インフィニット・ストラトス~彼から主人公補正が消えた話~ 作:カイナ
転生者同士の激突
IS学園の剣道場。剣道の胴着を着た男女の生徒達が見守る中、その中心では少年と少女が胴着と防具を身に着けて竹刀を手に向かい合っていた。
そしてその間に同じく胴着姿で両手に紅白の旗を持った箒が立つ。
「それでは……始めっ!!」
「はぁっ!!」
箒からの開始の声が響くと同時、ダンッと床を蹴って少年が踏み込む。踏み込みと同時に振り上げた竹刀は無駄のない動きで相手の少女の面目掛けて振り下ろされるも、少女はそれを竹刀で受け止めて鍔迫り合いに持っていく──
「ちぇいっ!」
と思ったのも束の間。少女は力強く声を上げて竹刀を力で押し返すと上段の構えを取った。
「きえええぇぇぇぇっ!!」
「づっ!!」
気合い一閃で放たれた上段からの振り下ろしを少年は咄嗟というように受け止めるも、ぐっと押し込まれるような重圧に竹刀を弾かせるようにして横に回避。
ステップを踏むように後ろに下がって場外に出ないように気をつけながら竹刀を正眼に構え直し、彼の目の前の小柄な少女も彼と相対して正眼に竹刀を構えた。
「相変わらず怪力だな……」
「鍛えてるからな」
少年のぼやきに少女が答え、少年は「きっと面の下ではドヤ顔してんだろうなぁ」とか考えながら苦笑を漏らす。
「「しゃぁっ!!」」
再び二人が床を蹴る。バシィンと音を立てて竹刀がぶつかり合い、鍔迫り合いに持っていく。少年は先ほどのように上段からの面打ちに持ち込まれないよう、距離を取れないように踏み込み、少女も上段に持っていこうとすればその隙を突かれると判断したか鍔迫り合いに付き合いながら、相手の剣筋から己の身体をずらそうと、また剣筋をずれないようにしようとグルグルと回転する。
「やめ!」
硬直状態になりそうと判断したか箒が声を上げ、二人は竹刀を外すと最初の位置に戻る。
そして再び箒が「始め!」と声を上げるが二人は動かない。いや、少女の方は上段の構えを取り、一夏もそれに付き合おうというようにぐっと身体に力を込めた。
「めえええぇぇぇぇんっ!!!」
少女が叫び、突進、竹刀を面に目掛けて振り下ろす。言葉にすればたったそれだけ。しかしその太刀筋は小柄な少女の身体からは思いもよらない圧や力強さ、そして速度があった。
「てええぇぇぇぃっ!!」
対して少年も踏み込んで、前に出てきた少女の籠手目掛けて竹刀を振るい、かわしきれなかった竹刀を面で受ける。互いに交差して離れるように踏み込んで振り返り相手に竹刀を向けて残身を取る。
「──籠手あり!」
箒が片方の旗を上げて籠手ありを宣言、即ち籠手を狙った少年の方が刹那だが早く籠手を打ったと判断した事になる。
その一本だけで終わりにするのか二人は中央に戻ると蹲踞を取って竹刀を収め、場外へと出る。そこでようやく観客である胴着を着た生徒達から「お~」という小さな歓声と控えめな拍手が始まった。
「ふむ、流石だな」
男子剣道部の部長をやっている三年生男子──
「たまにはと男女交流戦のつもりでやらせてみたが。これがどうだ、手に汗を握る熱戦だったな。見事だ、織斑」
「押忍」
卓の言葉を受けて、面を外した黒髪の少年──織斑一夏が汗を流した顔を見せながら答え、今自分が相対していた女子を見て「でも」と答えた。
「これぐらいは当然ですよ。俺とあいつはライバルなんですから」
そう言って一夏は、面を外して、面の中に収納していた長い黒髪をばさりと垂らした少女に笑いかける。
「な、真琴」
「おう、当然だろうが。今回はオレが一本取られたが、今度は負けねえぞ」
「そりゃこっちの台詞だ」
「うむ。一夏は籠手を打ったが直後面を打たれている。一夏は真琴の腕を斬った直後に頭を斬られたようなものだ。腕を斬られた、頭を斬られた。これが真剣ならばどっちが死んでいるかなど言うまでもない」
「たはは、手厳しいな……」
面を外してニッと歯を見せる笑みを浮かべた少女──真琴と一夏の話に箒が割り込む。即ち剣道としては一夏が勝ったが、実戦を考えた剣術でいえば腕を斬られようと頭を確実に捉えた真琴の勝利だと、箒は己の見解を示していた。そんな無茶な物言いに一夏は苦笑を漏らすが、その後にはうんと頷いた。
「んじゃ今回は引き分けだな」
「箒がいうならそうしてやるよ。今度決着つけようぜ、我がライバル織斑一夏」
一夏と箒は籠手を外した右手でビシッとサムズアップを互いに向ける。
「ハハハハハ! こんなチビと引き分けるとか情けねえなぁ!!」
「アン?」
すると剣道場の入り口からそんな笑い声と、台詞の流れ的に一夏を小馬鹿にするような声が聞こえ、真琴達は剣道場の入口へと目を向けた。
「なんだ、須藤か。剣道部の見学にでも来たのか?」
「ハッ、俺様はそんなに暇じゃねえんだよ。それにしてもこんなチビの見るからに雑魚相手じゃないと勝てないとか情けねえ──」
その相手──須藤成志を見た一夏の質問に成志はそう答えて真琴を見て、一瞬黙り込む。
「──誰だお前?」
そしてそんな呆けた声が口から洩れた。
「何言ってんだよ須藤。クラスメイトの
「えっ?」
「まったく貴様、クラスメイトの顔と名前も覚えられないのか?」
「えっ?」
一夏が首を傾げ、箒が呆れたようにため息を漏らす。それに対し成志はいつものように逆ギレするどころか困惑しか出来ずに一夏、箒、そして真琴なる少女を交互に見るしか出来ない。
なんか心なしか一夏と箒の目からハイライトが消えているような気がしたがきっと気のせいだろう。
「い、いや待てよ、こんな奴今までいなかっただろ?」
「何を言っている? 入学した時から同じクラスにいたではないか?」
「そうそう。大体いつも俺達と一緒にいたからお前も見た事あるはずだぜ?」
「そ、そうだったか!?」
そういう事でお願いします。
「いや、そんなこたぁどうだっていい! 大体、さっきのお前の勝ちだって疑わしいもんだ!」
「どういう意味だ?」
さっきまでの困惑をどうでもいいと切り捨て、成志は気を取り直したように一夏を指差す。その言葉に今度は一夏が困惑気味に問うた。
「箒がお前に味方してわざとお前に有利な判断をしたって事だよ! つまりお前はこいつの贔屓がなきゃチビ女にも勝てない雑魚って事だ!」
「なんだそりゃ」
無茶苦茶過ぎる言いがかりだった。自分の審判としての公平な判断にケチつけられた箒もまさか過ぎる言いがかりに「えぇ……」と怒りを通り越したドン引いた顔を成志に向けている。
「いや、そりゃありえねーだろ」
そして成志の言葉を否定したのは一応当事者である真琴だった。
「箒は剣の腕と見る目に関してだけは確かだ。その箒が依怙贔屓なんかでオレと一夏の勝負を邪魔するなんてありえねー」
真琴は幼い頃からの箒の剣の道への真摯さや腕前、そして培った目を知っているからこそ、剣道、そして自分と一夏の勝負を贔屓なんてもので邪魔するなんてありえないと断言。
それを聞いた箒も嬉しそうにうんうんと頷いた後しかし何か引っかかったのか「だけとはどういう意味だ真琴?」と問うていた。なお真琴はスルーである。
「て、テメエ負けた癖に! この俺が味方してやったんだぞ!?」
「知った事か。箒は引き分けだと言ってくれたが、剣道としては今回はオレの負けだ、だったら努力して次は勝つ。それだけだ」
「ああ、それが俺達だからな。今回は俺が勝った、なら勝って兜の緒を締めよ、慢心せずに努力して次も勝つ」
負けたなら次こそ勝てるように努力して次は勝つ。勝ったなら負けた相手が次こそ勝とうと努力してくるのを知っているからこそ、こっちも負けないよう努力して次も勝つ。
それを繰り返して互いに成長し続けるのを目指す。それが織斑一夏と浅山真琴のライバルとしての関係である。もちろん真琴はその中に「一夏を超えて箒やセシリアと言ったヒロインズとのハーレムを作る」という下心が若干混じっているのは今更言うまでもない。
「負けたら、次は勝つ、だと……? ハッ、所詮は甘ちゃんの台詞だな」
しかしその台詞を成志は鼻で笑う。
「いいか? 戦いってのは一発勝負、敗者に言い訳なんて許されねえんだ。お前みたいな甘ちゃんには分からないだろうがな、俺達専用機持ちは
「そんな台詞、自力で絶対天敵の一体でも倒してから言ってほしいものなんだが……」
成志は自分は専用機持ちとして実戦を戦っているんだとマウントを取り、さらに一夏にも暴言を吐く。その後ろで箒が呆れ気味にぼやいた。
「ハッ、そりゃ面白ェじゃねえか」
すると今度は真琴が成志の発言を鼻で笑った。
「いいぜ、絶対天敵と戦うセンパイ様。そこまで言うんなら腕で白黒はっきりつけようじゃねえか……ちょうど一週間後に第三アリーナを取ってんだ。そこで決闘といこうぜ……いいよな、一夏?」
「ああ。話は俺が通しといてやる」
「話が早くて助かるぜ」
真琴と一夏は互いに通じ合っているかのように頷き、箒も「ライバルならばこの程度通じ合うのも当然」といわんばかりに後方分かっています面で腕組みしうんうんと頷いていた。
「専用機も持たねえ雑魚が俺とだと? そんな俺様の勝利が決まった無駄な事、する必要もねえが。いいだろう、せいぜいあがいてみせな」
そう言い捨てて成志は剣道場を出て行く。それを眺めながら真琴が目を細めた。
「ったく。前々からマジでうぜえ奴だな、一夏もあんなのに絡まれてご苦労なこった」
「ははは……」
「まあいいか。それより練習始めましょう、部長」
真琴はさっきまでの事がなかったかのようにさらっと練習に入ろうと部長や他の剣道部員に促し、卓が「うむ」と頷いて練習開始を宣言。男女剣道部合同練習が何事もなかったかのようにスタートするのだった。
そして一週間後、第三アリーナ。決闘もとい建前的には「専用機持ちの技術力向上のための模擬戦」を行う事になっているここにはその模擬戦を行う事になっている真琴やその時その場にいた一夏と箒はもちろん、セシリアや鈴といった専用機持ちも全員集合していた。
「ったく、アイツ。よりにもよって真琴にまで喧嘩売るなんてね……」
「見境がないというかなんというか……」
「一応訂正しとくと、喧嘩売ったのはオレの方な?」
鈴とセシリアが呆れた顔でぼやくがどこか勘違いがあるらしく、そこは真琴が訂正する。
「でも、それにしたって真琴は専用機を持ってないんだよ? それなのにハンデも何も無しなんてスペックとかその辺で大きな差が……出るかなぁ……?」
「スペック差は間違いなく出るが……操縦技術を考えればトントンになるかもしれん……正直、アイツから専用機を奪って真琴に使わせた方が戦力になると思ったのは一度や二度じゃない」
「いや、あんな金ぴかは趣味に合わねえから嫌だ」
シャルロットはいくらなんでも専用機を持たない一般生徒相手にハンデ無しの決闘なんて大人気ないと怒るも、その後に彼の技術を思い出したのか言い淀み、ラウラもため息交じりに吐き捨てる。
「ま、こうご期待ってな。んじゃオレは準備に行くから。簪、本音、ちょっとついて来てくれないか?」
「うん、分かった」
「まかせて~まこっち~」
真琴は何故かくすくすと悪戯っぽく笑ってる簪といつも通りののほほん笑顔の本音を伴ってピット・ゲートへと歩いていく。ちなみに成志は「お前らと馴れ合う気はない」と言って、「せいぜい俺の引き立て役になれよモブ」とだけ真琴に吐き捨ててピット・ゲートに向かっていた。
「全然気負いとかそういうものがありませんね……」
「何か作戦でも立ててんのかしら?」
「いや、多分真っ向勝負って思ってるだろうぜ」
ヴィシュヌと乱がきょとんとしながら呟くと、一夏が腕組みしながら真琴を見送る。
「真っ向勝負って……いくら操縦技術で差があっても」
「いくらなんでも無茶じゃあ……」
「心配はいらないさ。あいつは俺のライバルだ。そのくらいひっくり返してみせる」
ファニールとオニールが真っ向勝負という言葉に怪訝な目を向けるが、一夏はうんと頷いて返すのみ。その姿には真琴への揺るぎない信頼が見えていた。
「信頼されているね、彼女は」
「ああ。私だって信頼している。あいつ如きに負けるはずがないとな」
ロランが笑いながら箒にからかうように言葉を投げると、箒も腕を組んで不敵に笑う。
どこか一夏と、真琴の理解者ポジションを取り合ってるようにも見える姿にロランは苦笑を漏らした。
「ほらほら皆、今回の主役が登場よ」
がやがやと話す一夏達の後ろで席についている楯無がくすくす笑いをしながら促す。それと同時に金ぴかの全身装甲が目立つ専用機──ゴールデン・キングを纏った成志がピット・ゲートから飛び出し、それから僅かにタイミングを置いて真琴が普段使っている機体──打鉄を纏ってピット・ゲートから飛び出した。
「……違う?」
一夏が呟く。違う、あれは普段真琴が使っている打鉄ではない。と言ってもこの学園のもう一つの訓練機──ラファール・リヴァイヴというわけでもない。見た目は打鉄だが、まるでカスタマイズされているようだ。それも訓練機を生徒に合わせてすぐ戻せる程度にカスタマイズしたのではない、それはまるで彼女専用となるように改造されているかのようだ。
「そう。あれは打鉄を改造した──
「簪! どういう事なんだ!?」
そこに一夏の言葉を肯定するように簪が口を挟み、一夏が慌てたように問うと共に他のメンバーの視線も簪に注がれる。
「えへへ~。この前私が専用機を持ったってお話したでしょ~?」
それに簪より先に答えたのは本音だった。曰く「本音が専用機持ちになったのと同時に、真琴もIS学園代表候補生として専用機持ちに選ばれた。しかし機体の調整や武装の準備などもあって本音と同時に紹介するには間に合わず、本来は今日の一夏との模擬戦でサプライズをする予定だったが結果的に成志が初戦の相手となって、一夏達は観客としてサプライズさせられる立場になった」というわけである。
「マジかぁ……そうと知ってたら意地でも譲らなかったんだけどなぁ……」
一夏が残念そうに苦笑する。新たな力を得たライバルの最初の戦いの相手は自分がよかったという思いが見え、隣の箒がふふっと微笑んだ。
一夏本人もまあこうなったら仕方ないかとか今度模擬戦するのを楽しみにしてようとか折り合いをつけ、アリーナを飛翔する真琴の専用機を改めて眺める。
簪曰く打鉄を改造したという専用機。だが打鉄の後継機にして発展型とされている簪の専用機──打鉄弐式と比べればシルエットから違う。腕部装甲はもはや肌を素で出しているような格好の弐式と比べてむしろ武骨に肥大化。解説している簪によれば「アームに出力を回すパワータイプだから」との事らしい。
対して打鉄なら実体シールド、弐式ならスラスターやブースターを装備している肩部ユニットは排除、代わりに加速・姿勢制御用のスラスターは背部に二基取り付けられていた。
スカートアーマーは既存の打鉄とそんなに変わらないように見えるが、よく見ると腰部に何かを装填しているように見える武装がある事に気づく。
「打鉄の改造にしちゃ実体シールドというか肩部ユニットがないってのは大胆な改造だな……」
「代わりにエネルギーシールド発生装置を搭載してるの。実体シールドは武器を振り回すのに邪魔だからって」
「スラスターを背部に直接つけてるのもそのためか……」
ここまで詳しいのは整備を手伝ったからだろう。一夏の疑問に簪が答えながら解説。他のメンバーもふむふむと頷いていた。
「ハッ。専用機に見せかけてるみたいだが所詮は打鉄だろうが。そんなもんで俺様に勝てると思ってんのか? 土下座して俺の足を舐めるってんなら許してやらなくもないんだぞ?」
「くだらねえ御託なんざノーサンキュー、戦場で語るのは剣のみだ。オーケー?」
成志は所詮打鉄の改造品だと見下して真琴を煽るが、その真琴は不敵な笑みを浮かべて答えるのみ。成志はチッと舌打ちを叩いた。
「この俺様の慈悲が分からねえとは所詮知恵も足らない雑魚だな。今ここでボコボコにして、織斑は贔屓がねえとお前にも勝てない雑魚だってあいつらに教えてやる。来い、ゴールデン・ブレード!」
「かかってこいよ」
成志が金色に光る剣──ゴールデン・ブレードを展開しながら真琴を嘲笑い、対して真琴も右手に巨大な剣、いや、上下の両方に片方だけでも通常の近接ブレードと同じかそれより長いのではないかと思わせる両刃のブレードを取り付けた所謂ダブルセイバーを握り、左手の人差し指で「かかってこい」と挑発する。その挑発に成志は苛立ったようにギリッと歯を噛みしめた。
──BATTLE START!!!
そして互いの目の前に試合開始を意味するウインドウが表示され、同じ意味を示すブザーが響く。
「オラくたばれ雑魚がぁ!!!」
四つのスラスターが一斉に点火、一気に吹き上がって加速しながら成志はゴールデン・ブレードを上段に構えて突進する。
「ワンパターンだな」
しかしそれは入学した日の一夏との模擬戦でもやったただ速いだけの愚直な突進。しかもやるとしたってただの振り下ろしだけ、要は威力が高いだけの面打ちだ。そう理解している真琴はひょいと身体を横に動かしてかわしてみせ、成志は制御できないまま地面へと突進していく。
ズドオオォォォンッ!!!
そして地面に墜落。辺りに土煙をまき散らした。
「……あいつ、まだあれの制御も出来んのか?」
「あんなの……スラスターへのエネルギー配分を調整すれば……それで終わるのに……」
「俺もそう言って、簪やのほほんさんに頼めば整備科の先輩も整備を手伝ってくれるって話してるんだけどさ。あいつ“自分から機体の全力を封じたりプロでもない素人に大事な専用機を任せるなんざプライドねえのかよ雑魚”って取り付く島もなくてさ……」
「もう放っときなさいよ……」
箒と簪が呆れ顔になり、一夏が心配そうに呟くと鈴も一夏に呆れた様子を見せる。
「うがあああぁぁぁぁぁっ!!!」
土煙から飛び出した成志は奇跡的に真琴に突進し、剣をむやみやたらに振り回す。しかしその剣劇に真琴はダブルセイバーを回転させながらダイナミックに振り回してぶつけ合い対抗していた。
(重いな……この“
ただでさえパワーに特化しただけではなく重さと長さによる遠心力を活かした回転乱舞と一応拮抗するゴールデン・キングのパワーは普通ではない。真琴は「ふむ」とぼやいた。
「どうだぁ!? とっとと降参してテメエの無能を認めやがれ雑魚がぁっ!!」
「……んじゃ、ちょっくらギア上げてくぜ? ついてこいよ?」
「へ……? がぁっ!?」
右上から振り下ろすようにダブルセイバーを振り下ろすのを成志はゴールデン・ブレードをぶつけて防ぐ。だがその次の瞬間、真琴はダブルセイバーを防がれて弾かれた勢いを利用して今度は左下から成志の脇腹を抉るような突きを見舞っていた。その刃は全身装甲に阻まれたものの衝撃は伝わったのか成志が小さく悲鳴を上げる。
「まだまだ終わると思うなよ!!」
抉るような突きに続けてもう片方の刃を振り上げて袈裟懸けに斬り上げる。しかもその次の瞬間ダブルセイバーが中央から分離、二本のブレードに分裂したと思うと右手に逆手で握ったブレードを勢いよく叩き付けた。
「二刀流!?」
「へぇ。ダブルセイバーに見せかけて二刀流なんてあたしの双天牙月と同じじゃない。後でちょっと話したいわね……」
観客席の一夏が驚き、鈴が同種の武器使いだと分かって目をキラリと輝かせる。
その間にも真琴の猛攻は続く。二刀流で攻め込んでいると思えば再び二本のブレードをダブルセイバーに結合させてダブルセイバーによる変則的な剣術に変化、それに相手が対応しようとしてくると再び二本のブレードに分離しての二刀流に変化。
二刀流とダブルセイバー、変則的な剣術を重ね合わせた超変則的剣術による予測のしにくい剣術を真琴は見事に使いこなしており、成志はゴールデン・ブレード一本では防ぎきれないどころかそもそも変則的かつ高速の剣術についていけていないのか、真琴の振るう刃はゴールデン・キングの装甲に次々と直撃していった。今はまだ無傷だがこのままなら装甲が破壊されるのも時間の問題だろう。
「クソッタレがぁっ!!!」
「っ! ぐぅっ!?」
苦し紛れに振るった剣がたまたま真琴の胴を捉える。だが腰も入っていないただの手打ちのようなそれだけで絶対防御が発動、真琴のエネルギーシールドが大きく削られた。
「ハ、ハハハどうだこれが俺様の力だ! お前如き弱者がどれだけやったって無駄なんだよ!! とっとと諦めて降参しやがれ雑魚が!!」
まぐれ当たりたった一発で大きくエネルギーシールドを削った成志が途端に得意気になり、笑い出す。これが神から与えられた俺だけの力であり、この力があれば目の前の雑魚を嬲り殺しにするなんて簡単な事なんだと。
「……面白ェ」
だが、彼の目の前にいる彼曰く雑魚──真琴の目から戦意は消えていなかった。
「一太刀──それに賭ける想いならオレだって負けちゃいねえ!!」
叫び、真琴は再び突撃。ダブルセイバーを振り回して果敢に成志に斬りかかり、後一発でも当てれば勝てると確信している成志と剣をぶつけ合った。
「ダメ真琴! 距離を取って! 今度一発入っちゃったらそれだけで──」
「いや、やってやれ真琴! お前の剣はこの程度で終わるもんじゃねえ!!」
「しゃああぁぁぁっ!!!」
簪が悲鳴を上げるもそれを遮る勢いで一夏が叫び、ライバルの思いに応えるように振り上げたダブルセイバーがゴールデン・ブレードを弾き飛ばした。
「っ! こ、来い! ゴールデン・ガトリング!!」
武器を失った成志が両肩にガトリング砲を展開しようと、金色の粒子が肩部に走る。だがそれよりも早く、成志は振り上げたダブルセイバーを放り捨てた。
「いけ!」
「っ!?」
そして彼女が叫ぶと同時に両腰部に装填されていた装備から二つのビームブーメランが射出。成志に直撃したことで集中が途切れたのか金色のガトリング砲の展開が不発に終わり、その機を逃さないとばかりに真琴は空いた両手を掲げた。
「来い!! ネネキリマル!!!」
ズオウ、と心なしか重圧すら感じる灰色の粒子が彼女の両手から伸びる。
ここで一つ話をしよう。ある所に
その刃長七尺一寸余。メートル法に換算すれば刃長216.6cm、全長324.1cmとも言われる。大太刀においてもトップクラスの大きさを誇るその大太刀の、前述の逸話より名付けられし号は「
「で……」
「でけえ……」
箒と一夏が絶句する。七尺一寸余、ISを普通の人間と同じ大きさだとすれば相対的にそれぐらいの長さにもなりそうな大剣を真琴は軽々と振り上げていた。
そう。ダブルセイバーやそれが分離した二刀流を軽々と振り回すアームのパワーはただ一つ、これを振るうために必要だったに過ぎない。
「キエエエエェェェェェッ!!!」
真琴の口から、その小さな身体のどこから出てくるのか不思議になるような声──示現流で有名な猿叫が響き渡る。
同時にネネキリマルが振り下ろされる。遠心力を利用した振り下ろしの圧力に成志は圧され、対処方法を考える。受け止めようにもゴールデン・ブレードが弾き飛ばされ、他の武器の展開も間に合わない。回避しようにも先ほど撃ちだされたビームブーメランは無線操作でも可能にしているのか、成志の周りを旋回して回避を妨害している。
「ひぃっ」
思わず小さく悲鳴を上げ、自分の身を縮みこませるように両腕で顔を覆うように前に向ける。
全身装甲の機体はその装甲自体が盾にもなる超防御型。その装甲を破壊するだけでも大変な事だ。
「勝った……」
だが一夏は、成志が防御という選択肢を取った瞬間
(ま、まだだ! 装甲が多少壊れようが耐えさえすれば、もう一度ゴールデン・ガトリングやゴールデン・マシンガンを展開して、こんな雑魚蜂の巣に──)
成志はまだ負けていないと自分に言い聞かせるように心の中で叫びながら、真琴のネネキリマルを両腕の装甲で受け止めた──その時、両腕に軋むような感覚が生まれる。
「え?」
バギバギバギ、と音が響く。なんの音か、剣が装甲に負けて弾かれる音、違う。剣が折れて砕ける音、違う。これは、剣が装甲を砕く音だ。
「そ、そんな、馬鹿なぁ!!??」
成志が悲鳴を上げる。「あり得ない」、そんな言葉が頭の中を埋め尽くす。だがそんな僅かな現実逃避を行っている間に腕部装甲が砕かれ、そのままの勢いのまま止まらずにネネキリマルが腕を斬るだけではなく肩にまで到達。肩部装甲も砕いたまま振り下ろされて一気にシールドエネルギーをも断ち、絶対防御を発動させる。
「あ、ああああぁぁぁぁぁっ!!!」
悲鳴を上げるがもう遅い。一撃必殺の斬撃が絶対防御を発動させて大幅にシールドエネルギーを消費させ、
──須藤成志、エネルギーエンプティ。勝者、浅山真琴
その一太刀にて勝敗が決することになるのだった。
「というわけで。今回の模擬戦の勝者は真琴ちゃんでしたー。はい皆、健闘した二人に拍手ー」
試合終了後、ピット・ゲートから出てきた二人を待っていた皆(正確には楯無が成志側で待ち、一夏が真琴達を引っ張ってきて合流した)が、楯無の合図に合わせて前の方に二人並べた真琴と成志に、ぱちぱちぱちと健闘を称える拍手を送る。
「ふ……ふざけんなっ!!!」
すると突然成志が怒号を上げて隣に立っていた真琴に掴みかかった。
「俺が、俺が負けるわけねえんだ!! そうだ、お前チートを使いやがったな!? ふざけやがって! 今回の勝負はなしだ! いや、チートなんか使ったお前の反則負けだ!!」
「おいおい、何言ってんだよ?」
成志が胸倉を掴み上げながら怒号を上げるのに対し、真琴は不敵な笑みで応える。
「
「な、んだとゴラァ偉そうな口聞きやがって!!!」
「真琴!!」
真琴の言葉に成志が顔を真っ赤にして怒り、殴りかかる。一夏が声を上げて駆け寄るがもう遅く、ガツッという打撃音がそこに響いた。
「が、あっ……」
そして僅かに遅れて悲鳴が上がる。それは真琴の額を強かにぶん殴った成志の口から漏れたものだった。
「痛いか? 悪いな、オレは石頭なもんでな、っと!」
「ぬあっ!?」
敢えて額で受けたらしく悲鳴を漏らす成志に悪びれもせずそう言い放つと、真琴は痛みに怯んだ成志の掴みかかっていた手を払って懐に入ると腕を取りながら足を払い、バランスを崩させる。
「あでででででで!?」
そして仰向けに倒れた成志の腕を極めた腕ひしぎ十字固めへと持ち込んだ。
「ふむ。なかなかいい腕だ」
「真琴の母親は柔術の達人らしいぞ」
ラウラが感心したように頷くと箒が説明、成志は「ギブギブ!」と泣き叫びながら空いている手でバンバンと床を叩き出すのだった。
「クソッタレ! この俺様に恥かかせやがって! 覚えてやがれ!!」
「ヘッ、いつでもかかってきやがれ!」
関節極めを解かれた成志も流石に周り全員に睨まれるとこれ以上の攻撃も出来ず、捨て台詞を残して去っていく。それに真琴はサムズダウンをしながら切り返したのだった。
「真琴さん、はしたないですわよ。それよりも叩かれたんです、お顔に傷が残ってはいけません、急いで手当てしないと……」
「セシリアは大袈裟だな……んな事で傷なんざ残りゃしねえって」
「いけません。保健室に行きますわよ」
真琴の顔(正確には殴られて受けた額)に傷が残ると心配するセシリアに真琴は大袈裟だと答えるが、セシリアはそう言ってずりずりと真琴を引きずっていく。
「真琴、またアリーナが空いたら模擬戦しようぜ」
「おう、これで条件で五分だ。決着つけようぜ」
引きずられる真琴と並行して歩きながら一夏と真琴は次の勝負を約束し、にっと笑い合う。
《後書き》
なんか思いついたのでやりました。正確には「なんか最初に剣術メンバーと剣劇訓練してる場面を書きたくなったけど一夏と箒だとありきたりだなーと思ってたらそうだ真琴を出すきっかけにしよう」と思いついたので書きました。
一応真琴も一夏や箒と仲良くなってからは二人と一緒に篠ノ之道場で剣術習ってる兄弟弟子という設定ですし。
ぶっちゃけその後に成志と言い合うのは完全にその後の蛇足というか真琴の戦闘シーンも書こうかなって思ったから考えました。
ちなみにサブタイトルは「転生者同士の激突」となってますが、この二人真琴から成志はともかく成志は真琴の事を自分と同じ転生者だと気づいてません。真琴の方はどうだろうかと考えてるところです。(おい)
そしてせっかくだからと作りました真琴ちゃんの専用機「打鉄・八幡力」。形的には打鉄の改造品ということになっており、真琴自身が接近戦を得意としている事や「一夏と同じ立場や条件で戦いたい」という希望によって剣による接近戦に特化。作中でも披露していた巨大なダブルセイバーやそれを分離させた二刀流、牽制用のビームブーメランを軸に、相手がかわせない隙を作りだして超巨大ブレードネネキリマルによって一撃必殺を狙うというパワータイプISに仕上がりました。その他にも今回は使用する余裕がありませんでしたが、インフィニットジャスティスガンダムのように足にビームブレードを展開する機構を備えていて、得意の蹴り攻撃に斬撃効果を付加しているという設定もあります。
ちなみにネネキリマルを搭載した理由は「一夏には一撃必殺の零落白夜がある。ならそれに対抗するためにはオレも一撃必殺の剣を持たなければならない」と考えた事やエネルギー系の武器だと零落白夜で消滅させられて意味がないから実体剣を選んだという設定になっています。
作中では絶対天敵と戦うためにIS学園から代表として選ばれたのにVS一夏を想定して武装を選択している辺りが真琴クオリティ。(笑)
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。