営委員会が責任を持つ事を条件に、寮内はもちろん借りることが出来た一般教室やさらには第三アリーナもハロウィン風の飾りつけや有志によるイベントが行われるハロウィンパーティが生徒主導で行われる事になっていた。
「じゃーん!」
そしてハロウィンといえば仮装。本来ならモンスターの仮装をするのがハロウィンなのだがここは一応国としては日本、魔改造されたハロウィンのお約束として別にモンスターに限らずコスプレなどの仮装も可という大らかな感じになっている。
実際に百花もモンスターではなくむしろ私服に近いような、黒色のリボンを胸元で結び、黒色の差し色が入った純白のノースリーブワンピース姿になっている。
腰にはスポーツチャンバラで使われるエアーソフト剣をペイントして作られた、彼女の専用機の武装であるカリバーンを人間サイズに縮小したものを挿しており、その様相は姫騎士という雰囲気を漂わせていた。お披露目が嬉しいのか「ふぉう、ふぉーう♪」という謎の掛け声を出しながらくるくると回っている。
「お姉ちゃん、騒ぎ過ぎ……」
いつものローテンションで呟くマドカも黒いワンピース姿。しかしこちらはノースリーブどころではなく背中や胸元まで開けたセクシー仕様。ミニスカートに黒いニーソックスによる絶対領域まで完備済みだ。
「ははは。でも百花もマドカも似合ってるぞ」
「ああ。よく似合っている」
騒ぐ
その隣に立つ総司は薄紫色の着物や袴、紺色の雅な陣羽織を風雅に着こなした、彼の二つ名である「ラストサムライ」に相応しい格好になっていた。
マドカは一夏から褒められたのが嬉しいのかむふぅと笑い、百花も総司に褒められて嬉しいらしくえへへと照れ笑いを見せた。
「さ、行こうぜ」
「「うん」」
兄に促されて妹二人は頷くと、彼らは共に歩みを進めるのだった。
待ち合わせ場所である食堂で合流。そこで一夏は箒とセシリアに引きずっていかれて別れ、マドカは秋也と合流して彼と一緒にいたダリル&フォルテ&ベルベット&クーリェと共に行き、百花は手を振って彼らと別れると総司と二人で、とりあえず学校側から借りる事が出来た教室の方を見に行く。
その道中でも流石に折り紙の切り絵などがメインとはいえ橙色の折り紙によるカボチャや黒色の折り紙によるコウモリなど、ハロウィンをイメージする飾り付けがなされており、さらに他の生徒も色々な仮装をしている事でハロウィンらしさを増していた。
ちなみにもちろん許可を取って料理部や製菓部がハロウィン風料理やお菓子の出店を開いているように有志が出店を開いている他、運営委員会委員長の更識楯無が働きかけたのか外部からも出店がいくつか来校しており、ハロウィンパーティというか軽くプチ学園祭みたいになっているがゴミ箱の等間隔設置やハロウィンらしくポップな感じになっているとはいえ「ゴミはごみ箱に捨てること」などの注意喚起の張り紙を至る所に準備、さらに運営委員会が定期的にゴミ袋の入れ替えを徹底する方針らしく、まだ朝早くとはいえゴミのポイ捨てはされていない綺麗な状態が維持されていた。
というかハロウィンパーティが終わったら運営委員会の指示の元全校生徒総出で片付けや大掃除を行う。拒否権は無いという
「それにしても、専用機持ちは大変よね。ハロウィンパーティと並行して
「うん。まあシフト制での交代だから、空き時間に楽しめばいいだけだよ」
教室内を見て回っている時に合流した、スタンダードに魔女のコスプレをした相川の言葉に、さっそくハロウィン風にカボチャクリームを使ったクレープを買い食いしながら百花が答える。
楽しいハロウィンパーティだが、今世界中を襲う絶対天敵の脅威が今日に限って休まるという保証はなく、専用機持ちにもこのハロウィンパーティを楽しんでもらいたいとはいえ気が緩み過ぎて有事の際に動きが遅れても困るという事で、数人一組によるシフト制で最終防衛ラインであるIS学園周辺の警備やもし絶対天敵が出現した場合は先行部隊として即出撃できるように準備をするようになっていた。もちろん警備部隊や先行部隊で片づけられない規模の場合はシフト外の専用機持ちも緊急出動することになっているのだが。
既に今はラウル、コメット姉妹、セシル、グリフィン、シャルル、ロランの七名六機がIS学園周辺の警備及び先行部隊としての即時出撃準備に入っている。
「あ、百花ー! 清香ー!」
「鈴ちゃん!」
前方から呼びかけられ、その声に百花も反応。赤いチャイナ服を着た鈴と、彼女とペアルックだが色だけは緑色になっているチャイナ服を着た乱が駆け寄ってくる。
「二人ともお揃いのチャイナ服だね。とっても似合うよ!」
「ありがと。百花のワンピースも似合ってるわよ」
「ふふん。当ったり前でしょ!」
百花が二人のお揃いチャイナ服を褒めると鈴も百花のワンピースを褒め返し、乱はえへんと胸を張る。鈴と比べて少し大きな胸を強調するようなポーズだが、鈴はふっとまるで鼻で笑うような表情を見せた。
「ちょっと何よ鈴!?」
「別に……あんたと比べたって何にもならないって最近気づいたのよ……」
「あら、負けを認めるってわけ?」
「……そんな事言ってられるのも今の内よ」
鈴の様子を見て得意気に笑う乱に、鈴は死んだ目にハハハハハと壊れたような貼り付けたような笑みを浮かべて答える。
「お、鈴に乱。それに百花達じゃねえか」
「皆、おはようございます」
「あぁ蓮おは……よ……」
鈴と乱の後ろからは声をかけてきた男子に、乱は声だけで自分の従兄妹である蓮だと気づいたらしく振り向きながら挨拶を返す。が、その声は途中で止まり、彼女の口もあんぐりと開いた状態でフリーズする。
乱が挨拶を返した男子──蓮は
そしてその隣には現在蓮と交際しているタイ代表候補生──ヴィシュヌが何故だかタイ人だというのに鈴や乱と同じ、色だけは蓮の長袍と同じ黄色を基調としたチャイナ服を着用していた。
ドレス部分の横に入っているスリットが彼女の褐色に日焼けした美脚をチラチラと見せるチラリズムを演出、しかしそれだけではなく同じ服を着ているからこそ分かる、鈴どころか乱とも比べ物にならない胸の大きさまで彼女らに見せつけていた。
「ま、負けた……」
「言ったでしょ、あんたと比べたって何にもならないって……」
どさっと膝をついて両手も床につく乱と、彼女の隣に跪いて元気づけるように肩にポンと手を置く鈴。
「え? え? ら、乱? 鈴? 一体どうしたんですか?」
「おい乱に鈴、何がどうしたのか知らねえけど廊下の真ん中で邪魔くせえぞ」
突然膝をついた乱とそれを元気づける鈴の姿におろおろするヴィシュヌと首を傾げながらも廊下の真ん中で邪魔だと注意する蓮。それに対して乱と鈴は恨みがましい目でヴィシュヌを睨み、二人(特にヴィシュヌ)は訳が分からぬ様子をしばらく続けることになるのだった。
「ところでヴィシュヌ、なんでチャイナ服なの?」
「れ、蓮が中国からお揃いの色だって取り寄せてくれて……」
「「覚えてろよぉ~!!!」」とどこかの三下みたいな台詞を言って泣きながら走り去った鈴と乱に首を傾げつつも一緒に校内を回る事にした百花一行と蓮、ヴィシュヌ。
百花からの素朴な疑問にヴィシュヌが照れながら答えると蓮もふいっと彼女らから顔を背け、相川がニヤニヤと笑った。
「と、ところで百花。お前の案内だけど、どこ向かってんだこれ?」
「シャルロットが家庭科室で料理部の出店やってるって教えてくれたんだ。ハロウィン風レストランだって」
「それは楽しみですね!」
露骨に話を逸らす蓮だが百花達もからかい倒したいわけではないため素直に目的地を教える。
本日料理部はハロウィンをイメージした食材をメインに使っての料理の出店を開いており、料理部員であるシャルロットも絶対天敵対策警備の合間の時間を使って料理部の出店にもシフトを入れているわけだ。
それを聞いたヴィシュヌも楽しそうに微笑み、彼女らはわいわいと喋りながら家庭科室に向かう。すると先頭を歩いていた総司がふと声を漏らす。
「何か騒がしくないか?」
「お祭りみたいなもんだし、こんなもんじゃねえ……いや、違うな?」
「だろ?」
総司の呟きに蓮がプチ学園祭状態なハロウィンパーティなんだから騒がしいのは当然だと返そうとするも、家庭科室の方から聞こえてくる喧騒を聞いて表情を真剣なものに変える。その蓮と同様の表情になっている総司とのツートップになって家庭科室へと向かった。
「だから、何度も言ってるけどさ。こっちは料理部の活動中なんだよ」
「こんな部活なんてどうでもいいだろ? 俺とデートした方が楽しいって」
家庭科室に入った百花達が見るのは、料理部としての仮装なのかメイド服を着ているシャルロットと彼女に見て分かる程に強引に迫っている成志の姿。
シャルロットの方はあしらっているものの成志は空気を読まずに誘い続けている様子で、シャルロットの言葉にも若干棘が出ているように聞こえる辺り穏和なシャルロットが結構イライラしてきている様子なのが伺える。
「注文とかする気がないんならさっさと出て行ってよ、後がつかえてるんだからさ」
「仕方ねえなぁ。んじゃこんなくだらないままごとが終わるまで待ってやるからさ、その後は俺に付き合えよ」
「シフトが終わったら警備の時間までミシェルさんとデートの約束があるからやだね」
自分達の出店をくだらないままごと呼ばわりされたのが頭にきたのか、成志の誘いを睨み、さらにはベーと舌を出してまで拒否する。
「チッ、またミシェルかよ。あんなISも使えねえ雑魚の何がいいんだか? せっかく可愛いメイド姿のお前を放っとくような薄情男なんかより俺の方がお前を楽しませてやれるぜ?」
「ミシェルさんは織斑先生達と絶対天敵からのIS学園の警備や万一の場合の緊急出撃について最終打ち合わせをしてるんだ。ISを使えない? ISを使える癖に碌に戦わない君よりもISが使えなくても自分に出来ることを精一杯頑張ってるミシェルさんの方がずっと素敵だよ」
ミシェル・デュノア。シャルロットの義兄にして婚約者である彼は、一夏を始めIS学園の専用機持ちメンバーが絶対天敵に対する最終防衛ラインとなっている今、婚約者であるシャルロットや友人である一夏達の力になるために彼らのマネージャー的な役目になってメンバー内の折衝、絶対天敵が襲撃してきた際のナビゲートや戦闘終了後の被害状況の算出、操縦者が怪我をした時は医療班、専用機が損傷を負った際はメンテナンスを行う整備科との連携、絶対天敵の襲撃に一夏達が対処し始めてから多くなってきたマスコミへの対応など裏方作業に従事している。
直接絶対天敵と戦っている一夏達と比べれば決して派手ではなく華々しい手柄など立てられない。しかしチームにとってなくてはならない存在となる彼を馬鹿にした成志にシャルロットが皮肉交じりに答えたその時、成志の目がシャルロットを睨むように鋭くなった。
「俺があんな雑魚より下だと!? 下手に出てやってりゃいい気になりやがって、俺とあいつとどっちが上かお前の身体に直接教えてやろうかアァ!?」
「きゃっ!?」
怒鳴り声を上げてシャルロットの腕を掴む成志と悲鳴を上げるシャルロット、それを見た瞬間蓮と総司が動いた。
「そこまでだ」
「せっかくの祭りだ。多少の無礼は大目に見るつもりでいたが……これ以上の狼藉は捨ておけん」
蓮が成志の肩を掴んで制止し、総司がシャルロットの前に回り込んで彼女の腕を取る手を払い、彼女を守る盾となる。百花もその後ろに陣取ってシャルロットを庇う格好を取り、ヴィシュヌも彼女らを守るように前に出た。
「雑魚どもが……群れなきゃ何も出来ねえ雑魚が偉そうにしてんじゃねえぞ!?」
「へえ、おもしれえ事言ってくれんじゃねえか……今日はハロウィンパーティだから見逃してやるが、俺は明日にでもまたお前とタイマン張ったっていいんだぞ?」
「っ……」
成志の怒号に対し、蓮は目元に影を作りつつも強く睨みつけながら成志に言い返す。肩を掴む手にも力を入れており、その凄みに圧された成志は声を失うと共に力任せに蓮を振り払った。
「は、はっ! 俺は暇なお前らと違ってそんな俺の勝ちが見えてるような下らねえ勝負してる暇なんざねえんだよ! きょ、今日のところは見逃してやる! 感謝するんだな!」
捨て台詞を残してまるで逃げ出すように家庭科室を飛び出す成志。「邪魔だモブが!」とか怒鳴り声が聞こえながら彼と思われる足音が遠ざかり、シャルロットはほっと息を吐いた。
「ごめんね、助かったよ。力ずくで追い出すなんて出来ないし……」
仮にも出店の店員と客という関係になる以上力ずくで追い出すというのは筋が通らず、口頭での拒否しか出来なかったと答えるシャルロット。仮に力ずくになったとしてもそこでISを展開する騒ぎになれば周りにも被害が及びかねず、その意味では同じくISを使えてなおかつ人数がいて周りへの被害を抑える事が出来る蓮達が来てようやく対処が可能になったと言えるだろう。
「さてと。じゃあ皆注文は? 助けてくれたお礼に奢るよ?」
そしてシャルロットは気を取り直して接客を再開、にこっと笑顔を浮かべて百花達に問いかけた。
というわけで。活動報告で予告した通り、ハロウィン特別編でございます。
なんかハロウィンっぽさが仮装くらいしかないけどハロウィンです。
他はともかく織斑兄妹は
一夏:アーサー
百花:アルトリア・リリィ
マドカ:アルトリア・オルタ
をイメージした仮装となっております。百花以外あっという間に出番なくなりましたが。
中編は本日12時00分投稿予約を行っております。
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