インフィニット・ストラトス~彼から主人公補正が消えた話~ 作:カイナ
「ん~食べた食べた」
料理部でハロウィン風料理を食べ終えた百花は今度はアリーナへと繰り出していた。
ちなみに蓮とヴィシュヌ、総司は警備の交代時間だからと、相川も本音や簪と約束があるからと別れ、シャルロットはミシェルがやってきて自分の料理部のシフトも終わったのでデートへと向かったため百花だけだ。
「あ、壱花さ~ん」
「オニールちゃんにファニールちゃん。それにラウル君も、お疲れ様」
「別に何もなかったし、お疲れって程じゃないわよ」
青髪サイドテールの少女──オニール・コメットとオレンジ髪サイドテールの少女──ファニール・コメット。二人とも現在は黒色を主体にしたゴスロリ衣装、背中には小さくコウモリの羽を模したようなアクセサリーをあしらい、口には牙を思わせるアクセサリーをつけている事から恐らく
さっきまで警備をしていた二人に百花が労いの言葉をかけると、ファニールは特に何もなかったから疲れてないと笑って答える。
「少々小競り合いはあったが、俺とシャルルで充分に対応できた程度だ」
一緒にいたラウル――何故かドイツ軍の軍服姿だった――がそう補足を入れる。どうやら正確には少しばかり敵襲はあったが警備部隊だけで十分対応出来る程度の規模だったらしい。
その辺りについて少し話しながら彼女達はアリーナを散策。こっちも色々と出店が出ており、こっちは元々がISの訓練に使うアリーナという広い敷地を利用したイベントが多く出ている。
例えば写真部がハロウィンコスプレをしている生徒達に記念写真の撮影を行うための簡易スタジオの設置──背景はスクリーンに映し出しているためある程度の場所さえ確保すればどんなシチュエーションも再現できるらしく、今は大人数で日本の百鬼夜行を思わせる大規模撮影の真っ最中だ──や、アリーナに設置されている的を使って、流石に銃はおもちゃを使っているが射的大会なども行われている。参加者の中に金髪縦ロール少女の姿が見えたが参加は自由という事で見逃しておいた。
その他にも──
「見つけたわよ! ファニール・コメット&オニール・コメット!」
アリーナ内を見て回っていたらそんな声が響き、声の方を向く。そこには幅広の帽子を被り(何故かその帽子には竜の角のようなパーツがくっついている)橙色と黒色を交互に合わせたカボチャを思わせるスカート部が目立つドレスを着た少女がファニールとオニールにビシッと指を向けている姿があった。
「エリちゃん先輩」
百花が呟く。ハンガリー出身のIS学園二年生、通称であり自称エリちゃん。
IS学園で勉学に励む傍ら古馴染の男子をマネージャーに引きずり込んでアイドル活動もしている……と自称しているが実際はまだ地下アイドル止まり、絶対天敵の襲来をきっかけにIS学園にやってきた現役アイドルのファニール&オニールとはエリちゃんが一方的にライバル視している関係だ。
もっともオニールの方は元来の人懐こい性格や、大人気アイドルと地下アイドルという違いこそあれど一応アイドル仲間という事もあって懐いており、ライバルとは言っているものの意外とお人好しなエリちゃんも可愛い後輩として可愛がっている妙な関係なのだが。
「今日こそ決着をつけてやるわ。このアリーナに用意したこの私の特設ステージでね!」
『え゛……』
エリちゃんの言葉に百花とラウルはもちろんファニールとオニールまで固まる。
エリちゃんは見た目はキュートかつ声も綺麗な美少女、アイドルとして成功してもなんらおかしくない逸材だが未だに地下アイドル止まりの理由はたった一つ。
そんなものをこんな大勢の人が集まるアリーナで披露したら大惨事になる。と百花はきょろきょろと辺りを見回し、軽く死んだ目をしているオレンジ色の髪をしたイケメンメカクレ青年を見つけると血相を変えて駆け寄った。
「先輩! あれ大丈夫なんですか!?」
「止めたが無駄だったよ……千雪先生に土下座して、千雪先生経由で篠ノ之博士にどうにか秘密兵器を頼んだ……」
どうやら彼がエリちゃんのマネージャーをやらされている男子らしく、その男子はそう呟いて、まるで洋風のお城の上にピラミッドを逆さにブッ刺した上に日本のお城をさらにピラミッドの上に乗せているような珍妙な物体を指差す。
「特設ステージと銘打って誤魔化しちゃいるが、あの内部はISにも使われるシールドバリアーが張られるようになっている。それでフィルターをかければ防音装置ももつ……はずだ」
何故か防音装置を物理的に破壊してしまう歌声を防御するためにISにも使われるシールドバリアーを使う辺り技術の無駄遣いだが、百花達にとってはそれぐらいしなきゃ安心できないのだろう。ホッと安堵の息を吐いていた。
「ふっふ~ん。あんな立派な特設ステージを作るなんて、あんたも少しは出来るようになったわね。なんか防音設備がついてるってのが気になるけど……」
「いやいやいや! ほら、あんたはアイドルだろ? アイドルの歌声ってのはそう安売りしちゃいけないってもんですよ~!」
「ふ~ん……ま、それもそうね」
珍妙なステージを気に入っている様子のエリちゃんは防音設備というのが気になっているようだが、マネージャーをやらされている男子が慌てて誤魔化すとあっさり誤魔化され、彼女はニコッとファニール達に向けて微笑んだ。
「さ、ファニール、オニール。この特設ステージで私と勝負よ!
『…………』
四人の顔が青ざめ、互いに顔を見合わせる。少なくとも標的になっているファニールとオニールは逃げられない。そう直感した瞬間、百花が素早く動いた。
「ご、ごめんなさい先輩! 私もうすぐ警備の時間だから! ラウル君はもう警備終わってるし付き合ってあげて!」
「え!?」
「じゃ、そういう事で!」
ファニール、オニール、ラウルに全部押し付けて返答を聞かずに逃げ出す百花。同時にプライベート・チャネルで三人に「ホントごめん私も命は惜しいの!生き残ってたら今度何か奢るから許して!!」と送信、一気にアリーナを飛び出して逃げて行った。
ちなみにその数分後。須藤成志は「あのクソチビモブ俺様に逆らいやがって、たまたま勝てただけの癖に偉そうに……」とかグチグチ呟きながら、百花が逃げ出したアリーナへとやってくる。
「ん? なんだこりゃ?」
そして洋風の城にピラミッドを逆さまに乗せ、その上に日本の城を乗せたような珍妙な物体を見つけ、そこに「地下アイドルエリちゃん特別ライブ開催中!」の看板がかけられている事と、出入り口らしい扉の横に見た目は元気いっぱいな美少女であるエリちゃんの全身写真を載せたポスターが貼り出されているのを見る。
「へえ、アイドルか……こういう頭軽くてチョロそうな女と楽しむのもいいよな……」
地下アイドルという事はそんなに人気があるわけではないのだろう。そこに俺のようなイケメンが声をかければイチコロ、少し遊んでやるのも悪くはないと思いながら成志は特設ステージに入っていく。
その看板はマネージャーをやらされている男子がエリちゃんを知る者に対して「危険だから入ってくるな!」という遠回しな警告──流石に直接的な警告ではそれを置いてるのがエリちゃんにばれたら血祭りにされる──のために置いていたものだと知らずに。
「ボエエエエェェェェェ!!!」
「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!」
というわけでハロウィン中編です。
さっそくハロウィンっぽさがなくなった?ノンノン、エリちゃんが出てきてるから実質ハロウィンです。(FGOプレイヤーにしか伝わらない屁理屈)
そして成志君が
後半は本日18時00分に投稿予約をしております。