インフィニット・ストラトス~彼から主人公補正が消えた話~ 作:カイナ
クラス代表決定戦
新入生がIS学園に入学してから一週間が過ぎた月曜日。一年一組の新入生である織斑壱花、セシリア・オルコット、須藤成志は第三アリーナの待機場とでも言おう場所で横並びに整列していた。
これから行われるのはこの三人による一年一組のクラス代表の決定戦。この三人で総当たり戦を行い、その対戦結果によって代表が決定する。
そのため三人ともISスーツに着替えているのだが、ただでさえ肌にピッタリと張りつくようになっていて身体のラインを見せるデザインのため日本人からすれば充分以上にバストやヒップが膨らんでおり、対してウェストはしっかり締まったナイスバディの女子二人を成志は横目で見ながら鼻息を荒くしているのだが、本人としてはばれないようにチラ見しているつもりのそれは女子からすればガン見も同然。しかし鬱陶しいだけで実害はないしいちいち指摘して突っかかられたらそっちの方が面倒くさいため、二人とも彼にばれないようにため息を漏らして無視する事にしていた。
「全員揃っているな?」
「「はい!」」
「……あ、はい」
待機場に入ってきた千冬の言葉に壱花とセシリアが凛とした声で答え、二人の身体に夢中になっていた成志もその声で気づいたように一拍遅れて答える。
「ではこれよりクラス代表決定戦を行う。その前に、織斑、オルコットの須藤に対するハンデを確認する」
「「はい!」」
クラス代表を試合で決定するとはいえ、流石に数ヶ月前にISを動かしたばかりの初心者と中学生の頃からISを動かして今では専用機を持ち、国の将来を背負うと期待されている代表候補生が同じ条件で戦うのはおかしいだろうという真っ当な意見がクラス内から出て、代表候補生二名もそれを当然と受け入れて、成志との対戦の時のみハンデが決められていた。
なお成志自身は「ハンデなんていらない」みたいな感じの原作での一夏と同じ台詞を言っていたが、当の対戦相手である壱花やセシリアが「そんなわけにはいかない」と、まるで「ハンデなしで戦ったら瞬殺しちゃう」とでも言いたげに本気で成志を心配しており、成志が内心苛立って本当はハンデなんていらなかったくらいに完勝して恥をかかせてやるとかいう無謀な事を考えていたのは別の話である。
「まず共通のハンデとして、織斑とオルコットはISのシールドエネルギーを半減。加えて試合開始から三分間、武装の展開及び須藤への攻撃行動を禁止する。これを破った場合、ペナルティとしてこのハンデの適用時間を一回につき一分追加、三回行えば強制敗北とする。いいな?」
「「はい!」」
シールドエネルギーの半減に試合開始から三分、ボクシングなら1Rが終わるまでの時間武装の展開と攻撃禁止のハンデ。シールドエネルギーが半分ともなればその三分間で削り倒される可能性だって充分ありえる話だ。
「続けてオルコットへの固有ハンデだが、武装用のエネルギーを半減、加えてBT兵器の内ビットの使用数を二基までに限定する」
「了解しました」
ブルー・ティアーズ。イギリスが開発した第三世代専用機で、彼女が使う機体『ブルー・ティアーズ』はBT兵器ブルー・ティアーズの実戦投入第一機、早い話が試験機である。その一番の武器である兵装の使用制限は大きなハンデとなるはずだが、セシリアは臆する様子もなくそれを、さらに射撃武器はエネルギー兵器しか搭載していないこの機体にとっては実質弾薬の使用が半分にまで制限されるハンデと共に了承していた。
それを聞いて満足そうに頷いた千冬は続けて壱花の方を見る。
「続けて織斑、お前の固有ハンデだが。これは単純だ……零落白夜の使用を禁ずる。もし使用した場合は強制敗北だ。反射的に発動しないように心しておけ」
「はい!」
零落白夜。壱花の機体に発現した
「続いて対戦順だが、まずは織斑とオルコットで試合をしてもらう。この試合は須藤にもモニターで観戦、二人の戦法を見て自分の試合に備えるように──」
「待ってください」
まずは代表候補生同士で戦い、その模様はモニターで次の対戦相手である成志に見せる。つまり代表候補生同士で戦って心身消耗状態の上で、その試合を見て手の内を知った成志と戦う事になる。実質的な新たなハンデといえるがそこに成志が口を挟んだ。
「なんだ、須藤? 質問なら最後にまとめて受け付ける」
「いえ。最初は俺に戦わせてくれませんか?」
「ほう?」
成志の宣言に千冬が目を細め、成志は殊勝に見えるように自分の胸に手を当てた。
「俺だって男です。一人くらいは何の手の内も分からない状態で戦いたい」
「……いいだろう。では最初の対戦相手は須藤が指名しろ、一戦目はその組み合わせ。二戦目は代表候補生同士、三戦目は残る二人で。という形にしてやる」
成志の言葉を千冬は了承、指名権まで成志に与えて試合順を入れ替え、成志は内心でニヤリと笑いながら壱花を見た。
「では織斑さん、お願いします」
「あ、私? うん、お互い頑張ろうね」
「では一戦目は織斑VS須藤、二戦目は織斑VSオルコット、三戦目は須藤VSオルコットとする。織斑と須藤はピットに向かい、試合の準備を行え」
「「はい!」」
試合順も決まり、千冬が指示を出すと壱花と成志は待機場を出て行く。セシリアも二人の試合を見て手の内を探る気はないという意思表示のように、待機場に用意されていた椅子に腰を落ち着けた。
そしてピットに向かった成志に視点を移そう。彼はピットで自分の専用機である打鉄(デュノア社からの最新装備の援助によるカスタマイズがされている)を装着してピット・ゲートの前に立っていた。
「へへへ。どうせオリムライチカってんなら機体は白式に決まってる。つまり武装は剣一本、そんなの遠距離から銃弾ばら撒いてりゃ何も出来ずに倒されるに決まってんだ」
戦いにおいて最も有効なのは敵の攻撃が届かない位置からの一方的な攻撃。かつて戦国時代、戦場で猛威を振るった騎馬隊すらも火縄銃の前に手も足も出ず倒されたという歴史上事実がそれを証明している。
「まあ、三分間はあいつは抵抗できないんだ。その間はお望み通り接近戦でもしてやるよ」
この世界では織斑一夏は織斑壱花という女性になっているが、その壱花はナイスバディの絶世の美少女。ISスーツを着ている姿には襲い掛からないよう我慢するのに苦労したと成志はニヤリと笑い、この試合の開始から三分間は反撃を受ける心配もなくそのナイスバディを間近で見られると煩悩を覗かせる。
──発進準備完了。須藤成志君、発進してください
通信から指示が飛び、成志は完璧に対策を取った状態でのこちらの一方的な勝利を確信しながらピット・ゲートを飛び出したのだった。
そして試合開始から二分程経過。壱花の武装展開及び反撃禁止のハンデが解かれるまであと一分を切った頃。
「くそ! くそくそくそっ! なんでだ!? なんで一発すら当たらないんだよ!?」
やたらめったら近接ブレードを振り回すも、その全てを見切っているかのように壱花は回避。くるくるとまるで踊るように回避する姿はとても華麗で、スカートを思わせる腰部装甲もまるでスカートがひらひらと舞うような軽さを見せているかのように見えた。
この試合を観戦しに来ている一組女子はもちろん噂を聞きつけて見に来た他のクラスの女子も、壱花の舞うように華麗な回避術に見惚れてしまっていた。
「マ、マシンガン展開!」
叫び、左手に光の粒子が奔流。その光がなかなかまとまらずに成志がギリリと歯ぎしりして数秒経ってやっとマシンガンが左手に出現した。
「くらえっ!!」
壱花の方に向けて引き金を引き、同時にけたたましい音が響いて銃弾が何十発と放たれる。しかしそれをも予想していたように壱花は三次元的に動き、空中をひらりと舞う蝶のような自然な動きで回避してみせた。反応が遅れて何もない所に向けて引き金を引き続けてしまい、結果としてマシンガンが弾切れを起こす。
「くそ、このポンコツが!」
三組だが一応コーチ役してた義理として見に来ていたシャルロットの視線が冷たくなり、それに付き合って同行したラウラが呆れきった視線を向けるも当然気づくことはない。
──三分経過。これより織斑さんも武装の展開、攻撃が許可されます。
「待ってました!」
壱花の武装展開及び攻撃を許可するアナウンスが聞こえ、壱花が嬉しそうに声を上げる。
「クソッタレがぁっ!!」
武装の展開なんてさせるものかと剣を振りかぶり突進、丸腰の壱花目掛けて斬りかかるが、その刃が振り下ろされる前に壱花の右手に爆発的な光が走る。
まるでその光が風を生んだかのように、彼女が頭に被っている紺色の帽子を思わせる装飾と、胸に結んだリボンのような装飾、そして肩から羽織るような形で展開しているローブやマントを思わせる装飾が翻った。
「白兵戦、いきます!」
ゴォンッと鈍い音を響かせて打鉄の近接ブレードとぶつかり合い、僅かな拮抗の後に壱花の方が上回ったか振り上げるように近接ブレードを押し返した武装。それは彼女の背丈よりも長いと思わせる杖のような武装だった。
「剣じゃない……だと……!?」
「ああ、私が
「ハンデ? 練習?……ふざけんなぁっ!!」
杖という原作では見た事もない武器に成志が絶句すると、相手の武装を調べるなんて当たり前という感覚なのか壱花は特に気にする様子もなく今回使う装備は今回初めて使うものだと宣言する。しかしその内容に成志は歯ぎしりして斬りかかった。
「ほ、よっ!」
「くそっ! ぐはっ!?」
しかしその剣は丸腰でさえ一太刀当てる事さえ許されなかったもの。杖という武装を展開していれば防ぐことはもちろん受け流す事すら軽く行えるのは当然、杖で剣を滑らせるように受け流しながら逆に成志にその杖の先端をぶち当てて反撃まで行っていた。
「はぁー! でりゃー!!」
空中で縦に一回転し、杖の先端に水色の光が集中した状態で遠心力を加えて思い切り振り下ろした一撃が、銃を持つのに邪魔だし容量の無駄だからと物理シールドを破棄したせいで防御手段のない成志の頭に直撃、シールドバリアーを貫通して絶対防御を発動させるほどの衝撃を与える。
「がっ!? くそ! ショットガン来やがれ!」
一瞬頭がくらついた成志が悪態をついて吠えると共に左手にまた光が奔流し、数秒かかって実体化。しかしその引き金を引いた時には壱花はその場におらず、弾丸を回避するため距離を取っていた。
「ハーッ!」
ショットガンの弾丸をやり過ごしたタイミングで突進、射撃後ポンプアクションが自動で行われて次弾が装填されたショットガンが向けられるも、引き金を引かれる前に杖でショットガンをぶん殴り、叩き落とす。
「やっ、たーっ!」
「が、ぐっ!?」
返す刃でもう一発打撃を加え、続けて杖の石突きを相手に向けて槍のように刺突。
「ここで、真っ直ぐ!」
「ぐはっ!?」
さらにサマーソルトの要領で蹴りを入れながら宙に浮かぶと杖の石突きを成志に向ける。するとそこから水色のエネルギー弾が射出され、サマーソルトを入れられて怯んで動けなくなっていた成志に直撃した。
しかしまだ攻撃の手は緩めない。そういうように壱花の目は鋭く彼を射抜いていた。
「弾けて──」
懐から取り出した小型の青い宝石を思わせる物体を連続攻撃に怯んで動けない成志に投げつけつつ素早く距離を取って後退。まるでライフルを構えるように杖の石突きを相手に向けた。
「──シャスティフォル!」
石突きから放たれた青いエネルギー弾が成志に直撃すると同時、その青い宝石型の恐らく爆弾だったのだろう物体も誘爆したように大爆発。エネルギーによる水色の爆風が成志を包み込んだ。
「が、は……」
──須藤成志、エネルギーエンプティ。勝者、織斑壱花
爆風の中から成志が墜落。同時にアナウンスによる壱花の勝利が告げられる。
結果、ハンデの時間が尽きた瞬間、壱花の猛攻による瞬殺。この試合を聞いた皆が思い描いた通りの未来が現実として示される結果になった。
「あ、ありゃ~……やりすぎちゃったかな?」
なお成志を瞬殺した張本人はまるで高校入学のお祝いとでも言うように用意された新たな装備の練習のつもりだったが、まずこの武装の全力を見てみようと思って当然零落白夜はなしの状態で全力攻撃を繰り出したら、相手が量産機だったとはいえ思っていた以上に手早く瞬殺してしまい、苦笑いを浮かべる羽目になってしまっていたのだが。
「にしてもこれで試作型って……どんな化け物装備作る気なんだろ……」
エネルギーを纏っての打撃やエネルギー弾を射出して狙撃を行える遠近両用の杖──シャスティフォルを弄びながら壱花は呟く。
シャスティフォルは今回の、普段使っているカリバーン&ロード・キャメロットを主武器とする
このシャスティフォルを使った戦闘データを元にさらに性能を向上させる新たな武器も開発予定らしく、その武器の名前だけは壱花も聞き及んでいた。
「マルミアドワーズ……どんな武器になるんだろ」
一人呟いた後まあいいやと考えを取り止めるとほとんど同時に、爆発の衝撃で気を失ったのかそれとも他の要因があったか分からないが墜落した成志の回収も終わったらしい。
壱花は次の本番といえるセシリア戦に備えて、彼女相手では新しい装備の練習なんて言っている余裕もないので使い慣れたカリバーンとロード・キャメロットに武装を変更するため、そして休憩とエネルギー補給を行うためピット・ゲートに戻っていった。
アルトリア・キャスターを引き当てられた記念に書いてみました。正直完全に書く気を失っていたクラス代表決定戦をまさかこんな形で書くことになろうとは……。
なお壱花VSセシリアやセシリアVS成志を書く予定はありません。そちらの脳内で壱花とセシリアがカリバーンを振るったりブルー・ティアーズを踊らせたり、セシリアが二基のブルー・ティアーズのみで成志を蜂の巣にする光景を補完してください。(雑)
それにしてもアルトリア・キャスター……スキルとかが強いってのはもちろんですけど、モーションやボイスもいいわこれ。師匠と同じように杖を振り回したり剣を振るったり、そしてボイスも基本的に元気いっぱい。
現在かれきえの新たな特別編もしくは開き直って新作に一夏、壱花(流石に名前の読みが一夏と被るから改名予定)、マドカの三兄妹を主人公としてインフィニット・ストラトス原作メンバー、インフィニット・フェイトヒーローズ、アーキタイプ・ブレイカーヒロインズも可能なら混ぜ込んだハチャメチャオールスター編を構想してるとこなんですが、キャストリアの戦闘モーションを見て壱花の機体のイメージをセイバーリリィ(orアルトリア)&マシュからアルトリア・キャスターに変更しようかと悩み始めてるくらいです。それならマドカがセイバーオルタ使っても特徴の被りは最小限に抑えられるし。
なお現状では人数が多すぎて捌き切れないので没気味なのはご了承ください。どうにか出来る手が思いつかない限り執筆に着手できません。(きっぱり)
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。